1.税理士業をめぐるトラブル、最新の裁判事例を一挙紹介
■事例1
関与先決算書を関与先株主へ開示義務が税理士にあるかどうか
⇒開示義務はない
・税理士は依頼者(関与先代表者など)の依頼に対応する必要はある
・株主のその地位に基づく権利の行使はその会社に対してされるもの
(東京地裁平成27年2月23日判決)
■事例2
顧問税理士が算定した株価と正当な価格との差額について損害賠償する義務がその税理士にあるかどうか
⇒損害賠償義務はない
・A法人が顧問税理士に非上場会社の株価の算定を依頼し顧問税理士が算出した株価で売却したがその後、別の税理士に依頼して算出した株価がより高い金額になった
・不当に低い価格で売却することになったとA法人は顧問税理士を訴えた。
・顧問税理士は業務委託契約に基づき、会計全般についてのアドバイスをする義務はあるが株式評価のような資産評価の業務は業務委託契約に基づく業務に含まれないと裁判所は指摘した。
(東京地裁平成27年1月28日判決)
2.適格合併でPE(恒久的施設)移転、繰越欠損金使用可
(原則)
日本国内にPEを有する外国法人が撤退後、日本に再進出した場合
⇒撤退前の繰越欠損金は引き継げない
上記により、
(改正前)
一旦撤退した外国法人が、適格合併によりPEを再保有した場合
⇒PEの繰越欠損金は引き継げない
(平成27年度税制改正)
一旦撤退した外国法人が、適格合併によりPEを再保有した場合
⇒PEの繰越欠損金は引き継げる!
※PEを有しない外国法人が平成28年4月1日以後にPEを有することとなる場合に適用
3.Q&Aで読み解くガバナンスコード
東証がコーポレートガバナンス・コード(以下コード)の制定に伴い、上場制度の整備案を発表した。
■コードとは?
・上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの
・コードを実施しない場合に、その理由を開示・説明する必要がある
・その説明をしなかった場合、制裁措置を受ける
(例)原則4-8:独立社外取締役を少なくとも2名以上選定すべき
⇒2名以上いる場合 …作業は不要
⇒2名以上いない場合…開示・説明する必要あり
■対象者は?
・市場第一部、第二部、マザーズ、JASDAQに上場している企業
・ただし、マザーズとJASDAQに上場している企業については、「基本原則」と言われるコードのみ、説明義務がある
※例えば上記(例)のコードは実施対象外となるため、社外取締役2名以上選定してなくても開示・説明は不要
■いつから?
・平成27年6月1日から実施予定。
株主総会後速やかに「コーポレート・ガバナンス報告書」を提出
※今年は経過措置があるため平成27年12月末までに提出すれば良い
4.長期解消将来減算一時差異は現行通りに
企業会計基準委員会が繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(仮)を作成中
(1)長期解消将来減算一時差異の取り扱いを従来通りとする方針
前提:会社の業績や課税所得等の状況によって、回収可能性の判断が異なる。
例えば、分類3号(業績が不安定で、将来減算一時差異を大きく上回るほどの課税所得がない)に該当する場合、
(原則)
概ね5年以内に解消する将来減算一時差異についてのみ、回収可能性ありと判断
(例外)
減価償却に係る将来減算一時差異は、5年を超えて解消されるものについても、回収可能性ありと判断
∴企業が継続する限り、差異はいずれかのタイミングで解消され、税金負担を軽減する効果があるため
(2)新たな開示項目を追加する方向
重要な税務上の欠損金が生じている場合に繰延税金資産の回収可能性があると判断する場合、 その根拠や計上額を説明する情報を開示する。
5.貸し付けていた建物の取壊し費用は必要経費
■事例
・貸付用の建物を取り壊し更地にした
・建物に係る取壊し費用を支払った(必要経費に算入して申告した)
・更地の貸付けまで約2年半要した
・その間、土地の譲渡や個人で使用する予定はなし
・貸付直前までに貸付広告等を行っていなかった
■原処分庁の主張
条文において、不動産に伴う費用については、近い将来において貸付けが確実に行われるような場合でなければ必要経費算入は認めない
⇒貸付けの広告や看板が設置されたのは貸付直前であるため、取り壊した年分の必要経費とは認めない。
■審判所の判決
・取壊し後に家事用への転用や土地を譲渡する計画はなかった
・賃貸業は取得、賃貸人の募集、貸付け、取壊しや廃棄までの一連を流れとしており、取壊し費用は貸付業務に係る残務処理である
以上のことから、必要経費算入を認めた。
6.間接的に100%保有なら非支配に当たらず
・H27年度改正により、配当等の益金不算入区分が見直しへ
【改正後】
保有割合 益金不算入割合
100% (完全子法人株式等) 全額
100%未満3分の1超 (関連法人株式等) 全額
3分の1未満5%超 (その他の株式等) 50%
5%以下 (非支配目的株式等) 20%
⇒直接の保有割合が100%未満であっても、間接の保有割合が100%であれば完全子法人
株式等に該当する
(例)
A社→(3%)→C社
A社→(100%)→B社→(97%)→C社
⇒A社は、B社を通じて間接的にC社株式の100%を保有している
⇒C社株式は完全子法人株式等に該当する
7.来日芸能人等に対する消費税課税方式の見直し
■改正案
28年4月1日より「リバースチャージ」方式に変更の予定
■現在の課税方法
(例)プロ野球H球団のG選手に対する報酬
国内でプレーした場合には消費税の納税義務がG選手本人に課される(基準期間における課税売上1,000万以下は免税)
(報酬額1,000とする)
H球団:G選手へ1,080支払 仕入税額控除80
G選手:預り税額80を納付
■改正後
選手から役務提供をうけた者(H球団)が納税義務を負う。
H球団:
(1)G選手へ1,000支払
(2)税務署へ80納付
(3)仕入税額控除80
G選手:納税義務なし
8.所得税:太陽光発電の売電収入の所得区分
■余剰売電の場合
電力の使用状況に応じ、付随収入として整理される。
・サラリーマンの家に設置
⇒雑所得
・事業者が事業所に設置
⇒事業所得
・賃貸用マンションの屋根に設置
⇒不動産所得
■全量売電の場合
基本的には出力に応じて判断される。サラリーマンか事業者かは考慮されない。
・50kW未満
⇒雑所得
・50kW以上
⇒事業所得
※50kW未満でも、設備に係る除雪や除草等の通常の管理をしている場合には、事業所得と判断されるケースも有る。
■事業所得の場合は...
・青色申告をすればグリーン投資減税の対象となる。
・給与所得等との損益通算ができる。
9.公開会社
・公開会社≠上場会社 ※混同が多い
・公開会社=定款に譲渡制限の無い会社
※発行する株式のうち、1株でも譲渡制限がない株式があれば該当
公開会社
・取締役会の設置は義務
・大会社&公開会社⇒監査役会&会計監査人の設置義務あり
※監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く
2015年5月施行の会社法改正で以下の義務発生
・公開会社and大会社and有価証券報告書の提出義務あり
⇒事業年度末に、社外取締役を置いていない場合は
「社外取締役を置くことが相当でない理由」を定時株主総会で説明する必要あり
株主総会参考書類や事業報告でも理由記載必要。
10.棚卸資産管理にあたっての税務上&実務上の留意点
■棚卸資産の税務上のポイント
・免税事業者の棚卸資産計上漏れに要注意
⇒税抜経理で処理している場合
・税務調査上、重要なチェック項目
⇒棚卸除外はないか。等
・対策
⇒現在在庫の把握をしっかり行うこと
■在庫管理上のポイント
・適正在庫の見極め
11.消費税 軽減税率当落予想
ポイントは「生活必需品」かどうか
・軽減税率が通りそうなもの
→ 「米・味噌・醤油」「塩・砂糖」「肉・魚」「野菜」「新聞」
・軽減税率が通らなさそうなもの
→「パン」「チョコレート」「携帯電話」「ガソリン」
「100年前の生活必需品」と言った方が正しい…??
EU諸国では、「高級食材でも国産のフォアグラ、トリュフは対象、ただし輸入品のキャビアは標準税率」
「ケーキは対象だが、チョコレートは対象外」
「バターはOKだがマーガリンはダメ」
など税制が複雑怪奇で、訴訟も絶えないとのこと。
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