1.国税局の指摘を受け源泉税納付、異議を述べる義務があったか?
■論点
・税務調査で指摘を受け、修正事項に異議を述べずに指摘に応じることは不法行為に該当し、損害賠償請求が成立するかどうか。
■裁判所の判断
・税務調査での指摘内容には合理性がある
・異議を述べずに指摘に応じる行為はそれだけで不法行為になるものではない
・よって損害賠償請求は成立しない
■経緯
・外国法人日本支店(A社)に税務調査があった。
・A社の副社長のBが代表を務める内国法人(C社)に対しA社は業務委託費を支払っていたが、税務署は、その業務委託費はBに対する給与と指摘した。
・A社はその指摘を受け入れ、追加の源泉税を納付した。
・Bは自己に対する課税処分を不服とし、異議を申し立てた。
・異議申し立ては却下されたが、国税不服審判所は業務委託費はBに対する給与ではないとしてA社に行った課税処分をすべて取り消した。
・BはA社に対して、税務調査の指摘に対して異議を述べる義務があったとし、 A社に対して課税処分の取り消しにかかった費用等について損害賠償請求をした。
2.追加積立で"積立不足なし"、掛金も損金
■企業の年金制度トレンド
⇒×確定給付型、○確定拠出型
へ
■確定給付型では積立不足問題が生じる可能性がある
⇒政府は成長戦略「日本再興戦略」改訂2015にて「将来の景気変動を見越したより弾力的な運営を可能とする措置」を検討
■具体的な検討事項
・法人税法上、本来の積立額より多く拠出した場合損金不算入であるが、損金算入を検討
・企業会計上、本来の積立額より多く拠出した場合には「積立不足なし」と取り扱うことを検討
3.個人番号関係事務実施者
・個人番号【関係】事務実施者
⇒マイナンバーを記載した書面(源泉徴収票等)の提出をする者のこと
民間の企業等が該当する
・個人番号【利用】事務実施者
⇒マイナンバーにより行政事務を行う者
行政機関、地方公共団体、独立行政法人、国税庁等が該当する
…両者をあわせて個人番号【利用】事務【等】実施者という
4.四半期報告書作成上の留意点(平成27年6月第1四半期提出用)
■企業結合会計基準等の改正(平成28年3月期より、原則適用)
(1)主要な経営指標等の推移
・四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益
・上記表示の変更に伴い、過年度分の数値の組替を行う
(欄外に注記)
(2)四半期連結F/S
・B/S 少数株主持分 ⇒ 被支配株主持分
・P/L 少数株主損益調整前四半期純利益 ⇒ 四半期純利益
少数株主利益 ⇒ 被支配株主に帰属する四半期純利益
四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益
・I/S 少数株主に係る四半期包括利益 ⇒ 被支配株主に係る四半期包括利益
(3)会計方針の変更に関する注記
・遡及適用した場合
⇒過年度に遡及適用した場合の適用初年度の期首の累積的影響額
・将来にわたって適用した場合
⇒第一四半期において、従来の会計方針と新たな会計方針を適用した場合の差額
(4)追加情報
・前期において早期適用していたとしても、
表示の変更(ex.少数株主 ⇒ 被支配株主)は当期より
⇒変更内容を注記
(5)S/S関係注記
・株主資本の著しい変動⇒主な変動事由を記載
⇒子会社の時価発行増資等により、注記の可能性あり
(6)企業結合等関係注記
・取得による企業結合⇒取得原価及び対価の種類ごとの内訳を注記
・取得に直接要した費用 注記対象⇒注記対象外
(7)1株当たり情報の注記
・算定上の基礎
四半期純利益 ⇒ 親会社株主に帰属する四半期純利益
(8)連結C/S
・連結範囲の変動を伴わない子株の取得・売却に係るC/F
⇒財務活動によるC/F
・上記に関連して生じた費用に係るC/F
⇒営業活動によるC/F
・いずれも比較情報の組替を行わない。
5.マイナンバー制度
・H27年10月5日より国民1人ずつに付与される。
・一度付与されたマイナンバーは、原則として生涯変更されることはない。
・利用目的を明示した上でマイナンバーの提出を求める必要あり。
目的を明示していない業務等にてマイナンバーを使用することはできない。
■Q&A
(1)Q:従業員等のマイナンバーはいつから入手できるか?
A:H27年10月5日以降、各市町村から通知カードが送付されるため、11月中旬以降であれば従業員等より入手が可能となる
(2)Q:現在、海外赴任をしているがマイナンバーは付与されるか?
A:H27年10月5日時点で住民票のある人に付与される。(日本に住民票がなければ付与されない。)
海外赴任者は日本に帰国し、住民票を移した時点で付与される。
なお、国籍に関係なく住民票が日本にある外国人にもマイナンバーは付与される。
(3)Q:従業員がマイナンバーの提出を拒否した場合の対応はどうするか?
A:従業員から企業側のマイナンバーの漏洩等を嫌って提出を拒まれた場合は、拒まれた理由を説明できるよう記録・管理しておく必要がある。
(理由)H28年1月1日以降発行する源泉徴収票等には、マイナンバーを記載する義務がある。
未記載の場合でも罰則はないが、法令上の義務であるため、税務調査等で未記載の理由を問われる可能性がある。
(4)Q:マイナンバー漏えいに対する罰則は?(名簿業者等の第三者に売却した等)
A:最大4年以下の懲役又は200万円以下の罰金。
なお執行猶予は付かない可能性あり。
※個人情報保護法には罰則がない点に大きな違いがある。
(5)Q:マイナンバーの利用には従業員の同意を得る必要があるか?
A:提出時に利用目的を通知しているため、利用の際に本人からの同意を得る必要はない。
社内掲示板等で公表することで問題ない。
(6)Q:従業員全員より事前同意を得ていればマイナンバーを利用することは可能か?
A:従業員の同意を得ていたとしても、源泉徴収票や社会保険・税務署等への書面提出以外の目的で使用することはできない。
※個人情報保護法は、同意があれば目的外の利用も認められている。
(7)Q:年末調整の時期のたびにマイナンバーの提出を求める必要があるか?
A:家族構成等の変更がない限り、提出を求める必要はない。
すなわち、施工時の今回1回限りの措置である。
(原則、マイナンバーが必要となったときに従業員へ提出を求める)
(8)Q:利用目的を変更することは可能か?
A:変更前の利用目的と関連性を有する変更であれば可能。
例)変更前 ⇒ 源泉徴収票への記載
変更後 ⇒ 上記の他、健康保険等の保険届出事務に利用する等
その都度利用目的を公表する必要があるため、事前に利用することが想定される事務の全てを明確に把握する必要あり。
6.【事前照会】租税特別措置法第42条の12の4の適用における給与負担金の取扱いについて
(照会内容)
・A社が親会社から継続して出向者を受入
・A社に出向負担金を支払い
・出向内容をA社の賃金台帳に記載
・出向者は「親会社」の雇用保険一般被保険者になっている
・『雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除』の計算に、出向負担金を含めていいか
(回答)
・含めてよい
(1)『税額控除』を計算する際の、給与増加額には、出向負担金(賃金台帳への記載が必須)を含めて良いと規定あり
(2)『税額控除』の適用判定に使う、平均給与額には、雇用保険一般被保険者のみを含めると規定されている
⇒臨時雇用者分を計算から除外するのが目的
⇒本件は、親会社の雇用保険者であるが、A社に継続出向しているので計算に含めて良い
7.消費税判例 訪日旅行ツアーに係る輸出免税
■概要
・国内旅行業J社は非居住者であるK社に国内旅行サービスを提供した。
・J社は「パッケージ商品の譲渡」にあたるとして輸出免税処理をした。
・課税庁は「国内における飲食・宿泊」の提供であるとして輸出免税にはあたらないとした。
∇非居住者にかかる輸出取引等の範囲
・資産の譲渡
・役務の提供で次のもの以外
(1)国内に所在する資産にかかる運送または保管
(2)国内における飲食または宿泊
■東京地裁
・J社はパッケージとしての「サービス利用権」の販売であると主張するが、契約書になんら記載がない。
・実態は「飲食の提供」と「宿泊サービスの提供」である。
・「旅行パッケージ商品」という概念自体がきわめてあいまいとしてJ社の主張を退けた。
■まとめ
非居住者に対する国内旅行サービスの提供は通常の課税売上となる。
8.所得税:朝型勤務の朝食支給と源泉所得税
■朝型勤務を推奨する企業が従業員に朝食を無料支給した場合、源泉徴収は必要か?
⇒必要。おにぎり等の経済的利益の価額について源泉徴収を行う。
■源泉徴収が不要となる食事の提供(所基通36-38の2)
下記の両方を満たした場合には昼食か朝食かにかかわらず、源泉徴収が不要となる。
①社員らが食事の金額の50%以上を負担していること
②企業が負担した食事の金額が月額3,500円以下であること
朝食の『無料』支給に関しては①の要件を満たしていないため、上記通達は適用されず原則どおり源泉徴収が必要となる。
9.非流動性ディスカウント
・H27.3.26:反対株主の株式買取請求に関する事案についての最高裁判例
・収益還元法における非流動性ディスカウントを否定する内容
・従来は非流動性ディスカウントを考慮すべきか否かは判断が分かれていた
・本件は極めて重要な意義を持つ
・「DCF法には市場における取引価格との比較という要素は含まれていない」 というのが判例の論拠。
・流動性リスクを資本コストの計算で織り込んでいても同様の論拠で否定したのか?
・WACC算出時点で上場株式との比較を行っていると言えなくもない。
⇒株式買取請求の場面においては、特段の事情が無い限りは非流動性ディスカウントを考慮することが適切ではない、ということを意味していると考えることが妥当
10.平成27年度税制改正(消費税関係)
1. 消費税10%引上げ時期
・平成27年10月1日 ⇒ 平成29年4月1日
※経済状況を勘案した結果、税率引き上げ時期を延期
2. 国境を越えた役務の提供に係る課税についての見直し
・対象となる役務の提供とは
⇒ 電気通信利用に制限
※アプリや電子書籍の販売等
・内外判定の見直し(課税取引か否かの判定)
役務の提供をする者の事務所等の所在地 ⇒ 役務の提供を受ける者の所在地で判定
・課税方式の見直し
(a) 事業者向け … 役務の提供を受ける事業者に納税義務(リバースチャージ)
(b) 消費者向け … 役務の提供を行った事業者に納税義務(従来通り)
・仕入税額控除の制限
国外事業者から受けた消費者向けの役務の提供による仕入税額は、税額控除できない。
※ただし、取引相手が登録国外事業者であれば、仕入税額控除可能
3. 国外事業者による芸能等の役務の提供に係る課税方法の見直し
⇒ 役務の提供を受ける事業者に納税義務(リバースチャージ)
※海外芸能人によるコンサート等
4. 外国人旅行者向け消費税免税制度
税務署の許可を得た事業者が、免税対象を判定し、免税手続きを実施
⇒ 特定商業施設内の免税手続カウンターで、免税手続代理業者が手続きを実施
⇒ 免税対象の判定も、複数の店舗(事業者)から購入した物品等を合算して判定。
※特定商業施設 … ショッピングセンター等など
※免税対象 … 通常の生活の用に供されるもの + 一定金額以上のもの
※一定金額とは … 物品なら購入総額(税抜)1万円以上。消耗品なら5千円以上等
11.資産除去債務の割引前将来キャッシュ・フローおよび除去時期の見積りの変更
■復習
(1) 将来の除去時点の原状回復に要するキャッシュ・フローを見積もり、
(2) 現時点までディスカウント
(3) 割引後の値を資産と負債に両建て計上
(4) 資産に上乗せした除去費用は減価償却を通じて費用化、負債側は毎期利息相当額を調整
■割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更
資産除去債務 = 見積項目 = 変更は将来に向かって修正する
※発生時に合理的に見積もることができなかった除去債務について合理的に見積もることができるようになった場合も同様に処理
■除去時期の見積りの変更
見直し前後の差額が異常な原因により生じたものである場合…特別損益として処理それ以外、
(1) 割引率を変更し、変更時点以降の資産除去債務の調整額を算定する方法
(2) 変更後の除去時期を前提とした資産除去債務を計上する方法
1.当初計上時の割引率を用いる方法
2.見積変更時の利子率を用いる方法
12.外国子会社配当益金不算入制度※の見直しによる連結上の税効果会計
※国際的二重課税を排除する為、外国子会社から日本の親法人に支払われる配当の95%は親会社の益金に算入しない制度(外国子会社の所在地国で配当が損金算入されていても)
【見直し内容】
平成27年度税制改正により、外国子会社の所在地国で配当の損金算入が認められる場合は益金に算入することとなった(平成28年度4月1日以後開始事業年度より)。
【連結上の税効果会計への影響】
・見直し前:DTL=配当等の額の5%×親会社の実効税率+配当等の額に係る外国源泉所得税額
見直し後:DTL=上記△親会社の税負担が軽減されると見積もられる税額
13.社外取締役の意義
コーポレートガバナンス・コードは、経営陣が多数のボードメンバーを占め、そこに少数の社外取締役を参加させる
(マネジングボード)から、経営の監督を指名とする(モニタリングボード)への転換を促している。
→業務執行と一定の距離を置く取締役の活用
→社外取締役2名を原則
(1) コーポレートガバナンス・コードが社外取締役2名を原則とした背景
・よほどの実力者で無い限り社外から孤立無援で取締役に単身参加したのではなかなか発言しずらい
・社外取締役だけの定期会合の開催も、社外取締役全体のチームとしての機能を強化するに資する
(2) 投資家の視点
・自分に代わって企業内部から経営をきちんとモニタリングしてくれるものを欲し、必要としている。
14.持ち合い株解消 銀行は足踏み
・コーポレート・ガバナンスコードでは、持ち合い株について合理的な説明を求め、解消を促している。
・大手銀行の保有株式は、90年台後半のピーク時39兆円、今は16兆円と、ピーク時から6割減。
・ただ、ここに来て解消ペースが鈍っている。⇒「お付き合い」から「ビジネス」へ
・持ち合い株のある相手先とは、「企業間決済」「従業員向け金融サービス」などビジネス上のチャンスが広がりやすい
・持ち合い株の平均配当利回りは3%強、大企業向け長期貸出金利1%を大幅に上回る。
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