2016年8月7日日曜日

8/5 勉強会:平成28年度における所得税関係の改正について 他

1.税務調査の省略が可能になる税務コーポレートガバナンス

・税務に関するコーポレートガバナンスが良いと認められた特別国税調査官所掌(しょしょう)法人については、次年度の税務調査を省略することが可能となっている
・国税庁は取組内容を明確化した事務運営指針を公表
・対象となる法人 資本金等が40億円以上の法人で国税局長が指定したもの
・調査間隔を1年延長している。最大で4年が認められている。


2.任意組合の持分譲渡巡り一部取消し裁決

■事案
 任意組合の組合財産⇒ホテルとその敷地、改良補修積立金(現預金)出資持分を他者へ譲渡

■譲渡時の課税関係
 土地建物に対する持分部分⇒分離長期譲渡所得
 改良補修積立金(現預金)⇒譲渡収入の対象外と判断
 ⇒キャピタルゲインを生ずべき資産ではないため

■総合課税になりうるか
 匿名組合の持分譲渡⇒特定の場合には総合課税となる
 任意組合の持分譲渡は?
 ⇒審判所は匿名組合と同様に取り扱うべきではないと指摘


3.今週の専門用語

■自主開示事項
調査省略対象事業年度の申告の際に開示する事項

・具体的な開示事項
(1)組織再編における適格組織再編か否かの判定
(2)特別損失計上取引
(3)売却・譲渡・除却・評価損などの損失計上取引
(4)その他一時的な損金計上取引
(5)取引額が売上額の0.1%以上の仮受金・仮払金取引

※国税当局と見解の相違が生じやすい取引を記載


4.宗教法人が営むビル型納骨堂は固定資産税等の課税対象?

宗教法人が専ら本来の目的で利用している、「境内建物及び境内地」(宗教法人法第3条に規定)は、固定資産税や都市計画税が課税されない(地方法人税法)
⇒宗教法人が運営するビル型の納骨堂()は非課税の対象となる「境内建物及び境内地」に該当するか否か

()地上5階・地下1階の建物。各階には納骨庫や参拝施設の他、礼拝施設や会食施設が設置

(1)利用者の宗旨宗派を問わない
(2)宗教法人以外の宗旨宗派の僧侶等が主催する儀式行事が施設利用料を払うことで許容され、また、実際に例外的とは言えない割合で行われている
(3)民間業者を通して広く利用者を募集している

東京地裁の判決:非課税の対象となる「境内建物及び境内地」に該当せず課税される。
(1)(3)の点を踏まえ、本件納骨堂は専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状況にあるとは言えないと指摘


5.平成28年度における所得税関係の改正について

H28.4.1より施行された主な改正論点

■居住用財産の3,000万円控除(相続により取得した空き家等が対象)
適用要件
・相続により居住用家屋等を取得
H28.4.1-H31.12.31まで間に譲渡
・相続後空き家でも適用可
・譲渡価額が1億円以下

■減価償却制度の改正
H28.4.1以後取得の建物附属設備及び構築物等は定額法のみ適用

上記のほかにも規定の改正や適用期限の延長等あり。


6.生産性向上税制、償却不足額の繰越可

・生産性向上設備投資促進税制の特別償却
H28.4.1H29.3.31までに取得等した資産:償却割合50%
H29.4.1以降に取得等した資産:制度自体が廃止
H29.3.31までに取得等した資産であれば、H29.4.1以降開始事業年度であっても、特別償却不足額の繰越し制度の活用は可能


7.有料老人ホーム交付の「預り証」にかかる印紙税(文書回答)

■印紙税法上
・「売上代金にかかる金銭の受取書」は第17号の1文書となる
・「売上代金以外の金銭の受取書」は第17号の2文書となる。
※第17号の1文書の税額は記載額により変動
※第17号の2文書の税額は一律200

■有料老人ホームが交付する「預り証」について
(1)照会者の主張
・終身利用の家賃に充当する一時金を受領した際に発行
・老人福祉法上、一定期間が経過するまで返還義務がある
⇒あくまで「預り金」の受領証明書であり第17号の2文書に該当する

(2)東京国税局の回答
・役務提供(施設利用)の対価として受領すべき家賃の前払い
・返還義務はあっても実質的に家賃の対価であり「売上代金」と判断できる
⇒預り金は売上代金の受領証明書であり第17号の1文書に該当する


8.【贈与税】暦年贈与サポートサービスと連年贈与

■「暦年贈与サポートサービス」とは
相続税の基礎控除額の引下げにより、生前贈与に関連した節税商品として注目されている。

①贈与の都度、銀行等が贈与者と受贈者間で贈与に関する双方合意がある旨を確認し、
②「贈与契約書」を作成して贈与者の口座から受贈者の口座へ贈与資金を振り込むことで各年の贈与額ベースで贈与税の基礎控除(110万円)の適用を受けるもの。

■留意点
あらかじめ一定額を定期的に贈与する旨を取り決めていた場合には、取り扱いが異なる。
本サービスを利用したとしても定期金の権利の贈与があったとして、契約金において定期金の権利の評価額に対して贈与税が課税される。


9.アプリ内課金の収益認識

基本プレーが無料でアイテム課金の場合の売上認識について。
①ゲーム内通貨等の販売時点
②ゲーム内通貨等を利用してアイテムを購入した時点
③アイテムを使用した時点
⇒日本基準ではいずれのケースもある
IFRSでは③=アイテムを使用した時点


10.未回収の売掛金の会計処理

1.未回収の売掛金がある場合の貸倒引当金計上額の算定
・取引先の経営状況に応じて、見積もり方法が定められている。

(1)経営状態に大きな問題なし
⇒一般債権
⇒貸倒実績率にて評価
(2)破綻はしていないが、債務の弁済能力に重大な問題あり
⇒貸倒懸念債権
CF見積法 or  財務内容評価法のいずれかで評価
(3)経営破綻、もしくは実質的に経営破綻
⇒破産更生債権等
⇒財務内容評価法で評価

2.取引先の経営状態に問題はないが、売掛金が滞留している場合の考え方
・何かの理由で、払えるのに払ってもらえない売掛金など
(1)取引先の経営状況で形式的に考える
⇒一般債権として取り扱う
(2)支払ってもらえない理由を第一に考える
⇒貸倒懸念債権として取り扱う


11.株式交換時の株主資本項目決定の際の留意点

■論点
適格株式交換による払込資本の増加についての組み合わせ

■法人住民税均等割の負担増
資本金+資本準備金の増加⇒均等割の計算基礎が増加⇒税負担増

■債権者保護
その他資本剰余金で全額処理したい⇒債権者保護手続をとればOK
債権者保護手続をとらないと、資本金又は資本準備金の増加にしなければならない


12.四半期決算における減損処理方法

■有価証券
・四半期切り放し法と四半期洗い替え法が認められる(継続適用)

■ゴルフ会員権
・有価証券と同様、四半期切り放し法と四半期洗い替え法が認められる(継続適用)

■固定資産
・減損の存在が相当程度確実な場合に限り認識及び測定


13.監査役監査実施要領の解説

従前明確化されていなかった内容を中心に記載

■監査役スタッフの独立性について検討すべき事項の例
①監査役の監査役スタッフに対する指揮命令権の明確化
②監査役スタッフの人事異動・人事評価・懲戒処分に関する監査役の同意権の明確化
③監査役スタッフの活動費用の確保


14.円滑に進めるグループ横断プロジェクト(京王電鉄)

■連結決算早期化プロジェクト
グループ会社との協力関係の構築が必須
⇒そのための仕掛けが必要

①基本方針を持つ
⇒議論を尽くすことで、チームメンバーの意識が一つになる
⇒グループ会社への説明も熱意のこもった合理的なものとなる
⇒問題に対するチームメンバーの主観判断を少なく、負担軽減
⇒全体の公平感を保持

②基本方針を明確に伝える
・グループ会社への要求は厳しい内容が通常
⇒メリットも合わせて説明すると効果的
・「原則として・・とする」はNG
⇒例外を設けるならば限定列挙

③相手の話をよく聞く
・相手の問題点を1つずつ解決していく
⇒解決方法をこちらで限定せず、相手に述べてもらうように

④丁寧に対応する
・一度ヒアリングした内容は全て書き留める
⇒次回のヒアリングでは必ず一つレベルの高い議論をする
・与えた宿題事項の適時の進捗リマインド
⇒相手から信頼感を獲得する

⑤トップの関与を活用
・振りかざすものではなく、後ろ盾として必要
⇒プロジェクトメンバーの励み・使命感につながる


15.「会計監査のあり方に関する懇談会」提言を受けて

・相次ぐ会計不祥事と、会計監査人がそれを見過ごしていた事例を受けて、金融庁からの提言。
・監査法人もガバナンス・コードを導入することを検討。イギリス、オランダは大手監査法人のみ。日本でも同様に。
・株主向けの情報提供の充実。例として、「同一の監査人による監査を受けてきた期間」、「監査法人の研修制度」、「監査人がどのようなリスクに着目して監査を行ったか」
・監査責任者ではなく、監査法人そのものを一定期間でローテーションする制度の検討。
・適切な監査時間を確保するための工夫、特にIT活用の充実。


16.ショートレビューによる販売管理(与信管理、債権管理)の主なチェックポイント

・新規の販売契約の締結等にあたり、相手先の信用調査を行い、必要な承認を得て取引を開始しているか?
⇒職務分掌規程や与信管理規程等を整備し、運用することが必要。

・得意先に対して与信限度額を設定し、限度超過の場合は必要な承認を行っているか?
・既存顧客について、継続的に与信限度額の見直しを行い、その条件で実際に運用されているか?
⇒一定の金額レンジを設け、レンジ単位で与信限度額を設定することは可能であるが、特に金額的重要性が高い顧客については、得意先ごとに与信限度額の設定が必要。

・債権の滞留期間別把握と調査・催促状況はどのように行っているか?
⇒未回収先は、未収金リスト(年齢表)を作成し、どのくらいの期間未回収なのかを管理することが必要。

・貸倒引当金設定の妥当性

⇒作成した未回収リストを基に、貸倒懸念のある先を特定することや、実際に貸倒が発生した場合には、貸倒実績に応じた引当金を設定する必要がある。







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