2017年7月8日土曜日

7/7 勉強会:国税庁が想定する将来像、税務調査や徴収でAI活用も 他

1.未来投資戦略2017から読む税務・会計・会社法

■税務
・個人所得税の基礎控除等の人的控除等を週にかかわらず税負担の軽減額が一定となるよう検討中
⇒現状、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きくなる仕組み
2020年までに大法人の電子申告利用率を100%へ(中小法人は85%へ)

■会計
・短期間に決算短信、事業報告、有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書と4つの異なる開示書類があり、投資家にとってわかりにくい。よって重複開示の解消等が検討される。

■会社法
・退任した社長、CEOが就任する相談役、顧問等について、氏名、役職、地位、業務内容等を開示する制度を創設する方向へ


2.濫用的な議決権行使書面の閲覧に制限を

・株主は、議決権行使書面を閲覧する事ができる
・議決権行使書面には、株主の住所が載っている
・このためか、毎年、同じ株主から閲覧請求があるなど、権利の濫用が見られる
・企業は専用の部屋と立ち会う社員を用意、1週間程度の閲覧が行わる事もある模様
・会社法の見直しにおいて、この閲覧謄写請求の濫用が論点の1つとなっている


3.全株没収のRS、損金0でも特別損失発生

・利益の指標を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式報酬が事前確定届出給与の対象から除外(平成29年度税制改正)

・一方、業績があらかじめ定めた基準に達しない場合に全ての株式が没収されるタイプの譲渡制限付株式報酬は、従来通り、事前確定届出給与の対象として損金算入可

・ただし、業績があらかじめ定めた基準に達しない(実際に全ての株式が没収された)場合、税務上、給与等の課税事由が生じない為、損金算入不可(⇔会計上、報酬債権額全額が特別損失として計上)
⇒企業が事前交付型の譲渡制限付株式報酬の導入を検討する際、ネガティブな判断材料となる可能性あり


4.国税庁が想定する将来像、税務調査や徴収でAI活用も

国税庁が10年後の税務行政をイメージした「税務行政の将来像」を公表。

具体的には、AI技術の進展を踏まえた情報システムの高度化を前提とし、AIを活用したシステムによる税務調査先の選定や税務相談の自動化など検討。
主にICTAIの活用による、「納税者の利便性の向上」と「課税徴収の効率化・高度化」を2つの柱とする

■納税者の利便性の向上・・・スムーズ・スピーディ
・カスタマイズ型の情報配信
⇒マイナポータル(政府運営のサービス)を通じて、納税者に対し申告案内などニーズにあった税情報をタイムリーに配信
・税務相談の自動化
⇒メールやチャット等を利用した相談や回答、
AIを活用した相談内容の分析等を自動表示できるシステムを検討
・申告納付のデジタル化
■課税徴収の効率化・高度化・・・インティジェント
・申告内容の自動チェック
⇒現状の自動化をさらに進める。
所得税の申告内容と相続税の財産所有情報等とシステム上でマッチングさせ、申告漏れ所得や財産をより迅速かつ効率的に把握する
・軽微な誤りのオフサイト処理
⇒記載事項に誤りがあった場合、現状行われている書面や電話連絡ではなく、電子メール等で行う。
・調査や徴収等でAIを活用
 国税庁は今後環境の変化に応じて順次見直しを行って行く方針。


5.株譲渡損の繰越は時系列的な申告が必要

■事例
次の場合、上場株式の譲渡損失の繰越控除の規定が適用できるか?
H26.3/1225年分確定申告書を提出(譲渡損失があったが計算明細書等を添付せず)
H27.3/526年分確定申告書を提出(25年分の譲渡損失を繰越控除)
H27.3/925年分更正請求書を提出(25年分の計算明細書等を添付)

■結論と理由
H25年分の譲渡損失の繰越は不可
理由は、下記適用要件(2)の「その後において連続して」を満たしていないから
(1)譲渡損失が生じた年の確定申告書に計算明細書等を添付
(2)その後において連続して確定申告書を提出
(3)特例を受ける年の確定申告書に譲渡損失が生じた年の計算明細書等を添付
H26年分申告書の提出前にH25年分の更生請求書を提出すれば適用できた


6.国税庁 特定医療法人制度FAQを公表

■特定医療法人とは
特定医療法人とは、財団たる医療法人又は社団たる医療法人で持分の定めがないもののうち一定のものをいう。
その承認を受けた後に終了した各事業年度の所得については、一般の医療法人の税率に代えて、19%(年 800 万円以下の部分は、一般の医療法人と同じ 15%)の税率により法人税を課すこととされている。本年331日現在の特定医療法人の数は362法人となっている。

■承認要件
(1号要件)
社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するものとして厚生労働大臣の証明の交付を受けること

【厚生労働大臣の証明事項】
・全収入金額に占める社会保険診療及び健康診査にかかる収入金額の割合が、80%を超えること。
・役職員1人につき年間の給与総額が 3,600 万円を超えないこと。
40 人以上(専ら皮膚泌尿器科、眼科等の診療を行う病院は 30 人以上)の患者を入院させるための施設を有すること
・各医療施設ごとに差額ベッド数の比率が 30%以下であること。など
(2号要件)
役員等のうちにその親族等の占める割合が3分の1以下であること。
(3号要件)
設立者、役員等もしくは社員又はこれらの親族等(特殊関係者)に対して、財産の運用や事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。
(4号要件)
定款・寄附行為に、医療法人が解散した場合には、残余財産が国等に帰属する旨の定めがあること。
(5号要件)

その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記録又は記載をしている事実等がないこと

7.退職者に支払うボーナスと源泉徴収

就業規則等で一定期間に在籍している者を支給対象者としている場合
⇒支給日に退職している者にもボーナスが支給される
⇒退職所得等ではなく、給与所得として源泉徴収が必要
⇒原則、給与所得の源泉徴収税額表の乙欄を使用
⇒ただし他社へ転職していない等で、新規に扶養控除等申告書を提出していない場合には甲欄で源泉徴収可


8.仮想通貨の会計処理/ASBJ論点整理

・ビットコインのみ⇒資金決済法上の仮想通貨すべてが対象に
・仮想通貨の売却損益の認識時点⇒一律の判断基準を設けない
期末評価の方法
・既存の会計基準(現金・棚卸資産・無形固定資産)には該当しない
・保有目的の観点からは時価をBS計上、差額をPL認識、が適合的
・活発な市場がある場合は時価評価する
・活発な市場がない場合、時価把握は困難。取得原価&減損とする


9.新規連結における税務上の留意点

■税額にも影響する問題
・繰越欠損金の利用制限
⇒連結対象としてから(完全支配ではない)、5年以内に以下の事象が発生した場合、繰欠の利用が不可能に。
⇒事業が継続していないと考えられるようなケースだとダメ
(1) 取得した法人が事業を営んでおらず、新たに事業を開始する場合
(2) 取得後、事業のすべてを廃止し、旧事業の事業規模の5倍超の資金の借入、出資、資産の受入を行う場合
(3) 役員のすべてが退任し、使用人の概ね20%以上相当の者が退職し、非従事事業の事業規模が旧事業の事業規模の5倍超となる場合 など
 ・グループ法人税制
100%完全支配するケースで問題に。
 ・受取配当金の益金不算入及び源泉所得税の税額控除

■税効果のみの問題(連結特有の一時差異)
・M&A等に当たってのアドバイザリーフィーの取扱い
⇒連結=費用処理、個別=取得原価に含める…一時差異に該当。
⇒株式の売却などの計画がなければスケジューリング不能差異⇒DTA計上不可


10.平成29年度税制改正における法人税関係の改正について

■確定申告書の提出期限の延長の特例
4ヶ月以内において税務署長が指定する月数の期間延長をすることが出来るとされた
※会計監査人を置いている場合で、3ヶ月以内に定時株主総会が招集されない常況にある場合

■利益連動給与(改正後:業績連動給与)
・算定指標に株価等が追加された
・株式、新株予約権による給与が追加された
・非同族会社の100%子会社が支給するものが追加された

■事前確定届出給与
・所定の時期に確定した数の株式又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与が追加された

■設立等の届出書の添付書類の簡素化
・法人設立届出書について登記事項証明書の添付が不要とされた


11.新規連結子会社を取得した時に連結会計への影響

■新規連結における検討項目や対応項目
(1)子会社の個別会計処理の検討・対応ポイント
・会計方針の統一
(2)連結会計上の検討・対応ポイント
・支配獲得日
・時価評価およびのれん
PPA
・セグメント
(3)情報収集
・子会社からのデータ収集方法と収集すべき内容
(4)税務
・税務上の影響
・連結納税
(5)内部統制
・評価範囲
(6)開示事項
・適時開示・臨時報告書


12.新規連結子会社に対する親会社での手続きのポイント

■必要情報をいかに正確かつ漏れなく、迅速かつ効率的に収集するか
⇒連結パッケージ(PKG)が有効
(1)子会社側でのシステム設計の要否を判断
(2)全ての子会社に新規子会社の追加を周知、配布する連結PKGのマスターにも反映
(3)新規子会社の経理担当者へ連結PKGの事前説明、作成時チェック用リストの配布
■連結精算表の作成にあたっての留意
(1)内取消去⇒親子会社間、子会社間取引を予め予想、自動仕訳の場合は突合差額の調整ルールを策定
(2)棚卸資産の未実現損益の消去⇒算定方法を事前に決めておく
 ■関連当事者取引⇒子会社経理担当者への関連当事者の範囲の説明、取引収集方法の整備


13.シンジケートローンに係る金利スワップ特例処理の各種論点

■金利スワップの特例処理
一定の要件を満たす場合、ヘッジ対象とヘッジ手段を一体のものとして考え、金利スワップを時価評価しない方法(IFRSでは認められていない)
※特例処理が適用できない場合でも、ヘッジ会計の要件を満たす場合はヘッジ会計適用可。
特例処理は例外的処理のため、要件充足の解釈は厳密に行うことを前提している

■ケース①
シンジケートローンのうち、特定の銀行からの借入部分を対象に金利スワップを締結した場合
⇒特例処理を適用することはできないと考えられる。
シンジケートローン全体を単一の借入として判断した場合、ヘッジ対象とヘッジ手段が一体ものと判断できない

■ケース②
シンジケートローンに対して複数の金利スワップを締結した場合
(シンジケートローンの総額と金利スワップの想定元本の総額は一致)
⇒特例処理を適用することはできると考えられる。
総額が一致している場合はヘッジ対象とヘッジ手段が一体と判断出来る。


14.親子上場が10年連続で減少し、2016年度末の親子上場社数は270社(前年比11社減)に

16年度は完全子会社化による上場廃止などで30社が親子上場を解消した。
一方、上場企業の買収などによる親子上場の増加は19社にとどまり、差し引き11社の純減

・親子上場は00年代半ばまで、ほぼ右肩上がりで増加。
知名度向上や資金調達を目的に子会社を上場させる例が相次ぎ、日本市場に特有な動きとして知られていた。
ただ、海外投資家の批判が高まったことなどを背景に、00年代後半からは一転して減少が続いている。

・ピークの2006年頃には、親子上場社数は400社超。


15.反社チェック

株主、役員、取引先、その他特別利害関係者が反社会的勢力でないかの各者の属性調査(属性チェック)
属性の調査方法としては、主にインターネット検索や記事検索(ex.日経テレコン)を活用

・検索方法
氏名(取引先の場合は代表取締役)又は会社名と検索キーワードで検索
⇒検索対象はグループ会社の全取引先(上場会社を含む)
⇒留意すべき業種と考えられる取引先については、全役員の個人名まで検索

・注意事項
1.検索モレ防止のため複数担当者で実施する
2.調査の記録は必ず残しておく

・検索キーワード例
企業名and ( 営業停止or 事業停止or 逮捕or 起訴or 検挙or 送検or 捜査or指名手配or 摘発or 行政処分or行政指導or 業務改善命令or 暴力団or 総会屋or 違反)









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿