2017年11月3日金曜日

11/02 勉強会:株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A 他

1.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A

Q:業績連動給与における交付対象の財産は?
A:金銭、適格株式、適格新株予約権が対象

Q:業績連動給与として損金に算入したい場合、どのような要件を満たす必要があるか?
A:①算定方法が指標に基づく客観的なものであること
  ②金銭の場合は確定額、株式又は新株予約権の場合は確定数を限度とすること
  ③他の業務執行役員と同様の算定方法を用いること
  ④算定方法を有価証券報告書等で開示していること
  ⑤算定方法を適切な方法で決定していること(例:株主総会決議、任意の報酬委員会、取締役会での決議 等)
  ⑥一定期間までに交付又は交付される見込であること ※交付財産によって異なる
  ⑦損金経理していること(損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法により経理していることを含む)

Q:役員個人別の算定方法の開示は必要か
A:役位などの属性ごとに算定方法等が開示されており、結果的に個々の役員の算定方法が明らかになるのであれば不要

Q:同族会社の場合、業績連動給与として損金算入は可能か
A:非同族法人による完全支配関係がある場合に限り、損金算入可能
  その場合も、完全親会社の有価証券報告書等での開示が必要

Q:役員間で異なる指標を採用できるか
A:原則は不可、ただし営業部門担当役員=営業利益率、財務部門担当役員=ROEを指標とする等、職務内容に応じて合理的に定められている場合は、指標が異なることを妨げない


2.今週の専門用語~簿価分離~

・法人の保有する信託財産のうち、当該法人が保有する有価証券と同一銘柄の有価証券がある場合には、その信託している有価証券についても、法人が保有する有価証券と一括して帳簿価額を通算する。

・ただし、法人税法基本通達2-3-16によれば、「金銭の信託」や「退職給付信託に係る有価証券」に関しては、法人が保有する同一銘柄の有価証券の帳簿価額と通算せず、それぞれ分離して経理処理することが出来る(これを簿価分離という)



3.所得の9割が配当も株式保有業にあらず

■デンソー事件とは
シンガポールに設立された100%子会社の課税所得金額がデンソーの所得金額の益金に算入されているかの事案。
⇒法人税の更正処分を受け、現在裁判中

■裁判中の一部論点
・子会社の主たる事業が株式保有業であるか否か
子会社の受取配当の割合が高く、裁判事例となった3事業年度分の平均収入金額に占める割合が約89%。
⇒割合のみで主たる事業と判断できるか

■最高裁
・子会社が事業活動によって得られた収入金額又は所得金額
・事業活動に要する使用人の数、事務所等の作業状況
⇒上記2点を踏まえて総合的に勘案するべきと方針を固めた

すなわち、所得の大部分が配当金であっても、「主たる事業=株式保有業」とは判断できない


4.仮想通貨の会計処理、実務対応報告案が明らかに

■対象
・資金決済法上の仮想通貨
⇒仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨全般

■期末評価方法
・活発な市場(継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量、頻度で取引されている場合)があれば時価評価
・なければ取得原価

■時価評価の価格
・自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所の価格を市場価格とする

■仮想通貨交換業者が仮想通貨を預かった場合
・預かった仮想通貨は資産に計上。さらに同額を預託者に対する返還義務として負債にも計上
・期末評価は必要だが、損益は計上しない

■仮想通貨交換業者が仮想通貨を売却した場合
・活発な市場の有無に関係なく、売却差額をP/Lに純額表示

■適用
実務対応報告の公表日以後



5.有償ストックオプション 経過措置は?

■企業会計基準委員会(ASBJ)が公開した草案に対してコメントを募集
 平成29年5月10日に「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」を公表し、7月10日までに寄せられたコメントの検討を行った。
 多くの上場企業が適用しているストックオプションの会計処理が変更になることに伴い、経過的な取扱いを設けた。具体的には草案公表日前にストックオプションを付与した取引については①概要、②採用している会計処理を注記することを要件として、従来通りの会計処理の継続が出来ることとしている。
 また、注記の範囲が明確ではないとのコメントも寄せられた。
 公表日前に付与した取引が権利行使期間を終了。すべての会計処理が完結していても注記が必要と草案が解釈されてしまう。このコメントに対しては期首時点で権利行使期間がすでに終了し会計処理が完結した取引に関しては注記を必要としないとの見解を出している。


6.配当還元”巡る株評価で注目判決 納税者勝訴が地裁で確定-同族関係者のみなし規定法令4条“6項”は適用せず

■配当還元が適用できるケース(評基通188(3))
同族株主のいない会社の株主のうち、株主の1人及び同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の15%未満の場合におけるその株主が取得した株式

■法人税法施行令4条6項(同族関係者の範囲)
特定の個人又は法人の意思と同一内容の議決権を行使することに同意している者の有する議決権は、その個人又は法人が有しているものとみなして、第3項及び前項の規定を適用する。

■評基通188(3)と施行令4条6項の関係
・評価会社における株主の議決権割合の判定そのものに、4条6項は適用されない
⇒仮に同一内容の議決権を行使することに同意していた人がいても、カウントしない
⇒あくまでも、4条6項は、第3項及び前項の規定を適用するのであって、すなわち
同族関係者に当たる特殊の関係のある法人について、その該当性の判断に関して設けられた規定にすぎない



7.商品券の会計処理

・発見した時点では負債計上
・商品券と引き換えに商品を渡した際に初めて収益計上
・未使用の場合の処理は?
 ⇒現行の日本基準では
  発券5年目に負債から収益計上する(法基通2-1-39)
  当時に収益認識後の商品券使用に備え、商品券回収損失引当金を引き当てる


8.ベンチャーの失敗事例(その3)

1.電気通信事業法の届出をしていない
・インターネット上におけるサービスを提供している場合、電気通信事業法の届出が必要になる場合がある。
・一対一でメッセージをやり取りすることができるような機能を持っているサービスは届出が必要になることがほとんど。
・多少遅れて提出しても罰則等の適用を受けることはなさそう。

2.労働条件を提示していない
・労働基準法上、労働契約の締結に際し、法所定の労働条件を明示する必要がある。
・これをやらないと罰則の対象となる。
・雇用契約書を交付することでも可能。

3.三六協定の締結・届出をしていない
・労働基準法上の原則は、時間外労働(残業)や休日労働を命じることはできない。
・三六協定を労使間で締結し、かつ、それを労基署に届け出ると、残業や休日労働を命じることができる。

4.就業規則を策定していない
・常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して労基署に届出する必要がある。

5.解雇してしまう
・労働契約法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められている。
・そのため常に解雇が認められるわけではない。
・裁判で解雇無効が確定した場合、当該従業員を雇用し続ける義務が生ずるだけでなく、
従業員が勤務していなかった期間の賃金の支払義務も負う。









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