2018年6月29日金曜日

6/29 勉強会:民過大利子税制、31年度改正で見直しへ 他

1.中小企業投資促進税制、展示会使用品は適用対象か?

■中小企業投資促進税制とは
・青色申告書を提出している中小企業者等が
・平成31年3月31日までに
・特定機械装置等で
・事業の用に供されたものを取得して(つまり新品を取得して)←ここポイント
・指定事業の用に供した場合に
・事業供用年度で特別償却or税額控除をすることができる制度

■論点
販売者がもともと展示会で使用していた機械装置について、
購入者側で中小企業投資促進税制の適用を受けることができるか?

■国税不服審判所の裁決
展示会で使用していた機械装置は新品に該当しないため、中小企業投資促進税制の適用は受けることができない

⇒新品かどうかは販売者等における業種、業態、その資産の構成及び使用の状況に係る
事実関係を総合的に勘案して判断する








2.リースのオフバランス、国際的に指摘も

■オペレーティングリース(以下、OPL)の処理
・日本基準:賃貸借処理(オフバランス)
・IFRS、米国基準:オンバランス
⇒整合しない

■今後のリスク
・OPLのオフバランス処理の継続=重要な負債がオフバランスになっているとの指摘を国際的に受ける可能性あり
⇒日本の資本市場、財務報告に対する信頼性に関するリスクが大きいと考えられる

■OPLの注記(未経過リース料)
・建設業、海運業、小売業など7業種で未経過リース料(オフバランス)が負債総額に対して10%を超えているとのこと。
⇒割合が大きい。仮に将来オンバランス処理に改正となった場合の影響も大きいと想定

■企業会計基準委員会の動き
・リース会計基準について国際的な会計基準と整合性を図るか否かの検討を開始








3.過大利子税制、31年度改正で見直しへ

■過大支払利子税制
・関連者間の借入を恣意的に操作して、過大な支払利子を損金に計上することによる租税回避行為を防止するための税制
・関連者等(※)への支払利子等の額のうち調整所得金額の50%を超える部分の金額を損金の額に算入しないこととする制度
※関連者等とは…直接・間接の持分割合50%以上又は実質支配・被支配関係にある者及びこれらの者による債務保証を受けた第三者等

■改正のポイント
(1)固定比率の設定
⇒現在50%のところを10~30%に変更?
(2)制限対象となる利子の範囲
⇒全ての純支払利子を制限対象とするか?
(3)調整所得金額の範囲
⇒現行の制度では免税配当が調整所得金額に含まれているが、どのように扱うか?








4.省エネ再エネ投資税制Q&A

≪概要≫
■省エネ促進税制、再生可能エネルギー税制
・青色申告書を提出する個人・法人
・H30年4月1日~H32年3月末までの間に対象となる設備を取得し事業の用に供する
⇒省エネ:取得価格の30%の特別償却(または中小企業者の場合は7%の税額控除)
⇒再エネ:取得価格の20%の特別償却

■対象となる設備
・確認申請書を提出する年度又は直近2年度内に提出した中長期的な計画に記載された設備
(経済産業局へ投資計画の確認書を提出する必要があり確認書をもらう事が必須)
・経済産業局の確認を受けた機械装置、器具備品、建物付属設備など

■補足
・経済産業局等から交付を受けた確認書は確定申告の際に添付は不要
・3年の平均課税所得が15億を超えている場合は、適用できない
・購入の際に補助金を受けた設備は適用できない


■再生可能エネルギー税制
・対象となる設備から、太陽光発電設備・風力発電設備は対象外となっている
・但し、太陽光・風力に附随する設備(蓄電池やメンテナンス設備)は対象となっている。








5.タックスヘイブン対策税制③

■部分適用対象金額に係る合算課税
・部分適用対象金額とは、外国関係会社が得る所得の内、「受動的所得」という特定の性質を有する種類の所得の金額のこと。
→経済活動基準を満たしていたとしても合算課税の対象となる。

・平成29年度改正においては、「受動的所得」の範囲が拡大され、合算対象所得の計算方法等の見直しが行われた。
→租税回避リスクを外国子会社の所得や活動の内容により把握するという方向性に沿って改正された。






6.税理報酬の未払分請求を一部認めず

■事例
・前任の顧問税理士から引き継いだ業務は税務顧問、記帳代行、決算書作成。
・それ以外に法人税申告書作成、家賃収入一覧表の作成の業務を行った。
・税理士は追加業務に加えての報酬額の合意はされていた。
・法人との税務顧問契約は解除されている。
・解除前に税理士が法人に対して請求していた報酬は引き継いだ業務のみ。それ以外の業務への報酬は請求していない。

■税理士の主張
・法人とは追加業務を含めた報酬を支払うという合意があり、その報酬額を含めた未払税理士報酬289万円を請求。

■平成30年1月19日 東京地裁の判決
・引き継いだ業務に対する報酬についての約143万円の支払は認めるも、その他業務に対しての報酬は契約解除前に請求がなく税務顧問報酬に含める合意があったとして追加業務ついては請求できないと判断。







7.消費税:軽減税率制度実施と簡易課税の選択特例

■軽減税率税度の実施
平成31年10月1日から飲食料品等に対する軽減税率制度が実施
⇒売上げまたは仕入れを税率毎に区分する必要あり

■簡易課税選択(原則)
税率毎の管理が行えない中小事業者は簡易課税制度を選択することに
なるが、原則事業年度開始の日の前日までに届け出が必要

■特例
平成31年10月1日~平成32年9月30日の属する課税期間については
その課税期間内に届出書を提出すれば、事業年度開始の日の前日に
提出があったものとみなされる(事業年度開始後の届出でOK)

■注意点
簡易課税選択不適用届出書については原則通り、事業年度開始の日の前日までに
提出が必要









8.収益認識会計基準の導入後も消費税の取扱いは変更なし

収益認識会計基準の導入に従い、法人税法22条の2が創設され、
「収益の計上時期」及び「収益の計上額」が法定された。

新設された法人税法22条の2とは、
原則、資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供日の属する事業年度の益金の額に算入する。

法人税の計上については、より会計基準に準じた計上方法が可能となった。
ただし消費税の計上時期については、
原則通り、支払いを受けた時点で全額課税売上を認識するため、
法人税と消費税で「計上時期」及び「計上額」が乖離する。

また消費税基本通達9-6-2で、
法人税の計上方法とあわせることが可能と明記されているが、
収益認識会計基準の導入によって、この通達が認容されるとは現状言い難い。

実務にどのように影響するかで今後判断するとのこと。







商品券回収損失引当金

従来の日本基準
・未使用商品券については税法に従って収益計上することが一般的だった
・商品券発行から一定期間経過後に商品券の負債計上を中止して収益を計上し、
 同時に今後未使用商品券が使用される場合に備え、損失の発生額を合理的に見積もる「商品券損失引当金」などを計上する

今後の収益認識基準
・未回収額にあたる非行使部分を見積もり、回収割合に比例させて収益計上する





10.株主総会“後”の実務対応

■開示書類
(1)金融商品取引法・
・有価証券報告書
・臨時報告書:株主総会での決議事項
(2)取引所
・コーポレート・ガバナンスに関する報告書
■法定備置書類
・株主総会議事録
・取締役会議事録
・監査役会議事録
■株主宛書類の送付
・配当関係書類
・決議通知
■登記関係
(1)役員の変更登記の添付書類
・株主リスト
・就任承諾書
(2)役員の変更登記
(3)定款に関する登記
・機関設計
・定款規定事項








11.第10回 連結キャッシュ・フロー計算書

■2つの作成方法
原則法:個別CF計算書を合算→連結会社間のCFの相殺消去して作成
簡便法:連結PL、連結BSの期首残高と期末残高の分析およびその他の情報から作成
※実務上は簡便法が多くみられる

■連結CF計算書に含めるCFの期間
(1)新規連結・連結除外
連結の範囲に含めた時点以上含める
連結除外時点まで含める
※PLと一致する
(2)みなし取得(売却)
みなし取得日(売却)時点以降(まで)の期間を連結

■組織再編等が行われた場合の連結CF精算表の作成方法
・期首または期末残高の調整が必要なケースあり
例:期末にS社を吸収合併
期首残高にはS社のBSは含まれないが、期末には含まれるため単純な差引だけでは増減額に合併の影響が出る
よって期首残高にS社合併時のBSを加減算して増減を算出する








12収益認識に関する法人税の実務ポイント

■収益の認識基準
・原則:引渡日基準
・例外:近接日基準(=引渡日に近接する日)

■益金算入時期
・一定の期間にわたり役務を提供する場合⇒進捗度に応じて
・特定期間を定めている場合⇒特定期間の経過に応じて

■収益認識の額
・原則:時価(貸し倒れ、買戻しはないものとみなす)
※値引き、割戻:取引の対価から減額
※実質的な取引単位で認識







13.収益認識会計基準に伴う消費税の改正と影響

・消費税の改正
長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の対象がリース譲渡に限定。

・収益認識基準と消費税の関係
消費税の課税標準 = 値引や割戻し等の控除前取引価格
収益認識基準の収益 = 値引きや割戻し等の控除後の取引価格
⇒自社ポイントの付与や割戻しを見込む販売等、収益の額や収益認識時期が異なる。







14.子会社(S社)清算時の親会社(P社)における税務処理(S社株式評価損について)

(1)S社が100%子会社の場合
 S社との支配関係(50%超の支配関係)が5年未満の場合、それ以前に生じていた欠損金等を親会社に引継ぎ不可等、制限有。
⇒(個別)S社清算時までS社株式保有する可能性が高い場合、S社株式評価損に係る繰延税金資産の回収可能性が低いとの判断が適切。
 (個別)S社清算が正式決議された場合、当該評価損は永久差異に分類され、繰延税金資産の計上不可。
 (連結)個別上で、当該評価損の繰延税金資産を計上していない場合、連結上でも計上不可。
⇒結果、S社株式の評価損の繰延税金資産は計上できない。

(2)S社が100%子会社以外の場合
 S社清算時、子会社株式消却損が認識され、S社の未処理欠損金は引継がれない。
⇒(個別)S社清算時、P社において当該評価損を損益算入することが可能。
  (連結)S社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異として繰延税金資産を計上。
⇒結果、S社株式の評価損の繰延税金資産は計上できる。







15.経過措置に留意する返品調整引当金・長期割賦販売廃止のポイント

■返品調整引当金
・税務上、経過措置期間(202141日~2030331日に開始する事業年度)を経て廃止
⇒経過措置期間の間、損金算入限度額が逓減していく。
・会計上、202141日以降、引当計上を行わず、収益を直接減額。

■長期割賦販売(延払基準)
・税務上、経過措置期間(202141日~2030331日に開始する事業年度)を経て廃止
2023331日までに開始する事業年度は従来通り。
201841日以降終了する事業年度において、延払基準をやめた場合、繰延利益を10年で均等計上。

・会計上、202141日以降、遡及修正を行うか、期首の剰余金を修正する。










16.コンプライアンスへの配慮

1.反社会的勢力に関する確認書
・上場申請時に必要
・上場申請日における役員、役員に準ずる者、重要な子会社の役員、上場申請日における株主上位50名、
主な仕入先及び販売先の上位10位について、記載が求められる

2.事業の適法性
・目新しいビジネスモデルが多いネットベンチャーは特に注意
・事前に弁護士へ依頼し、リーガルオピニオンをもらう
例1)インターネットサービスでの個人向けサービスとしてチャット機能があれば、電子通信事業法に基づいた申請が必要
例2)リユースの商品を扱うには、都道府県に古物商の届け出が必要

3.不祥事が起きた際の対応
・社内で調査委員会を設置、原因追及、該当者の処分、再発防止策を策定
 




















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