2019年2月17日日曜日

2/15 勉強会:確定申告で誤りが多い税務署の要確認事項 他

1.金融商品会計、優先的に減損の検討を

企業会計基準委員会は「金融商品に関する会計基準の改正についての意見募集」
に対して寄せられたコメントについての検討を開始した。

■多かったコメント
・金融資産の減損や、金融商品の分類および測定に関しては、
国際的な会計基準との差異が大きいとして優先して検討すべきという意見が多かった。
・ヘッジ会計に関しては、優先順位は低いとする意見が多かった。






2.無形資産として資産化される開発費

■開発費の無形資産計上(IFRS)=以下のすべてを立証できる場合に限る
a. 使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
b. 無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業の意図
c. 無形資産を使用又は売却できる能力
d. 市場が存在するor内部で使って企業の事業に役に立つことの立証
e. 使用又は売却のために必要となる適切な技術上、財務上及びその他の資源の利用可能性
f. 開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性をもって測定できる能力

■多額の開発費を無形資産として計上しているIFRS任意適用日本企業
⇒IFRS任意適用日本企業158社のうち、30社で無形資産として開発費を計上
(30社の総額:1兆305億円)
【主な会社】
・社名/開発費の無形資産残高/資産化率(無形資産計上額/研究開発費)
・本田技研工業/5985億円/18.2%
・住友化学/1539億円/3.1%
・JVCケンウッド/571億円/34.6%
・リコー/456億円/34.6%
・オリンパス/324億円/11.4%
・テルモ/291億円/6.4%
⇒この点、欧州企業は自動車関連業種が計上額上位を占める。

■結論
・資産計上マストではない(安易に資産計上すべきではないのは日本基準と同様)
・計上しない場合(費用処理)の根拠は不要
・各社に判断の余地あり






3.小規模宅地特例適用で納税猶予面積減少

■個人版事業承継税制
個人事業者の事業用土地や事業用建物等の承継に係る相続税、贈与税が全額納税猶予される制度
<納税猶予される特定事業用資産>
・宅地等(上限面積は400㎡)
・建物(上限床面積は800㎡)
・自動車など一定の減価償却資産
※平成31年1月1日~平成40年12月31日までの取得が条件

■小規模宅地等の特例
被相続人が自宅・店舗・事務所などとして使っていた宅地を取得する場合、宅地の価格を400㎡までは最大80%減額して評価する制度

■ポイント
・個人版事業承継税制と小規模宅地特例は選択制
・個人版事業承継税制の適用を受ける場合も、被相続人が居住に使用していた宅地等は小規模宅地特例を適用できる
・両方適用する場合、小規模宅地特例の適用面積は、個人版事業承継税制で納税猶予の対象となる宅地の対象面積から減額される




4.外国銀行の日本支店、利子控除制限の対象に

■利子控除制限
・海外にあるグループ会社から借入れを行い、当該グループ会社に日本から利子を支払った場合
⇒日本では利益から利子が控除され、法人税の課税所得を圧縮
⇒一方で海外グループ会社は受取利子を収益として税額を計算して申告
上記の海外グループ会社が日本より低税率国であれば所得を移転している事になる

■31年度改正にて
・借入に関しては、適用対象となる利子等からは日本の課税所得となる利子等が除外。
新たに適用対象に含まれるのは、グループ外の外国法人、非居住者からの借入に対する支払利子等。
 ⇒外国銀行の日本支店が対象となる
・更なる問題点
基準割合の引下げ:利払前所得50%を超える部分の損金不算入 → 20%を超える部分の~に改正されるため。
 これにより外国銀行の日本支店が国内銀行よりも課税上不利な扱いを受ける可能性が出ている。






5.会計帳簿等の閲覧謄写請求をめぐる最近の裁判事例

【事例】
・原告株主(被告会社の元代表取締役)は保有する被告会社発行株式の全部の売却を検討
・最新の情報をもとに被告会社発行株式の評価額を把握したい
・会計帳簿又はこれに関する資料として税務申告書等を含めた経理の状況を示す一切の帳簿資料を閲覧謄写請求。

■対象
⇒総勘定元帳、日記帳、仕訳帳及び補助簿等
「これに関する資料」とは会計の帳簿を作成する材料となった書類その他会計の帳簿を実質的に補充する書類。伝票、受取証、契約書、信書など

■対象外
⇒税務申告書及び月次試算表
損益計算書や会計の帳簿を材料にして作成される書類であるため、「会計帳簿」には含まれない。





6.遺留分に関する民法特例、個人事業者にも拡大

■個人事業者を対象とした事業承継税制
平成31年度税制改正で注目される改正のひとつ。
・10年間の時限措置で既存の事業用小規模宅地特例と選択適用。
・法人の事業承継税制と同様に承継計画を作成して中小企業経営承継円滑化法の認定を受ける仕組み。

■遺留分の民法特例
個人事業者についても事業承継税制が適用されることを踏まえ、中小企業庁は税制以外の法整備も必要と判断、遺留分の民法特例の対象に個人事業者を追加するなど見直しを行う意向。
・遺留分の民法特例は中小企業経営承継円滑化法で措置されている。
・現行の特例は、経営者から後継者へ贈与された自社株を、遺留分算定基礎財産から除外又は遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定。
⇒今回の中小企業承継円滑化法見直しでは、相続人全員の合意により簡便な手続きで後継者に生前贈与された事業用資産について、遺留分算定するための財産から除外できるようにする。





7.家事関連費と必要経費

家事関連費については「業務上必要な部分の金額を明らかにできる」金額については必要経費算入可

<過去裁決事例>
■通信費
インターネット通信料:業務上必要な部分の金額があきらかにできないとして全額否認された事例あり

■車両費
車両減価償却費:分母を365、分子を業務使用のみの日で按分した事例あり

■交際費
接待交際費:証拠書類なしのため0円認定した交際費を、裁判所が納税者の主張する金額の
50%相当額である24万円と認定した事例あり

⇒いずれも他論点に付随してオマケ的に指摘されたものであり、家事関連費の否認を目的としたものではない。
 ※通常は家事関連費を必要経費に入れても否認リスクは低い



8.確定申告で誤りが多い税務署の要確認事項

■申告不要の配当等を申告すると更正の請求は不可
Q確定申告しなくてもよい配当等について、配当控除を受けるために確定申告したが、
その後所得金額が増加し配当控除を受けないほうが有利であるため、更正の請求を行った
A申告後に配当等を申告しないものとする更正の請求はできない。(修正申告も×)
 修正申告等を行うための事由に該当しないから

■申告分離課税から総合課税への変更は不可
Q上場株式の配当等につき申告分離にて確定申告したが、
総合課税の方が有利とわかり更正の請求を行った
A変更することは不可。更正の請求を行うための自由に該当しないため。
ただし、期限内申告であれば、総合課税としたうえで確定申告することは可能。

■FXなどの損失繰越は連続で確定申告が必須
Q2年前にFXで損失が発生し確定申告を行った。
前年は特に申告をせず、本年分に2年前の損失を充当したい申告したい。
A充当できない。
過去の損失を充当する場合、損失発生時か連続して申告書を提出しなければならない。
なお本年分の申告をする前に、前年分の申告の更正の請求(損失の繰越)を行えば、本年分において控除可能

■開業2か月以内の青色申請
Q不動産貸付業(白色申告)を行っていたが別の事業を開始した際に青色申告を提出。
開始年分より青色申告が可能か
A新規事業を開始した年分は白色。翌年分より青色。
 
■妻の年金から天引きの社会保険料は夫の所得から控除不可
Q妻の年金から天引きされた社会保険料は夫の所得から控除できるか
A実際に支払った人の保険料のみ控除が可能なため控除できない。夫が支払っていれば控除可能





基準が明らかでない場合の会計処理に重要性がある場合は、重要な会計方針として注記

・ASBJが審議
・会計基準の定めが特に存在しない、業界固有の会計処理など、これまでは開示されていなかった会計方針について、重要性が高い場合は会計方針として開示することを求める方向に。
・「重要性」の判断基準は特に記述しない予定







10.収益認識基準に対応した法人税基本通達のポイント

■役務提供に係る収益の帰属の時期
・通則的な部分(2-1-21の2~6)⇒対象は「収益認識基準の適用対象となる取引」
・具体的な取扱部分(2-1-21の7~11)⇒対象は限定なし。従来の通達の取り扱いを維持。

・請負に係る収益の帰属の時期(2-1-21の7)
⇒履行義務が一定期間に渡り充足されるものについても
原則、「目的物の全部を完成して相手方に引渡した日」or「役務の全部を完了した日」を「役務の提供の日」とした上で、進捗に応じた収益の認識を「認める」としている。

■使用料等に係る収益の帰属の時期
・具体的な取扱部分(2-1-29~30の5)⇒対象は限定なし。

・賃貸借に基づく使用料等の収益の帰属時期(2-1-29)
⇒原則、収益認識基準。許容、従前の改正前通達。

・知的財産のライセンス供与等に係る収益の帰属時期(2-1-30)
⇒一定の要件のもとでは、履行義務が一時点で充足されるものとする。




11.「耐用年数」をめぐる会計上の実務論点Ⅰ~Ⅲ

■耐用年数の決定に係る会計基準のポイント
・税務上=法定耐用年数(画一的)
・会計上=経済的耐用年数
 ※法定耐用年数が企業の状況に照らして不合理でなければ、会計監査上妥当なものとして取り扱い可能

■耐用年数に係る実務上の留意点
・減損損失認識時に(計上の有無は関係なし)耐用年数の変更が必要なケース有り
⇒将来キャッシュ・フロー見積り時の見積り期間と耐用年数が密接な関係
・定借契約の場合やオペレーティングリース取引により使用している資産の資本的支出はその賃借期間で償却





12ポイントプログラムとデジタルサービス

■共通ポイントの取扱い
「共通ポイント」とは、ポイントサービスの加盟店で共通に利用できるポイントであり、当該共通ポイントに係る消費税法上の取扱いについては、現状当局の確立した見解は公表されていない。また実務上の処理も統一されていないが、税務調査で否認される事例が見受けられる。
・共通ポイントの運営会社は、ポイントプログラムの設計段階で消費税の取扱いをよく検討したうえで、慎重にその取扱いを決定する必要があり、以下は消費税の解釈例である。
・役務提供対価⇒課税取引
・物品切手等⇒不課税取引(発行時)、非課税取引(流通時)
・支払手段⇒不課税取引(発行時)、非課税取引(流通時)
・預り金的性質⇒不課税取引





13.研究開発税制における控除税額の上限に係る改正概要

研究開発支出のインセンティブ付与を目的として、各種優遇措置が追加。
2019年4月1日以降開始する事業年度から原則適用されることになる。
※従来あった「高度水準型」部分は、期限到来をもって廃止される

■総額型
 総額型とは、試験研究費の増額割合に応じて、当期の試験研究費の総額に対して一定割合を法人税から控除できるもの。
 改正後の税額控除率は以下のとおり。

(1)大企業の場合
・控除額の上限は法人税額の25%(一定のベンチャー企業の場合は40%)
・試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、更に控除率・控除上限が上乗せされる時限措置がある

(2)中小企業の場合
・控除額の上限額は、法人税額の25%ですが、増減試験研究費割合が8%超の場合は35%(時限措置)。
・試験研究費の額が平均売上金額の10%超の場合には、控除率が上乗せされる2年間の時限措置がある。

■オープンイノベーション型の改正点
・控除上限が5%から10%に拡大
・支援対象の研究開発の範囲が拡大

上記改正により、法人税の控除上限が現行の40%から45%(ベンチャーの場合は最大60%)に引き上げられる。




14.サンバイオ株の大崩れ

・創薬ベンチャー
・2015年4月マザーズ上場
・公開株数は 400 万株、公開価格は 2,000 円、公開時の時価総額は 872 億円
・IPO後の 2 年間は認知度も低く、他の創薬ベンチャーが人気化する中で鳴かず飛ばずの株価推移が見られたが、
一昨年後半あたりから上昇トレンドが始まった。
・結果として昨年 6 月 25 日の株価 2,421 円は本年 1 月 26 日の高値 12,730 円まで 5.3 倍にまで急騰
・創薬ベンチャー全体相場が不調な中で、個人投資家の過度な米国での臨床試験結果に期待が集まり過ぎた結果、
株価は時価総額6300 億円台という異常な水準まで跳ね上がってしまった。
・結局、治験の結果は有効性を確認できず、投資家の期待は一気に失望に変わった。
・翌 1 月 30 日から大量の売りが出され、2 月 4 日まで 4 日連続のストップ安(2,400円程度)となった。






15不動産リースの判定

■リースの定義
リースとは資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部であること
→資産の特定、経済的便益の享受、資産を自由に使える権利の3点から判断していく

■不動産リースの場合
不動産リースには土地および建物、オフィススペース、小売スペース(テナント)等が挙げられる。
不動産賃貸借契約がリースに該当するかどうかは明確に判断できることが多い
・資産の特定
→契約で住所やモール内のどの店舗を貸し出すか明記
・経済的便益の享受
→単独で使用する権利を有している場合は条件をみたす。サブリース時も当該要件を満たす
・資産を自由に使う権利
→通常、賃借資産をどのように使用するかの意思決定権を有している。
→たとえば、ホテル用途として使用すると契約書に記載がある場合、借手がホテルとして使用する範囲内であれば、どのように使用するかの意思決定妨げるものではない

■オフィススペースのリース
・契約前提
→オフィスビルの2フロアをリース、借手がフロアを単独で使用し、フロア内の営業時間等をコントロールしている
・判定
→契約でフロアと明確に特定されている、借手が自己使用で経済的便益のほとんどすべてを享受、借手が賃借スペースの使用方法を決定している
・結論
→リースに該当























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