2019年4月17日水曜日

4/5 勉強会:軽減税率制度 他

1.監査法人がIFRS任意適用日本企業に提供している非監査証明業務と報酬額

■IFRS任意適用日本企業が、監査法人から提供を受けた非監査証明業務(合計111件)
・IFRSに係るアドバイザリー業務、研修業務 34件
・コンフォートレター作成業務 27件
・アドバイザリー、コンサルティング業務 10件
・内部統制等に関する改善助言業務 8件
・税務関連業務 7件
・その他 25件

■非監査証明業務に係る報酬が多いIFRS任意適用日本企業(上位5社)
・アサヒグループH:非監査証明業務報酬額(デューデリジェンス業務)417M ※監査報酬額409M
・ソフトバンクグループ:非監査証明業務報酬額(コンフォートレター作成業務)279M ※監査報酬額1,732M
・ツバキナカシマ:非監査証明業務報酬額(DD業務、コンフォートレター作成業務)219M ※監査報酬額81M
・パナソニック:非監査証明業務報酬額(会計税務アドバイザリー業務)201M ※監査報酬額1,081M
・LIXILグループ:非監査証明業務報酬額(IFRSに係るアドバイザリー業務)177M ※監査報酬額587M






2.IFRS等を踏まえてリース会計基準を開発へ

■オペレーティング・リースの取扱い
・IFRS:オンバランス
・日本基準:オフバランス
⇒重要な負債がオフバランスになっているのでは??
⇒IFRS適用企業との財務諸表の比較可能性
【国際的な問題提起により日本でもリース会計基準に着手!】
※解決すべき課題は山積しており、適用時期は不明

■想定される主な論点
・費用配分の方法(IFRSと米国基準とで乖離があり、どちらに合わせるか)
・IFRS16との整合の程度
・取引の範囲(所有権から使用権へ/サービスの利用権をどこまで範囲とするか)
・延長オプションの取扱い
・重要性の判断
・連結のみを対象とするか、単体まで対象とするか




3.建物収去費用を債務控除の対象と判断

■事案
・被相続人は土地を30年契約で借り、5階建ての店舗及び共同住宅を新築
・被相続人が賃料を長期間滞納したため、借地契約は解除
・被相続人は建物を取り壊し、更地として土地所有者に返還する義務を負う
・被相続人がその後死亡し、土地返還義務は相続人に引継がれた
・相続人は解体業者に約8千万円を支払って解体撤去工事を実施
・相続人は、工事費用は被相続人の債務として控除されるべきとする、更生の請求を行った
⇒税務署は債務控除の対象外として否認

■審判所の判断
・経済的合理性が認められる金額の限度で債務控除を認める
(理由)
・相続開始当時において、その履行が確実と認められるため控除はOK。
・ただし、8千万円については算定根拠が不明確で経済合理性を欠くと判断。債務控除額は5,775万円とされた




4.改正CFC税制上のペーパーカンパニーの定義

平成31年度税制改正では、ペーパーカンパニーの定義を見直し、救済措置を導入。
税負担率が30%を切る国の関連会社について、日本の親会社に合算して課税する。米国がタックスヘイブン扱いされて2重課税されることのないよう、米国での事業全体を踏まえて判断する仕組みにする。ペーパーカンパニーに該当しないためには「事業要件」「資産割要件」「収入割要件」等を満たす必要がる。



■CFC税制(タックス・ヘイブン対策税制・外国子会社合算税制)とは
外国子会社を利用した租税回避を防止するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を日本の親会 社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度。

■CFC税制上のペーパーカンパニーの定義
パターン1:単純な特殊会社であるペーパーカンパニー
パターン2:階層的に設けられたペーパーカンパニー
パターン3:不動産を保有するペーパーカンパニー(不動産業)
パターン4:不動産を保有するペーパーカンパニー(非不動産業)
パターン5:資源開発等プロジェクトに係るペーパーカンパニー
※ペーパーカンパニーに該当するかどうかの判定は、外国関係会社毎に行う必要がある。




5.収益認識会計における注記事項を検討へ

・企業会計基準委員会が収益認識会計における注記事項の検討に着手している。
・収益認識会計基準については、2021年4月1日以後開始する事業年度から強制適用されることになるが、2018年1月1日以後開始する事業年度からの早期適用も認められている。

◾️論点
・注記事項や売上高等の表示のほか、注記の記載場所
→早期適用時、必要最低限のものであり、個別注記として開示。
当該注記を重要な会計方針の注記として開示すべきか、否かを検討。

・個別財務諸表及び四半期財務諸表の開示取扱いは、単体開示の省略又は必要最低限の開示にとどめるべきだという意見や、四半期報告書において省略すべきだという意見があり、今後検討されていく。





6.RSを非居住者に支給でも損金算入の途

■役員給与税制の改訂
・譲渡制限付株式報酬(RS)を支給する場合の損金算入要件(Q18)
⇒居住者である役員:事前確定届出給与
⇒非居住者である役員:業績連動給与
・非居住者役員は日本の証券会社での口座開設が困難なため、ファントムストックを支給することが多い
・ファントムストックを業績連動給与で損金算入するためには、有価証券報告書等に非居住者役員への金銭報酬は居住者役員に付与する株式報酬に相当するものである旨の記載が必要

■従来からの取り扱いを明文化
・株式交付信託(Q16)
⇒役員が株式等を在職時に受け取った場合:給与所得
⇒退職時に受け取った場合:退職所得
・業績連動給与の減額(Q73)
⇒病気や不祥事により業績連動給与の一部を支給しない場合、減額する金額の算定方法を予め開示していれば、
損金算入可能




7.裁決事例:重加算税の賦課決定処分の取消事例

■概要
・請求人は同一の敷地内に建物A、B、Cを所有していた
・実際に居住していたのは建物Aのみ
・その後建物A、B、Cを一括で譲渡し居住用財産の特別控除特例を適用して申告
・税務当局は建物B、Cについては適用を取消したうえで意図的に過少申告したとして
 重加算税を課した

■審判所の判断
・特例が適用できるのは実際に居住していた建物Aのみ
・重加算税を課するためには、納税者が“当初から所得を過少に申告すること等を意図し、
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした”上、その意図に基づき過少申告等をした
場合に課すのが相当
・請求人は税の専門家ではなく、建物B、Cが適用除外となることを正しく理解していたかは疑問が
 生じる。したがって意図的にB、Cに特例を適用して過少申告したとまでは認められない。
⇒重加算税の賦課要件を満たさないと判断し処分を取り消した





8.インボイス制度のシステム改修費用

2023年10月1日より適格請求書等保存方式(インボイス制度)がスタートする。

軽減税率の実施と同タイミングで、
インボイス制度を見据えたシステム改修(レジの改修等)を行った場合の費用は?
・修繕費として損金算入可
・金額は問わない(60万円超でもOK)
 ⇒消費税法改正に伴う必要な改修であるから
・作業指図書等で改修の理由を明確することが重要





新収益基準 本人と代理人の区分

・財またはサービスを自ら提供する企業=本人
 ⇒ 対価の総額を収益認識する
・財またはサービスを手配する企業=代理人
 ⇒ 手数料等を収益認識する

・判断の指標は下記で総合的に判断。
(1)財またはサービスの提供に主な責任を負うこと
(2)返品があった場合、主に負担を負うこと
(3)価格設定に裁量権を有していること

・法人税法上の扱い
 ⇒ 会計処理に準ずる

・消費税法上の扱い
 ⇒ 代理人取引であっても、基本的に課税売上と課税仕入をそれぞれ認識
 ⇒ 納税額は変わらないが、課税売上割合に影響

・開示事例(楽天)
「インターネットサービスのうち、当社グループが主に楽天会員に対して商品を提供するインターネット通販サイト『楽天ブックス』、『爽快ドラッグ』、『ケンコーコム』等のサービスにおいては、当社グループが売買契約の当事者となります。(中略)なお、楽天ブックスのうち、国内における書籍(和書)販売については、再販売価格維持制度を考慮すると代理人取引としての性質が強いと判断されるため、収益に関連する原価と総裁の上、純額にて計上しています。」






10.オペレーティングリース(以下、OL)も資産・負債認識する基準開発の着手を決定

・ASBJは3月22日、「すべてのリースについて資産及び負債を認識するリースに関する会計基準」の開発に着手することを決定。
⇒現行のOLは資産・負債を認識しないが、今後は全てのリース取引を資産・負債認識。
⇒IFRS16号、US-GAAP「リース(Topic842)」との比較可能性を確保。日本基準の信頼性回復。

・OLを資産・負債として認識することの懸念
①サービスとしての正確が強い。
②延長オプションについて、リース負債を認識することの懸念。
③適用コストに関する懸念。

・基準開発に対するニーズ
①国際的な会計準との整合性を図る。
②重要なOLに関する負債がオフバランスとなることが、日本の財務報告の信頼性を損なうリスクあり。

・留意点
①単体財務諸表での取扱は慎重に検討
②費用配分をIFRS16号と同様、前加重とすると税法の取り扱いと乖離する可能性あり。
③リースの識別、期間の判定、リースと非リースの分離等、国際的な会計基準の実務上の問題にも留意。




11.第2章「特定の財またはサービス」の識別のポイント

・本人と代理人の区分判定前(第1章参照)に、検討の対象となる「特定の財またはサービス」を識別することが必要
・契約を履行するための活動でも、当該活動により顧客に財またはサービスが移転しなければ、そもそも履行義務に該当しない
⇒例:顧客指定の工場でサービス提供する契約において本人として充足する履行義務に関連して発生した出張費(交通費、宿泊費、食費等)を顧客がサービス提供者へ支払うことを契約上合意
 これらの経費等は契約を履行するための活動に関連するが、当該活動は財またはサービスを顧客に移転しない=履行義務には該当しない
⇒顧客の支払金額=サービス提供の取引価額を構成するものとして総額で収益認識
⇒履行活動が代理人としての履行義務に関連する場合=発生した費用と顧客の支払額を純額で処理
 



12.新収益基準~本人・代理人の区分と会計処理への影響~
■顧客への移転前に、その財又はサービスを企業が支配しているか
・支配している⇒企業は本人⇒売上は総額表示
・支配していない⇒企業は代理人⇒売上は純額表示

■事例検討
・スーパーマーケット
⇒前提:品物の所有権を、メーカーや卸業者に残したまま販売する形態が多い
⇒顧客への移転前においては、品物の所有権はメーカーや卸業者にある
⇒スーパーは代理人

⇒レジで販売した金額ではなく、仕入等を控除したうえでの売上計上が必要





13.新収益基準~財またはサービスの「支配」の判断ポイント~
■収益認識基準における「支配」について
収益の認識は、履行義務の充足時行われる。
⇒履行義務は、顧客がその財又はサービスの「支配」を獲得した時点で充足。
⇒従って、顧客がその財又はサービスを「支配」した時点で収益の認識が行われる。

■「支配」の判断にあたっての指標
適用指針では、「支配しているか否か」を判定するための指標として以下3つの例を示している。
・契約履行の主たる責任
・在庫リスク
・価格設定における裁量権
⇒上記あくまでも例示であり、これら以外の指標も考慮する必要も。

⇒取引の性質や条件を基礎として、総合的な判断が必要。






14.相談役報酬の開示

・関連当事者の注記で役員報酬は開示対象外とされている。
⇒開示対象外とされる役員報酬は、役員が職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益を意味しており、相談役に対する報酬は開示対象外の役員報酬に該当しないと考えられる。
・当該相談役が主要株主に該当するなどで関連当事者に該当し、1,000万円を超える報酬がある場合には、関連当事者の注記として開示する必要があると考えられる。

※相談役
経営判断を行う社長や会長の相談にのり、アドバイスをしながら、彼らを支えていく役割を担っている。
実際には、社長職や会長職など会社のトップを退任した人が就くことが多く、会社によってその位置づけはさまざまであり、役割も異なる。




15.東名(4439)詳細


・光通信の出身者が経営するNTT光回線の代理店業務をコアに、積極的な事業展開を計画しており、上場前説明会で四半期利益が急拡大している
・事業は光通信やレカムなどと同様に、中小企業向けの回線提供サービスがコア
・その事業で得てきた10万の顧客基盤をベースに、保険や情報機器、照明器具、電力小売りといった事業を展開していこうと計画している。
・営業系の企業との印象が強く、上場後にさほどプレミアムがつきにくいと考えられる反面、
2015 年のストック型へのビジネスモデル変更で一時の赤字期間を経て、足下の業績が急速に向上している点に注目が集まると見られる。




16.IFRS適用会社向け2019年3月期決算の留意事項


2019年3月期から強制適用となる主な基準
・IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」
・IFRS9号「金融商品」
・IAS40号「投資不動産の振替」
・IAS28号「関連会社及びジョイント・ベンチャーに対する投資」

・IFRS15号
支配の移転により収益を認識することを明確化し、より多くの規定や適用ガイダンスが設けられた
→返品権付き販売、製品細湯、ライセンス供与、買戻し契約などの特定取引に関するガイダンスが定められている

・IFRS9号
IAS39号の発生損失モデルからより将来予測的な情報を考慮した予想信用損失モデルに変更
→信用損失の認識が遅すぎる懸念に対応するための変更
IAS39号のヘッジ会計は企業のリスク管理活動が反映されていないと批判されていた
→より多くのヘッジ手段およびヘッジ対象がヘッジ会計の要件をみたすことなった
→ヘッジ会計を柔軟にしたことで、リスク管理目的等の文書化がより重要となった



17.軽減税率制度


■2019年10月1日より開始
・標準税率 8% ⇒ 10% (国税:7.8%(6.24%)、地方税:2.2%(1.76%)) ( )は10/1以後の8%の税率
・食品表示法に規定する飲食料品の譲渡、定期購読契約がされた新聞の譲渡に限り8%の軽減税率が適用

■軽減税率が適用されないもの
【飲食料品】人の飲食用に供されるものに軽減税率が適用されるが下記のものは除外される。
・酒税法に規定する「酒類」 ・医薬品、医薬部外品 ・工業用材料として取引される塩や油
・観賞用、栽培用として取引される植物 ・生活用水として販売される水 

【新聞】週2回以上発行されている新聞の譲渡は軽減税率が適用されるが下記のものは除外される
・コンビニ等で購入する新聞 ⇒ 定期購読ではないので除外
・ネット配信する電子新聞 ⇒ 「電気通信利用役務の提供」であり、「新聞の譲渡」ではないなので除外












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