2019年11月28日木曜日

9/20 勉強会:機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理 他

1.フリンジベネフィット開示に変化の兆し

・フリンジベネフィット(役員に対する経済的利益)開示が注目を集めている。
・現行実務では、フリンジベネフィットを会社法上の役員報酬とするかは、
 税務上で役員給与として課税対象となるかどうかにより判断している。
⇒税務上役員給与とならない場合は、会社法上も役員給与とせず、有報での開示もしないことになる。

・米国では従来からフリンジベネフィットの開示が義務付けられている。
・欧州でも今年、フリンジベネフィットに関するガイドラインが公表された。
⇒日本でも欧米並みの開示実務が広がる可能性がある。



2.土地の相続税評価における「特別の事情」の存否(鑑定額と相続後売却価額の正否)

■事例(金額は意図的に丸めている)
・相続財産の評価=財産評価基本通達で評価(路線価方式):30,000円/㎡
・別途鑑定評価を依頼&実際に相続後に売却:20,000円/㎡
(原告=本件相続人の主張)
・評価通達による評価方法を画一に使用=時価を超えてしまう(著しい乖離)。
・評価通達に規定する評価方法によるべきでない「特別の事情」が認められるのでは?

■結論:棄却(東京地裁)
・恣意的に売却価額を引き下げることも可能
・売却までの期間の長さ等を考えて、相続税算定に使用する時価(相続発生時点の時価)と乖離が出るのは仕方ない
・鑑定評価=不動産鑑定士が報酬を得て行うので納税者有利の評価が行われているのではという疑念あり
・実際の裁判例でも、鑑定評価よりも評価通達に基づく評価額の合理性を安易に強調する傾向あり



3.顧問契約解除で報酬請求、税理士勝訴

■事案
・顧問税理士が、簡易課税制度の適用要件等について説明がなかったことなどの行為を踏まえて契約を解除。
・顧問契約の解除は、契約に基づく解約申入期間(6ヶ月)の経過後。
・顧問契約上の債務不履行になるとし、顧問契約は解除と同時に終了したから、解除後の顧問報酬の発生がないと主張。
・解除後の顧問報酬について争われた。

■税理士側の主張
・税務処理に関与した時点で簡易課税制度の届出期間を過ぎていた
・飲食店経営につき親会社から業務委託方式をとっているため、簡易課税制度を適用すると二重に経費を控除することになってしまうことから、租税回避とならない範囲で決算案を作成。

■判決
・税理士の簡易課税選択の対応は専門家の判断として相当と評価。
・税理士の行為が顧問契約の債務不履行にあたるということはできないと判断し、税理士の報酬請求を容認。
⇒簡易課税制度の適用を受けることができないことは明らかだった。
⇒業務委託方式を前提とする限り、今後も簡易課税制度の適用を受けることはできないとし、そのことについて数種類の決算案を作成し、説明もしている。



4.本税の更正処分取消しでも重加算税が課される理由は

・東京地裁は法人税更正処分取消し判決が確定した原告が、重加算税相当額の還付及び還付加算金の求めていた事案について、重加算税賦課決定処分に無効事由は認められないと判示し、原告の請求を棄却した。
■論点
・更正処分等の取消しでは、更正処分及び青色承認取消処分の取消しのみ求められており、重加算税の賦課決定処分の取消しは請求されていなかった。(審査請求では両者とも取消し請求の対象となっていた)
⇒両者ともに取消しを求めていれば、重加算税は還付されていた可能性があった。
 行政処分が無効であるという無効確認という訴訟になったことで行政処分の無効立証という高いハードルが課されてしまった。






5.デジタル化に伴う海外取引、対応が課題

■概要
関東信越国税局長の栗原一福氏に対するインタビュー記事であり概要は以下のとおり。
・国際的な租税回避事案への対応に関し関信局管内では海外への資金の流れは多くないが、
デジタル化などに伴う海外との取引は増えており、資金の流れが捕まりにくくなっている。
・かつては恒久的施設(PE)があることによって課税をするのが原則だったが、
ネットショッピングなどのデジタルサービスが増加したことで、拠点を設けなくてもビジネスが可能。
⇒拠点がないことで課税しづらい状況にあるため、どのように対応していくかが課題。



6.機械装置に埋め込まれたソフトウェアの処理

■概要
税務上、機械装置とソフトウェアは、別々の耐用年数を用いて償却限度額を計算
することが原則である。

■ソフトウェアが機械装置に組み込まれている場合の処理
・税務上の明確な規定はない
・研究開発費等に係る会計基準
⇒「機械装置等に組み込まれているソフトウェアについては、当該機械装置等に含めて処理する」
これを理由に税務調査で機械装置計上を指摘されるケースがある

■実務対応
ソフトウェアの使用が機械装置と「一体不可分」といえるか否かがポイント
・ソフトウェアを取り出して利用できる場合⇒機械装置とソフトウェアを区分して計上
・ソフトウェアの取り出しが不可⇒全体を機械装置として計上





7.税務調査:人件費

税務調査の際、人件費関係で想定される確認事項は以下のとおり

■役員給与関係
・役員報酬額の決定プロセスが適法にされているか
・役員報酬額は定期同額となっているか
・事前確定届出給与は届出額と同額が支払われているか
・定期同額の報酬につき期中に金額の改定がある場合の理由は適切か
・役員報酬、役員賞与(事前確定分)は総合的に判断し過大ではないか
・役員退職金は過大であるか、算定額の根拠は

■従業員給与関係
・架空人件費の有無
・未払賞与の要件を満たしているか
・外注費支払いになっていないか

上記以外でも、実態が人件費ではないかの確認のため、
福利厚生費や経済的利益、源泉所得税まで幅広くチェックされるのでケアしておくことが重要






8.内部統制報告制度の展望

・地方自治体も2020年度から内部統制評価報告制度が開始。
・対象はすべての自治体ではなく、都道府県と政令指定都市。
・監査を行うのは監査法人ではなく各自治体の監査委員。
・運用評価についてはサンプリング等は行わず、自治体における非違事例の報告をもって評価結果とする

・上場企業の内部統制報告制度は形骸化が問題視されている
・内部統制報告書における重要な欠陥の報告が少なく、
 後日、内部統制に係る非違事例が発覚して訂正内部統制報告書で重要な欠陥を報告する事例が増え、
 重要な欠陥の件数が、上場企業全体で、後者が全社を上回る年も



減損テストの目的

・IFRSではのれんの定期償却は行わず、毎年必ず減損テストを行う。

・減損テスト
⇒減損の兆候の有無を見極め、帳簿価額と回収可能価額を比較するもの
⇒簿価>回収可能価額なら、回収可能価額まで簿価を切り下げる。

・目的
誤)企業結合が成功したかどうか
正)企業の資産が回収可能価額を超えて計上されないようにする

IASBではのれんを直接減損テストの対象とすることを検討したが、不可能だった、との結論。



10.対象となる無形資産の明確化のポイント(移転価格税制)

■移転価格税制の対象となる「無形資産」が法令で明確に定義された
 ※ただし個別列挙ではなく広範な定義とした
(定義)
・無形資産とは、(中略)その譲渡若しくは貸付け又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額の支払われるべきものをいうのであるから、例えば、次に掲げるものはこれに含まれる。
(1)令第183条第3項第1号イからハまでに掲げるもの
 イ:工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの
 ロ:著作権
 ハ:第13条第8号イからソまでに掲げる無形固定資産
(2)顧客リスト及び販売網
(3)ノウハウ及び営業上の秘密
(4)商号及びブランド
(5)無形資産の使用許諾又は使用許諾に相当する取引により設定される権利
(6)契約上の権利(1)~(5)除く




11.令和元年度の移転価格税制改正のポイント

①移転価格税制の対象となる無形資産の明確化
⇒一定の金融資産以外で、独立事業者間で通常条件に従って譲渡等が行われる場合に、対価が支払われる。
②独立企業間価格の算定方法の整備
⇒DCF法を導入
③評価困難な無形資産の取引に係る価格調整措置の導入(所得相応性基準)
⇒特定無形資産の価値予測と結果の差が20%超⇒税務当局が再測定&課税可
④移転価格税制にかかる更生期間の延長
⇒6年から7年へ
⑤比較対象取引の利益率を参照する価格算定方法に係る差異調整方法の整備
⇒四分位法(利益率レンジの上下25%切り捨て)に基づく差異調整が可能に
⇒定量的に把握することが困難な場合に限る




12.M&Aで仲介会社や専門家へ報酬を支払う際の留意点

・昨年は、のれんが重要な会計監査のポイントとなっていることもあり、費用を抑えることを優先し、報酬があまりにも低い専門家を利用して、後々の監査で問題となるケースがあった。
⇒報酬だけでなく、専門家の経験や経歴を考慮して専門家を選択することが必要と考えられる。
・自社で対応する範囲を広げ、FAや専門家に依頼する業務範囲を狭めることで費用を抑えられることが可能。

※専門家、仲介会社の一般的な報酬体系

(1)専門家の専門サービスの報酬体系
・DD、株価算定:固定報酬+タイムチャージ
・FA業務   :固定報酬+タイムチャージ+成功報酬

(2)仲介会社の報酬体系
・着手金
契約時に支払うもの
・リテイナーフィー
 契約期間中に、調査や相手先企業の紹介等の名目で毎月支払うもの
・成功報酬
 M&A成立後に支払うもので、通常はレーマン方式と呼ばれる取引金額や買収先企業の規模によって異なる料率が適用される
⇒レーマン方式の計算方法は、時価総資産ベースと取引金額ベースがあり、仲介業者により採用方法は異なるため留意が必要(通常は時価総額資産が取引金額より高くなることから、時価総資産ベースの方が成功報酬金額は高くなることが多い)。




13.東京プロマーケットのメリデメ

1.メリット
・上場までのスピードが早い
東証一部やマザーズでは早くて3年はかかる。
上場審査にあたって2期分の監査証明が必要になり、監査証明に先立って会計処理の整備などが必要になるため。
一方、東京プロマーケットは直近の事業年度1期分の監査証明でよい。

・形式基準がない
マザーズだと株主数は200人以上、時価総額は10億円以上などの要件があり。

・維持コストも安く済む
コストとしては、上場手数料、監査法人に対する監査報酬、株式事務代行手数料、開示書類作成関連費用、IR関連費用、株主対策費用
一般的な株式市場では、年に4回決算を行い、四半期報告書を作成して情報開示しなければならない。
全ての費用を合わせると年間で50Mほどが上場コストとして発生すると言われている。
一方、東京プロマーケットは四半期開示が任意、内部統制報告制度なども任意

2.デメリット
・投資家が制限されることで資金の流動性が下がる
東京プロマーケットはプロ投資家のみが株式を購入することができるため、国内の一般投資家は市場に参入することができない。

・上場の際に資金調達をしにくい
流動性が低いことから、上場時の公募売出しを実施しても想定した資金を集めることが難しい。


14.新規任意適用企業状況

・IFRS適用企業数
2018年3月期までにIFRSを適用した東証上場企業は156社
→2019年3月期までの1年間に新たに40社が任意適用した

・IFRS任意適用企業の東証業種別分類
サービス業:25社
情報・通信業:24社
電気機器:22社
医薬品:17社
輸送用機器:16社
化学:14社
小売業:11社
機械:11社
卸売業:11社
その他:45社
→医薬品は67社中18社(適用予定含む)がIFRS適用しており、約25%がIFRSとなっている
→一方で、サービス業は452社中27社と6%と、業種によって適用状況が異なっている。




15自動販売機の手数料と軽減税率

・自動販売機で行うジュース等の販売は軽減税率8%が適用される一方で、その周辺の取引には標準税率10%が適用されるものもあるため注意が必要

・自動販売機で行われるジュース等の販売は、「飲食料品の譲渡」として軽減税率8%の適用対象

・自動販売機を設置した企業が、販売数量や売上高に応じて飲料メーカー等から金銭の支払を受ける場合
・ジュース等を大量に販売したことについて、飲料メーカー等から奨励金が支払われる場合
⇒「手数料」であるため役務提供の対価として、標準税率10%が適用

・自動販売機の設置者自身が飲料メーカー等からジュース等を仕入れて販売する場合
⇒「飲食料品の譲渡」であるため、軽減税率8%が適用

・ジュース等を大量に仕入れたことについて、奨励金が支払われた場合
⇒もともとの取引(仕入)が「飲食料品の譲渡」であるため、その奨励金にも軽減税率8%が適用














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