2019年11月28日木曜日

9/27 勉強会:M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他 他

1.株式交付の再編税制入りに高い関心

■株式交付とは(令和2年に施行予定)
・他社を子会社化するために他社の株式を譲り受ける。
株式の譲渡人に対しては、自社の株式を交付する。
100%子会社化までは意図していない場合にも使える点が株式交換と異なる。

■論点
・株式交付が株式交換の一類型として組織再編税制の一部とされた場合、
 適格株式交換の要件である完全支配関係の継続要件を満たさないとして非適格再編となり、
 対象会社において時価課税が生じてしまうと、全く利用されない恐れがある。



2.のれんの償却期間は10年を上限に

■のれんの償却
・減損のみモデル(米国、IFRS)では減損が適時に認識されていないのではという懸念

■基本的に10年を上限とするのが適切であるとする理由(ASBJ)
・10年を上限として「将来の正味キャッシュインフローが企業結合により増加すると見込まれる期間」とするのが適切
・企業結合の効果を10年超の期間で見込むことは稀であること
・米国基準における非公開企業向けの償却オプションで上限として10年が示されているのも論拠の一つ



3.令和元年度改正における法人税関係の通達を読む

「法人税基本通達等の一部改正について」改正事項。
■適用除外事業者の判定、修正申告等があれば変更後の金額で
平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用される、中小企業向けの租税特別措置の適用除外事業者であるかどうかの判定。
適用除外事業者に該当する事業年度については中小企業向けの租税特別措置の適用を停止。また、基準年度の修正申告により所得の金額が変更。再判定で基準年度の平均所得金額が15億円超になれば中小企業向け租特の適用はなし。

【判定基準】
判定対象年度終了時に確定申告の所得の金額で判定。
中小企業者のうち事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人を「適用除外事業者」と判定。




4.所得税と相続税の納税猶予では「譲渡」の解釈は別物

共有分割の結果、特例農地等の納税猶予の対象とされていた農地が農業相続人以外の相続人に移転したことが譲渡等に該当すると判断し納税猶予の期限を確定した国に対して、納付税額の返還等が求められていた事案
⇒「資産の譲渡と相続税の納税猶予制度の解釈は全く同一にしなければならないものではない」として納税者の請求を棄却した。

■事案
・法定相続人は4人、原告は唯一農業を営んでいた。
・被相続人は遺産全てを原告に相続する旨の公正証書遺言をした。
・被相続人は農業相続人のため特例農地等の納税猶予制度により原告は相続税を猶予された。
・原告以外の相続人が遺留分減殺請求訴訟を提起。本件農地の一部が所有権移転登記された。その農地の一部に原告の長男名義で農業施設を建設。
・最終的に共有持分の放棄を相互に行い、大半の農地を原告の単独所有とし、一定の農地を原告以外の相続人らの共有として和解した。
⇒農地の一部は農業相続人である原告の農業用に供されていないことになり、農業継続を目的とする相続税の猶予という観点で考えるべきで資産の譲渡と解釈が異なるとした。





5.税トレ:軽減税率<アルコール販売関連>

■アルコール販売関連Q
(1)お酒の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(2)食品の原材料としてのワインの販売は軽減税率制度の 対象? or対象外?
(3)料理に使用される本みりん(アルコール度数14度程度)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外?
(4)料理に使用されるみりん風調味料(アルコール度数1度未満)の販売は軽減税率制度の 対象?or対象外? 
(5)料理に使用される料理酒(アルコール度数10度程度。塩を加えて飲用できないように調整されている)の販売は
軽減税率制度の 対象?or対象外?

■A
(1)対象外
(2)対象外
「食品」の原材料となるワインなどであっても、酒税法に規定する酒類は、軽減税率の適用対象である「飲食料品」に該当せず、その販売は軽減税率の適用対象とならないこととされている。
(3)対象外
(4)対象
(5)対象
料理酒などの発酵調味料(アルコール分が1度以上であるものの塩などを加えることにより飲用できないようにしたもの)やみりん風調味料(アルコール分が1度未満のもの)については酒税法に規定する酒類に該当せず、「飲食料品」に該当し、その販売は軽減税率の適用対象となることとされている。





6.税務:申告書等閲覧サービスと写真撮影

過去に税務署へ提出した書類の控えを紛失等してしまった場合、
税務署の「申告書等閲覧サービス」を利用して閲覧することが可能。

・免許証等の本人確認書類が必須
・手数料かからない
・委任状があれば税理士も閲覧可能

従前まで、閲覧内容を手書きで書き写す方法しかなかったが、
6月末の改正でスマホ等により写真撮影が可能となった。
なお、動画撮影やコピーは取ることができない

※過去の申告書等の写しを取得する場合は、有料の開示請求手続きを行う必要あり


7.開示すべき重要な不備 2019年3月期に13社

・うち8件が不適切な会計処理等。
・特に、海外子会社における不適切な処理が多かった。
・(藤倉コンポジット(東一、ゴム製品)の例)
 内部通報を機に調査した結果、中国子会社で費用計上すべき一部経費のみ形状が発覚。
 過去5年間の有報を訂正、再提出。




8.M&Aリスクに注意、統合報告書作成のための7項目、その他

■M&Aリスクに注意
・経営者は短期的な売上・利益増大のために、M&Aを行おうとする。しかし、下記の問題がある。
①株主価値の毀損
⇒2,500社を調査したところ、60%の会社の株主価値が毀損した。
②明確なビジョンがない。
⇒400社の経営者を調査したところ、31%の者がM&Aの理解が不十分。DD不足。
③コンプライアンス
⇒300社の経営者・法務アドバイザーを調査したところ、56%が調査不十分。
④経済環境のリスク
⇒特に主要な人材の引き留め、従業員の再教育等の人材リスクが大きい。

■統合報告書作成のための7項目
①経営者及び取締役の支援を受けること
②企業の長期的価値の創造についてのストーリーを利害関係者に伝える
③年次決算書と異なる時期に報告書を作成する
④企業ストーリーを説明するための新たな方法
⑤企業の長期価値創造のために主要な要素を示す
⑥過剰な留意事項を示さない
⑦投資家の関心についての過小評価はしない

■ビジネスリスク
・欧州9か国の内部監査部門のトップによる年次報告会によると、サイバーセキュリティが最もリスクが高い。
以下、規制の変更、デジタル化と続く。
⇒今後5年以内に、気候変動リスクも主要なリスクとなると言われている。



トヨタ系「大豊工業」米子会社の不正で上場廃止の危機

・トヨタ自動車系の中堅部品メーカー大豊工業
・自動車用の軸受け製品やアルミダイカスト製品、自動車製造用の金型などを生産
・全額出資の米国子会社、TCAで不適切会計(※)が発覚、19年度1Q(4-6月)の報告書を期日とされた17日までに関東財務局に提出できなかったため
(※)15-18年の期末棚卸資産が約5億円、過大計上されている恐れ
・最終期限は30日。それでもダメなら整理銘柄に指定され、原則1カ月後に上場廃止
・大豊工業はTCAに対し、今年3月末時点で9.89億円を貸し付けているほか、債務保証も行っている。
・単体決算では保有株減損のほか、貸倒引当金や債務保証損失引当金の追加計上なども迫られる見通し。




10.IFRSと日本基準_法人所得税

IFRSの法人所得税と日本基準の法人税等の税金の範囲実質的な差異なし
→税効果会計の基本的な考え方も共通している

・将来減算一時差異
IFRS:評価性引当の概念なし(回収可能性がある金額を直接計上) 
日本基準:一旦繰延税金資産を計上し、判定結果に応じて評価性引当金を計上(二段階アプローチ)
→日本基準の方が、ひと手間多い

・財務諸表における表示
IFRS:当期税金と繰延税金を合算して税金費用として包括利益計算書で表示
日本基準:法人税等と法人税等調整額に区分して表示
→IFRSでは注記で内訳を開示

・連結上の未実現損益消去に係る税効果
IFRS:回収可能性の検討が必要
日本基準:回収可能性の検討は不要
→IFRSの方がひと手間多い




11.消費税率引上げを「またぐ」取引に留意

■売上計上方法で適用税率が異なることも
①経過措置の適用がない取引(棚卸資産の譲渡)
・9月29日に店頭で商品を引き渡している場合 ⇒ 旧税率(8%)適用
・販売した商品を10月以降に別送する場合(店頭での販売時に継続的に売上計上場合)
 ⇒ 旧税率(8%)適用

②通信販売
・発送基準により売上計上の場合 ⇒ 発送が9月30日なら同日に売上計上し、旧税率(8%)適用
・着荷基準により売上計上の場合 ⇒ 商品の到着が10月3日なら同日に売上計上し、新税率(10%)適用


















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