1.株主総会の決議がない役員報酬の支払いは違法か?
■事例
⇒株主全員が経営者の親族である同族会社における、親族間の対立による裁判事例
①株主総会の決議を得ずに、社長へ役員報酬の支払いあり
※定款に定めがない場合、役員報酬は株主総会で決議をとる必要あり(会社法)
②社長が交代(新社長は以前からの株主)
③新社長が、旧社長へ支払った役員報酬は違法であると主張
■判決
・旧社長へ支払われた役員報酬は適法である
・株主(新社長も含む)が、株主総会の不開催に異議を述べなかった
・株主総会が開催されずに役員報酬が支払われていたことを認識していたのに、誰も異議を申し出なかった
⇒実質的に、役員報酬の支払いについて、株主間で同意がなされていた
⇒株主総会が開かれなくても、株主全員の同意があった場合は適法と判断
2.総合主義→帰属主義への移行が本格検討
・政府税制調査会は「国際課税ディスカッショングループ」を開催することを決定
・議題
①BEPS(税源浸食と利益移転)
②帰属主義
③国境を越えた役務の提供等に対する消費税等
など
・帰属主義とは
外国法人が国内に恒久的施設(PE)を有する場合に、PEに帰属する所得のみを申告対象とすること
PE=PermanentEstablishment
総合主義=すべての国内源泉所得について課税をすること(PEを介していなくても国内取引となれば国内で課税できる)
・外国法人等に対する課税原則を「総合主義」から「帰属主義」へ
→国際課税原則をグローバルスタンダードに合わせ、日本に法人を設置する魅力を高める
・内国法人の国外PE帰属所得の計算が煩雑になることが懸念されている
①内部取引損益を認識する必要が出てくる。
②内部取引を認識するための文書作成の義務付け
→事務的負担が大きくなる方向
・アジア新興国では帰属主義の思考が薄いため国際的な二重課税が却って広がる恐れがあるとの見方も
3.無対価分割の取扱い
■無対価組織再編成とは?
対価が交付されない組織再編成の総称をいう
これには、対価が0と評価されるもの(例:債務超過状態の会社の株式等)も含まれる
■「分社型分割」、「分割型分割」とは?
会社法上の分社型分割は、税法上「A:分社型分割」と「B:分割型分割」に分かれる。
→A=分割法人が分割承継法人の株式の全部または一部を保有している場合の分割(※1除く)
→B=分割承継法人が分割法人の発行済株式数等の全部を保有している(※1)または分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合の分割
■適格分割と非適格分割
(1) 分割型分割の場合における適格分割
①子会社から直接の100%親会社に対する分割
②同一の者が株式を100%直接に所有している兄弟会社間の分割
③分割承継法人及びその直接の100%親会社が分割法人の株式の100%を保有している場合の分割
(2)分社型分割の場合における適格分割
親会社から直接の100%子会社に対する分割
■注意
下記のケースでは非適格分割となる
前提:親P 100%子会社A Aの100%子会社BとC
BとCの無対価による分割
→同じく100%の資本関係にある法人間の分割であっても、非適格となるケースもあることに注意する5.ベンチャー投資促進税制 Q&A
Q1 匿名組合を通じた投資は可能か
A1 不可能。対象となるのはLPS法上の『投資事業有限責任組合』であり、
民法上の民法組合や会社法上の匿名組合は対象外
※LPS法:投資事業有限責任組合契約に関する法律
Q2 代表取締役1人が株主である会社への投資は適用対象か
A2 可能。投資対象は青色申告をしている『法人』を対象としている。
Q3 投資額の損金算入時点
A3『投資事業有限責任組合』が投資を行った時点。
『投資事業有限責任組合』に投資を行った時点ではない点に注意。
Q4 評価損計上の可否
A4『投資事業有限責任組合』が損益の帰属方式として『総額方式』を採用している場合、非上場株式の評価損計上要件①価格の低下 ②資産状態の悪化 を満たせば可能。
Q5 組合員の構成
A5 投資者が法人である必要はあるが、『投資事業有限責任組合』の組合員が法人に限定されるわけではない。
Q6 既存の『投資事業有限責任組合』を通じた投資への適用可否
A6 ベンチャー投資促進税制開始前から存在する『投資事業有限責任組合』に投資をしても
同税制の対象。しかし同税制の優遇を受けられるのは、同税制開始後の投資に限られる。
Q7 個人によるファンドの組成
A7 可能。しかし『投資事業有限責任組合』は金商法の規制を受けること等、実質的に個人がファンドを組成することは困難。
Q8 認定要件の確定時期
A8 税制を受けるため『投資事業有限責任組合』は『特定新規事業開拓投資計画』の認定を受ける必要があるが、当該認定要件は産業競争力強化法により12月初旬ごろ明らかになる見込み。
6.裁決事例 社員旅行費用の給与課税について
結果、給与とされた。
【概要】
A社は従業員10名で2泊3日の海外(マカオ)旅行を実施し、従業員1名あたり24万円を
福利厚生費として処理したところ、課税庁により当該支出を従業員への給与とみなされ源泉徴収もれを指摘された。
■課税庁側の主張
①1名あたりの負担額が高額
②レクリエーションのために社会通念上一般的に行われる行事に該当しない
ため、当該支出は経済的利益の供与にあたる。
■A社の主張
①本件旅行は業務命令によるもので従業員は利益を受けていない。
②業務に差し障りのない連休で日程を組めば料金が高くなるのはやむを得ない。
したがって「負担額が高額」にはあたらないため、給与とはならない
■裁判所の判断
①マカオにおいては観光旅行に終止していることから、本件旅行はレクリエーション
のための慰安旅行と言える。
②非課税とされるのは少額不追求の観点から強いて課税しないことが相当とされる程
度のものであり、本件旅行は社会通念上その範疇を超えている。
7.【消費税】デイサービス施設の貸付けと消費税
•デイサービス施設の貸し付けに係る賃料収入
→
課税売上
•グループホーム用施設の貸し付けに係る賃料収入
→
非課税売上
※グループホームは入所して日常生活を送るもので居住用として扱われる。デイサービス施設は食事や介護のサービスが提供される場所であり、居住用ではない。
8.【所得税】マイカー通勤と非課税所得
通勤手当のうち通常必要とされる部分は所得税上非課税とされる。
■マイカー通勤の場合は下記の通り。
①通勤距離に応じて非課税とされる金額の限度が決められている。
②高速道路料金も①に加えて非課税として扱われる。
※①と②を合わせた非課税枠は10万円が限度。
■駐車場料金は従業員が負担すべきものなので、会社が負担している場合には給与認定される可能性がある。
9.製造の米国回帰
中国から米国へ製造を回帰させる主な理由
・中国の人件費上昇
・消費者への輸送距離が長い
・品質
⇒2015年には米国の製造業が復活するのでは?
10.親子会社の決算日統一
・日本では親子間の決算日の統一が求められていない。
3ヶ月を超えなければOK
・近年、統一の動き有り(IFRS対応、経営効率化、IRの観点)
Q1:決算日の統一は会計方針の変更⇒遡及適用となるか?
A1:会計方針の変更に該当しない=遡及適用不要
Q2:統一する際の3ヶ月のズレはどうやって連結にとりこむか?
前期:2012/01 ~ 2012/12を取り込み、
今期:2013/04 ~ 2014/03を取り込むと、
2013年1月~3月が浮いてしまう
A2:利益剰余金で取り込むか、初回だけ15ヶ月のPLを取り込む
Q3:すべての子会社を同時に統一する必要があるか?
A3:同時である必要なし
11.M&A時のグループ経理規程の留意点
・会計方針の統一
→子会社の処理に合わせる選択肢も視野に入れる必要がある
・上場企業の財務報告に対応する体制の整備
→グループ経理規程に基づく会計処理の研修、管理資料の作成指導等が必要
12.連結納税を適用している子法人の株式を
連結グループ外に譲渡する際の留意点
<ポイント>
・譲渡前に親会社において子法人株式の簿価を修正
→二重課税、二重控除の防止
<例:利益が出る場合>
①子法人を取得(簿価100)→連結納税適用
②子法人は毎期利益計上
・利益は連結所得として課税→譲渡直前:剰余金(300)
③連結グループ外に譲渡
・帳簿上の簿価:取得価格(100)
・実態の簿価 :取得価格(100)+剰余金(300)
→このままだと剰余金(300)に更に譲渡益として課税
→二重課税防止のため、親会社において簿価を修正(400)
<補足>
・理論上は毎期修正すべきだが、実務上は譲渡時にまとめて行う
・投資簿価を修正しない例外もある(みなし配当、配当等)
13.特別損益の計上
■特別損益を計上するにあたって留意すべき点
・棚卸資産評価額
⇒収益性が著しく低下した場合、売上原価として計上
※ただし、臨時の事象に起因し、かつ多額の場合は特別損失として計上
EX.事業部門の廃止・災害損失の発生
・貸倒引当金戻入益
⇒引当金計上時に適正な見積りを行っていた場合、
営業費用または営業外費用から控除するか、営業外収益として計上
※ただし、引当金計上時の見積り誤りによる場合、修正再表示を行う
14.社外取締役について
■各社における社外取締役の選任状況
・東証上場企業のうち、54.7%(コーポレートガバナンス白書2013)
前年比で約6ポイント増加、ただし約過半数に達するに過ぎない
■会社法改正による影響
・社外取締役の選任義務化の見送り
→経済界からの反発
・「社外取締役を置くことが相当でない理由」の開示
→具体的な内容については、改正後の実務の動きに注視
■社外取締役に望まれる資質
・さまざまな事業への理解力、資料や報告から事実を認定する力、
問題及びリスク発見能力、応用力、説明・説得能力
・取締役会等の会議において、経営者や多数の業務執行取締役等のなかで、
素直に疑問を呈し、議論を行い、再調査、継続審議、議案への反対等の提案を行うことが出来る精神的独立性
15.メディアも悪乗りした「いつかはゆかし」の罪
・「1億円は貯まる。月5万円の積立で」という広告で急成長したアブラハム・プラ
イベートバンク(以下APB)
・先日、金融庁から6ヶ月の業務停止処分
【なぜ急拡大できたか?】
・「年利15%」を謳い文句に
・竹中平蔵や、日銀副総裁を広告に利用。
・FPのブログでも、「いつかはゆかし」を褒めちぎらせる
【何が問題だったか?】
①金融商品取引法違反
・APBは「投資助言業者」の資格しかないのにも関わらず、「助言」と称して実際は
特定の金融商品を顧客に「販売」していた。
→無登録販売
・APB自身はあくまで「助言」のため、投資ファンドから販売インセンティブは受け
取っていないが、
実態は同一会社である別法人を経由して販売インセンティブを受け取っていた。
②脱税(の可能性)
・上記別法人はバージン諸島籍。還流スキームが複雑で、脱税の疑いが高い。
(現在調査中)
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