2014年12月26日金曜日

12/26 勉強会:被買収会社のストックオプションの取扱い 他

1.貸付金利息の収入時期、履行期に確定は誤り

■まとめ
・個人間の貸付金の利息の確定時期はその年分ごとに確定する
・履行期が到来してから確定するものではない

■事例
・息子が母親に約1000万円を貸し付けた
・金利は年2
・返済の時期は母親の相続開始時または保有する不動産の売却時とし、利息も返済時にまとめて精算することとした確認書を取り交わした
・課税庁側は、返済時にならないと利息が確定しないので利息の収入時期は返済が確定した年分と主張した
・審判所の判断
 利息はその年分ごとに確定する
 よって、確定した年分の収入とすることが相当とした


2.評価額1億円以上の株式等、出国時に課税

■平成27年度税制改正が検討
(目的)
・巨額の含み益のある株式等を保有するものがキャピタルゲインが非課税となる国へ移住後、これを売却することで譲渡益課税を回避する”節税”を封じる。

(対象資産)
・株式、国債、社債など所得税法上の有価証券、匿名組合契約の出資持分、デリバティブ
 ただし”出国時”の評価額の合計額が「1億円以上」の場合

(対象者)
・出国直近の10年以内で5年以上居住者であった者

※納税猶予あり
・出国時に「担保」を提供する、かつ納税管理人の届出をすることが条件
・出国期間中に売却をせず「5年以内」に帰国すれば免除される


3.損金算入配当、実額のみ益金損金可能に

■外国子会社配当益金不算入制度から、損金算入配当が除外に
・現在、外国子会社の配当のうち95%は益金不算入(5%のみ益金)
 ⇒改正により、一部配当は100%益金算入となる

■対象となる配当
⇒外国で損金算入可能となっている配当のみ
 ・オーストラリア子会社からの償還優先株式
 ・ブラジル子会社からの利子配当

■益金に算入すべき金額
・基本は配当全額
・外国では損金算入と損金不算入の配当があるため、損金算入した金額が証明できる書類がある場合は、配当のうち損金算入した金額のみの益金算入で足りる


4.被買収会社のストックオプションの取扱い

(論点)
被買収会社が従業員に付与したSOを買収の際に買収会社が取得した場合の所得税の課税関係について
⇒所得税法に規定がなく質疑応答事例が出された

(課税関係)
(1)SOの付与時
 課税関係は生じない。
(2)SOの譲渡承認時
 給与所得が課税される。(譲渡承認時におけるSOの時価相当額に対して)
(3)SOの譲渡時
 譲渡所得は生じない。
 (譲渡価額・取得費等ともに譲渡承認時におけるSOの時価相当額となるため)


5.粉飾非関与の代表取締役に賠償命じる

■事例
・ニイウスコー社の粉飾決算(売上高約682億円の過大計上)に伴う株主の損害賠償請求
・社長は人事担当役員であり粉飾決算に関与していない

■争点
金商法に規定する「相当な注意」を用いたか否か 
 ()「相当な注意」とは役員が適切な注意をしても事実を知ることができなかったと証明した場合、その役員は賠償責任を負わない規定

■社長の主張
・人事担当役員にすぎないため、巧妙に仕組まれた不適切な取引を見破れることは不可能
・「相当な注意」をしても事実を知ることはできないと主張

■判決
・代表取締役社長は業務執行全般を統括する責任あり
・担当外であろうが疑いがある事情は、自ら確認する義務あり
・売上高が前月比約60億円も増加したが、不適切なものであるか否かの調査・確認も行っていない
 
 「相当な注意」を行っていないと指摘し、損害賠償命令がくだされた


6.消費税の計算処理

テーマ:税込方式、税抜方式、混合方式
1)納付税額の処理方法(税込、税抜の違い)
・税込方式
 -原則⇒翌期の申告時点で租税公課として費用計上
 -特例⇒決算において未払費用として租税公課に費用計上
・税抜方式
 ⇒仮受消費税、仮払消費税の残高を償却し、未払消費税を未払費用として計上
 ⇒貸借の差額は、雑損失 or 雑収入に計上

2)税抜方式のメリット
・売上原価の計算において、棚卸資産評価を税抜で行うため、税込に比べて粗利を圧縮できる
・少額減価償却資産等の判定(10万円未満、30万円未満)において、税抜で判定できる
・交際費損金不算入(800万円限度)の判定において、税抜で判定できる

3)混合方式とは
・課税売上は必ず税抜処理が必要
・課税仕入は、「棚卸資産」「固定資産」「経費等」の3グループに区分し、どれか1グループでも税抜処理すれば、他のグループは税込処理できる
・小規模事業者が、大型の設備投資をし、固定資産だけ税抜方式のメリットを受けたい場合などに活用


7.減額更正後に増額更正があった場合の延滞税について

■概要
1Aは期限内に相続税の申告をし4,000万を納付した。
2)その後土地の評価額を時価よりも高く申告していたため更正の請求をし1,000万の還付を受けた。
3Aは(2)で認められた評価額になお不服があったため異議申し立てをしたところ、逆に500万の増額更正を受けた。
4)課税当局は(2)と(3)の差額につき延滞税を課した。

Aはこの延滞税を不服として訴えた。

■裁判所の判断
一審・二審⇒納税者敗訴
最高裁⇒逆転勝訴

・上記(2)と(3)の差額は未納付の状態となっているが当初納付の際に一旦は納付されている。
・減額更正は税務署長が認めたものであるにも関わらず増額更正にあたり自らその処分を覆したものであること

ことから上記差額を延滞と評価するのは妥当ではないとして納税者逆転勝訴とした。


8.消費税:非居住者から原材料の供給を受けて加工する場合の消費税

■論点
・非居住者(外国法人)から原材料の提供を受け、日本国内で加工を行ったうえで海外に出荷するケース
・当該加工委託業務にかかる売上は、8%課税売上か免税売上か?

■答え
・免税売上となる

■該当条文
・消令17条②七(輸出取引等の範囲)
・非居住者に対する役務提供について、次に掲げるもの以外は輸出類似取引(免税)と規定している。
  イ:国内に所在する資産に係る運送又は保管
  ロ:国内における飲食又は宿泊
  ハ:イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
・輸出加工委託業務は、ハの『準ずるもの』に含まれない。


9.独立役員制度

・一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役or社外監査役
・上場会社は1名以上の確保が必須(東証の上場規程)
20142月には独立役員の1名以上は取締役であることを要請(努力義務)

■本誌が選ぶ2014年 5大ニュース
①単体開示の簡素化
②改正会社法公布 20155月施行
 ・社外取締役を置くことが相当でない理由の開示義務
 ・社外取締役等の要件等の厳格化
 ・会計監査人の選任解任等の議案内容決定権を監査役に
 ・監査等委員会設置会社制度 創設
 ・多重代表訴訟制度 創設
 ・株主による組織再編等の差止請求制度の拡充
③企業会計審議会に「会計部会」を新設
④金融庁と東証、「コーポレートガバナンス・コード(案)」公表
⑤税効果ルール見直しへ
 「検討の結果、実務への影響の大きさを鑑み、例示区分を撤廃せずに規定の一部を修正する方向性」

⇒あまり大きなニュースが無かった模様。


10.特定事業再編に係る税制について

1.特定事業再編とは
⇒ 産業競争力強化法にて認定された再編のこと
 ※認定要件として、生産性の向上や新たな需要拡大が見込まれること。
  (ex . 3年以内に有形固定資産回転率の10%向上が見込まれるなど)

2.特定事業再編に係る税制
(1) 特定事業再編投資損失準備金制度
⇒ 特定事業再編により取得した株式等の価格低下等の損失に備えた準備金の繰入が損金算入可能
⇒ 組織再編を促進し、事業の活性化を図ることが目的

※損金算入可能なのは特定株式等の取得価額の70%が限度。
※原則として、10年経過後に5年に渡って均等額を戻し入れる。

(2) 登録免許税の軽減


11.関連会社株式の減損処理とのれんの処理

Q.時価のある関連会社株式について四半期で減損処理をしました。
  のれん相当額の取り扱いについて教えてください。

A.連結子会社だった場合はどうするか、を前提として考える
  個別財務諸表における減損処理後の簿価と連結財務諸表における簿価とを比較
  個別の簿価が連結の簿価を下回る場合、のれんの未償却残高を限度に連結簿価を切り下げ
 ・持分法適用会社にあてはめる
  のれん相当額について、同様に処理。ただし、一行連結なので仕訳は、
  持分法による投資損益/関連会社株式
 ・連結子会社の場合との相違点
  連結:子会社株式評価損なので、特別損失
  持分法:持分法による投資損益なので、営業外損益

Q.洗い替え法により四半期決算での減損処理を戻入ることは可能でしょうか。

A.連結と同様に、四半期では切放法と洗替法の2つが認められている。
   四半期で減損処理をしても年度末で見直すことは可能。


12.組織再編における会計上の主な留意点

【再編決定時】
・固定資産、のれんの減損
 ⇒利用方法や利用方針の変更に伴う減損会計
・耐用年数の見直し
・固定資産の除却
・引当金の計上
 ⇒引当金要件に基づく計上

【再編時】
・企業結合時の会計処理
 ⇒取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引の会計処理

【再編後】
・会計方針
 ⇒再編後の会計方針の統一


13.IFRSにおける売却目的で保有する非流動資産等の取り扱い

※日本基準では、当該事項に関する区分表示や追加的な開示は求められていない。
 固定資産の中でも売却予定の資産を区分表示することで、将来CFの予測に資する目的

(1)IFRSの要求
・売却目的保有に分類される要件を充たせば
a.帳簿価格 b.売却コスト控除後の公正価値 のいずれか低い金額で計上し、減価償却は中止
⇒財政状態計算書において区分表示

(2) 非流動資産等の分類(一部抜粋)
・非流動資産等の帳簿価額が継続使用ではなく、売却で回収の場合は、売却保有目的に分類しなければならない
・現状のまま直ちに売却可能で売却可能性が高い
・売却可能性が高い=経営者等が売却計画の実行を確約し、当該計画が開始
・売却計画は分類から1年以内で完了


14.使える補助金・助成金vol.13「雇用調整助成金」

※今回から3回は「助成金」を扱います。
「助成金」は「補助金」と違い、「条件に合えば」給付されます。

・(対象者)
事業主

・(要件)
1)雇用保険適用
2)最近3ヶ月の売上が前年同期10%以上減少
3)事業所の全員について休業、教育訓練等を一斉実施

・(受給内容)
中小企業:休業手当または賃金相当額等の2/3
大企業:休業手当または賃金相当額等の1/2
※教育訓練の場合、1人1日1,200円を加算

・(手続き)
開始前に「実施計画」を、実施後に「支給申請」をハローワークに提出








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