2014年7月2日水曜日

6/27 勉強会:非公開会社を買収する際に留意すべきポイント 他

1.パックツアー提供は「輸出」に該当せず

<裁判事例>
国外の旅行会社に対する国内でのパッケージツアーの提供は、輸出免税取引に該当するか否か。
→輸出免税取引に該当しない

・請求人は、海外旅行会社に対してパッケージツアーという商品を輸出したと主張
・審判所は、「輸出」とは貨物を船に積み込んで国外へ送る行為を指すと指摘

従って
パッケージツアーの提供は船へ積み込むことによる資産の譲渡に当たらないため、輸出免税取引に該当しないと判断した。


2.共働き世帯にも配偶者控除適用の可能性

現状の配偶者控除は、専業主婦世帯の方が共働き世帯よりも恩恵が大きい
→夫婦2人で受ける控除額を同額とする仕組みが検討されている。

共働き世帯も配偶者控除適用となると、控除額は大幅に引き下げられる可能性大


3.時価を超える株式譲渡で譲渡所得と認めず

■個人から法人へ上場株式を売却したとき
 ・時価(譲渡対価として適正額)とは
  …証券取引所の終値をもとに算出した価格
 ・時価を超える価格で売却したときの所得区分
  ①譲渡所得:時価から有価証券の簿価などを控除した金額
   (分離課税)
  ②一時所得:時価を超えた価格
   (総合課税)

 ※東京地裁、東京高裁の判決より

■補足
 ・個人から法人へ株式を時価の2分の1未満で売却したとき
  ⇒時価で譲渡があったものとみなす


4.先端設備リースの会計処理、実務対応報告は2段階で公表へ

■リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームの概要
国(基金設置法人)とリース会社において、基本リース契約満了後、1年以内にリース物件を売却した際にリース会社に損失が発生した場合、当該損失の2分の1を国が補償する。
※リース物件購入価格の5%を上限

■対象となるリース契約
①先端設備等をリースにより導入するための契約であること
②中古品の先端設備等をリースにより導入するための契約でないこと
③二次利用価値を設定したリース契約であること
(リース料総額の現在価値がリース物件の取得価額の90%未満となる契約であること)
④リース期間が経済的耐用年数(法定耐用年数)の75%未満となるリース契約であること

■対象となる設備
・機械及び装置=すべて
・器具及び備品=電子計算機、放送用設備、電話設備その他の通信機器、試験又は測定機器、医療機器等
※最新モデルであること等の要件あり

■会計処理について
従来のリース取引と同様の取扱い
※今後、検討される可能性あり


5.代償分割の場合の取得費加算

【相続税の取得費加算制度】
・相続により資産を取得した場合で、310ヶ月以内にその資産を売却すれば、資産の取得費に支払った相続税の一部を加算できるという制度
 ⇒取得費が増えるため、売却益の圧縮を図れる

【事例(代償分割)】
相続人       :A氏、B氏(相続分は各1/2
相続財産の評価額  :土地100M
遺産分割方法    :A氏が土地100Mを取得、A氏がB氏へ現金50Mを譲渡
A氏の相続税課税価格:50M
A氏の相続税額      1.75M

【取得費加算額】
<原則で計算>
①相続税額 × ②相続財産の評価額 / ③課税価格
1.75M × 100M / 50M = 3.5M
⇒支払った相続税額以上に、取得費加算が認められることになり不適切

<代償分割の際の特例計算>
原則計算式中の「②相続財産の評価額」に一定の調整を加えることが必要
※調整するための算式は複雑であり省略
1.75M × (調整後)50M / 50M = 1.75M
⇒支払った相続税額が、取得費加算の上限となる


6.ショートレビューについて

・ショートレビューとは
 ショートレビューとは、監査契約締結前に行われる監査法人による短期調査をいう。
 概ね3~4名程度の人員で2~5日程度かけて行われ、報酬は調査に投入した人員により幅があり、30万円~500万円程度。

・ショートレビューの目的
 (1)IPOに向けての内部統制上及び会計処理上の問題点の抽出
 (2)監査業務遂行に必要な最低限度の内部管理体制(監査受入れ体制)が構築できているか否かの確認

・ショートレビュー後
 基本的には監査法人と監査契約を締結し、ショートレビューにより浮き彫りになった内部統制及び会計処理上の様々な問題点を改善していく。
 ショートレビュー時の対応や発覚した問題点によっては、監査法人に監査契約を拒絶されることも・・・


7.消費税:自動車リサイクル預託金も5%のみ分母へ

課税売上割合の計算上、金銭債権の譲渡額は5%のみ分母に算入すれば良いことになった改正の影響は、リサイクル預託金の譲渡にも及ぶ。

サービサーの不利益の解消を狙った改正であるが、中古車買取業者にも恩恵が及ぶことになる。


8.損害賠償事例:繰戻し還付の申請漏れ

■欠損金の繰戻し還付(適用要件など)
①中小法人のみ適用
※解散の場合は大法人にも適用
②前期が所得プラス、当期が所得マイナス(欠損)
③当期の確定申告書と一緒に還付申請書を提出する

<事象>
電子申告で還付請求書を提出したと思い込んでいたが、実際は処理されていなかった。
⇒繰戻し還付が受けられず損害賠償請求を受けた。

■防止策
①ダブルチェックを行う。
②紙ベースで提出完了書類を出力し、一覧表で再チェック

■参考
欠損金の繰戻し還付を受けられない場合でも、翌年以降所得がプラスとなれば繰越控除(9年間)の適用がある。


9.TOKYO PRO Market

・プロ投資家向け市場
・上場は2013年末時点で6社
・今年は2社増加で8社

特徴は4つ
・株主数や時価総額等の形式基準がない
・年間上場コストが500万円程度と他市場よりも安い
・上場申請から承認まで10営業日、上場後も内部統制報告書、四半期開示は任意
・指定アドバイザー制度「J-Adviser」の導入
 ※適格性の調査や上場前後を通じて指導・助言等を行う
  上場にはJ-Adviser」との契約が必須


10.非公開会社を買収する際に留意すべきポイント

・接触の仕方
 いきなり会社を売りませんか?M&Aしませんか?と提案すると相手が身構える
 ⇒「業務提携することでこのようなメリットがありますよ」とメッセージをうまく伝える

・オーナー経営者との接触の注意点
 オーナー経営者にとって長年育ててきた会社を売りに出すのは、複雑な気持ちを持っている
 ⇒買ってやるという態度ではなく、誠実、謙虚な姿勢で臨む

・財務諸表の精査
 基本的に非公開会社は税務会計を基準に決算している
 ⇒引当金、資産除去債務、減損処理、棚卸資産の評価、有価証券の評価、時間外手当の支給や社会保険の加入等の人事関係の処理が不正確・不適切に処理されている場合が多い為、十分なデューデリジェンスの実施が不可欠

・引継予定資産の精査
 たとえば、重要な取引先が経営者との長年の信頼でつながっている場合
 ⇒M&A後、取引関係が突然解消されるリスクがある為、引継期間を十分設定する

・ビジネス視点での精査
 案件の初期検討段階では、あえて財務数値の分析からは入らない
 ⇒財務数字は良くないが、事業内容や保有する資源が魅力的という場合もある


11.経理・財務担当者の資産横領手口と防止対策

()主な手口
①小切手の不正振出
 例)多忙な上長が未使用小切手に押印を済ませていた(金額を書くだけの状態)
②預金口座からの現金引出
 例)同じ人が通帳と印鑑を管理、鍵のかからない場所に印鑑を管理
③預金口座からの不正送金
 例)承認者のID・パスワードを把握
④保管現金の不正持出
 例)現金出納簿と現金有高記録の照合のみ(現金実査はしなかった)

()不正リストの高い組織
・業務の効率性を重視した内部統制の無視
・上長のチェックレベルが低い又は形骸化 等

()防止
・不正ができる機会を排除
・ルール違反禁止の徹底
・人事ローテーション


12.ヤフー・IDCF事件地裁判決後の実務対応

■実務対応における参考点
 ⇒東京地裁の判決であるため、ほぼ参考にならず
 ⇒若干無理のある判断とも見受けられる

■唯一参考に出来る点
 ⇒原告が他社の合理的なスキームについて容認されている、と主張したことに対して、裁判所側は下記の通り主張

  ・各事例においてそれぞれ性質が異なる
  ・当該事件において他スキームと比較するのは実質的でない
  ・今回の組織再編成の方法を前提として判断しないといけない
 ⇒納税者有利のスキーム比較は、税務調査においても強い論拠になりえない

■この事件の判決が覆っても、条文解釈の重要性が問われる点は変わりない


13.未上場の子会社(時価を把握することが極めて困難と認められる子会社)株式の評価について

①子会社株式の評価
原則:取得価額
例外:財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した時(※1)は、相当の減額(※2)を行い、評価差額は当期損失

以下私見ですが実務上の取り扱い
(※11株当たり純資産価額が取得原価に比し概ね50%以上下回った場合で、かつ、事業年度終了時の価額がその時点の帳簿価額の50%相当額を下回り、かつ、近い将来(3年~5年)回復の見込みがない場合
(※2)実務上は1株当たり純資産額×持株数まで減額

②子会社株式評価のための子会社管理
・日ごろから子会社の業績等の把握を適時にする
・子会社決算を会計基準等に従って作成しておく
・固定資産の減損等についても漏れなく把握しておく


14.急成長するMVNO市場(格安スマホ)

・日本の移動体通信市場は、現在1.5億件
MVNO1375万件(約9%

・大手の通信事業者から通信回線を借りて、ローコストでオペレーション
・通信速度、通信料に制限あり

・今後は業者向けサービスの拡充も

 ⇒センサー、計測器、自動販売機などの端末とセンター間の無線通信など、利用されるデータ量が予測しやすいものであれば、MVNOを利用しやすい





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