1.特別目的会社を利用した消費税節税スキームを封じ込め
・平成28年度改正において、特別目的会社を利用した消費税節税スキームを封じ込める改正がされる模様
・問題のスキーム
PFI事業の実施のため等に特別目的会社を設立
第1期目において、建物建築等に関する仕入税額控除により消費税の還付を受ける。
第2期目には、簡易課税を選択しみなし仕入割合相当の仕入税額控除を行う。
建物建築費等3億円(24百万円)、第2期目の課税売上5億円(40百万円)
(建設業のみなし仕入率70%) としたとき
第1期目の還付税額(課税売上がほぼない)約24百万円
第2期目の納付額 約12百万円(40百万円-40百万円×70%)
・改正案(平成28年4月1日より施行予定)
高額特定資産を取得(建築)した場合
その後の2期間においては免税事業者になれず、かつ、簡易課税の選択もできない(原則課税を強制適用)
建物建築費等3億円(24百万円)、第2期目の課税売上5億円(40百万円)
としたとき
第1期目の還付税額(課税売上がほぼない)約24百万円
第2期目の納付額 (課税仕入がほぼない)約40百万円
※高額特定資産:棚卸資産、調整対象固定資産
2.「企業版ふるさと納税」創設へ
・平成28年度税制改正にて「企業版ふるさと納税」が創設される見込み
⇒法人住民税および法人税の税額控除(寄付額の30%)
・ 対象となる寄付先は限定される
⇒三大都市圏で地方交付税不交付団体である地方公共団体(23区など)および法人の主たる事務所が立地する地方公共団体以外の地方公共団体
3.判決事例紹介/著作権の使用料の該当性、契約名だけで判断せず
韓国に本店を置く外国法人に対して支払った金員について、人的役務の提供の対価(国内源泉所得税の対象外)か、著作権の使用料(国内源泉所得税の対象)かどうか争われた事例。
■事例
・国内法人Aが韓国の法人Bと(韓国籍の芸能人Cとの)契約を締結した
契約内容…韓国で作成した画像や映像データは無償提供する旨
出演料や出演拘束や制限の対価に関するもの 等
・本件の料金を支払う際、源泉税を徴収していない
⇒AがBに支払った対価は源泉徴収が必要な支払かどうか?
■認定事実
・韓国語の広告映像をもとに日本広告用のテレビCM等を制作した
■判断
・契約書では素材に対する使用料は無償と記載があるが、日本向けに改編された広告の所有権・著作権は国内法人Aに帰属すると記載
⇒著作権の利用まで無償であることを定めた記載はないため、著作権に該当
4.PFI事業
・民間企業の保有する、ノウハウ・技術・資金等を活用して、公共施設の建設、維持管理、運営等を行う事業
・従来の公共事業とは異なり、民間企業が公共施設等を建設するだけでなく、完成後の維持管理・運営を含めたサービスを継続的に行うことが特徴
・平成11年度から始まり、実施件数は年々増加。
(平成27年3月末時点での累計実施件数は489件)
5.2度目の扶養控除等申告書に個人番号不要
・過去にマイナンバーを記載して扶養控除等申告書を提出した
・勤務先が個人番号を管理している
⇒2回目以降に提出する扶養控除申告書には、マイナンバーの記載は不要
(例)
・H28年
⇒マイナンバーを記載した扶養控除申告書を提出
・H29年
⇒扶養控除申告書にマイナンバーを記載しなくてよい
そのほかマイナンバーの記載を不要とする書類
・所得税の青色申告承認申請書
・消費得時簡易課税制度選択届出書
・相続税延納・物納申請書
上記書類は、主たる手続(申告書や届出書)と併せて提出されることが想定されるため、マイナンバーの記載は不要となる。
6.軽減税率制度の「簡素な方法」の全容
・H29/4/1 消費税10%へUP と同時に軽減税率が導入予定
※下記、11/26開催の与党税制協議会の合意内容
【1】請求書の書き方
・インボイス制度導入までは、経過措置として「区分記載請求書等保存方式」を採用
・いままでの請求書に、下記項目を追加すればOK
-軽減税率項目が分かるよう、(※)などを補記
-税率毎の請求金額を記載(10%対象 ×××円、8%対象 ×××円)
【2】課税売上高5000万円以下の特例計算
・中小企業者(簡易課税の判定と同様)は、売上の税率区分を下記により計算可能
※原則は、個々の売上について 8% or 10% を把握
特例(1) 課税仕入から計算する方法
軽減税率対象売上割合 = 軽減税率対象品目のための仕入/課税仕入総額
特例(2) 連続10営業日実績から計算する方法
軽減税率対象売上割合 = 通常の連続10営業日の軽減対象売上/通常の連続10営業日の総課税売上
特例(3) 50%計算
軽減税率対象売上割合 = 50%
7.消費税:インボイス方式(与党税協最新案)
7.消費税:インボイス方式(与党税協最新案)
■導入時期
改正法公布から3~5年間で導入
■概要
・呼称は「適格請求書」等保存方式(インボイス制度)
・登録番号の指定を受けた課税事業者は「適格請求書」の交付・保存の義務あり
・買い手は「適格請求書」の保存を仕入税額控除の要件とする
・免税事業者は「適格請求書」を交付できない
■検討されている特例
・小売業・飲食業・タクシー事業などの事業者は「適格請求書」の記載事項を簡易なものにできる(例えば、交付を受ける者の氏名・名称の省略可)
・免税事業者からの仕入税額控除に特例を設ける。
導入後3年間は80%、その後の3年間は50%の仕入税額控除可。
⇒免税事業者は「適格請求書」を発行できないため、免税事業者からの仕入については原則として税額控除の対象外である。
但し、免税事業者の取引への影響を考慮して経過措置が置かれる。
8.法人税:従業員による横領が発生した場合
8.法人税:従業員による横領が発生した場合
Ex.)従業員が架空外注費を計上し、横領したいたケースの取り扱い。
■横領が有った事業年度に遡り、修正申告を行う。
・架空外注費相当の損金の取り消し
・横領損失相当の損金の計上
・損害賠償請求権相当の益金の計上
⇒結果として、横領発覚前に比して所得が増加する。
■法人税基本通達2-1-43との関係
同通達には損害賠償金相当の益金の認識は、例外的に実際に損害賠償金を回収した期に行う事が出来る旨が規定されている。
しかし、法人内部の役員や従業員に請求する損害賠償金については適用されない。
⇒原則通り横領が有った期の益金として認識する必要がある。
回収できない場合に損金とするためには、貸倒損失等の規定の要件を充足する必要がある。
9.税効果指針
9.税効果指針
・適用時の影響額の一部は利益剰余金へ
・「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」と整理された
・公開草案は年内公表見込
10.株式価値算定算定方法について
10.株式価値算定算定方法について
1. 株式価値算定の分類
・インカム・アプローチ
⇒ DCF法等
・マーケット・アプローチ
⇒ 類似会社比準法等
・ネット・アセットアプローチ
⇒ 簿価純資産法等
2. 近年の評価方法の動向
(1) M&Aの場合
⇒ インカム・アプローチとマーケット・アプローチを採用されることが多い。
※M&Aの場合、将来の収益性を評価に反映する場合がほとんどの為、ネット・アセットアプローチの採用は限定的
(2) 相続税等を前提とした場合
⇒ ネット・アセットアプローチを基本とすることが多い。
※貸借対照表等の財務数値を基礎とし、客観性があるため。
11.非流動性ディスカウントを否定した最高裁決定
11.非流動性ディスカウントを否定した最高裁決定
・2015年3月26日最高裁決定
・事例
会社間の合併にあたり、反対株主が株式買取請求をした事例
・論点
(1) 反対株主は、自由意思による売却と異なり、新会社の合併設立に反対し、退社するもの
→事情を考慮する必要性。
・また、決議の反対によって買取請求、価格の決定の申し立てをした本件の場合の価格決定方法の
選定は裁判所の裁量による(評価方法は、様々。DCF、類似会社比較、修正簿価純資産…)
(2) 非流動性ディスカウントの意義と、各評価アプローチの考え方の比較
1.非流動性ディスカウント
非上場株式は上場株式に比べ、流動性が劣ることから、一定の割引を掛ける必要がある。
したがって、推定された株主価値の20%~30%のディスカウントを差し引くのが実務上定着。
→「流動性」に着目
2.評価方法(矢印は最高裁結論)
・マーケット・アプローチ(類似会社比較法など)
時価と比較して算定する手法であり、その結果は流動性を前提とする。
→非流動性ディスカウントを考慮すべき。
・インカム・アプローチ(DCF法、収益還元法など)
時価と比較する過程がない手法であり、流動性の有無を前提にしない。
→非流動性ディスカウントは考慮すべきでない。
・反論
インカム・アプローチの場合、流動性がまったくないのか?
→対象会社の将来CFや収益の現在価値をもって株主価値としており、将来のCF・収益が全額株主に還元されることを前提としている。
→この点で、完全な流動性が確保されているのでは?
12.評価手法の選定に関する裁判例
・事例
アートネイチャーが平成15年に取締役に対し、自己株式を譲渡したもの。
この価格が有利発行にあたり、取締役の任務懈怠を追及できるのか?
・株式価値の算定
DCF法 :7,897円/株(第三者評価)
配当還元法:1,500円/株(会社側の算定人評価。上記の譲渡はこの評価に基づき譲渡)
・判決(第一審、控訴審)
有利発行にあたる。
将来の収益等にや資産の状況等諸般の事情を考慮して株価を決めるのが一般的
そのようにDCF法で算定したら7,000円超/株になった。1,500円/株は著しく不公正!
・判決(最高裁)
有利発行にあたらない。
価値の評価方法は様々。
→専門家は事業計画等の有用性・利用可能性を検討分析し、適正な評価を決めている。
算定人Aと算定人Bの評価結果が違うことによって有利発行性が否定できるとすると、むしろ少数株主が損害を被る可能性が生じる。
例:
事業計画を将来5期分入手。すごく右肩上がりでハッピーな事業計画。
A氏-3期目以降の利益の達成は不確実性が高いため、2期目までを使用して算定
→結果: 1,000円/株
B氏-5期全部を使って算定
→結果:15,000円/株
このような場合に、B氏の評価が必ずしも妥当で、A氏評価に基づく発行は「著しく有利で不公正」といえるのか?
13.過去の誤謬に関する留意事項
1.金商法との関係
・修正再表示することはできず、修正再表示すべき程の重要な誤謬がある場合には訂正報告書の提出が必要
2.税金計算及び税効果との関係
・追徴税額及び還付税額が過去の誤謬に起因するものか
(適用税率の誤り、法令見落とし、法令解釈誤りは誤謬となる可能性が高い)
①起因しない ⇒ PL上、原則として「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す科目で記載
②起因する ⇒ 修正再表示する
・修正再表示により過年度の資産負債が修正され一時差異に該当する場合は、税効果会計を適用
3.会社法における誤謬の取扱い
・会社法上では修正再表示の規定が適用
①過去の誤謬に重要性がある ⇒ 修正後の過年度計算書類について監査や株主総会承認等の確定手続を再度行う必要あり
②過去の誤謬に重要性がなし
⇒ 前期間までの修正再表示の影響額を当期首の資産負債純資産に反映
14.外形課税拡大に激変緩和措置(総務省・経産省案)
・外形標準課税+利益にかかる税金の合計が15年度より増える場合、
・16年度 ⇒ 増税分の75%を免除。
・17年度 ⇒ 50%を免除。
・18年度 ⇒ 25%を免除。
15.取締役の兼任関係
(1)申請会社の常勤取締役は、原則として専任であることが求められるが、資本下位会社(子会社等)の役員および他の会社の非常勤役員の兼任は認められる。
⇒他の会社と申請会社との間に重大な取引関係がなく、申請会社の経営に影響を及ぼさない場合に限る。
(2)代表取締役は、資本下位会社以外の会社の代表権を有していないことが必要である。
⇒資本下位会社の代表取締役の兼任は認められるが、資本下位会社の労力をさかれ、申請会社の経営がおろそかになるようでは上場審査上問題となる。
(3)役員を兼任する100%子会社から役員報酬を得ることは原則として認められない。
⇒申請会社の役人が、兼任する100%子会社より役員報酬を得ることは、上場審査上問題となる。
■今週の新規上場会社
上場・公開日 社名 銘柄コード 市場 公募価格(円)
12月9日 ラクス 3923 マザ 1,080
12月11日 ランドコンピュータ 3924 2部 1,760
(ラクス)
業種:情報・通信業
事業内容:問合せメール共有・一元管理システム等のクラウド方式による開発・販売、ITエンジニアの派遣
主幹事:みずほ証券
監査法人:あずさ
(ランドコンピュータ)
業種:情報・通信業
事業内容:各種コンピュータシステムに関するコンサルティング、企画、設計並びにソフトウェア販売及び運用、保守管理
主幹事:野村證券
監査法人:トーマツ
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