2016年5月27日金曜日

5/27 勉強会:現行制度上付与可能な役員報酬のパターン 他

1.現行制度上付与可能な役員報酬のパターン
■利益連動給与
・改正事項:算定指標の拡充
・改正前:利益に関する指標
・改正後:利益の状況を示す指標

■事前確定届出給与
・リストリクテッド・ストックを事前確定届出給与の1つにした
⇒付与する株式数が付与時点で確定しているため
・課税関係
1)株式の譲渡制限が解除された時点で給与課税
※課税対象:譲渡制限が解除された時点の株式の時価
2)株式の譲渡制限が解除された日の属する事業年度で付与した法人は損金算入
※損金算入額:株式を交付した時点の株式の時価
・パフォーマンス・シェアは事前確定届出給与に該当せず
⇒中長期的な業績目標等の達成度合いに連動して付与する株式数が変動するため


2.分割型分割の定義が制度創設時と同じに
■組織再編税制創設時
⇒「分割により"分割法人の株主等にのみ"交付される場合の当該分割」

■会社法上、人的分割が廃止された時
⇒「分割により"分割法人"が交付を受ける…、」

■今回の改正
⇒上記に次を追加「又は、分割による分割対価資産の全てが"分割法人の株主等""直接"交付される…」


3.適格分社型分割(分割承継法人の処理について)
■事例
分割法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000
・時価⇒資産2,200、負債1,000
分割承継法人B
・吸収分割にともない資本金300、資本剰余金900増加

■分割承継法人Bの会計処理
()資産2,200 /()負債1,000
         /()資本金300
         /()資本剰余金900

■分割承継法人Bの税務処理
⇒適格分社型分割なので、移転資産負債を帳簿価格により譲渡したものとして計算する。
()資産1,500 /()負債1,000
         /()資本金300
         /()資本金等の額200

⇒したがって税務調整は以下となる
()資本金等の額700 / ()資産700

■別表調整
別表四 ⇒なし

別表五()
1.資産△700
2.資本金等の額700

別表五()
⇒利益積立金額 △700


4.非上場株をDCF法による時価評価で第二次納税義務(※)
※ 第二次納税義務とは、納税義務者に滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に満たないと判断された場合、その納税義務者と一定の関係がある者に対しても納税義務を拡張する制度です。
■請求人に対する第二次納税義務の納付告知処分をめぐり、滞納法人の子会社が実施した新株発行により請求人が取得した非上場株式の評価額が問題になった事案
・原処分庁が採用したDCF法および時価純資産法の併用方式による評価が認められた

■概要等
・原処分庁は滞納法人から国税を徴収するため、滞納法人が所有する子会社株式を差押え、公売しようとした。それに対し、子会社は第三者割当増資により、請求人に割り当てた。
・請求人は、本件滞納法人及び本件子会社の代表者であって、かつ、請求人を中心とする各グループ法人を通じて本件滞納法人の株式の70%を保有
・原処分庁は本件滞納法人から全面的な協力が得られなかったため、フリーキャッシュ・フローについて予測数値を使用
・事業計画に基づかず、過去の決算数値に基づき算定した
・非上場株式の評価の基準については、財産基本通達があるが、これは相続税及び贈与税の評価に関するもの。
 第二次納税義務の限度額を算定するための評価について規定はない。


5.除雪機は「機械及び装置」、「器具及び備品」のどちら?
除雪機は耐用年数表上の「種類」が何に該当するか争われた事例
■概要
・ハンドガイド式自力走行型除雪機(以下除雪機)をA社が購入
A社が除雪機を「機械及び装置」として中小企業等投資促進税制を適用申告
・原処分庁が「機械及び装置」に該当しないとして法人税の更正処分を行った

■結論
・当該除雪機は「器具及び備品」に該当
・中小企業等投資促進税制の対象資産にも該当しないため、同特例措置は適用不可

■判断基準
・「器具及び備品」は固有の機能を果たし独立して使用するもの
・「機械及び装置」は業用設備に属する複数の機械が設備を形成して、その設備の一部としてその働きをなすもの
⇒本件除雪機は単体で除雪作業を行えるものであり、それ自体で独立使用可能であるから「機械及び装置」には該当しない

※参考
ロータリー除雪車が「機械及び装置」に該当するか否かで争われた事例も過去にあり
⇒「車両及び運搬具」の特殊自動車に該当(除雪車)


6.繰延税金資産の表示は全て非流動項目へ
■企業会計基準委員会は、日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針を移管作業中

■国際的な会計基準と整合性が図られていない項目が論点の一つに
(1)DTADTLの表示
(2)未実現損益の消去に係る税効果の取扱い

(1)DTADTLの表示
日本基準:関連する資産・負債の分類に基づく流動固定分類
IFRS・米国会計基準:固定区分に表示

∴日本基準も全て固定区分に表示するよう、見直しを行う方針
(理由)
・国際的な会計基準に基づく財務諸表との比較可能性の確保
DTAは換金性のある資産ではない
F/S作成者の負担軽減

(2)未実現損益の消去に係る税効果の取扱い
日本基準:繰延法を採用 ※「税効果会計に係る会計基準」は、主に資産負債法を採用
IFRS:資産負債法を採用
米国会計基準:繰延法を採用(ただし、資産負債法に変更する旨の公開草案公表済み)

∴現時点では結論を出さず、一定期間を経て改めて審議を再開する方針
(理由)
・実務負担が大きい
 DTAの回収可能性を判定し直す必要あり
・米国において再審議中

(税効果会計の手法)
企業会計と税務計算の差異について、着眼点が異なる
・繰延法:会計上の収益・費用の金額と税務上の益金・損金の金額との間の差異に着目
・資産負債法:会計上の資産・負債の金額と税務上の資産・負債の金額との間の差異に着目


7.不正資金流出めぐり税理士の責任認めず
■概要
・税理士は被告法人より記帳代行及び決算業務を受注
・被告法人はA社に資金を流出。⇒「仮払金」処理。のちに不正資金流出と発覚
・税理士は上記資金流出を把握していなかった。
・決算にあたり、被告法人の担当者より以下仕訳を提案され処理
決算処理:(未払金)××× (仮払金)×××
翌期期首:(仮払金)××× (未払金)×××
仮払金を消すため同額を「未払金」と相殺し、期首に復活させる仕訳を依頼。
・被告法人がA社への不正な資金流出を税理士が見逃したとして損害賠償を請求した。

■被告法人の主張
税理士は適正な財務書類等を作成する義務があるにもかかわらず、決算時に適切な処理ではなく上記相殺処理をしたことは、不正資金流出の隠ぺいに加担したなどど主張

■裁判所の見解
・税務顧問契約の委任の範囲には、不正発見などを目的とした委任業務は含まれない。
・決算時の相殺処理について、資金流出をしらない税理士は、被告法人とA社との資金の流れを照合する義務を負っていたとはいえないと判断
⇒被告法人の請求を斥けた。
※税理士にも適切な財務書類を作成する義務違反があったと認定された。


8.消費税の軽減税率制度に関するQA
(軽減対象となるもの)
・食用の生きた魚
・ミネラルウォーターなどのペットボトル
・ノンアルコールビール、酒税法の酒類に該当しないもの
・食品製造・加工過程における添加物、食用の金箔
・医薬品等に該当しない特定保健用食品、健康食品
・食料品販売に通常必要な容器包装資材
・レストランへの食材の提供
※レストランが提供する外食は軽減対象外

(軽減対象とならないもの)
・家畜の飼料、ペットフード
・水道水
・お酒、みりん・料理酒等で酒税法の酒類に該当するもの
・医薬品等に該当する栄養ドリンク
・贈答用包装など別途費用が発生するもの
※食品と付加価値のある容器がセットで売られる場合は、一体資産として判定


9.法人税:建物附属設備等の「定額法」一本化に伴う届出の特例
■建物附属設備について定率法から定額法に変更する場合
・原則:変更しようとする事業年度開始の日の前日までに提出が必要
・特例:変更しようとする事業年度の確定申告期限までに提出でOK

■対象
2841日以後最初に終了する事業年度より適用
284月決算法人は630日までに提出をすればOK

■関連項目
・申告期限の延長を受けている場合には、延長された確定申告期限までに提出すればOK
3年以内に「定額法」⇒「定率法」の変更をしている場合でも変更可
(原則は前回の変更後3年を経過していないと再変更が認められない)


10.法人税:定期同額給与の臨時改定事由
役員報酬の金額変更が認められる臨時改定事由としては
・役員の職制上の地位の変更,その役員の職務の内容の重大な変更
・その他これらに類するやむを得ない事情が定められている。(法令69 11号ロ)

『その他その他これらに類するやむを得ない事情』の具体例を示した規定は無い。
一般的には、不祥事等により一定の期間役員給与を減額する場合が該当するものと解されている。


11.海外会計トピックス
・アリババ(中国企業)はエンロンの再来か?
⇒エンロンは巨額の負債を非連結会社に飛ばす粉飾を行っていた
 アリババも配送業務は非連結会社が実行していて似ている

・労働過多の会計士
⇒アイルランドではCPAの労働過多が問題になっている
⇒監査人の環境が相当厳しくなってきている

FASB:のれんについて
⇒将来的には、のれんの償却を容認することや、減損テストの方法について変更することを検討している。


12.平成283月期の有価証券報告書作成上の留意点
1.企業結合に関する注記
・取得による企業結合が行われた場合の注記
⇒取得価額と対価の種類毎の内訳を記載
⇒主要な取得関連費用の内容と金額を記載
・暫定的な会計処理の確定に関する注記
⇒見直した内容と金額を記載
・共通支配下の取引等の注記
⇒非支配株主との取引による持分変動の内容と影響額を記載

2.法人税率の引き下げ等に伴う税効果会計に関する注記
⇒法人税等の税率の変更によりDTADTLの金額が変更
⇒変更がある旨と影響額を記載

3.未適用の会計基準等に関する注記
⇒「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を早期適用していない場合
⇒未適用である旨を記載
※「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」は、平成2841日以降開始する
事業年度から適用原則だが、早期適用も可能。


13.消費税「軽減税率」導入への対応ポイント
■飲食料品
【外食】(対象外)
フードコートのような形態も含まれる
【テイクアウト・宅配等】
ファストフード店など…提供を行うときに相手側に意思確認するなどの方法で判定を行う
【ケータリング・出張料理等】(対象外)
軽減税率の対象とならない
【有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供】
政策上の配慮から、学校、老人ホーム等での飲食料品の提供は軽減税率の対象
ただし、対象者や対象金額にも制限あり
【酒類】(対象外)
みりんは酒類に含まれるが、ノンアルコールビールや甘酒は酒類に含まれない。

■新聞等
【定義】
・政治、経済、文化等に関する一般社会的事実を掲載する
・1週間に2回以上発行する
・定期購読契約に基づく譲渡
⇒すべての要件を満たすものは軽減税率の対象。
⇒スポーツ新聞、業界新聞などであっても、要件を満たせばOK


14.決算早期化を実現するための対応策
■業務プロセス・会計処理
・業務手順の改善
・不要な業務の削減
・決算業務の前倒し
・関連部門、外部企業との利害調整

■人材・組織
・経理スタッフへの教育研修強化
・シェアードサービスセンターやアウトソーシングの活用

ITシステム
・統一勘定科目体系の親子間での統一


15.購買プロセスの決算早期化のポイント
(1)早期化の阻害要因
・請求書の締め日を月末としていたため、請求書到着後の業務量が多かった
(2)対応策
・期末日前の業務量に余裕があったので、仕入先に対して締日を20日、月末の2段階とする運用を打診
(3)その他の対応策
・期末日発行の請求書は到着までのタイムラグがあるので、事前にFAXPDFで入手し処理を先行現物が届き次第、処理内容と照合
⇒多数の支店・支社あるいは部門から請求書を回収して経理部で処理する場合も同様の対応で業務量の集中を緩和


16.設備投資を計画どおりに進める3つのポイント
■設備投資計画の役割
PDCAを円滑に回すツール・中長期的な損益目標を達成するための手段の一つ

■設備投資計画どおりにいかなくなる主因と解決方法
・企業としての戦略がない(市場鈍化時の計画は過剰投資のおそれ)
・戦略はあるが計画が不整合 (ボトムアップのみによる投資計画)
・定量的な効果が考慮されていない
・計画策定で満足し、達成コミットメントがない

■設備投資計画どおりに進める方法
・戦略と整合させる
・定量的な目標を定め、モニタリング
・責任者の目標達成のインセンティブを与える仕組み


17.グループ法人税制概要
100%グループ法人間の資産の譲渡
⇒譲渡した法人において譲渡損益を繰り延べる

100%グループ法人間の寄付
⇒受けた側は受贈益を全額益金不算入、支出した側は全額損益不算入 

・受取配当
⇒全額益金不算入

・自己株式の買い取り
⇒譲渡した法人において譲渡損益を計上しない(繰り延べではない。発行法人側で資本金等の額を加減算)

・清算中法人等の株式評価損
⇒損金不算入


18.特別利害関係者等との資金の賃貸借
(1)申請会社が特別利害関係者等に金銭を貸し付ける場合
⇒申請会社にとって取引の合理性が乏しいため、解消する必要あり。

(2)申請会社が特別利害関係者等から金銭を借り入れている場合
⇒借入条件が無利息のようにそれが申請会社にとって有利であっても解消する必要あり。

申請会社が個人的な経営から脱却し、特別利害関係者等から独立した経営を遂行し得るかどうかが上場審査上問われるため、金銭の賃借取引は解消が必要となる。









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