2016年6月3日金曜日

6/3 勉強会:固定資産税の設備投資減税、対象は"機械装置"のみ 他

1.相続財産の仮装隠ぺいをめぐる最近の裁決事例

■ケース1 子供名義預金の申告漏れ
・夫が死亡、妻と4人の子供が相続人
・夫が生前に子供名義で預けていた定期預金合計1億円があった
・妻はその存在を知っていながら、申告を依頼した税理士には知らせず
・申告後の調査で、定期預金の存在が明らかになった。課税庁は相続財産と知っていながら申告していなかったと重加算税を妻らに課した

・不服審判所の判断
1、定期預金は夫が管理していた、子供はその存在を知らず…相続財産と判断
2、妻はその存在を知っていながら隠した…妻には隠ぺい行為があった
3、子供らは申告手続きを妻に委任しているが、その選任等に過失がないと認められる特段の事情がない
上記より、重課の賦課要件を満たすと判断

■ケース2 同族会社に対する貸付金を減少させる仕訳を入れた行為
・オーナー社長(その後死亡)が自己からの借入金を減少させる仕訳を計上
短期借入金/売掛金
短期借入金/短期貸付金
・オーナー社長は相続人に対しては、会社の不良資産と同額の借入金を減額させると伝えていた
・相続人は帳簿上の借入金残高を相続財産として相続税を申告
・申告後の調査で、借入金の帳簿残高を減少させた点が仮装隠ぺいに該当するとして重加算税を相続人に課した

・不服審判所の判断
1、オーナー社長からの借入金が4億円もあったので、減らしたいと思うのは当然
2、仕訳で減少させた資産の一部はほぼ価値がなかったと言える
上記より、借入金を減少させる行為の一部はオーナー社長の意思で行ったと推察されるため、相続人の仮装隠ぺいと認めることはできないので重加算税の課税を取り消した


2.適格分社型分割-税務否認金額がある場合(分割法人)

■事例
分割法人A
・簿価⇒資産500、負債200(全て貸引、内、繰入超過額100)
・対価はB
分割承継法人B
・吸収分割にともない資本金100、資本剰余金200増加

■分割法人Aの会計処理
()貸引200/()資産500
()B社株300

■分割法人Aの税務処理
⇒適格分社型分割なので、移転資産負債を帳簿価格により譲渡したものとして計算する。
()貸引100/()資産500
()B社株400

⇒したがって税務調整は以下となる
()B社株100/()貸引超過額100
※別表五()にある貸引超過額の消去のため

■別表調整
別表四⇒なし

別表五()
1.B社株100
2.貸引超過額△100

別表五()Ⅱ⇒なし


3.棚卸資産の税額調整

■免税(課税)事業者が課税(免税)になる場合には、期首(期末)棚卸資産について、税額調整が必要となる。
(免税事業者が課税事業者になった場合)
・期首の在庫について税額控除を認める。
・なお課税事業者となる直前期の仕入商品だけでなく、免税期間中に取得した棚卸資産すべて税額調整の対象とできる。
・簡易課税の場合は適用不可
・棚卸資産の明細を記録した書類を確定申告期限から7年間保存しなければならない。

(課税事業者が免税事業者になる場合)
※課税事業者を選択している事業者が「課税事業者選択不適用届出書」を提出し、翌期から免税事業者となるケース
・期末棚卸資産のうち、当課税期間中に仕入れたものについては仕入税額控除を制限する。

■棚卸資産の範囲
・商品又は製品(副産物及び作業くずを含む)
・半製品
・仕掛品(半成工事を含む)
・主要原料
・補助原料
・消耗品で貯蔵中のもの
・上記に掲げる資産に準ずるもの


4.公共施設等運営権は設置期間が耐用年数

■公共施設等運営権
・平成23PFI法改正により創設
・民間事業者が公共施設を運営して利用料金を収受する権利

■会計上の取り扱い方法
・運営権者が公共施設等運営権を取得した際には、運営権対価の総支払総額を無形固定資産計上する
・リース会計基準に定めるリース取引に該当しない
・運営権設置期間を耐用年数として算定する
・定額法、定率法等の一定の方法で減価償却を行う


5.固定資産税の設備投資減税、対象は"機械装置"のみ

■固定資産税の設備投資減税
中小企業が取得する新規の「機械装置」について、3年間、固定資産税を1/2に軽減

■前提
・中小企業等経営強化法に基づき、
・中小企業者(1)が経営力向上計画(2)を作成し、
・事業所管大臣から認定を受けること
(1)資本金1億円超又は従業員が1,000人以上の大企業の子会社等は対象外
(2)事業所管大臣が策定した「事業分野別指針」に沿って、
顧客データの分析を通じた商品・サービスの見直し、ITを活用した財務管理の高度化、人材育成等により経営力を向上させて実施する事業計画

■適用要件
以下の要件をすべて満たすこと
(1)販売開始から10年以内
(2)旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上
(3)1台又は1基の取得価額が160万円以上
⇒生産性向上設備投資促進税制(3)A類型とほぼ同様の要件、重複適用も可
(3)対象資産は「機械装置」に限らず

■適用期限
中小企業等経営強化法の施行日(平成287月頃予定)から平成31331日まで
※生産性向上設備投資促進税制は、平成29331日まで
⇒両制度の重複適用を考えている場合、中小企業等経営強化法の施行日から平成29331日までに上記適用要件をすべて満たした「機械装置」を取得する必要あり


6.公示送達とは

○○状などの送達を受けるべき者の住所等が不明な場合に、地方公共団体の掲示板に、送達を受けるべき者に交付する旨を掲示すること。

・主に住所不明により返送され、住民票の取得等の調査を行っても住所を把握できない場合に公示送達の対象となる。
・掲示した日から7日を経過した日をもって送達されたとみなされる。


7.国外転出者への公示送達で差押え取消す

(東京高裁事例)
・当局が、海外へ引越しした納税者Aに対し、「公示送達」の方法により督促状を送付し、財産を差押さえした。
Aは、公示送達による督促は無効であり、差押の取消を求めた。

※公示送達:相手方の住所・居所が分からない、海外に住んでいて交付証明が取れないとき等に、簡易裁判所での掲載や官報掲載することで、法的に送達したものとする手続き。

(判決)
・督促状を送付する1ヶ月半前に、納税者の日本国内の旧住所宛に納税通知書を送達し、返送されてこなかった(旧住所=居所宛に届いたことが確認できた)
・督促状についても、公示送達する前に旧住所(居所)宛に送付すべきであった。
⇒公示送達の手続きに違法性があり、公示送達による督促・財産差押は無効


8.消費税:高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例

■高額特定資産とは
一の取引単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいう

■取得した場合の特例
原則課税を採用している課税期間に高額特定資産を取得した場合、
その取得日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する
各課税期間においては納税義務の免除及び簡易課税の適用はない。

<具体例>課税期間は4/13/31
H26 課税売上6,000
H27 課税売上500
H28  原則課税、高額特定資産を取得
H29 強制的に原則課税
H30 強制的に原則課税
H31 H29の課税売上により判定

■適用開始時期
平成2841日以後に取得した場合に適用。
但し、平成271231日までに締結した契約に基づき取得した場合には適用除外


9.【マイナンバー】マル扶へのマイナンバー記載が不要となるケース

会社が下記の事項を記載した帳簿を備えている場合には、扶養控除等申告書(マル扶)へのマイナンバーの記載は不要となる。
・従業員等の提出者本人や家族等の氏名、住所、マイナンバー
・帳簿の作成にあたり提出を受けた申告書の名称(前年のマル扶など)
・帳簿の作成にあたり提出を受けた申告書の提出年月

H29/1/1以後に支払を受けるべき給与等に係る扶養控除等申告書について適用される。
(=次回提出する分から適用)
※※
上記取扱は国税庁の「源泉所得税関係に関するFAQ」に5/17に追記された。


10.後発事象

・後発事象:決算日後に発生し、会社の財政状態、
 経営成績及びキャッシュ・フローに重要な影響をおよぼす事象のこと
・火災、重大な損害、多額の増資・減資、合併など
・決算日後に発生した事象の原因が決算日現在において既に発生している場合 「修正後発事象」に該当
・翌年度以降に影響を及ぼす事象の場合、「開示後発事象」に該当
20163月期では熊本地震を開示後発事象として開示する注記が目立つ


11.ベンチャーキャピタルの投資プロセス

(1)調査分析
市場動向・業界情報等を調査し、事業計画の実現可能性を含め事業の将来性を検討。
また、公認会計士による財務調査が行われる場合もあり。

(2)投資条件決定
会社とベンチャーキャピタルとの間で各種の投資条件を交渉して取り決める。
株価決定やシェア率(資本政策)の詳細を決定。

(3)投資実行
ベンチャーキャピタル内の投資委員会の審査(12ヶ月程度)を通り、承認されれば投資が実行。

(4)投資先支援
取引先・提携先紹介や経営陣・管理部門の人材紹介などが行われる場合あり。

(5)投資回収
対象会社が上場した場合、経営者が買い取るか、一部は売却するか市場に影響を与えない形で少しずつ売却するかの方法で、ベンチャーキャピタルはキャピタルゲインを獲得。
(資本政策で、上場時に流動化する株主比率の把握と対策が経営者に求められる)








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