2016年10月1日土曜日

9/30 勉強会:月次決算の早期化 他

1.高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例(2)

■届出書が無効とされるケース(平成22年度改正法)
・課税事業者を選択し、強制適用期間内に調整対象固定資産を取得した場合
⇒調整対象固定資産を取得した日の属する課税期間の初日から2年間は課税事業者選択不適用届を提出できない
 3年目以降に提出可能、4年目以降に免税事業者になれる
⇒翌期以降の課税事業者選択不適用届出書を提出した後に調整対象固定資産を提出した場合は不適用届の提出はなかったものとみなされる

・課税事業者を選択、または新設法人で課税事業者となった者が強制適用期間内に調整対象固定資産を取得した場合
⇒調整対象固定資産を取得した日の属する課税期間の初日から2年間は簡易課税選択届を提出できない
 3年目以降に提出可能、4年目以降に簡易課税事業者となれる
⇒翌期以降の簡易課税選択届を提出した後に調整対象固定資産を提出した場合は選択届の提出はなかったものとみなされる

■平成22年度改正法の弊害
・高額資産でも棚卸資産であれば調整対象固定資産とならない
・強制適用期間経過後に固定資産を取得することでその翌期以降に免税(簡易)課税事業者になれる
・特定期間の特例で課税事業者となった場合は強制適用期間が生じない

■平成22年度改正法
・強制適用期間内に調整対象固定資産を取得した場合は、取得日の属する課税期間の初日から3年間は免税(簡易)課税事業者になれない
・調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で税抜き100万円以上のものが該当する


2.非適格現物出資(デット・エクイティ・スワップ)(被現物出資法人)

■事例
ABへ貸付金を現物出資(非適格)
貸付金は簿価100時価20

Bの会計処理(帳簿価格で現物出資した場合)
(借入金 100 / (資本剰余金 100
 
Bの税務処理
⇒非適格現物出資なので、Aからの貸付金は時価により取得となる。
(借入金100
                      / () 資本金等の額 20
                      / () 債務免除益 80

⇒したがって税務調整は以下となる。
(資本金等の額 80 / () 債務免除益 80

■別表調整
別表四⇒債務免除益計上漏れ80(加算・留保)

別表五()
⇒資本金等の額80

別表五()
⇒利益積立金額-80


3.課税特例一部不適用も錯誤無効は認めず

■原告(納税者)が被告(地方自治体)に対し、収用された土地の一部に課税特例の適用がなかったことを理由に売買契約の錯誤無効を主張した裁判
・原告が敗訴(約1,100万円を追加納付)
・契約書には本件土地を「道路用地」及び「公園用地」として利用する旨などが明記
・税務署から公園用地に係る譲渡所得は課税特例の適用がないと指摘
・被告の担当者は公園用地に係る譲渡所得について特別控除の適用ないし利用を説明していた
・原告は公園用地に係る譲渡所得について特別控除の適用を受けていた
⇒以上から本件売買契約の錯誤無効を主張した原告の請求を斥けた


4.役員報酬(給与)・役員退職給与の相当額(過大額)の認定

泡盛の製造、販売等を行うA社における役員報酬(給与)・役員退職給与の損金算入の是非について争われた裁判

■注目点
・報酬(給与):通常勤務している役員に対する相当額が争点
・退職給与:功績倍率法()の最終報酬月額が高すぎる事に対する課税処分の是非が争点
()退職金=最終報酬月額×在任年数×功績倍率

■判決
・報酬(給与)
A社より業績が良いと判断できる類似他社の代表取締役及び役員らの報酬(給与)の最高額-A社の報酬(給与)=不相当に高額な部分(損金不参入)
・退職給与:
類似法人の代表取締役の最高年収÷12×在任期間×功績倍率≧A社の退職給与
A社の退職金額に不当に高額な部分があるとはいえない


5.今週の専門用語

■オープンイノベーション型
⇒特別試験研究費税額控除制度

・研究開発税制の一つ
・研究費用総額の一定率の税額控除を認める制度
・控除率
 【大学や国の研究機関との共同・委託研究】…30
 【企業間での共同研究・中小企業への研究委託】…20
・法人税額の5%が上限
・本制度を使った場合、総額型の適用対象外となる


6.研究開発税制、総額型の控除割合25%

・研究開発税制の改正:平成29年度税制改正における、法人関係の改正でひそかに企業の間で話題を呼んでいる

・現行の税制
恒久措置:総額型、オープンイノベーション型
平成28年度末迄の時限措置(上乗せ措置):増加型、高水準型

・上乗せ措置に対する改正要望(経産省・厚労省)
増加型:延長の要望しない(高水準型:延長の要望する)
⇒増加型の廃止に伴い(増収効果あり)、総額型の控除割合の見直しの要望あり

・総額型の控除割合
現行:試験研究費総額×8%10%、要望:試験研究費総額×6%,8%,10%,25%(1)
(1)中小企業者等:12%,25%
⇒控除率の下限を引き下げ、研究開発費の支出が少ない企業の税額控除を抑える一方で、控除率の上限を大きく引き上げることで、研究開発費の支出を促そうという意図

試験研究費総額×25%の税額控除(2)が実現すれば、かなりの税負担軽減効果が見込める
⇒実現すれば、話題を呼ぶだろうし、企業の研究開発予算の策定にも大きな影響を与え得る
(2)ただし、税額控除の上限は、現行制度同様、法人税額×25%


7.相続税をめぐる最近の課税処分取消し裁決事例

■事例
A税務署管轄に家屋を有し、B税務署管轄の老人ホームで生活
・上記老人ホームで亡くなった
・税務調査のうえA税務署に期限後申告。
・これに対し、A税務署が重加算税を賦課した。
・納税地は老人ホームのため、A税務署に賦課決定の権限はないと主張。

■争点
納税地がどちらになるか。
※被相続人の住所が国内にある場合の相続税の納税地は、被相続人の住所地とされている。

■国税不服審判所の判断
・入居した老人ホームで終身的に利用可能であった
・死亡時まで体調が回復せず自宅に起居することが不可能であった
・入居時から死亡時まで日常生活を送っていた。
以上のことより、生活の実態は老人ホーム(B税務署管轄)であると判断し、重加算税の賦課決定を取り消した。


8.中小企業等経営強化法における経営力向上計画書記載の留意点

・中小企業等経営強化法がH28.7.1から施行
・固定資産税の軽減措置、各種金融支援等の適用が受けられる
※主には機械装置等を購入した場合の固定資産税軽減に活用
・「経営力向上計画」に係る認定申請書を主務大臣に提出する必要あり

【認定に係る留意点】
(1)工業会等の証明書が必要
・「経営力向上計画」の提出には、設備メーカーを通じて工業会等による証明書が必要
・証明書は発行に数日~2ヶ月程度かかるので、事前確認必要

(2)計画書提出期限
・機械等の取得日から60日以内に計画の申請が受理される必要あり

(3)計画の内容
3年~5年計画とする必要あり


9.相続税:未分割財産と相続税申告時の添付書類

■「3年以内の分割見込書」の添付
・配偶者の相続税の軽減
・小規模宅地特例
・特定計画山林の特例
・特定事業用資産の特例
4つは、申告期限までに分割協議が整わない場合、原則として適用されない。
但し、「3年以内の分割見込書」を添付すれば分割後に特例を適用することができる。
⇒分割の結果、過納となった場合は分割の翌日から4月以内であれば更正の請求が可能。

なお、3年以内に分割協議が整わない場合には「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出するとさらに適用期間が延長されることがある。


10.【地方税】地方税の特例措置 当初申告要件の有無

法人事業税や法人住民税に規定されている納税者有利の特例措置について、主なものの当初申告要件の有無は下記のとおり。

■当初申告要件 あり
・企業版ふるさと納税

■当初申告要件 なし
・〈付加価値割〉雇用安定控除の特例
・〈付加価値割〉地方版 所得拡大促進税制
・〈資本割〉無償増減資の加減算措置
・〈資本割〉特定持株会社に係る特例
・〈資本割〉資本金等の額が1,000億円超の法人に係る特例
・〈外形標準課税拡大〉負担軽減措置
・〈法人住民税均等割〉無償増減資の加減算措置


11.年金資産の内訳開示

・年金資産:退職給付制度のために積み立てられた資産
 ①退職給付以外に使用できないこと
 ②事業主及び事業主の債権者から法的に分離されていることが必要。
・年金資産の主な内訳の記載が必要
・年金資産の主な内訳を具体的に記載せずに「その他」にし、「その他」の割合が過大になっている点を金融庁が指摘。


12.非居住者である匿名組合出資者への利益分配

・原則として、支払い時に源泉徴収が必要(20.42%)。
・ただし租税条約に別意の規程があればそれに従う。

・任意組合契約では、組合の損益は、直接組合員に帰属。
・匿名組合契約では、分配を受けた時点で、組合員は所得を認識。
・区分は雑所得だが、法令により源泉徴収の対象とされている(居住者、非居住者問わず)。


13.月次決算の早期化

上場審査上、月次決算は通常、10営業日前後で作成し、翌月15日前後で取締役会に報告する必要がある。
ポイントは主に以下。

1)スケジュール管理の徹底
⇒経理部への請求書や伝票提出の締切日を設定し、必要なデータをどの部署からどのタイミングで入手するかなど、経理部及び経理部以外の部署も視野に入れたスケジュールの作成が必要である。

2)決算業務の標準化
⇒例えば、経費精算の入力作業を各部署で分散するなど、各部署で自己完結的に業務が完了すれば、決算の負担は軽減される。

3)日常業務の精度向上
⇒月末にまとまって作業はせず、毎日や週○回など、こまめな入力やチェックを行う必要がある。

4)概算計上等の簡便的手続きの採用
⇒月次決算の場合には、年度決算と同様の方法で処理しなくとも、一定の精度が確保されれば簡便的な処理も有効と考えられる。

⇒例えば請求書の到着は遅いが毎月計上のものは、概算で計上しておき、実際額との差額を翌月の月次で修正するなど。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿