2017年5月13日土曜日

5/12 勉強会:役員給与・株式報酬関連税制の改正の概要 他

1.改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の解説

・指定国際会計基準、修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社等を実務対応報告第18号および第24号の対象範囲に含める
 ※実務対応報告第18号、24号が開発されたときに国内子会社等がIFRSを適用することは想定されていなかった
⇒この結果、該当の国内子会社等が実務対応報告第18号、24号を適用する場合には、一定の修正(のれんの償却等)を前提に、それらの連結財務諸表を連結決算手続上利用することが可能

・適用時期:平成2941日以後開始する連結会計年度の期首から


2.過大役員給与めぐる税務訴訟、東京高裁も納税者主張を認めず

泡盛の製造、販売等を行うA社における役員給与の損金算入の是非について争われた裁判
1.地裁の判断
類似他社の役員給与の最高額-A社の役員給与
=不相当に高額な部分(損金不参入)

2.A社の主張(控訴理由)
(1)地裁で国が類似他社の抽出に売上高倍半基準※を使用したのは違法
(売上と給与は相関関係が無い)
A社の売上高の2倍以下1/2倍以上の範囲内にある同業者を選定する方法
(2)恣意的な役員給与支給による法人・個人を通じた租税回避の事実はない
(3)確定申告時点で、不当に高額な金額があると予測する事は不可能

3.判決理由
2-(1)⇒売上高と営業利益、純資産、総資産及び従業員数の間には、それぞれ相関関係があるとされており、売上高倍半基準の採用は合理的
2-(2)⇒租税回避事案でない事は、給与が不当に高額でない根拠にならない
2-(3)⇒役員給与が類似法人に比べて大幅に高額と認識する事はできていたはず


3.公共施設等運営権の会計処理が近く公表

企業会計基準委員会が、「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表

■会計処理
・合理的に見積もった支出額の総額を無形固定資産に計上
・原則として、運営権を保有する期間を耐用年数として償却
・更新投資(維持管理費)のうち、資本的支出の部分は資産と負債を同額計上する

■注記事項
(1)運営する公共施設等運営事業の概要
(2)減価償却の方法
(3)更新投資に係る事項(維持管理費用等)

■適用時期
H29/5/31以降終了する事業年度or4半期会計期間より適用


4.実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」について

■前提
・退職給付債務=退職給付見込額(現在価値)-年金資産
・退職給付見込額(現在価値)の割引計算に利用する割引率は、安全性の高い債券の支払見込期間における利回りを基礎とする。

■本実務対応報告における取扱い
・上記利回りが期末日時点においてマイナスとなる場合、
(1)マイナスの利回りをそのまま利用する、もしくは、(2)利回りの下限としてゼロを利用する

■適用時期
・平成29331日に終了する事業年度~平成30331日に終了する事業年度


5.業績連動給与引当金は損金算入不可

H29年度改正にて、業績連動給与(旧利益連動給与)の支給に伴う算定指標に、複数年度にわたる指標が加えられた。

この改正に伴い、業績連動給与の損金経理要件に、「引当金勘定に繰り入れられた金額を取り崩す方法により経理すること」との文言が追加。

すなわち、
引当金計上時⇒損金算入不可
取り崩し時⇒損金算入可

()
5年間で最大200の業績連動給与が支払われる。

1年目40 ⇒損金算入×
2年目40 ⇒損金算入×
3年目40 ⇒損金算入×
4年目40 ⇒損金算入×
5年目160 ⇒損金算入○(債務確定=取り崩し)
5年目40 ⇒損金算入○(5年目は引当金計上しないため)

∴算定対象期間の最終事業年度に損金算入されることとなる。


6.飲食店業の所得帰属めぐり原処分取消し

■事例
・ホステス業を行う飲食店で働いているチーフに所得税と消費税が課される
・その後チーフが、自分に収益は帰属していないとして処分の取り消しを求める

■ポイント
・チーフとママのどちらが事業主であるか?

「チーフ」
・経理担当事務者、飲食店営業許可の名義人、建物賃貸借契約の名義人、開業届出書の届出人
「ママ」
・資金管理、利益管理、ホステスの雇用、労務管理等を行っており、明らかに一従業員の立場ではない
・契約書の多くがチーフ名義となっているのはママの指示

■裁決
・事業主は、実質的に事業収益を享受している「ママ」であると結論
⇒実質所得者課税の原則を踏まえて総合的に判断すると、名義人が事業主であるとは限らない


7.消費税:所有権移転外リースと高額特定資産

■高額特定資産
棚卸資産又は調整対象固定資産であって、税抜対価が1,000万円以上のもの。
簡易課税制度の適用がない課税事業者(原則課税の課税事業者)が高額特定資産の取得をすると原則3年間は免税事業者になれず、簡易課税も取れない。

■所有権移転外リースで資産を取得した場合
リース総額が1,000万を超える場合には高額特定資産に該当する

■留意点
リース取引にかかる仕入税額控除は
(1)原則:リース契約をした課税期間に仕入税額控除
(2)特例:賃貸借処理にもとづく仕入税額控除も認められる
⇒特例を取った場合でも「高額特定資産」の取得となる


8.最近の事業承継スキーム報道を読み解く③総則6項による否認事案(その2:キーエンス事案)

■事例
・創業家の資産管理会社たるティ・ティ社(キーエンス株を17.8%保有) が、
 ⇒約30年前に転換社債を創業家に発行
 ⇒創業家はその転換社債を別の資産管理会社に現物出資
・この別の資産管理会社(A)の株式を相続時精算課税により贈与
 ※本件はかなり複雑のようで、1局面のみ記載している

■効果
A社の株価は、類似業種比準方式が採用された
 ⇒A社の資産の大部分はティ・ティ社の転換社債だが、転換社債は株式保有特定会社の判定対象外

■課税庁の否認のロジック
・権利行使期間の延長を何度か繰り返していた
 ⇒第三者との関係では、あり得ないような状況だった
・贈与の直前々期までは赤字続き、贈与の直前期に利益を計上
 ⇒比準要素数1の会社を外した

 以上より、一連の行動は計画的とし、総則6項を適用して転換社債は実質株式と認定
 ⇒A社は株式保有特定会社として評価が必要と判定

■その他
29年税制改正にて、新株予約権付社債も株式保有割合の計算上は株式扱いとなった
・相続時精算課税の効果
 ⇒贈与税率は一律20%、贈与時の株価で相続時の価額が固定される
 ⇒本件では低い価格で固定しようとしていたが否認された
ただ、将来株価上昇が見込まれる場合にはメリット有り


9.仮想通貨の会計処理開発/審議中

・草案公開:20177月から8
201663日公布の改正資金決済法において、交換業者は登録&財務諸表監査が必須になった。
・財務諸表監査が必須になったことで会計処理の明確化が必要になった
 ①仮想通貨の利用者の会計処理/期末評価
 ②交換業者の会計処理/期末評価、預かり資産の処理/売上は純額or総額
・適用対象をビットコインに限定するかどうかも議論されている


10.株主提案権と委任状勧誘合戦

1.株主提案権
(1)議題提案権
・株主総会の目的(議題)を提案すること
・株主総会の8週間前までに請求
・資格要件は、総議決権の1/100以上または300個以上の議決権を6か月前から継続して有すること
(2)議案提案権
・議題についての決議案を提案すること
・資格要件は、株主総会に出席している株主
(3)議案通知請求権
・議案の要領を通知することを請求すること
・株主総会の8週間前までに請求
・資格要件は(1)議題提案権と同じ

2.委任状勧誘合戦
(1)委任状勧誘合戦とは
⇒議決権の行使を第三者に委任させるように勧誘すること
(2)メリット
⇒委任された者の意思決定通りの議決権が行使されることになる。
⇒実際に参加されて議決権行使される場合、覆される可能性があるため、委任状の方が議決権の個数の獲得競争上、有利。


11.役員給与・株式報酬関連税制の改正の概要

■平成29年度改正の概要
(1) 株式報酬が役員給与の1つとして制度に組み込まれた⇒下記(3)(4)に関連

(2) 定期同額給与
・支給額が同額 ⇒ 支給額又は手取額が同額
・改訂期限の例外 ⇒ 確定申告書の延長月数+2ヶ月経過日が期限
※1か月延長承認を受けている会社なら3か月なので実質多くの会社は変更なし

(3) 事前確定届出給与
・適格株式又は適格新株予約権の交付が給与の対象に。

(4) 利益連動給与
・適格株式又は適格新株予約権の交付が給与の対象に。
・業績連動指標の範囲 ⇒ 「利益の状況を示す指標」に「株式の市場価格の状況を示す指標」が追加
※上記2つの指標のいずれかと同時に用いられることを条件に「売上高の状況を示す指標」も追加
・指標の計測期間 ⇒ 改正前:単年度⇒中長期の期間設定が可能に。
・子法人の役員への支給 ⇒ 完全支配関係がある子法人に支給する場合も対象に
※ただし、親会社は非同族会社でないと×


12.平成293月期の有価証券報告書の作成上の留意点

■経営方針等の記載
・経営方針の記載について、決算短信でなく有報で開示すべきとされた

■減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い
・平成2841日以後に取得する建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。


13.業績連動給与に関する実務ポイント

■対象資産
・役員給与として損金算入○のためには
 ⇒役員在任中の給与として支給される場合
 ⇒金銭、適格株式(譲渡制限付株式は×)、適格新株予約権
 ※譲渡制限付株式が×なのは、制限の解除が不確定な将来の業績によるため、譲渡制限付株式の交付時の報酬債権の資産性に疑義があり、資本充実原則の観点から除外(発行法人はては当該対価相当額を前払費用として資産計上)
 ⇒非同族会社である内国法人、または非同族会社と完全支配関係にある内国法人に限定(実質、上場している100%親会社発行に限られる)


14.定期同額給与に関する改正のポイント

■手取額が一定でも定期同額の取扱い○に
従来は「額面が」毎月一定であることが要件
⇒日本企業で働く外国人役員の報酬が主に対象(手取額保証の契約が多い)
⇒社会保険料等グロスアップすると額面が定額にならない点について問題があった

■給与改定期限の延長:延長月数+2ヶ月までOK
従来は「決算後3ヶ月」まで
⇒申告期限の延長の特例の改正(決算の4か月後まで延長可)を盛り込む形
⇒例:3月決算法人で特例により7月末が申告期限⇒給与改定期限は9月末


15.減損処理を行った減価償却資産に係る論点

■前提(減損理由)
一定期間遊休状態が続いている資産について、今後も操業開始の目途が立たないため減損処理をしている。

■会計上の減価償却の取扱
・減損の有無に関わらず、遊休資産について減価償却は行う。
・減価償却費の計上区分は営業外費用。
・⇒遊休資産は営業活動に貢献していないため。

■税務上の減価償却の取扱
・遊休資産の減価償却は認められない(損金不算入)。
・稼働休止資産も同様。
⇒事業の用に供していないものは税務上の減価償却資産の範囲から除かれる。
⇒ただし、いつでも稼働しる稼働休止資産は減価償却資産に該当。

■減損損失のスケジューリング
・減損損失に係る将来減算一時差異は減価償却を通じて解消される。
⇒減損対象資産が事業の用に供している資産として認められる場合、スケジューリング可能。
⇒事業の用に供していない場合、除売却の計画がないとスケジューリング不可。


16.IFRS適用にあたっての実務上の留意点

・監査チームは従来の日本基準における監査チームの方が効率的。
 ⇒ 会社のビジネスをよく理解しており、IFRS上で検討が必要な論点を把握しやすい。
IFRSを適用することでどのような差異が生じるか、子会社・関連会社も含めて早めに整理し、経営者が理解する
IFRSの開示、注記の作成は想像以上に時間がかかるので、予め準備を進めておく。
 ⇒ ある項目を開示するかどうかの重要性は会社によって異なり、安易に他社事例を真似することは難しい。


17.ロックアップ

・株式を新規公開する際に、創業社長・VCなどの公開前の企業の株主が、公開後の一定期間(一般的には180日)、株式市場(マーケット)で持株を売却することができないよう、公開前に契約を交わす制度
・上場直後(公開直後)に流通量が少ない株式を大量に売却することにより、株価が大幅に下落するのを防ぐことを目的
・通常、目論見書(※)で内容確認することが可能

(※)投資家に交付する有価証券の内容や、募集または売出しの条件を記載した書類









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