2017年8月25日金曜日

8/25 勉強会:Q&Aで読み解く収益認識会計基準案 他

1.Q&Aで読み解く収益認識会計基準案

※実務への影響が大なので注意が必要!!
・適用はいつから?(3月決算)
H3341日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から
 早期適用は、H3041日以後開始する事業年度の期首から

・経過措置はあるか?
⇒適用初年度においては、原則として過去の期間のすべてに遡及適用することになっているが、適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することが認められる

・会社法上の大会社も対象か?
⇒対象となる。また個別FSにも適用されるため、非連結財務諸表作成会社にも適用される

・中小企業は対象か?
⇒対象外。自ら適用することは可能

■その他
・一定の要件を満たせば、従来とほぼ同様の工事進行基準を適用できる
・割賦販売は販売時に一括計上
・ポイント引当金は計上できない
・返品調整引当金の計上ができず、予想される返品部分は収益を認識しない
・売上リベート分は最初に減額=収益認識しない
・消費税の税込方式は採用不可


2.ヤフー・IDCFに続く否認事例が訴訟に

(1)法人税法上、欠損金の引継ぎのみを目的とした適格合併が行われることを防止する為、合併を行う際、「一定期間の支配関係」or「みなし共同事業要件」を満たさない場合、欠損金の引継ぎを制限

(2)本事例では、原告と原告が吸収合併した旧子会社(未処理欠損金あり)の間には5年以上の支配関係があった(上記要件を形式的に満たしていた)が、一方で、吸収合併と同日に旧子会社の事業が新子会社に引き継がれた(しかも、新子会社と旧子会社の名称や役員が同じ)
⇒課税当局は法人税法上132条の2を適用し、当該欠損金の引継ぎを否認
⇒国税不服審判所も「税法の濫用=租税回避」という考え※に基づいて、上記課税処分を支持
※ヤフー・IDCF事件の最高裁判決で示された見解(濫用基準)

(3)1回弁論が171月に開催されて以来、既に4回の弁論が済んでいるが、来年にも判決が下される可能性あり
⇒ヤフー・IDCF事件に続く、法人税法132条の2による否認事案に関する2つ目の判決となり得る

3.海外当局への情報交換要請巡り国家賠償法上の違法を認めず

■事例
・日本在住の両親の税務調査に対する反面調査
・国外在住の息子(原告)が海外当局より情報提供を求められた
・税務当局が海外当局に情報要請をしたことにつき、その要請が違法ではないかと裁判をおこした

■争点
・原告に対する海外当局の情報要請の取消しを請求。
・海外当局への情報交換要請は国家賠償上の違法ではないか

■情報要請の取消しの請求
租税条約において、税務当局が国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない場合、条約等の相手国・地域の税務当局に必要な情報の収集・提供を要請することができる。
⇒抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらないため不適法として却下

■国家賠償上の違法か否か
租税条約に基づく情報交換要請行為は、日本において「必要があるとき」の下で必要に応じて行っている。また税務職員は情報要請を行うべき職務上の法的義務を負っている
⇒税務職員は原告の資金や株式の移動の全容を把握する必要があり、税務当局が海外当局に要請した情報は、社会通念上相当な限度を逸脱していたとは認められない。

以上より、裁判所は情報要請の取消しの訴えを却下し、海外当局の情報要請も必要性及び租税条約上の要件に沿って行ったとものであるため、国家賠償法上の違法はないと判断した。

4.滞納整理に係る原告訴訟は国側敗訴ゼロ

H28年の新規発生滞納額は6,221億円(昨年比▲650億円)
・発生割合は1.08%で過去最低
・滞納整理済額(7,024億円)が新規発生額(6,221億円)を上回る
・滞納整理の原告訴訟を154件起こし、国側の敗訴はゼロ
・財産の隠ぺい等の悪質事案で7人告発し、4人に有罪判決

5.未払い残業代の一括支給にかかる税務

■所得税
支給形態により取扱いが異なる
1)一時金として支給した場合
賞与と同様に支給年分の給与所得として処理
2)過年分の給与として支給した場合
本来支給されるべき年分の給与所得として処理
⇒年末調整のやり直しが必要

■法人税
支給形態に関係なく支給した期の費用として損金算入
⇒支給額の決定が当期であるため、当期に「債務確定」したものと
される

■社会保険料
賞与を支給した場合と同様の処理を行うのが一般的
なお、過年度分の支払とする場合、3年以上前の期間の保険料は納められないので注意が必要(保険料の納付は2年で時効となるため)

6.東京高裁 退職手当の収入すべき時期を巡り納税者の請求棄却

■事例
平成16年免職処分、同処分を不服とする訴訟を提起
退職手当の受領を拒否(支給総額1,400万円、源泉270万円)、東京法務局へ供託される
平成24年同訴訟が終結、本件退職手当を受領
退職手当を平成24年分の所得とし計算、還付約270万円と申告

■争点
本件退職手当は、所得金額の計算上、平成16年と平成24年のいずれの収入すべき金額となるか。

■結論
退職手当は、平成16年分の退職所得であり、平成24年分のではない。
したがって、平成24年分の確定申告では270万円の源泉は差し引けない。

■論拠
権利確定主義を根拠とする。
・免職処分の存在という事実関係が外観上存在
・東京法務局に退職手当の供託の時点で、権利は一応実現したことが客観的に認識できる

※権利確定主義とは
現実の収入がなくても、その収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとしてその権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという考え方

7.独立販売価格

Step1:顧客との契約の識別
Step2:契約に含まれる別個の履行義務の識別
Step3:取引価格の算定
Step4:価格の各履行義務への配分
Step5:履行義務の充足時点での収益の認識

Step3で決定した取引価格は独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配布する
・独立販売価格=独立して企業が顧客に販売する場合の価格
・過去に単独販売したことがあればその価格が指標となる
・独立販売価格が算定出来ない場合は見積りが必要となる

8.繰延税金資産に関する見積もりのポイント

■ポイント⇒以下を合理的に説明できるように
・スケジューリング
・事業計画

■事業計画の合理性
・過去の達成度合い
・予実分析の合理性

■資料準備
・過去の計画と実績を比較した分析表
・当期実績と来期計画の増減状況を説明した表などを作成

9.固定資産の減損会計における見積りのポイント

■資産のグルーピング
・資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのCFから概ね独立したCFを生み出す最少の単位で行うべきところ、グル―ピンを大きな単位で設定しているような場合はその合理性を主張するに足る使用実績や使用計画等について十分な資料の準備が必要。

■減損の兆候
・業績が回復基調であることをもって、減損の兆候に該当しないとすることは出来ない。
 あくまで、過去2期がマイナスであった場合等は、減損の兆候は識別し、減損損失の認識の判定における将来CFの見積りの中で回復基調である状況を加味することが適切。

■減損損失の認識の判定
・資産グループの事業計画と、全社の事業計画との整合性を確認する。

■減損損失の測定
・正味売却価額:不動産鑑定士の鑑定評価等に基づいているか。
・使用価値:割引前将来CFを割り引く際の割引率が妥当か。


10.コーポレート・ガバナンスに関する対応状況

■相談役・顧問制度
本年6月総会で注目された議案に、相談役・顧問等を廃止する旨の定款変更議案
・武田薬品工業では30.51%の賛成率(株主提案としては高い賛成率)
・議決権行使助言会社が相談役制度を新設する定款変更議案に反対を推奨した旨の基準を追加
・来年初頭を目途に、退任した社長が相談役・顧問に就任する場合は、氏名等を開示する制度を実施
・事例として、阪急阪神HD、日清紡HDは廃止
・背景として、現経営陣への不当な影響力を懸念する一方で、財界活動等、一定時間をかけて後任へ引継ぎを行う利益もある


11.事業拡大時の減損会計の見直しポイント

■事例
卸のみ⇒卸+小売に拡大

■ポイント
(1)グルーピング
通常、増加資産や生じるキャッシュは小売店舗単位で把握可能⇒本社ビル・小売店舗単位
ただ、エリアマネジメントの実施等⇒エリアに属す複数店舗を集約した単位※
※各店舗のキャッシュが相殺され、本来の減損が顕在化しない可能性に注意

(2)経費の負担基準~将来キャッシュの見積もり~
本社経費や事業別の各本部経費の合理的な賦課・配賦基準の策定が必要

(3)新規事業の合理的計画~早期に減損しないために~
予め合理的な事業計画があれば、減損の兆候※に該当せず(一定の要件有)
※初期投資は黒字化までに期間を要する(2期連続損失⇒減損兆候)


12.のれんの評価に関する見積もりのポイント

のれん計上および評価時のポイント
・取得原価の妥当性
⇒事業計画の実現可能性・合理性、実行可能性等が高いかどうか
・取得原価の配分
⇒のれん以外の無形固定資産に配分している場合は、金額に合理性があるか
・償却年数の妥当性
⇒買収時にどのくらいの期間で投資回収を見込んでいるかが重要
・減損の兆候の識別
⇒通常の固定資産と同じ判定が行われるが、営業損益が継続して黒字であっても事業計画と実績が下方乖離、計画の下方修正、経営環境に大幅な変動が生じた場合に減損の兆候ありと考えられる。


13.平成29年度税制改正 法人税関係

(確定申告書の提出期限の延長の特例)
・定時株主総会が、決算が3ヶ月以内に開催されない場合、申告書の提出期限を最大で決算から4ヶ月以内にすることが出来る。
※定時株主総会を、決算から4ヶ月以内に開催する会社に合わせての改正。

(役員給与等)
・業績連動給与の指標に、株価や売上高が追加。
・業績連動給与として、株式または新株予約権による給与が追加。
・定期同額給与の判定で、「源泉税後の金額が同額」であることが同額とみなされることになった。

(納税地の異動)
・移動後の納税地の所轄税務署長への提出が不要とされた。

(設立の届出の添付書類)
・登記事項証明書の添付が不要とされた。

14.市場変更基準(マザーズから一部、二部)

1.マザーズ⇒一部
主に以下の(A)又は(B)に適合すること。
A
・株主数:2,200人以上
・流通株式:数⇒2万単位以上、かつ時価総額⇒20億円以上、かつ比率⇒35%以上
・時価総額⇒40億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近5年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、直近5年間「無限定適正」または「除外事項を付した限定付適正」

B
・株主数:2,200人以上
・流通株式:数⇒2万単位以上、かつ時価総額⇒10億円以上、かつ比率⇒35%以上
・時価総額⇒250億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、過去2年間(直近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」、直近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」

2.マザーズ⇒二部
・株主数:800人以上
・流通株式:数⇒4,000単位以上、かつ時価総額⇒10億円以上、かつ比率⇒30%以上
・時価総額⇒20億円以上
・純資産額⇒(連結)10億円以上、かつ、単体純資産の額がマイナスでないこと
・利益の額⇒直近2年間の利益の額の総額が5億円以上
・虚偽記載又は不適正意見等⇒直近2年間の有価証券報告書等に「虚偽記載」なし、過去2年間(直近1年間を除く)の財務諸表等の監査意見が「無限定適正」又は「除外事項を付した限定付適正」、直近1年間の財務諸表等の監査意見が原則として「無限定適正」









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