2017年8月19日土曜日

8/18 勉強会:移転価格文書化制度の概要と日系企業におけるLF管理の重要性 他

1.給与とは別の委託料は消費税の課税対象

■勤務先法人から給与とは別に調理場委託料を受領していた請求人(ホテルの料理長)の業務は消費税の対象か
・請求人はホテルの調理場で料理長として勤務
・給与とは別に「調理場委託料」を毎月受領
・各料理人ごとの給与額等を計算したうえで各料理人に対して調理場委託料から給与を渡していた

■判断根拠
・本件法人は各料理人の採否の決定に関与していないこと
・請求人は各料理人を採用するに当たり人材派遣会社を利用することがあったこと
・本件法人は各料理人の出勤状況について請求人から報告を受けていなかったこと
・本件法人は各料理人の給与の計算等に関し請求人に具体的な指示をしていなかったこと

■判断
・請求人は独立の立場で、反復、継続して各料理人を雇って本件調理場を運営していたと認定
・請求人は個人事業者に該当および調理場運営業務は消費税法上の「事業」に該当すると判断
・請求人による調理場運営業務は勤務先法人との雇用契約に基づく料理長としての業務に含まれず


2.PSU、株価上昇時には損金算入額も拡大

・PSU(パフォーマンス・シェア・ユニット)
まずポイント(ユニット)を付与し、評価期間(業績等)終了後に評価の結果に応じてポイント数を変動させ、当該ポイントに応じた株式を交付する株式報酬

・会計上、株式交付時の時価(×最終交付数)に基づいて費用計上
・税務上、業績連動給与として損金経理を要件に損金算入可
⇒株価の上昇が見込まれる場合、課税上のメリットも大きい


3.農工法の対象業種の限定廃止、市町村の実施計画に対象を明記

農工法の改正があり、所得税の軽減措置特例の対象業種が拡大

■従来(高度成長期に制定)
個人が農地を譲渡する際、譲渡後に工業、道路貨物運送業、倉庫業、梱包業、卸売業を供する目的であれば、所得税の800万円の税額控除が適用された。

■改正後
譲渡後の使用目的が、上記の業種以外でも税額控除が適用される。
※なお対象業種は、各都道府県・市町村の実施計画等で定められる予定


4.仮想通貨、損益認識は売買契約の成立時

■検討内容
24時間体制で仮想通貨の取引が可能な場合、期末日のどの時点までの売却損益を当期の損益に取り込むべきか?

(1)売買契約の成立時点
(2)売買契約に基づき、取引が買手のネットワーク上に送信された時点
(3)取引情報が承認手続きを得た上でネットワーク残高に記録された時点
⇒「(1)売買契約の成立時点」とする方向
契約成立時点は業者ごとに異なる可能性があるものの、実務上の指針は必要と判断


5.法人税 使用人兼務役員と職制上の地位

■使用人兼務役員
・法人の役員のうち、使用人としての職制上の地位を有する者をいう
・常務や専務などの地位を有する役員は使用人兼務役員になれない

■常務や専務の地位が適正に付されたか否かが明確でない場合
・登記の有無だけでは判定されない
・取締役会の手続きを経ている場合⇒通常、使用人兼務役員とされない
・対外的に(名刺などで)常務や専務と記載⇒使用人兼務役員とされない可能性が高い
⇒中小企業では事実認定の領域になり、実質で判断することとなる。

6.外貨建預金を原資とした株式等購入は為替差損益を認識

・所得税法の考え方
⇒外貨建取引を行った場合には、取引の都度、為替換算を行い為替差損益を認識する
・居住者が外貨建預金を払い出して株式等を購入した場合
⇒外国通貨の取得時レートによる円換算と株式等の購入価額の円換算額の差額(為替差損益)を所得として認識する必要あり
 ※実務では申告不要であると誤認し、申告が漏れているケースが散見される、なかには税務調査で指摘されたケースもある

・国税庁の質疑応答事例で類似例も
⇒「預け入れていた外貨建預貯金を払い出して貸付用の建物を購入した場合の為替差損益の取扱い」が参考になる


7.有償支給取引

・製造業などで、発注元が外注先に材料を有償支給し、加工後に発注元が買い戻す取引
・従来の日本基準では売上と仕入を総額と純額のいずれで認識するかの定め無かった
・IFRSの規定を取り入れた収益認識基準案が適用となると判断基準が明らかになる
・「財に対する支配」とう観点で判断することになる、
・買い戻しを前提とした有償支給において、
 支給先:「財に対する支配」あり⇒総額表示
 支給先:「財に対する支配」なし⇒純額表示※加工費部分のみを収益認識

8.フェアネス・オピニオンの基礎知識と活用場面

■フェアネス・オピニオンとは
・評価結果に至る会社の経営判断を、独立の第三者が様々な観点から調査
・公正性について財務的見地から意見を表明するもの

■フェアネス・オピニオン業務と算定業務との差異
・フェアネス・オピニオン業務
(1) 経営者が意思決定をした取引金額が、財務的見地から「公正であるか否か」について意見を表明
(2) 依頼人が意思決定をするにあたり善管注意義務を果たしていることを示すための一資料として利用
・算定業務
(1) 投資意思決定等の参考地として評価額を算定する(意見を表明するものではない)
(2) 報告書は参考情報。内容を採用するかの経営判断は依頼人の責任下で行う

■フェアネス・オピニオンが有用な場面
・支配株主との取引等に該当するケース
・実質的に支配株主との取引と一体のケース
・複雑又は大規模な経営統合のケース
・株主により価値の判断が分かれ得るケース
・その他少数株主の保護が必要なケース


9.重加算税の賦課要件

Q購買担当者が、取引先担当者の要請に応じ、本来翌期に計上すべき費用を当期に計上した。これが税務調査で発覚した場合、税逃れの意図なく行った結果でも重加算税は免れないのか?

A従業員が税逃れの意図なく行った行為であっても、重加算税の適用対象となり得るので注意が必要。

⇒判例によれば、取引担当者の隠蔽・仮装による過少申告又は無申告がなされた事実を代表者が知らなくとも、重加算税賦課の要件は満たされる。
⇒納税者において過少申告を行う認識がなかったとしても重加算税の対象となる。


10.IRの現実と取り巻く環境

(1)企業内での地位低下が著しいIRセクション
・短期的な視点をもちプレーヤーが目立ち、このような投資家を相手にするのがIR担当者という位置づけ
・IRの目標、開示内容、どのような投資家に株主になってもらいたいか、投資家の懸念・期待を経営陣に伝えないまま、経営から遠い存在になっているケースも
(2)CGC対応時にも大きな役割の無かったIR担当者
・ほとんどの企業でIRの視点からはるかに遠い議論が行われた。
・少なくない数の日本企業の社長がIRへの関心が薄い
■投資家との建設的な対話に向けて
(1)オール・コンプライすれば対話免除?
・オール・コンプライすれば対話免除という誤解がある
(2)定量的な要件を満たせば反対票投じられない?
・例えば社外取締役が2名いても、社内取締役の数が増えれば比率は下がっていく


11.移転価格文書化制度の概要と日系企業におけるLF管理の重要性

■制度概要
移転価格に関する税務調査に必要な3文書の法制化(H28税制改正)。
(1)ローカルファイル(LF):具体的詳細な事実関係の説明資料。
(2)国別報告書(CbCReport)・マスターファイル(MF):グループ全体での事実関係の説明資料。

■LF管理の重要性
海外取引に関する税制については、海外子会社任せや、親会社が深く関わっていない日系企業が多い。
実際の課税判断はLFがキーとなるため、親会社の関与の必要性が高くなる。
※CbCR・MFは、テンプレートがあったり定性事項で済んだりと、リスク低。

■今後のLF管理のポイント
⇒従来の子会社単位での管理体制を主軸に、親会社の関与を深めていく形が効率的。
⇒子会社のLF作成期限設置、報告様式の統一化、親会社での税制知識強化が必要。
⇒3文書の整合性を保つ(税務調査アプローチの観点)。


12.超過収益力を考慮した非上場株式の減損判定

非上場会社の取得価額が超過収益力を考慮した価額となり、1株当たり純資産額を大きく超える金額になる予定です。
当該株式の決算ごとの減損処理要否の判定方法について教えてください。

・通常の場合
非上場株式は発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときに減損処理が必要。

・超過収益力を考慮した場合
会社の超過収益力を反映した価額が実質価額となる場合も想定されている。
ただし、「超過収益力を考慮した株式を取得した場合」に限定
当該評価の場合、財政状態の悪化がない場合でも超過収益力が見込めなくなり、実質価額が取得価額の50%程度を下回っている限り、減損処理が必要となる。
取得価額が第三者による評価または一般に認められた株価算定方式に基づいて決定された場合は、同じ方法で株式評価をしていくことが適切と考えられる。


13.平成29年度税制改正 法人税関係

(組織再編税制)
・分割法人が一社の場合、分割目的が「分割前から行っている事業を新たに設立した法人で行うこと」の場合、分割は適格分割とされることになった。
・持株割合が2/3以上の場合の吸収合併、株式交換については、金銭その他の資産の交付があっても、適格組織再編の対価要件を満たすこととされた。
・非適格株式交換等の際の資産の時価評価について、帳簿価額1,000万円未満の資産は対象外となった。
・支配関係のある法人間の分割型分割について、適格要件で、分割法人との支配関係の継続が不要とされた(被分割法人との支配関係の継続は必要)。
・営業権の償却について、月割計算を行うこととされた。


14.IT産業の上場審査

(1)特定商品及び特定顧客への依存
・多くの会社は、特定商品を不特定多数の顧客に対して提供するか、特定顧客へ多様なサービスを提供するというビジネスモデルを構築。
・必然的に特定商品及び特定顧客への依存度が高くなる傾向にあり。
⇒特定商品が収益を生まなくなった時、及び特定顧客との取引が解消された時のインパクトを最小限にとどめる体制が構築されているか確認される。
(ex.新商品の開発、新規取引先の開拓)

(2)セキュリティ対策
・顧客情報に接する機会が多い。
⇒顧客データベースへのアクセスを特定の者に限定、アクセス履歴を管理等、顧客情報が社外に漏れないような内部統制を構築しているか確認される。

(3)受注管理
・システム開発の特徴として、受注した段階では、依頼業務の全体像を把握することに困難を伴うことがある。
・全体像を把握していたとしても、その後、顧客の要求が変更になることも多々ある。
⇒適切な実行予算を適時に作成し、受注した業務の採算を常に管理することが重要。

(4)ソフトウェアの会計処理
⇒取引実態を把握し、適正に会計処理に反映させるための内部統制の構築が必要。








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