2018年12月11日火曜日

12/7 勉強会:収益認識基準の内部統制への影響 他

1.のれんの計上の状況等の分析

■IFRS任意適用企業におけるのれん
・IFRS=のれん非償却(減損テストのみ)、JGAAP=のれん償却
・IFRS任意適用企業=2018年3月期までで158社(うち、のれん計上140社)

■のれんの計上額が大きいIFRS任意適用企業(カッコは連結純資産に対する割合)
・ソフトバンク 4兆3025億円(68.6%)
・日本たばこ産業 1兆8912億円(66.5%)
・武田薬品工業 1兆0292億円(51.0%)
・電通 7981億円(69.4%)
・アサヒグループホールディングス 7379億円(64.0%)
・このほか、2019年3月期の第1四半期よりIFRS適用を開始したNTTグループもNTT本体ののれん額は1.3兆円

■比較
・JGAAPの方が償却するため、IFRS適用企業に比べ「身軽」。
・投資家にとってもいざというときに巨額の減損リスクがより少ないのはJGAAPといいうる






2.国税庁、仮想通貨の申告手続きを簡便化

■所得税申告
・平成30年分の確定申告から、1月末に業者から交付される「年間取引報告書」の利用が可能に
・年間取引報告書には、仮想通貨ごとの購入金額や売却金額が明記される
・国税庁HPで仮想通貨の所得を自動計算できる「仮想通貨の計算書」を公表
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/faq/index.htm

■相続税申告
・仮想通貨を相続した相続人は、業者から残高証明書の交付を受けられる
・残高証明書の記載内容を基に申告書を作成することが可能に





3.H31.10/1以後の消費税率等の経過措置

■指定役務の提供の税率等に関する経過措置
指定役務とは
⇒役務の提供に先立って、対価の全部または一部が分割して支払われる契約 
例として冠婚葬祭互助会が挙げられている。(資産の購入を前提に積み立てているものは除外)

下記要件を満たす事で旧税率の適用が可能となる
・平成31年3月31日までに締結した役務の提供にかかる契約。
・契約に係る役務の提供の対価の額が定められていること ・後に対価の変更を求めることができないこと。

■予約販売の書籍等に係る税率等の経過措置
・平成31年3月31日までに締結
・不特定かつ多数の者に対する定期継続供給契約に基づき譲渡
・書籍その他の物品に係る対価の全部または一部を9/30までに収受している場合

■通販等の税率等に関する経過措置
・平成31年4月1日前に販売価格等の条件を提示、又は準備を完了している
⇒一般的に新聞・TV・ラジオ、ネットなどでの販売条件を提示
・平成31年10月1日前に申し込みを受け、条件に従い商品を販売





4.課税売上割合に準ずる割合承認に高い壁

・課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受けて必要がある。
・「課税売上割合に準ずる割合」適用承認申請検討事業者が増加しているが承認を受けることは極めて困難。

■下記の内容での「課税売上割合に準ずる割合」の適用承認申請はすべて却下
⇒同一種類の費用のうち特定の費用のみに適用すること。
⇒居住契約付建物から生じた課税売上高及び非課税売上高のみから同割合を計算すること。
⇒売買価額が変動するものを算式に組み込むこと。






5.株主総会資料の電子提供、株主総会の3週間前の日から

・法制審議会会社法制部会は、新たに株主総会資料の電子提供制度を導入する方針だが、その概要が固まった。
⇒株主総会資料の電子提供制度とは、取締役が株主総会資料を自社HP等に掲載し、株主に対して当該ウェブサイトのアドレス等を書面により通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていない場合であっても、株主に対して株主総会資料を適法に提供したものとする制度

・背景として現行、招集通知及び関連書類の電子提供には株主から事前に個別承諾を得ることとされており、実際に電子提供できる書類の一部にとどまっている等問題点が指摘されていた。




6.消費税 経過措置 長期大規模工事

■対象
2019年4月1日から2019年9月30日までの間に締結した長期大規模工事で
目的物の引渡しが2019年10月1日以降となるもの

■計上額
下記の算式により計算した金額を8%売上として計上できる

①長期大規模工事にかかる対価の額
②着手日から2019年9月30日までの間に支出した経費の額
③2019年9月30日において見積もられる総工事原価の額

計上額=①×②/③

なお,事業者がこの経過措置の適用を受けた目的物の引渡しを行った場合には,その相手方に
この経過措置の適用を受けたものであること等を書面で通知することが必要となる。





7.定年退職者への記念品と課否判定

定年退職に伴い、会社から記念品(=経済的利益)が贈られるケースがあり。
退職規程があれば「退職所得」、それ以外は「給与所得」となる。
ただし、上記要件を満たす場合は経済的利益として課税されない(=非課税)となる。

・勤続期間等に照らし、社会通念上認められる範囲額であること。
・10年以上の勤続年数者であり、2回以上の表彰者はおおむね5年以上の間隔があること。
⇒一般的に高額すぎず、また必要以上な特別は物でなければ問題なし。

なお昭和60年の個別通達上、永年勤続記念旅行券の取扱いとして、
・満25年勤続⇒10万円相当
・満35年勤続⇒20万円相当
これらは課税を要しないと国税庁より回答されているので、この通達が一つの目安となる。





8.在外子会社、在外関連会社の会計処理

・IFRSまたは米国会計基準に準拠して作成されている場合、連結決算手続き上利用可能。
・ただし、「修正5項目」については修正が必要。
①のれんの償却
②退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
③研究開発の支出時費用処理
④投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価
⑤資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組換調整







監査対象の範囲

・結論:今話題となっている、「役員報酬」は監査の対象外
・監査の対象となる範囲は「金商法193条の2第1項」に基づく。
⇒直接の対象となっているのは、注記を含む、財務諸表(=有報の「経理の状況」部分)
⇒「設備の状況」や「提出会社の状況」は対象外
⇒役員の報酬は「提出会社の状況」に含まれる。






10.M&Aのディール保護条項の種類と実務上の留意点

■ディール保護条項とは?
(主に)買主の立場として、売主や対象会社が他の買主候補者との取引を選択することを防ぐための条項

■ディール保護条項の種類(一般的なもの)
(1)No talk条項
⇒他の候補者との協議・交渉を禁止、第三者への情報提供禁止
⇒売主は難色示すケース多
(2)No shop条項
⇒他の候補者を積極的に勧誘・誘因する行為を禁止
⇒売主にとって制約小
(3)Go shop条項
⇒買主を1社に確定前に自発的に他の候補者を探して交渉を行う期間を設ける
⇒売主にとって意思決定の正当性の説明がつき、買主にとっても他の候補者が登場する場面を限定できる
(4)Window shop条項
⇒他の候補者を積極的に勧誘・誘因する行為を禁止しつつ、買主を1社に確定前に他の候補者による提案があれば交渉可能な期間を設ける
(5)Matching Right条項
⇒他の候補者から提案があった場合にそれと同等の提案を行えば自ら取引を行うことができる権利を先行者に付与する
⇒(3)Go shop条項と組み合わせて利用が多
(6)独占交渉権条項
⇒売主及び買主において、交渉中の買収案件につき、相手方のみと交渉することを合意
⇒基本合意書段階において盛り込まれることが多
(7)Break-Up Fee(違約金)条項
⇒合意から離脱する際に違約金が発生
⇒一般的には売主が違約金の主体、買主においても違約金によって離脱することを認めるケース有
 違約金の金額いかんではディールの拘束力を弱める方向に働く(取引金額の1~5%が多)

■保護条項のポイント
(買主)
・保護条項の選択及び組み合わせ
・保護条項の例外、有効期間の検討

(売主)
・基本的に買主と同様
・売主の取締役における善管注意義務・忠実義務に違反しないかという観点を意識






11.内部統制報告制度概要と評価手順

■制度概要
自社の内部統制(IC)を評価して会社が作成したIC報告書の適正性を、外部監査人が評価
※財務報告の信頼性を確保するためのICが対象(ICの充実⇒企業開示の信頼性)

■評価手順
(1)全社的なICと業務プロセスに分類
・全社的なIC:適正な財務報告をするための会社全体のガバナンス体制等
・業務プロセス:決算財務報告プロセスや販売・購買プロセス等、個々の業務
⇒全社的なICを先に評価

(2)業務プロセスの整備状況の評価
①その業務プロセスが、虚偽の財務報告が防止・発見する仕組みであるかを評価
②その業務プロセスが、実際に日々の業務に適用されているかを評価

(3)業務プロセスの運用状況の評価
整備された業務プロセスが、継続的に実施されているか評価(主にサンプルベース)





12収益認識基準の内部統制への影響

新収益認識基準は「履行義務の充足」に着目して収益認識を行う必要がある。

・期間配分の観点からみた収益認識基準(商品製品)
通常顧客が検収した時点で、履行義務が充足されると考えれる。
→顧客から検収日が記載された検収書を回収・確認する必要がある。
→実務上は不確実性と不効率を伴うことになり、実務慣行としてもなじまない
→適用指針では出荷から検収までが通常の期間であれば、代替的取扱として出荷基準等の適用も認められる。
→今後も出荷基準を採用する企業が多いと想定されるが、検収基準に変更する場合は業務フローやシステム変更の必要性が出てくる

・表示の妥当性から見た収益認識基準(本人と代理人の区分)
新収益認識基準では収益の総額表示と純額表示が明確化
→企業が本人:総額、代理人:純額
→本人か否かは履行の主たる責任+在庫リスクを有する+価格決定権
→消化仕入:消費者に販売された時点で百貨店等がテナントから商品を仕入する取引形態
→純額表示:履行責任、在庫リスク、価格決定権はテナントが有するため、百貨店等は「代理人」
→内部統制には大きな影響は与えないと想定される






13.企業版振り込め詐欺の特徴

企業版振り込め詐欺は、メールで請求書のやり取りを行う際に狙われやすい。
特徴的なポイントは以下の3点となる。

(1)財務・経理担当者が狙われる
 実際にお金を扱う財務・経理担当者が狙われやすい。
⇒外部に公表している共通メールアドレスがある場合には注意が必要
(2)信用度の高い人になりすます
 社長や役員、相手先の責任者になりすます劇場型の詐欺が日本でも確認されている。
⇒実際のメールアドレスと誤りがないかどうか、確認が重要となる
(3)振り込みを急がせる
 攻撃者は相手先を徹底的に研究しているため、あらゆる方法で緊急性を訴え、冷静な判断ができないようにする。
⇒通常とは異なる対応を求められた場合、メール以外の方法で確認する等の対応が重要となる

社内規定の整備、適正なチェック体制、法人取引口座登録を活用する等の対処方法が有効。






13.グローバルオファリング

国内市場と「同時に」主に欧米市場などの海外でも株式の募集・売出し等を行う手法
近年の例では、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、LINE
グローバルオファリングでは、海外の投資家を想定して、日本の証券会社の海外拠点や外国証券会社が株式の引受け、販売を担当する。

1.メリット
・国内市場のみでのIPOでは難しい資金調達が、海外市場からも可能となる
・海外の投資家に対してIPO(特に国内外並行上場を伴うもの)を通じて本邦企業の知名度がアップし、
その後もグローバルでの資金調達手法の多様化が図れる
・海外投資家が入ることによる株主構成の多様化が図れる

2.デメリット
国内型IPOでは不要な外国語での資料・書面作成をはじめ、相当額の追加コストが発生するなど
総額2~3億円程度かかるといわれている。
国内のみでは数千万円程度
























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