2018年1月27日土曜日

1/26 勉強会:中小企業はIoT投資減税と固定資産税特例との重複適用可 他

1.中小企業はIoT投資減税と固定資産税特例との重複適用可

■対象となる投資
⇒「データ連携・利活用により生産性を向上させる取組」
・データ収集機器(センサーなど)
・データ分析より自動化するロボット・工作機械
・データ連携・分析システム(サーバー、AI、ソフトウェア)
・サイバーセキュリティ製品

■内容
・主務大臣が認定した事業計画に含まれる設備投資(最低投資合計額5,000万円)について、
 30%の特別償却または3%の税額控除(法人税額の15%が上限)
・国内投資のみ
・中古資産対象外
・一定の賃上げ※を行った企業は5%の税額控除可 ※平均給与等支給額の対前年度増加率3%以上
・大企業も適用可
・業種制限なし
・適用は施行日から2021年3月末までの3年間

■固定資産税の特例措置
・要件※を満たせば、課税標準が最初の3年間は最大でゼロから2分の1以下に軽減される
 ※労働生産性を年平均3%以上向上させるなど
・IoT投資減税と固定資産税の特例との重複適用可
・中小企業のみ対象



2.平成30年度組織再編税制改正の留意点

■スピンオフの「準備」として行うグループ内再編の適格化
・平成30年度税制改正で見直し:株式分配型のスピンオフ
・手順
(1) 新設分社型分割または単独新設現物出資で完全子法人を切り出し
(2) その後、当該子法人の株式全部を親会社の株主に現物分配
⇒現行:完全支配が適格株式分配の直前まで継続することが適格要件

・実務上の要求:
(1) 現金出資による完全子法人(受皿会社)を設立したうえで、親会社の事業を吸収分割により移管
(2) その後、当該子法人の株式全部を親法人の株主に現物分配したい
⇒平成30年度税制改正により、受皿会社に事業を移転する場合の吸収分割も適格となる。

■従業者引継(継続)要件、事業継続要件の緩和
・現行:組織再編後に従業者や事業の再移転が見込まれる場合には継続要件を満たさず、不適格に。
・改正:再移転先が100%グループ内であれば、当該組織再編を税制適格として取り扱う



3.従業員再雇用で退職金の損金算入認める

■事例
・従業員への退職金に対する損金算入の可否が争われた裁判
⇒退職した事実があったかどうかが争点
(前提)
・従業員に退職金4000万円を支給
・従業員は退職日の翌日付で同じ会社に再雇用されている
・退職後再雇用され、その後約2年3か月勤務

■審判所の判断
・退職の事実があったと判断し、全額損金算入を認める
(理由)
・再雇用は後任者への引継ぎであり、不自然なものではない
・再雇用後の勤務内容は退職前と同様であるが、給与や保険などの待遇面は変更
・退職金4000万円も不相当に高額ではない
(平均月収98万円×勤続年数28年×功績倍率1.5倍=4116万円)



4.収益認識基準に関する会計基準、建設関係の2つの設例を削除へ

■ASBJが検討している企業会計基準公開草案に出ている設例が削除される方向
⇒設例14:長期建設契約における支払の留保・設例30:設備工事のコストオン取引は日本建設業連合会などの意見を踏まえて削除される方向となった。

■削除される理由
⇒設例14は建設業においてマイルストーンによる支払は日本で一般的ではない。工事契約に関する会計基準による実務対応が広く定着しており、新たに包括的な収益認識に関する会計基準は必要ないという意見を反映したもの
⇒設例30は取引の前提条件が一般的な取引実態とは異なっている為。また、コストオンという言葉は業界によって、会社によっても捉え方が異なる為、この列例だけがコストオン取引であるという誤解をされかねないので削除すべきであるという意見を反映したもの。



5.固定資産の減損損失の戻入れ

「固定資産の減損損失の戻入れ」は、日本基準では認められていないが、IFRSでは認められている。
IFRSによりを作成公表している日本企業では、どのような経緯や理由で戻入れを行っているか、事例を紹介する。

■アンリツ
過去に閉鎖を決定し、減損損失を認識した建物構築物について、本社地区の使用計画を一部見直し、継続使用することに変更したことにより、当該減損損失の戻入れを行った。
→計画が変更されたことにより、回収可能価額が回復した事例である。

■日本板硝子
過去に閉鎖を決定し、減損損失を認識したイタリア(ベニス)に所在のフロートガラス製造ラインについて、再稼働を決定したことに伴い、回収可能性を再評価した結果、戻入が発生した。
→こちらも計画が変更されたことにより、回収可能価額が回復した事例である。

■すかいらーく & すしろーグローバルホールディングス
過去に収益力の低下により、減損損失を認識した店舗について、収益力が回復したことにより店舗減損損失の戻入を行っている。
→状況変化により回収可能価額が回復した事例である。
→毎期数店舗の減損損失を認識し、戻入れも行っている。



6.裁判例:利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当


■概要
・A社は子会社Bから「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を受けた
・効力発生日は双方同じ日とされていた
・A社は利益剰余金対応分については受取配当等の益金不算入、資本剰余金対応分について有価証券譲渡損等を計上して申告を行った
・課税庁側は全体が「資本の払戻し」にあたるとして更正処分を行った。

■論点
「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」について一部を剰余金の配当、一部を資本の
払戻しとして処理してよいか?

■裁決(東京地裁)
「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は全体が資本の払戻しとなる

(理由)
・法人税法23条(剰余金の配当)は利益剰余金のみを原資とするものに限定されている
⇒利益剰余金と資本剰余金双方を原資とする場合はこれに該当しない

・財務省公表の「平成18年度税制改正の解説」において、「資本剰余金と利益剰余金の双方を
同時に減少して剰余金の配当を行った場合には全体が資本の払戻しとなる」と記載されている

ことから、一部を剰余金の配当、一部を資本の払戻しとしたA社の処理については否認された。



国税庁 H29年分の確定申告の留意点を公表

国税庁HPにてH29年分の確定申告の留意事項を公表
・医療費控除
(1)「医療費控除の明細書」の提出が必要となり、
提出等が求められていた医療費の領収書は今年分より提出が不要。※5年間自宅で保管する必要あり
(2)健保組合等から発行された「医療費通知」を提出する場合は、
明細書の記載や領収書の保管も省略可能となる。

・一時所得、雑所得
本業とは異なる副収入を得る方が増加している。
競馬等のギャンブルから生じた所得 ⇒ 一時所得(一部例外は雑所得)
ビットコイン等の仮想通貨の売却等による所得 ⇒ 雑所得

・その他の注意喚起
ふるさと納税の申告漏れ
予定納税額(法人でいう中間納付額)の記載漏れ
復興特別所得税の記載漏れ
添付書類の提出漏れ

<仮想通貨は国外財産調書の対象外>

「国外財産調書」と「財産債務調書」も所得税の確定申告と同様に3/15が提出期限となる。
※1 国外財産調書とは
12/31時点で合計5,000万円を超える国外財産を有する居住者が提出すべき書類。
※2 財産債務調書とは
確定申告書を提出する者で、所得金額が2,000万円超、かつ、
12/31時点で合計3億円以上の財産(土地・株等)を有する者が提出すべき書類

■海外で保管しているビットコインの取扱い
(1)国外財産調書
ビットコインが国外財産に該当するか否かの内外判定は、「財産を有する者の住所」で判断。
⇒居住者が海外の仮想通貨取引所で保管している場合、
国内財産と判定されるため、「国外調書」の提出は不要
(2)財産債務調書
国内外の財産を記載する必要があるため、
海外の仮想通貨取引所で保管しているビットコインについても記載が必要。
※ビットコインの時価総額は1日の間に価額が大きく変動するため、
取引価額など合理的な方法で算出する必要あり。



8.平成30年度改正:給与所得控除・公的年金等控除・青色申告特別控除・基礎控除

給与所得控除と公的年金等控除を一律10万円引き下げる。さらに青色申告者に係る青色申告特別控除についても10万円を引き下げる。
そしてすべての所得に適用される基礎控除を10万円引き上げる。 
※以下すべて平成32年分以後からの所得税に適用

■給与所得控除
⇒最低55万円から年収に応じて段階的に増加し上限額は、年収850万円超で195万円となる。
ただし一定の要件を満たす子育て世帯・介護世帯(一定の調整控除あり)は上限額の引き下げなし。
■公的年金等控除
⇒控除額を一律10万円引き下げる。
(1)公的年金等の収入金額が1,000万円超についての控除額195万円5千円の上限を設定。
(2)公的年金等の雑所得以外の合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下
⇒一律10万円引き下げる
(3)(2)の合計所得金額が2,000万円超
⇒一律20万円引き下げる。
■青色申告特別控除
 ⇒控除額を55万円とする。
ただし、次の要件を満たせば控除額65万円を控除できる。
・その年分の事業に係る主要簿を電磁的記録により備え付けること。
・その年分の所得税の確定申告書、B/S、P/L等を提出期限までにe-taxで申告すること。

■基礎控除
 控除額を一律10万円引き上げを行う。
⇒48万円とする。
 ただし合計所得金額により制限あり。
⇒個人の合計所得金額2,400万円超2,500万円以下では、段階的に基礎控除額が逓減する。 
 2,500万円超については基礎控除の適用なし。



9.在外子会社の税効果会計

・米国の税制改革法が2017.12.22に成立、法人税率の大幅引き下げが実現
 ⇒米国に在外子会社を持つ日本企業にとって税効果にどのような影響があるのか論点となる
・税率変更があった場合、在外子会社では新税率でDTAやDTLを計算し直す。
⇒米国の法人税率引下げの適用開始日は2018年1月1日以降だが、いわゆる「成立日基準」により、2017年12月期決算から新税率を織り込んで税効果の計算を行う



10.米国特許訴訟の傾向とリスク

・コンペティター間の訴訟からNPE(*)による訴訟に移行し、日本企業も巻き込まれる可能性がある。
(*)不実施主体=特許権者でありながら、自ら特許発明の実施を行わず、専ら他者に対する権利行使により利益を得ようとする者をいいます。
・米国特許訴訟には高額の費用、予見可能性の低さ、高額の賠償金等のリスクがある
・米国特許制度には固有のルールがあり、それを知らない日本企業が違反を犯すと厳しいペナルティがある可能性がある



11.資本的支出と修繕費の区分

■招集通知の発送前WEB開示
ガバナンスコードでは、招集に係る取締役会決議~招集通知を発送するまでの間に開示を推奨
⇒招集通知の納品・内容確認後にWEB開示を行っている会社がほとんであり、改善の余地あり

■招集通知のメール送信
現法下では株主の承諾が必要であり、発送手続の負担大
⇒承諾不要とするよう、法制審議会で審議中
※ネット上で招集通知情報が入手できるため、株主の要請は低い・・・

■総会参考書類の電子化
定款により、参考書類、事業報告の一部、SS、個別注記表、連結計算書類はWEB開示で株主提供とみなし
⇒実際は注記表の開示がほとんど。SS、連結SS、業務の適正を確保するための体制、の公開も増加傾向

■議決権行使の電子化
会社が用意した特定のサイトにおいて、議決権を行使する運用
⇒まだまだ低調ではあるが、海外機関投資家からのニーズは高い

■その他
・総会のリアルタイム中継⇒中継会場では議決権行使不可のため、事前通知必要
・議決権行使結果、総会で使用したスライド、株主との質疑応答を公開する事例も多い。


12.米国特許訴訟に平時から備えておくべきこと

・米国特許訴訟は多額の費用と時間を要する
⇒米国でビジネスを展開する場合、特許調査を行い、リスク分析をすることが重要
※故意による侵害の場合、現実の損害の最大3倍まで増額される。

・ディスカバリへの備えが必要
⇒不要な法律問題に関する文書を作成しない
 法律問題について、メール相談ではなく口頭相談する
 文書化する際は秘匿特権を確保する。
 不要な文書を廃棄する

※ディスカバリ=証拠の開示を求める手続き
※秘匿特権=弁護士との法律問題に関するやりとりした文書。開示を拒める。



13.為替予約における会計処理の変更におけるポイント

■為替予約の会計処理方法
ヘッジ会計の要件を満たす場合、「原則処理」または「振当処理」の2つを選択適用
※選択した処理は、会計方針として決定し、ヘッジ会計の要件を満たす限り継続適用が必要

■論点
振当処理は実務への配慮から経過措置として認められているため、いったん独立処理を採用した後に振当処理へ変更することは、本来の趣旨認められない
⇒正当な理由による会計方針の変更に該当するかの判断がポイント

■正当な理由による会計方針の変更に該当するかの判断
次の要件が満たされているとき、会計方針の変更が認められる

①会計方針の変更が企業の事業内容または企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること
②会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われるものであること

※上記に加え、監査人は下記の事項を総合的に勘案する必要あり
・変更後の会計方針が企業会計基準に照らして妥当であること
・会計方針の変更が利益操作等を目的としていないこと
・会計方針を当該事業年度に変更することが妥当であること

■仕訳の影響
(例)為替予約等の契約が外貨建取引等の前に締結されているとき

振当処理の場合、外貨建金銭債権債務等に為替予約相場による円換算額を付すことが認めれる(実務上の煩雑性を考慮)



14.国土交通省が、旅行業法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見募集を開始。

てるみくらぶの破綻を受け、第一種旅行業者を対象に、更新登録の際、企業が公認会計士等により提出書類と総勘定元帳等を突合した結果を添付書類に追加することを求める。

更新登録は5年おきに必要。

第一種旅行業者:海外、国内で募集型企画旅行を実施可能。 
第ニ種旅行業者:国内で募集型企画旅行を実施可能。 
第三種旅行業者:所在地に隣接する市町村で募集型企画旅行を実施可能。



15.IPO準備段階におけるM&Aの留意点

1.リスクを抱え込まない
買収後にリスクが顕在化してはNG
潜在的なリスクがないかDDで洗い出し、解消のメドが立たなければ、M&Aの回避もあり得る。

2.資本政策
IPO準備段階では、資本政策が非常に重要
計画に織り込んでいないM&Aが生じ、
資本政策が当初計画と大きくずれるような時には、M&Aを見送る選択肢もある。
M&Aの結果として、会社組織や管理体制が変化する場合があり、
その変更部分は追加で審査対象となる。

3.実施時期
極力、直前々期から申請期は避けた方が無難
ただし、不採算部門の切り離しや子会社の整理を目的とする組織再編のM&Aは、
上場審査において、ポジティブに評価されるケースもある。










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