2018年2月4日日曜日

2/2 勉強会:仮想通貨も財産債務調書の記載対象に、非課税取引について 他

1.平成30年度税制改正について

■所得拡大促進税制の拡充
・賃上げと設備投資の要件を満たした場合、賃上げ額の15%の税額控除が認められる
・上記に加え教育関連費の増加を同時に満たした企業は控除率が20%に引き上げられる
・中小企業者は要件を緩和するとともに、最大で賃上げ額の25%の税額控除が認められる

■個人所得課税
・給与所得控除と公的年金等控除が10万円引き下げられ、代わりに基礎控除が同額増額される
・給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除の上限額が195万円となる
・年金収入が1,000万円を超える場合に、公的年金等控除につき195.5万円の上限額が設けられる
・基礎控除について2,500万円超でゼロとなる
・2020年分以後の所得税、2021年分以後の個人住民税から適用

■新税の創設
・2019年1月7日以後に日本から出国する場合、国際観光旅客税が出国1回について1,000円課税される
・2024年度より森林環境税が新設される。一人年額1,000円として市町村が個人住民税と合わせて賦課徴収する

■納税環境整備
・2020年4月1日以後開始事業年度より、資本金1億円超の大法人の法人税等や消費税の申告について電子申告が義務化される
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される保険料控除申告書からは、保険会社の電子署名が付されたデータ添付による電子申告が認められる
・年末調整につき、2020年10月1日以後に提出される住宅ローン控除申告書からは電子申告が認められる




2.スピンオフ準備、兄弟会社の合併も適格

■平成30年度税制改正
・株式分配型のスピンオフの準備として行うグループ内再編を税制適格に
⇒兄弟会社を合併するケースも想定

■適格とされるケース
(1) 親法人が受皿となる完全子法人を現金出資により設立
(2) 事業に必要な免許や許認可を先行取得
(3) 受皿会社に親法人の事業を吸収分割により移管

■兄弟会社を用いるケースも適格に
・兄弟会社を合併し受皿会社として扱い、その後親法人株主に現物分配するケースも想定。
・グループ内に業績の悪い企業を抱える場合におけるコングロマリット・ディスカウント解消などに利用されるケースも想定?



3.仮想通貨も財産債務調書の記載対象に

■財産債務調書
提出者:下記2点を満たす人
(1)所得金額2000万円超
(2)その年の12/31において、3億円以上の財産または1億円以上の有価証券等を有する者

■国外財産調書
提出者:その年の12/31において、価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する居住者

■仮想通貨の取り扱い
・財産債務調書には仮想通貨の記載が必要、国外財産調書には記載不要(仮想通貨の国内外の判定は保有者の居住地で行うため)

■ペナルティとメリット
・調書を提出しなかった場合は、申告漏れに係る部分に過少申告加算税が5%加算される
・期限内に提出した場合は、所得税や相続税に申告漏れがあっても過少申告加算税が5%軽減される
・今年の期限は30年3月15日(木)




4.非課税取引について

消費税等は国内において事業者が事業をとして対価を得る取引を課税の対象としている。しかし消費という性格になじまないもの、社会的政策配慮から課税しない非課税取引が限定列挙されている。

■郵便切手、印紙、証紙、物品切手等の譲渡
行政手数料の前払的性格を持っている。譲渡した時点においては課税すべきではない為、非課税とされる。
また、公共の場所での譲渡は非課税だが、金券ショップなどで購入した印紙については課税仕入に該当する。

≪仕入税額控除の時期≫
原則:課税期間中に使用した分のみが仕入税額控除である。
郵便切手等:継続適用を要件として、購入した時点において全額が仕入税額控除として認められている。
印紙・証紙:購入時、使用時共に仕入税額控除は認められない。
プリペイドカード:使用時:仕入税額控除、贈答用は仕入税額控除は不可、業務用は仕入税額控除が可能
≪留意点≫
期末在庫:仕入税額控除の有無に関わらず法人税においては貯蔵品などの勘定科目により未使用分を計上

■国際郵便為替などの手数料
海外送金の手数料:外国為替業務にかかる手数料として非課税となる。
口座維持手数料や残高証明書:預金の入出金に係る周辺業務の手数料のため課税となる。

■保険医療に係る診療報酬、助産に係る資産の譲渡等
診療報酬(患者の自己負担も含む)は非課税だが美容整形や健康診断など保険の対象とならないものは消費税が課税される。
保険診療の対象とならないものであっても差額ベッド代や特別給食費など助産に係るものであれば非課税とされるので注意が必要だが、保険診療に用いる医薬品や医療器具の売買については消費税が課税される。

■埋葬料・火葬料
埋葬・火葬の為の役務の対価のみが非課税となる。葬祭費用は消費税が課税される。



5.今週の専門用語

■自筆書遺言の方式緩和
現状(民968条1項)
→遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
例えば対象財産が不動産である場合には、地番・面積、預貯金債権については金融機関名・口座番号等を記載する必要がある。

緩和後(改正要綱案)
→遺産目録は自書することを要しないこととした。
パソコンでの作成や、遺言者以外の者による代筆も認められる。

■コングロマリット・ディスカウント
コングロマリットとは、異なる分野の事業を複数営む多角経営企業や、持株会社の傘下に複数の異なる業態の子会社を持つ企業グループなどのことをいう。
「コングロマリット・ディスカウント」とは、複数の異なる事業を営んでいるため、一部の不振事業に足を引っ張られ、好調な事業の業績等が企業全体の株価に十分反映されず株価が割安になるリスクのことをいう。

■ふるさと納税ワンストップ特例
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税を行った給与所得者等が、確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる仕組みのこと。利用するためには、以下3つの条件がある。
・.寄附先の自治体が発行する「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して、寄附した自治体に送ること
・1年間の寄附先が5自治体以内であること
・.元々確定申告をする必要のない給与所得者等であること




6.裁判例:利益積立金額がマイナスの場合の払戻等対応資本金額等の計算

■概要
A社は外国子会社Bより「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」を受け、
利益剰余金部分は受取配当、資本剰余金部分は資本の払戻しとして処理したが、東京地裁より
「利益剰余金と資本剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」は全体が資本の払戻しとなる
として更正処分を受けた(先週の記事参照)その後、みなし配当の計算方法で争いとなった。

■みなし配当の計算
交付金銭が払戻等対応資本金額等を超える部分の金額をいう

■払戻等対応資本金額等の計算
払戻し直前の資本金等の額×減少した資本剰余金/簿価純資産価額(払戻し直前の資本金等の額+利益積立金額)
⇒通常、下線部(払戻割合)は1未満になるが、今回利益積立金額がマイナスであったため、1を超えた。

課税当局は、払戻等対応資本金額等>減少した資本剰余金としてみなし配当を計算したが、東京地裁はこれを
違法として国の処分(みなし配当の計算額)を取り消した。
⇒簡単にいうと払戻割合を1以上として計算するのは違法、という判断が出たという話



国外転出時課税の対象資産に仮想通貨は該当せず

■国外転出時課税とは
2015年7月以後に国外転出をする居住者が1億円以上の対象資産を有している場合、
その対象資産の含み益に所得税と復興税が課税される。

■対象資産(所得税法60条の2に規定)
・有価証券
・匿名組合契約の出資持分
・未決済の信用取引・発効日取引
・未決済のデリバティブ取引

■仮想通貨はどうなるのか?
上記に限定列挙されている資産のみ対象となるため、
現時点で、仮想通貨は対象資産にならない。
⇒国外転出時課税の対象資産に含まれない。

ただし仮想通貨の進展次第では対象資産に含まれる可能性あり。



8.国税当局は、保険会社が提出する支払調書の内容把握を強化

■H30年1月施行(H27年改正)
⇒従来の生命保険会社が提出する支払調書は、支払先、支払った保険金や一時金(100万以下除く。)が記載事項であった。この改正施行により保険契約者等の変更事項も記載事項として追加される。
■支払調書の記載事項追加の経緯
⇒相続税及び贈与税の申告漏れが多いため、支払調書により把握内容を強化
■記載内容の追加事項
⇒旧契約者、保険料負担額、変更後の契約者内容など
■申告漏れが多い具体的な生命保険契約
⇒定期金給付契約の権利「保険事故が発生していない生命保険契約等(死亡や掛捨を除く。)」
■相続財産となるケース
父(契約者・保険料負担者)の死亡により定期金給付契約の権利(被保険者は母)を子が契約者として承継した場合は、子のみなし相続財産となる。
⇒相続時に解約し一時金を取得・・・・・・取得一時金はみなし相続財産
  解約せずに保険契約を継続承継・・・・・相続時の権利評価額
■贈与税の取得財産となるケース
契約者(保険料負担者)を父から子に変更したケース(受取人は変更前後とも子)
・変更時
⇒変更前までの父の保険料負担分・・・・・・子に贈与税が課される。
・満期時の一時金
⇒子の一時所得として課税(父が負担した保険料は、控除できない。)
■クライアント対応
・個人の確定申告時に契約保険会社の保険証券を必ず確認
・相続時に死亡保険金のみならず権利などの保険契約がないか必ず調査
・安易に契約者を変更することで贈与税が課されることを説明
・既に契約されているもので満期時に贈与税が課されることを説明



9.ICOの会計処理/メタップス

・メタップス社が同社子会社でのICO(Initial Coin Offering)の会計処理方針を公表した。
・ICO:トークンと呼ばれる証票を発行し、法定通貨や仮想通貨を対価として投資家から資金を集める手法
・現在、ICOの会計処理についてはいずれの会計基準でも定められていない

・受領した対価は負債(前受金)計上し、その目的が実現されるタイミングで収益計上
・保有する仮想通貨は四半期では時価評価しない
・売却のタイミングで簿価との差額を損益計上



10.金融庁は26日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正を公表。

主な改正内容は以下の通り。
→即日施行(一部、平成30年4月1日施行)

■開示内容の共通化・合理化
・有価証券報告書、事業報告で大株主の状況に係る記載を共通化
・新株予約権等の記載を合理化
・株主総会日程の柔軟化のために開示を見直し

■非財務情報の開示充実
・「業績等の概要」、「生産、受注及び販売の状況」
⇒ 「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に統合。記載内容を整理。
・事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識及び分析を記載。
・経営者が経営方針・経営戦略等の中長期的な目標に照らして経営成績等をどのように分析・評価しているかを記載。



11.IPO準備中の未払残業代の精算

・過去2年分の未払残業代を精算する必要あり
⇒労働債権の時効は2年
・対象従業員は過去在籍していたが、現在退職済の労働者も含まれる
・マネージャー以上は管理監督者(※)として残業代を支払わないのはNG
・管理監督者であっても、深夜割増賃金の支払は必要

(※)管理監督者
1.経営者と一体的な立場で仕事をしている者、かつ
2.出社、退社や勤務時間について制限を受けていない者、
3.その地位にふさわしい待遇がなされている、など
⇒管理監督者に該当する者は限られる

■固定残業代の注意点
固定残業代を採用し、残業代を支払わないようにするためには、
いくつかの要件が必要

1.固定残業代を採用することが、労働契約の内容となっている
2.固定残業代を基本給に含める場合は、通常賃金と固定残業代を明確に区別
3.手当として支払う場合、その手当が割増賃金の支払に代えて支払われることを明記
4.労基法所定の計算方法による額が固定残業代を上回るときは、差額をその賃金支払期に支払うことが合意されている













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