2018年10月13日土曜日

10/12 勉強会:日本企業がIFRS移行時に行った表示科目の組替~差異調整表の調査分析~ 他

1.ブローカー価格の使用は可能の方向も

時価会計基準では、ブローカー価格など、第三者から入手した価格が会計基準に従って算定されたものであると
判断する際の確認方法を示す方向。
例:
・第三者より、時価の算定に用いた評価技法とインプット内容を入手する
・入手したインプットについて、算定日の市場の状況を表したものであるか、観察可能なものかを検討する
・入手した評価技法がそのインプットを十分に利用できる適切なものであるかを検討する






2.税効果会計実務指針移管後の残された課題とは?

■会計処理:法人税等orその他の包括利益
・その他の包括利益に対する課税
⇒Ex.連結納税加入時のその他有価証券の時価評価
(仕訳)
その他有価証券XXX/その他有価証券評価差額金XXX ← 会計上PLヒットしないが、税務では課税
⇒これに関する税金を法人税等で処理するかその他の包括利益で処理するか

■100%子会社間での子会社株式等の売買に係る税効果
・子会社間で子会社株式等(孫会社株)の売買が行われた場合
(譲渡側仕訳)
現金預金XXX /子会社株式XXX
      /子会社株式売却益XXX→連結上消去&税金も発生しない(グループ法人税制により連結外部に売却されるまで繰延)
⇒税金の支払いは発生しないにも関わらず連結基準上でDTLorDTAの計上を求められている
⇒見直しをすべきとの意見が寄せられている





3.「準ずる割合」の承認に高いハードル

■販売用マンションに係る消費税の仕入税額控除の区分判定
・課税売上対応仕入から共通対応仕入へ変更
⇒課税売上割合に対応する部分のみが仕入税額控除の対象となり納税額増加

■対抗策
・共通対応を受け入れる代わりに「課税売上割合に準ずる割合」の適用申請を行う動きあり
・ムゲンエステートは土地の売上を除外した計算式で申請するも却下
【計算式】
準ずる割合=(建物の販売価格+課税売上に該当する賃料収入)÷(建物の販売価格+賃料収入)
・申請が通っても、適用できるのは承認を受けた日の属する課税期間以後




4.小規模宅地等の特例改正における留意点

■小規模宅地等の特例とは
『被相続人の宅地の評価額を、一定の面積と条件下で50%~80%減額する制度

■貸付事業用宅地を相続した場合
・改正前:200㎡までの部分については評価額を50%減額できる。
・問題点:この制度を利用する為に、一時的に現金をタワーマンションなどの不動産に換え、特例を利用し相続税の負担軽減後、譲渡するといったケースが見受けられた。
・改正後:相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した不動産については対象外とする。
・適用開始時期:平成30年4月1日以後開始する相続より適用となる。但し平成30年3月31日以前から貸付けられている宅地等については平成33年3月末まで改正法が適用されない。

■特定居住宅地等を相続した場合(家なき子特例)
・改正前:被相続人等の居住用宅地が特定居住用宅地等に該当した場合は330㎡まで評価額を80%減額できる。
・問題点:本当は同居していたけど、やむを得ない事情で同居できなかった相続人を救済しようという制度だったが、持ち家を持たない孫や別の親族に相続させたり、持家を親族に売却して減額を受けるケースが見受けられた。
・改正後:特定居住用宅地の80%減額特例は対象者が厳格化された。
・適用開始時期:平成30年3月31日までに、旧家なき子特例を満たしている場合は、平成32年3月31日までに発生した相続に限り特例を認める。







5.日本企業がIFRS移行時に行った表示科目の組替~差異調整表の調査分析②~

■概要
日本基準における財務諸表は、数値基準に基づき、表示科目が細分化されてきた(財規等による1%基準や5%基準)が、注記による開示は少なかった。
反対に、IFRSでは財務諸表本体の表示科目は少なく、シンプルあるが、注記による開示が膨大となっている。

■IFRS任意適用企業が実際に行った表示組替の内容
・営業外損益・特別損益項目の組替
→収益又は費用のいかなる項目も、IFRSでは「異常項目」として表示してはならない。
→営業外損益・特別損益は、営業活動の収益費用又は金融収益費用に組替。
・短期保有有価証券等をIFRSでは、現金同等物に組替
→例えば、取得から3ヵ月以内に償還期限が到来する短期投資を現金同等物へ組替
・貸倒引当金をIFRSでは、対応債権残高から直接控除
・資産除去債務をIFRSでは、引当金に組替
・新株予約権をIFRSでは、その他の資本に組替
・棚卸資産の集約表示
→商品、仕掛品、原材料等を棚卸資産として一括表示。





6.個人事業主の借入金に係る債務免除益の所得区分で争い

■概要
・納税者は農協と別の農業が合併することになり、借入金の債務免除を受けた。
・借入金は賃貸不動産取得と農地及び農業用機械の取得によるもの。
・納税者は債務免除益を一時所得として申告。
・課税当局は一時所得の要件を満たさないと指摘し、事業・不動産・雑所得を主張。

■結論
裁判所は事業・不動産・一時所得と判断。
⇒借入れの目的や債務免除に至った経緯等を総合考慮して判断。

■今回のケースの債務免除益の所得区分
【事業所得】
⇒農業用機械を購入

【不動産所得】
⇒共同住宅の建築資金

【一時所得】
⇒農地を購入
【約5年後に賃貸用マンションの敷地として利用している部分】
・農地を購入する目的で借入し、相当程度の期間があり、不動産貸付業務の遂行に関わりなく借り入れられたのであることが否定できない。
【農業として利用している部分】
・農地を購入したものの、事業の遂行とは関わりなく借り入れられた。
・農協の依頼に応じて借り入れての購入。

⇒使徒不明
・借入目的不明

■一時所得の結論の経緯
・債務免除益は非対価性要件を満たすと判断。納税者への見返りがない。
・結果として、不動産貸付業務、事業(農業)の遂行として使用していても、借入時の状況により、該当する所得区分が変わってくる。








7.未供用資産の償却費、翌期も損金不可

■事業年度終了時に保有する減価償却資産
損金経理した金額>償却限度額⇒償却超過額は翌事業年度以降に一定の範囲内で損金に算入できる。
■事例
平成26年3月期において太陽光発電設備が事業用に供されていないとして損金不算入とされた減価償却費相当額について、現実に事業用に供された平成27年3月期の損金に算入できるか否か。
⇒太陽光発電設備は平成26年3月期終了時に事業用に供されていないことから法人税法上の減価償却資産に該当しない。
⇒また、平成26年3月期で損金経理したとしても法人税法上の減価償却資産に該当しない資産に係るものであって、損金経理額に該当せず、法人税法上の償却超過額にも当たらない。





8.審査事例:事業供用前の償却費の取扱い

■概要
A社(3月決算)は平成26年3月に太陽光発電設備を購入し、全額を損金算入した。
しかし、事業供用が4月にズレ込んだため、別表にて全額加算調整した。
翌期の申告書で全額認容減算したところ、課税当局から認められない処理として
更正処分を受けた。その後不服申し立てを行ったが審判所も課税当局を支持した。

■理由
減価償却資産とは、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち事業供用
していないものを除くと規定されている。上記例でいくと平成26年3月期に計上
した償却費は、事業供用されていない資産にかかるものであるため「減価償却資産
にかかる償却費」にあたらない。よって「損金経理をした繰越償却超過額」と認められず、
平成27年3月期において認容減算の対象とならない。

■繰越償却超過額
減価償却資産についてした償却費のうち損金算入限度額を超える部分の金額。
「損金経理をした金額」として翌年以降に繰り越され、限度額の枠内で認容減算の
対象となる。









本年分の年末調整から配偶者控除等申告書を提出

H30年分の年末調整より、
年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受ける者は、
「給与所得者の配偶者控除等の申告書」を給与支払者に提出することとなる。
※あくまでも適用を受ける者のみ提出。

■配偶者控除の適用の要件 ※細かい論点は除く
・配偶者であること(内縁関係は×)
・納税者と生計一
・年間の合計所得金額が38万円以下(給与収入の場合は103万円以下)
・納税者の給与収入が1,220万円以下

■配偶者控除の控除金額(納税者を夫、配偶者を妻と仮定)
妻の給与収入が103万円以下であることを前提とし、
・夫の年収1,120万円以下 ⇒ 38万円控除
・夫の年収1,170万円以下 ⇒ 26万円控除
・夫の年収1,220万円以下 ⇒ 13万円控除
なお妻の給与年収が103万円超である場合、「配偶者特別控除」の適用あり。

■年末調整で適用を受ける場合
マル扶とともに、「給与所得者の配偶者控除等の申告書」を提出。
なお、翌年以降、「源泉控除対象配偶者」に該当すると想定される場合は、
マル扶の源泉控除対象配偶者枠に記載すること。
⇒記載することで、翌1月の給与支給時より、配偶者分が考慮された源泉徴収税額(減額)が徴収される。






10.IFRS16号では、リース取引は原則オンバランス。

・IFRS16号では、リース取引は原則オンバランス。
 ⇒ リースなのかサービスなのかの線引がこれまで以上に重要になる。

・本社や支店、営業所等のオフィスの賃貸借契約、工場用地の借地権、借上社宅、物流倉庫などの賃貸借契約も通常は該当。

・リースに該当するかどうかの判断基準
 ⇒ 要件1「特定された資産」 要件2「使用を支配する権利」

・要件1「特定された資産」
 ⇒ 物理的に区分できるか(たとえばサーバー容量の一部を使用する権利は物理的に区分されていないのでリースに該当しない)
 ⇒ 供給側が容易に入れ替えできないか(サーバーが特定されていても、リース会社側が別のサーバーに簡単に入れ替えできる場合は、「特定」されていないのでリースに該当しない)

・要件2「使用を支配する権利」
 ⇒ 資産の使用から生じる便益のほとんどを享受できるか
 ⇒ 使用を指図する権利があるか








11.有償新株予約権、実務対応報告適用後に15社が発行決議

・実務対応報告第36号が2018年4月1日から適用され、9月30日までに上場会社15社が有償新株予約権を発行する旨を適時開示。

・15社のうち、7社が新興市場(マザーズ3社、JQ3社、名証セントレックス3社)
⇒新興市場上場会社の方が、業績や株価が急上昇する可能性があり、インセンティブ効果が大きい。

・有償新株予約権は、原則としてストップ・オプション会計基準が適用される。
⇒費用計上額=公正な評価単価-払込金額。

・一部会社からは、費用計上に疑念あり。
⇒それまで有償新株予約権は費用計上されていなかったので、業績へマイナスの影響のある有償新株予約権の発行は減るのではないか。
⇒36号適用前の2018年1月12日~2月21日:26社
36号適用後の2018年4月1日~9月30日:15社
⇒単純に比較すると、36号適用前後で有償新株予約権発行の適時開示を行った会社数は減っている。








12コンテンツ産業の上場審査

映画・音楽関連、出版業、ゲームソフト関連など

(1)事業性
コンテンツ産業は商品が無形のため、資産価値の評価が難しい。
企業の将来性を評価するためには、コンテンツ自体を評価する。
コンテンツに資産性・成長性があると評価された場合でも、
他の知的所有権を侵害している恐れがないか等、コンテンツの成長性が維持できるかどうか審査される。

(2)会計処理
明文化された会計基準はない。
1.収益の計上基準
売上代金の回収手段が多様であるため、回収手段に合わせて売上計上基準を柔軟に考慮する必要がある。
上場審査上、恣意性がないか、実現主義と照らして売上計上基準が妥当であるかが確認される。














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