2019年1月30日水曜日

1/11 勉強会:耐用年数を確定できない無形資産 他

1.SO税制拡充、ベンチャー企業等限定に

平成31年度税制改正において、税制適格SOの要件緩和がされることとなっていたが、
「付与対象に社外協力者を追加する」のみにとどまった。

・全企業対象とはならず、ベンチャー企業等限定の改正となる。
・権利行使価額の上限引上げや、権利行使期間の範囲拡大も見送り。





2.耐用年数を確定できない無形資産①

~概要とIFRS任意適用日本企業の計上額~
■会計処理
・無形資産の耐用年数を確定できない場合:非償却(減損テストのみ)

■概要
・IFRSの文言
「無形資産が、企業に対して正味のキャッシュ・インフローをもたらすと期待される期間について予見可能な限度がない場合、当該無形資産の耐用年数は確定できないものとみなさなければならない」
・例:商標など
⇒ほとんど費用なしに10年ごとに更新可能となっている。
⇒商品寿命、市場の趨勢、ブランドの拡大機会等により不確定の期間にわたり正味キャッシュフローをもたらすもの

■IFRS任意適用日本企業の状況
(金額上位の会社)
・ソフトバンク 4兆1754億円(のれん4兆3025億円と合わせると8兆4780億円!)
・サントリー食品インターナショナル 3569億円
・LIXILグループ 1914億円
・三菱ケミカルHD 1837億円
・伊藤忠商事 997億円
(耐用年数を確定できない無形資産として計上されている主な項目)
・商標権、トレードマーク:32件
・ブランド:6件
・ライセンス:3件
・仕掛研究開発:3件
(計上理由)
・事業が継続する限りは法的に継続使用でき、かつ予見可能な将来にわたってサービスを提供することを経営陣が計画している
・業界における歴史や地位、事業規模がブランドの確固たる地位に寄与。今後も末永く活用していく予定 など





3.「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらましについて

■土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価についての通達
・宅地に占める土砂災害特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて、一定の減額補正を行うことが定められた

■適用対象
・特別警戒区域内にある宅地(土砂災害防止工事により指定解除となった場合は適用対象外)

■評価方法
・宅地全体が特別警戒区域内でない場合の価額×特別警戒区域となる部分の地積の割合に応じた所定の補正率
(例)総地積400㎡、特別警戒区域内の地積:100㎡、路線価10万円/㎡の場合
・特別警戒区域となる部分の地積の割合
100㎡÷400㎡=0.25⇒補正率0.90
・評価額
10万円×400㎡×0.90=3,600万円






4.税制改正大綱~過大支払利子税制の見直し~

■過小資本税制
⇒国外株主が日本法人に投資する際に出資を少なく、貸付割合を極端に多くしてその支払利子を
 損金算入する事により、日本での租税回避を行う事を防止するための税制
 ※貸付の割合を出資に対して3倍以内に抑えれば過小資本税制は適用されない。

■過大支払利子税制
⇒過小資本税制の抜け穴を利用し意図的な貸付利率の設定による租税回避行為
を防ぐため導入された税制
※関連者純支払利子の額のうち、基準となる所得(調整所得金額)の50%を超える部分は損金不算入
 損金算入されなかった金額は7年間の繰越が可能

■改正内容
⇒一定の支払利子を対象外
日本の課税ベースを侵食しない利子、恣意的な借入に係る利子とはみられにくい支払利子
⇒基準となる所得の縮小
 国内外の受取配当益金不算入額を調整前所得の計算に含めない
⇒基準割合の引下げ
 50%を超える部分の損金不算入 → 20%を超える部分の~に改正予定
⇒税制の適用免除の要件緩和
 純支払利子額が1,000万円以下 → 2,000万以下に変更

■開始時期
平成32年4月1日以後に開始する事業年度から適用開始






5.個人版事業承継税制は幅広い業種が対象

医業や農業など個人事業者も青白申告書であれば対象の方向

・個人版事業承継税制は、10年間の限定措置として、事業用宅地や事業用建物等の事業用資産の継承に係る相続税・贈与税を100%納税猶予するもの。
・青色申告書であれば、医業や農業など幅広い業種で特例の適用対象。
・土地建物に加え、機械器具備品、車両運搬具、生物、無形償却資産など、事業に応じた多様な事業用資産の課税価格に対応する相続等納税猶予の対象。






6.CRSで入手の金融口座で海外資産把握

・藤井国税庁長官インタビュー

■CRS(共通報告基準)に基づく自動的情報交換(非居住者の金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準)により入手した金融口座情報を活用
⇒日本でも平成30年10月末時点で64か国・地域の税務当局から約55万件の金融口座情報を入手。日本居住者の金融口座情報を活用することにより、適正公正な課税及び徴収を行う方針。


■今年10月から導入させる軽減税率制度について
⇒事業者は税率ごとの商品管理や区分経理等が必要になるため、周知・広報・相談対応等を行っていくとのこと。
⇒具体的な事例に基づいて解説したQ&Aはすでに公表しているが、今後も追加・改訂を行っていく。
⇒各種説明会や電話相談センター、国税庁のHPに記載したQ&Aやパンフレットを活用し、早めの準備を呼びかける。





7.投資信託時価、当面は現行取扱いを踏襲

・企業会計基準委員会(ASBJ)が検討している時価算定基準(案)では、「時価とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格」と定義している。

・問題は市場価格が存在せず、時価算定日における基準価格で無条件に解約できない場合である。
⇒現状、有価証券報告書や運用報告書の開示義務がある投資信託においては、投信協会の公表する計理規則に従い評価を行っているものと想定されるが当該計理規則が時価算定基準(案)の時価の定義にそぐわないため見直しが必要。

・この問題を解消するには、一定期間が必要であり企業会計基準委員会では時価算定評価基準等の公表後おおむね1年かけて検討する予定。





8.賃上げ税制の継続雇用者と中途入社

・平成30年度改正により「所得拡大税制」が「賃上げ・設備投資促進税制」に改組
・「継続雇用者」の定義が改正

(変更前)当期及び前期において給与等の支給を受けた国内雇用者で一定の者
(変更後)当期と前期の各月すべてに給与等の支給を受けた国内雇用者で一定の者

原則:基本的に前期・当期のすべてに在籍していた者が対象
例外:前期期首月の途中入社または当期末月の途中退職者
⇒一部日割りとなるが、「各月すべて」に給与等の支給を受けることになるため
 対象となることに注意






国税庁 勘定科目内訳明細書のCSV形式のフォームを公表

国税庁は2019年4月以後終了事業年度分の新たな「勘定科目内訳明細書」の明細部分を公表。
・売掛金等の内訳書につき記載方法の簡素化
・CSV形式による提出も認められる(8月頃公表予定)
※2019年4月決算法人より新しい「勘定科目内訳明細書」を使用する。





10.ディスクロージャー・企業会計をめぐる動向

・政策保有株式については、金融機関による保有が減少しつつあるが、事業法人による保有の減少は緩やか。
・持ち合い比率(2000年⇒2017年度)
上場銀行 12%弱 ⇒ 3.7%
生命保険 8%強 ⇒ 3.4%
上場事業法人 8%弱 ⇒ 5.7%

・投資判断に必要な情報が開示されるよう、下記の開示ルール策定を金融庁が検討中。
 ⇒ 役員報酬(報酬プログラム、報酬実績)、政策保有株式、監査人の継続監査機関

・IFRSの任意適用企業は、2010年12月末の3社から、2018年11月末は201社まで増加。
・日本からも、IFRSに関して積極的な意見を発信。
 ⇒ その他包括利益に計上済の項目について、原則として純損益にリサイクリングする
 ⇒ のれんの定期償却の再導入の是非を検討





11.上場基準などの見直しへ意見募集

・東証は12月21日、「市場構造の在り方等の検討に係る意見募集」を公表。
⇒主な論点は上場基準等の在り方

・新興企業向け市場(マザーズ)の新興企業の成長の動機付け、上場基準をどう考えるか。
<論点>
①VC等からの投資回収目的の上場が見受けられる。
②資金ニーズの高い先行投資型の企業に上場に機会を提供できていない。
⇒米国では、IPOのうち、インターネット関連・バイオテック企業などが約6割を占め、赤字上場も多い。

・東証一部の在り方について
<論点>
①現状、IPO後、企業価値に大きな変化がなくても東証一部にステップアップできる。
②コーポレート・ガバナンス等の水準も他市場と大きな差はない。
⇒東証一部の基準や義務を高め、企業価値の向上・国内外投資家からの指示獲得を目指す方針。






12コングロマリット・ディスカウント

M&Aなどを通じて事業を多角化している企業において、
単体でそれぞれの事業を営む場合と比較した時に、
市場からの評価が低下し、株価が下落している状況

コングロマリット形成の
メリット:様々なリスク耐性に強い
デメリット:シナジー効果を生まない事業を同時に展開していることで、経営資源が分散し、
経営の複雑化によって様々なコストがかかり、競争力が低下する

投資家の立場としては、自らの意思で様々な業種に投資をして、リスク分散を図っているため、
あえてコングロマリット銘柄を保有する理由が乏しいと考えられる。
そのため、市場の評価も厳しくなる傾向がある。




























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