2019年6月25日火曜日

5/31 勉強会:コーポレートガバナンス・内部管理体制 他

1.監査報告書に限定付適正意見を付した場合はその理由を記載へ

・現行の監査基準では、限定付適正意見を表明する場合には、監査報告書の意見の根拠の区分に
「除外した不適切な事項、財務諸表に与えている影響」を記載する中で、
不適正意見ではなく限定付適正意見と判断した理由についても説明されることを想定している。

⇒しかし、実際には説明が不十分な事例が見受けられる。
⇒よって、限定付適正意見とした理由を記載しなければならないことを明確化する。

・2020年3月決算に係る監査から適用





2.業績連動給与に係る開示は”別枠”も

■概要
・有報の開示の話
・開示府令と法人税法の要求(損金算入要件)にギャップあり
(開示府令=すべて記載しなくてもOK、法人税法=網羅的にキッチリ記載)

■対応策
・投資家の理解のための開示をメインに上部に記載+法人税法の要件を満たすための記載は下部に記載
などの工夫も考えられる(投資家にとっての分かりやすさを確保しつつ損金算入要件も充足)。





3.指定管理料の消費税をめぐり納税者敗訴

■事案
・A市はH18年2月に納税者Bを病院の指定管理者とする協定を締結
・BはH20年9月まで人件費分を含む委託費全額を消費税の課税対象として申告
・H20年10月以降、委託費の支払方法を人件費とそれ以外の経費に区分するように協定を変更
・納税者はH20年9月までの人件費分に係る消費税の還付を請求

■税務署の判断
・人件費は管理業務の対価であるため消費税の課税対象とし、還付請求を棄却

■地裁判決
・人件費分を含む委託費全額が消費税の課税対象となる前提で当初協定を締結しており、還付不可





4.試験研究費でなくサービス提供費用に該当

■事案
・人材派遣事業及び人材紹介事業等を目的とする法人が、確定申告において研究開発促進税制の適用を受けるため、新規事業開発部門で生じた試験研究費124,282,650円を費用計上した。
・その費用が試験研究費に該当するか否かが争われた事案。

■研究開発促進税制における試験研究費とは
措置法第42条の4第6項第1号に規定する製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究費。
⇒「試験研究」は、工学的・自然科学的な基礎研究、応用研究及び開発・工業化等を意味するもの。

■判決
・費用はサービスを顧客に提供するために要する費用にすぎず、試験研究費に該当しない。
⇒法人が提出した各資料の記載内容及び4つの研究活動(カスタマー集客手法、スタッフ獲得手法、サービスモデル構築及び管理部署大成構築の調査)の内容併せてみても事実は確認できない。





5.印紙税調査マニュアルを読む

■概要
平成30事務年度の課税部門の特に留意すべき事項において、印紙税同時処理の充実が挙げられております。

■流れ
・準備調査→実地調査→証拠書類保全→自主監査内容確認→調査結果の内容説明等 →過怠税賦課決定

■過怠税賦課
・1.1倍過怠税
不納付文書を把握した場合で、その課税文書の作成枚数及び収入印紙の貼付状況について調査対象者が自主監査を申し出た場合、調査担当者は当該課税文書が不納付という事実及び不納付事実の申出により、賦課決定される。

・3倍過怠税
収入印紙の再使用等の不正使用や収入印紙受払簿の改ざん等による印紙税の不納付形態が悪質と認められる場合や、自主監査や不納付事実の申し出の勧奨に応じない場合賦課決定される。





6.軽減税率制度

■外食、飲食設備
【設例】
・屋台でのおでん屋・ラーメン屋など ⇒ 10%
・縁日などにおける屋台販売 ⇒ 8% 
・ショピングセンターなどにあるフードコート ⇒ 10%
・顧客が公園のベンチを利用することを予定して移動販売車により
 飲食料品を販売する場合 ⇒ 8%

※飲食設備のポイント
・飲食ができるテーブル、椅子、カウンター等の設備であれば、飲食のための専用設備である必要なし
・飲食店と設備設置者が異なっていてもよい
・飲食店と設備設置者との間の合意等に基づき、顧客に利用させることとしている飲食設備であること

■配膳とセルフサービス
【設例】
・社員食堂や学食における食事の提供 ⇒ 10%
・学校給食
小中学校で支給する給食、 ⇒ 8%
高等学校や大学の学生食堂で提供する定食 ⇒ 10%
 ③ 幼稚園、特別支援学校、高等学校における夜間給食 ⇒ 8%

■缶飲料、ペットボトル飲料
【設例】
・自動販売機 ⇒ 8%
・飲食店で提供する缶飲料、ペットボトル飲料 ⇒ 10%




7.裁判例 第三者作成の申告書と重加算税

■概要
・請求人Aは平成28年1月に不動産会社Pから不動産を購入した
・申告書の作成をP社で代行することになり、経理課長Bが作成を行った
・その際消費税還付等のため、取得時期を平成27年12月として作成した
・AはB作成の申告書に押印し、平成27年度の確定申告を行った
 (AはB作成の申告書内容に何らの疑問を抱くこともなくまた税務知識もなかった)
・税務当局は取得時期の仮装があったとして更正処分及び重加算の賦課決定処分を
 行った
⇒Aは重加算処分を不服として賦課決定処分の取消を求めた

■争点
・第三者作成の申告書に仮装行為があった場合でも重加算の対象となるか

■審判所の判断
納税者以外の者が仮装隠ぺい行為をした場合でも、納税者本人の行為と同視し得る場合
には重加算税を課すのが相当である。しかし、今回の事例ではAに仮装の意図はなく、単に
税の知識が不足していたことが不正申告につながったものと認められる。また、P社と共謀した
証拠もない。
⇒よって重加算を課すのは相当ではないと判断された





8.消費税:キャッシュレス決済、決済手数料等の消費税処理に注意

消費税率引き上げとともにキャッシュレス決済のポイント還元策がスタート
■キャッシュレス決済のポイント還元とは
・実施期間:2019/10/1~2020/6/30まえの9か月間
・決済手段:クレジットカードや電子マネーでの決済
・支援内容:消費者に5%還元。
小売店舗棟の事業者が決済事業者に対する加盟店手数料が3.25%以下に抑えられ、
国がその手数料の3分の1を補助する。

■消費税判定
小売店舗が決済事業者に支払う手数料が、「金銭債権の譲受け」に該当するかがポイント

・クレジットカード決済の場合
小売店舗が商品を売った消費者に対する債権を決済事業者(カード会社)に譲渡する
⇒「金銭債権の譲受け」に該当するので消費税は非課税
・決済代行会社を挟む場合
決済代行に係る役務提供の対価として手数料を支払っている
⇒消費税は課税取引となる。
⇒電子マネー決済に係る手数料が主に該当する

形式面よりも契約実態や請求書等をみて消費税の判断をする必要がある。





経産省、「公正なM&Aの在り方に関する指針」を公表。

・MBO指針の策定から10年。
・支配株主による従属会社の買収等、MBO以外の利益相反構造のあるM&Aについても論点整理すべき、という声に応えたもの。
・具体的措置として取り上げられているのは以下6つ。
(1)独立した特別委員会の設置…社外役員、社外有識者で構成。
(2)外部専門家の独立した専門的助言等の取得…法務アドバイザーの関与、取 締役会または特別委員会において第三者評価機関から株式価値算定書等を取得
(3)他の買収者による買収提案の機会の確保…対抗提案が可能な期間を比較的長期間確保
(4)マジョリティ・オブ・マイノリティ条件の設定…買収者と重要な利害関係を共通にしない株主が保有する株式の過半数の支持を得ることを取引の前提条件とする
(5)一般株主への情報提供の充実とプロセスの透明性の向上
(6)弾圧性の排除…公開買付け後のスクイーズ・アウトに際して、反対する株主に対する株式買取請求 権または価格決定請求権が確保できないスキームは採用しないなど




10.収益認識基準対応と内部統制

・2021年4月1日以後開始する事業年度から適用される収益認識準と、内部統制上確認すべきポイント。

■確認すべきポイント
①収益認識基準導入の影響度調査、及び取引タイプごとの会計処理方針の決定。
⇒検討過程・結論は文書が必須。
⇒文書化が不十分な場合、全社的な内部統制の不備(開示すべき重要な不備)に該当する可能性が高い。

②追加すべき業務(サブ)プロセスの有無
⇒変動対価の見積等、「提案・価格設定プロセス」を業務プロセスに含めるべきか否か。

③ポジション・ペーパーの作成と更新
⇒決定した会計処理方針と正しい適用を関係者に周知
⇒ポジションペーパーには、「リスクと内部統制」の概要を記載。

■収益認識基準対応の全体像

①計画・調査フェーズ⇒プロジェクト組成、レベニュー分析、パイロット調査、タスク・役割分担、影響度調査。
②決定フェーズ⇒取引タイプごとに会計処理方針を決定。
③構築フェーズ⇒通常のSOXと同様。
④運用・評価フェーズ⇒必要に応じて、決算リハーサルを行う。





11.コーポレートガバナンス・内部管理体制

「上場審査等ガイドライン(東京証券取引所)」Ⅱ.4では、
上場審査に際して満たすべき5つのポイントが示されている。

1.役員の適正な職務の執行を確保するための体制が適切に整備・運用されている状況にあると認められること
⇒会社機関の整備
・株主総会:開催頻度、招集手続、議事録の整備状況・内容など
・取締役会:開催頻度、出席状況、議事録の整備状況・内容、定足数、任期、報酬など
・監査役:監査の実態の有無、定足数、常勤監査役の任命、任期、報酬など

2.経営活動を有効に行うため、内部管理体制が適切に整備・運用されている状況にあると認められること
⇒各種規程類の整備・運用、内部監査体制
・特に、就業規則や賃金規程など、従業員に直接影響する人事・労務関連の規程は優先的に整備を進める必要

3.経営活動の安定かつ継続的な遂行及び適切な内部管理体制の維持のために必要な人員が確保されている状況にあると認められること
⇒人材確保

4.実態に即した会計処理基準を採用し、かつ、必要な会計組織が、適切に整備・運用されている状況にあると認められること
⇒会計体制

5.経営活動その他の事項に関する法令等を遵守するための有効な体制が適切に整備・運用され、
また、最近において重大な法令違反を犯しておらず、
今後においても重大な法令違反となるおそれのある行為を行っていない状況にあると認められること
⇒法令違反防止体制
・従業員に対する教育機会を設ける、内部通報制度や外部通報制度を設けるなど、企業としての自主的なコンプライアンス対策があること
 

12.IFRS初度適用

初度適用とはIFRSで初めて作成財務諸表を表示することをいう
→初度適用時には当期と前期の2期分の財務情報をIFRSで作成する必要がある
→当期:IFRS適用初年度、前期:比較年度として財務諸表を作成
→初度適用時には以下の財務諸表
・財政状態計算書(3期分)
・包括利益計算書(2期分)
・持分変動計算書(2期分)
・キャッシュフロー計算書(2期分)
・注記
→財政状態計算書は、前期期首、当期期首、当期末の3時点のものが必要となる

原則遡及適用の必要がある。
→前期期首のIFRSに基づく資産・負債と従前の会計基準による資産・負債の差額は開始財政状態計算書の利益剰余金に反映する
→遡及適用禁止の領域や任意で遡及適用を免除できる項目もある
→見積もりの変更やIFRS移行日前の取引にヘッジ指定を行うなどは禁止されている。
→移行日前の企業結合に関しては従前の会計基準に基づく会計処理を修正せずに引き継ぐことができる



13.インボイス制度~その2~

2019年10月1日~2023年9月30日までの間は、仕入税額控除の方式として
区分記載請求書等保存方式での帳簿及び請求書等の保存が求められる。

区分記載請求書等保存方式における帳簿及び請求書に記載されるべき事項
①課税仕入相手の氏名または名称
②課税仕入を行った年月日
③課税仕入に係る資産又は役務の内容 ⇒ 軽減税率対象の資産の譲渡がある場合はその旨
④課税仕入に係る支払対価の額

■軽減税率対象資産の譲渡等である旨を記載する方法
・「☆」や「※」、「①」等の記号や番号を付し、「軽減税率対象資産の譲渡等である旨」を別途記載
 例えば対象商品には「☆(①)」だけを付けて、別段に「☆(①)は軽減税率対象」と明らかにするなど。
・同一の請求書内にて標準税率と軽減税率対象を別段に分けて表示する
・異なる税率毎に請求書を発行する
















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