2019年6月25日火曜日

6/7 勉強会:「みなし大企業」の範囲 他

1.「みなし大企業」の範囲

■みなし大企業の範囲の見直し(平成31年度税制改正)
下記が大規模法人(資本金の額等が1億円超)に追加(厳格化)
・大法人(資本金の額等が5億円超)の100%子法人
・100%グループ内の複数の大法人に発行済株式又は出資の全部を保有されている法人

■みなし大企業となった場合の影響
例えば下記の中小企業向け租税特別措置を受けられなくなる。
・中小企業投資促進税制等の投資減税
・中小企業技術基盤強化税制(研究開発税制)
・所得拡大促進税制(中小向け部分)

⇒持分関係が何階層にも及び企業グループの下位層の法人に対する中小租特の適用の可否判定は慎重を期す必要あり。



2.組織再編成の検討の実務(1)

■税務当局が適格性を否認する法的根拠(2つ)
・組織再編成が適格要件を満たしていないから非適格である
・組織再編成に係る行為計算の否認等のいわゆる「行為計算の否認規定」に基づいて否認

■心構え
・適格かどうかを判断して確定申告を行うのは納税者
・プランニングの段階から将来の税務調査を意識して行為計算の否認リスクへの適切な対応をとっておく
⇒適格:簿価引継ぎ&課税の繰り延べ、非適格:時価課税
⇒否認された場合には追徴課税が巨額となる可能性あり

■事前照会(税務署等)の留意点
⇒個別具体的に検討することが必要(ふわっと聞く=NG)
(1) 所要時間:問い合わせ(すべての資料が提出されてから)から3ヶ月程度を要する
(2) 事実関係の説明:前提となる事実関係の詳細な説明が納税者に求められる
(3) 前提となる事実関係に複数の選択肢がある場合や価値評価、合併比率等に関するもの、行為計算の否認規定の適用有無などについては照会の対象とならない



3.従業員数証明に被保険者縦覧照会回答票

■事業承継税制の手続き等の簡素化の一部として、「被保険者縦覧照会回答票」が追加。
⇒当該事業者における被保険者の資格取得日及びこれまで被保険者であった者の喪失日等が記載されるため、贈与等の日における常時使用する従業員数を証することができる。
 原則として、70際未満の従業員数を証する書類。

■70歳以上75歳未満の従業員数について
⇒厚生年金の被保険者のほか、協会けんぽに加入している場合には「被保険者縦覧回答票」を使用することができる。
⇒組合健保に加入している場合は、「健康保険の標準報酬月額決定通知書」が必要。


4.所得拡大促進税制、集計ミスで企業敗訴

■概要
所得拡大促進税制において、雇用者給与等支給増加額を事後的に修正することの可否が問題となった税務訴訟。

■原因
顧問税理士法人の従業員による集計ミス。誤った給料データを前提に明細書を作成してしまった。

■結果
東京地裁は、更正の請求は認められないと判断した。
・法令の規定により、法人税額から控除される金額は申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額に限られる。
・真実の雇用者給与等支給増加額と申告書に添付された書類に記載された支給増加額が異なっていたとしてもその事実は「当該計算に誤りがあったこと」(通則法23)には該当しない。




5.ランドオペレーター事業は国内外で行われる役務提供

■概要
輸出物品販売場の許可を得て、主に海外からのツアー客向けに商品の販売を行う請求人が、国内に事務所等を有しないランドオペレーター(国外の旅行会社)から受けた役務の提供が「国内において行った課税仕入れ」に該当するか否かが争われた事案

■事実関係
・請求人 : 輸出物品販売場を営む法人
・ランドオペレーター : 国外の集客旅行会社(日本における旅行会社に相当)、国内に事務所等を有しない
・本件役務 : ランドオペレーターが日本国外において、ツアー工程に請求人の店舗を組み込み、日本国内において、ガイドにツアー客を請求人の店舗に案内させる一連の業務をいう
・請求人はランドオペレーターが手配したツアーへの参加者が、請求人の店舗で商品を購入したときは、ランドオペレーターから受ける本件役務に対し、手数料を支払う契約を締結している

■結論
・本件役務は、契約において役務の提供場所が明らかにされておらず、役務の提供が国内外で行われ、その対価の額も国内外のいずれに対応するものか合理的に区分されない
・その場合、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地により内外判定を行う

⇒本件のランドオペレーターは国内に事務所等を有しないため、本件のランドオペレーターが行った役務提供は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」に該当せず、本件役務は「国内において行った課税仕入れ」に該当しない 






6.時価算定会計基準

■適用開始時期
・2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用。
・2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度から早期適用可。
・システム対応等の準備期間を考慮し、公開草案から1年後ろ倒しとなった。

■第三者から入手した相場価格の利用
・金融機関、ブローカー、情報ベンダーから入手した相場価格を、 時価として評価に使用するためには、会計基準に沿って算定されたものであるかどうかについて確認手続が必要。
 (例:入手した相場情報と企業が算定した推定値の比較、第三者の時価算定過程の検証)

⇒原則的に、自ら時価を算定する体制を整備するか、もしくは第三者から入手した相場価格を
 検証する体制を整備するかいずれかの対応が必要。






7.消費税 個人が株主である場合の特定新規設立法人の判定

■論点
個人が株主であってもその個人(+親族)が完全支配する法人があり
かつその法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超える場合には
新規設立法人の納税義務は免除されない

■設例
<新規設立法人A>(資本金300万円)
株主構成
個人甲 80%
甲の妻 20%

<関連法人B>(課税売上高 毎期10億円)
株主構成
個人甲50%
甲の妻30%
甲の長男(別生計)20%

■判定
A社は個人甲に50%超の株式を保有されている
株主甲は親族を含めて100%支配する法人Bを所有している
B社の課税売上高は毎期5億円を超えている
⇒したがってA社の設立1期目2期目は課税事業者となる



8.償却資産の申告制度見直しは早くても数年先

償却資産にかかる固定資産税の申告期限の見直しについて、
申告システム等の電子的な環境整備に時間を要するため、改正まで数年はかかる予定
※新制度案は事前の届出と電子申告が必須となる。

主な新制度案の概要は以下のとおり
■賦課期日
毎年1月1日時点
※現行・新制度とも同じ

■申告期限
・現行:その年1月31日
・新制度:賦課期日後の決算日から2月以内

■申告内容
・現行:賦課期日時点の資産の状況
・新制度:決算日時点の資産の状況(除却資産及び除却時期を附記する必要あり)

■納期
・現行:年4回(東京都:6月・9月・12月・翌2月) ※都道府県で異なるため注意。
・新制度:決算期により、納期の数が1回~4回と変動する。



新株予約権発行費の会計処理

(IFRS)
・その発行がなければ避けられた、資本制金融商品の発行に直接起因するコスト
⇒資本からの控除

(日本基準)
・原則、支出時に費用として処理。
・繰延資産として、3年以内に定額法で償却可能。
・対象として、弁護士費用、書類作成費用、価値算定費用が含まれる。





10.代替的業績指標(APM)の開示

・IASBは「基本財務諸表プロジェクト」に関して、公開草案を公表することに決めた。
→財務業績の計算書に新たな小計と代替的業績指標(APM)を導入。

・日本基準
→財規69条及び様式第6号により、項目・小計の記載が求められている。

・IFRS
→IAS第1号「財務諸表の表示」第82号により、最低限の項目のみ示されており、特定の様式はなし。
→同号85項で、会社の理解に資する場合には、項目・小計を追加することを要求している。

・2018年3月期の有報(IFRS任意適用)では、以下の3パターンのAPMの開示例がある。
①税前利益から非経常項目等を除外
②税前利益から金融損益を除外
③税前利益のうち、利息収益・費用のみ除外


11.第4章 外部ツールの効果的な活用方法

■セミナー
・会計知識を学ぶ場として効果大
・新しい情報をプロから得る場
・受け身ではなく自分なりの準備(ex 解決したい事項を洗い出し、実務で実行しようと思ったことを中心にリスト化してメモ)をして参加する

■書籍
・大きく分けて2種類「辞書本」「トピック本」
・必要なところから読む
・理論を正確に理解できる

■経済紙・業界紙・テレビ
・自社知識を身につける
・業界や競合の情報を集めるのに役立つ

⇒よい情報を知っている以上に、よい「情報源」を知っていることが大事
 書籍や雑誌等の信頼性の高い情報源から学び目を養うこと、情報収集の効率を格段に上げるITリテラシーを身につけることが求められる



12.経理業務の効率化~OJTでの実践的な学び方~
■成長するための7:2:1の法則
7:自らの仕事経験⇒効果が最大
2:他者(上司・同僚)との関わり
1:座学などの研修

■日常業務から学ぶ
①月次決算を活かす
・次月準備:事前に決算作業内容全体を把握
・数字確定:会計知識を発揮
・分析報告:自社の知識を深め、社内での連携を強化

②三種の神器を活用
スケジュール(いつ)、業務分担表(誰が)、フォーマット(何をする)

■自分の役割を定期的に棚卸する
①担当替や異動を成長の機会と捉える(2~3年が適当)
②面談では自分の意向を明確に伝え、業務をコントロールする

③業務を文書化して、理解を整理する



13.デット・エクイティ・スワップの会計処理

■DES(デット・エクイティ・スワップ)とは
・債権者からすると、債権を現物出資として、株式を取得する取引であり、債務者からすると債務と交換に株式を発行する行為
⇒一般的には、金融機関が経営不振の取引先を支援する目的で行われることが多い。
⇒DESにより債務者側は財務体質が改善されるが、新たな株主は生じる。

■債務者側の会計処理
・券面説:債務額で資本金等の増加、債務の簿価との差額は生じない
・実質価額説:時価で資本金等の増加、債務の簿価との差額を債務消滅損益として損益計上

■債権者側の会計処理
・時価で株式取得、債権の簿価との差額を債権譲渡損益として損益計上



14.経理パーソンに勉強が必要な理由

■近年の企業の動向
・大会社では、シェアードサービス子会社の設立が進んだ
・中堅企業でも外部の専門会社へのアウトソースが進行
・ここ2~3年ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる機械を使った自動化が注目される
⇒業務をそつなくこなすことから、イノベーションを生み出すことに変わりつつある

■経営者が経理・財務部門に寄せる期待
・新たな付加価値サービスの提供
・グループ経理機能の強化
・非効率業務の排除

■現代の求められるスキル
(1)業務設計スキル
⇒業務設計スキルは、内部統制の考え方・進め方と結びつき、通常業務の設計を考えるうえでも十分活用できる。
(2)コミュニケーションスキル
⇒何が論点になりそうかを整理したうえで、箇条書きなどを使って分かりやすく説明する等、工夫ができるかどうかで、自信の業務効率が大きく変わる





15.ワークフローシステム導入による効果
1.決裁権限の決定
社内の決裁権限が曖昧である場合、上場審査のポイントである「内部統制」の部分で問題があるとされる。
ワークフローシステム導入により、社内規程を整理し、誰にどのような権限があるかを明確に決定することが可能となる。

2.文書管理のルール作成
社内文書管理のルールが決められ、規律が正しくなり、全員が共通認識のうえで文書管理が可能となる。

3.必要な情報の検索
上場に必要な企業内情報を素早く見つけられ、スムーズに対応が可能となる。

4.業務プロセスの可視化
業務プロセスの可視化が行えるとともに業務改善・健全な業務状況につながります。



16.IFRSの概要
・IFRSとは
IFRS = International Financial Reporting Standardsの略称となる。
基準書と解釈指針で構成
→基準書と解釈指針の開発は継続的に行われており、新しい基準書や解釈指針の開発に伴い、旧基準書、解釈指針が廃止されることもある
→現時点の最新版の状況を把握(常に情報をアップデート)しておく必要がある

・適用条件
強制適用はなく、企業が一定の要件を満たす場合に任意適用することが可能な状況である。
→要件は有報の作成および連結財務諸表を適正に作成できる体制が必要
→連結財務諸表作成時にのみ、IFRSを適用が認められるため、単体財務諸表は日本基準で作成する必要がある
→連結・単体を別の会計基準で作成する必要があるため、企業負担が大きい
子会社等がなく、連結財務諸表を作成していない企業は個別財務諸表をIFRS、合わせて日本基準に基づく単体財務諸表の作成が必要

・特徴

雛形や数値基準がなく、自己裁量の幅が大きい点、特別損益の区分がない点等






17.インボイス制度~その3~

2023年10月1日から導入される適格請求書等保存方式について
仕入税額控除の新要件として、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要となる
適格請求書を発行する課税事業者は2021年10月1日から所轄税務署へ登録申請する事が可能となり
適格請求書発行事業者登録番号の取得する事ができる

■登録申請に関して
Q,いつまでに行えばよいか?
⇒ A,2023年3月31日まで行う必要がある
Q,軽減税率対象品目の販売を行っていない場合でも登録が必要か?
⇒ A,登録を受けるかどうかは事業者の任意であるが、登録を受けなければ取引先は
仕入税額控除を行う事ができないので登録の必要性は事業者判断による



















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