1.所得拡大促進税制の平成26年度改正の注意点
※改正前、改正後で『適用要件』が変更となった
※税額控除水準(給与等支給額の増加額
× 10%)は変更なし
【改正前(H26.3.31以前終了事業年度に適用)】
①給与等支給額が基準事業年度の給与等支給額と比較して5%以上増加していること
②給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと
③平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないこと
【改正点(H26.4.1以降終了事業年度に適用)】
※下記①~③は、上記と対応
①5%判定の基準が緩和(2%~ 適用年度により異なる)
②変更なし
③平均給与等支給額の算定対象が変更
⇒継続雇用者(前期、当期ともに雇用されている者)に対する給与のみが算定対象に
⇒前期高所得者が退職し、当期低所得者(新入社員)が入社することによる
平均給与の減少影響を排除するための措置
2.相続税の申告業務をめぐる最近の訴訟トラブル
■まとめ
・税法の規定だけでなく周辺の法律、規定についても確認を怠らない
・委託者には事実を確認するための資料提出を求める
・報酬について委任契約締結時に合意する
■事例1
・税理士が委託者の国籍を確認しなかったため当初申告に誤りがあり、修正申告をすることになった事例
・裁判所の判断
①税理士は課税要件等に関係する制度の確認を含む事実関係を究明すべき義務がある
②よって委託者の国籍を確認しなかったのは注意義務違反
③税理士に対して債務不履行を理由に加算税相当額の損害賠償金の支払いを命じた
■事例2
・税理士が委任契約締結時に報酬金額を提示せずに業務を進行していたが、 申告時において申告を委託者自らが行う方法に委託者と協議の上変更し、その後において報酬を請求したところ、委託者がその支払を拒んだ事例
・裁判所の判断
①
申告を委託者が行う方法にした時点で契約は解除されている
②
民法に委任契約が中途解除されたときは履行割合で、その報酬を請求できる規定があるのでこれを適用することは可能
③
よって、税理士は委託者に報酬を請求することができると判断
3.外国子会社配当益金不算入制度見直しへ
・配当について支払法人側で損金算入、受取法人側で益金不算入といった国際的な租税回避行為が生じている
・ハイブリッド金融商品に係る二重非課税に対しリンキング・ルールの導入を勧告(BEPS行動2公開草案)
・平成27年度税制改正の議題になる可能性あり
4.合併当事者以外の欠損金等の引継制限
■合併の際の繰越欠損金引き継ぎについて
・適格合併であれば原則、合併法人が被合併法人の繰越欠損金を引き継げる
↓
同一企業グループ内の適格合併の場合、繰越欠損金の引継ぎに制限が課される場合あり
↓
・合併法人と被合併法人との間に50%超の関係が5年以上
=引継ぎ可能
=引継ぎ可能
・50%未満の場合でも一定要件を満たせば
=引継ぎ可能(みなし共同事業要件を満たす等)
=引継ぎ可能(みなし共同事業要件を満たす等)
5.生産性向上設備投資促進税制、”不動産賃貸業”も適用化か?
■生産性向上設備投資促進税制
・業種や投資対象に対する制限が緩和されている→対象となる企業が『多』
■適用対象外
・『貸付の用に供した場合を除く』
⇒不動産業者が賃貸物件に投資を行った場合は『生産性向上設備投資促進税制』対象外
■製造業等と不動産業に格差が生じる
・製造業等であれば投資が生産性向上に貢献しているか明確
→当該税制に適当
・不動産業は投資が生産性に向上貢献しているか不明確
→当該税制に不適当
【結論】
不動産業の場合、賃貸借建物に対しての投資は『生産性向上設備投資促進税制』の適用はなし
※部分的な投資には適用あり(供用部分、エレベーター等)
6.商品デリバティブ取引のヘッジ会計が見直しへ
・現物取引の価格ヘッジを行う目的でデリバティブ取引を行ったにも関わらず、会計上、ヘッジ取引と認められず損益計上されるケースが多くなっている。
・従来のヘッジ会計がの基準が、現在のデリバティブ取引に合致していないのではという指摘。
・その結果、見直しを行う方向へ
問題点①
【現行】
ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計の比率が80~125%の範囲内である場合
→ヘッジ会計OK
【実務】
コモディティ(商品)の価格変動が大きいため、ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計の比率が80~125%の範囲を超えるケースも多い
→ヘッジ会計×
問題点②
【現行】
商品が異なっている
→ヘッジ会計×
→ヘッジ会計×
【実務】
ヘッジ対象:重油
ヘッジ手段:原油
としておこなうデリバティブ取引も行われている。
これらの実務との乖離を埋めるため、ヘッジ会計に関する見直しが行われる方向である。
7.判例:親子間取引にかかる値引きと寄付金について
■概要
①P社(親会社)はS社(100%子会社)から材料を購入している。
②取引価格は期首に両者間の協議で決定している。
ただし、期末に子会社の実際調達コストを精査し、乖離がある場合には期末に値引等の処理を行うこととしている。
■争点
この値引が「親会社に対する寄付金」にあたるかどうかが争われた。
■裁判所の判断
この値引は「寄付金」に該当しない。
(理由)
①法人税法に規定する「寄付金」とは、合理的な理由がなく資産または経済的利益を対価なく移転する場合が該当する。
②期末の取引価額は実際調達コストを考慮するなど合理的に算定されているものであり、正当な取引価格と認められる。
期首の取引価格は暫定的なものに過ぎず、差額の精算(値引き)には合理性が認められる。
⇒よって「寄付金」に該当しない。
8.消費税:現物給与と課税仕入
給与は消費税の対象外とされているが、現物給与についてはどうか?
→支給する物を他者から買ってきた時に、その物に応じて課税対象になり得る。
※期中に福利厚生費としていた課税仕入を期末に(現物)給与に振替える、といった仕訳の際に消費税区分にミスが生じ易いので要注意。
9.子会社株式の一部売却
①追加取得:追加取得投資額と追加取得持分との差額
(改正前)のれんor負ののれん
(改正後)資本剰余金
②一部売却:売却持分と売却価額との差額
(改正前)子会社株式の売却損益の修正
(改正後)資本剰余金
10.日本産業パートナーズの正体
・NECからのBIGLOBE買収、SONYのパソコン事業買収で一躍有名になったファンド。
・過去には、青汁のキューサイのMBO支援なども。
・元興銀証券マンが設立。
・「優秀な人材、知的財産をもつ大企業のノンコア部門の独立を支援する」方針。
・投資リターンは2倍を目安とする。
・買収後は、人員削減などはせず、適切な開発強化、コスト削減で事業の強化を目指している。
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