1.同族会社の行為計算否認で貸倒損失の損金算入認めず
【事例】
※会社A,B,Cは関係会社
①A⇒B 会計業務を営業譲渡
②B⇒C 会計業務を営業譲渡(①と同時)
③Bは、Aに対する貸付金について、『全額回収不可能』として貸倒損失を計上
【審判所判断】
・実質的には、A⇒Cへと営業譲渡されている
・Bを経由したのは、BのAに対する貸付金を消滅させることが目的
・A、Bは同族会社・同じ代表者であったことから行われた行為
⇒同族会社の行為計算否認を適用
2.特定役員への就任を132条の2で否認することは可能か
・ヤフーの社長IDCFの副社長に就任
→買収、合併のスキームに従って行った行為
→副社長就任後、特定資本関係が生じるまでの期間が短い
→合併をしないとしても副社長になったか?が重要
・税金を意図的に減らすという意図よりも法令解釈の基本を踏まえて裁判所は対応した
・結論
副社長に就任することにより、みなし共同事業要件を形式的には充足したが、欠損金の引き継ぎを認めると、組織再編税制の趣旨・目的に反することが明らか。
従って、副社長就任は、132条の2にいう 「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当する。
3.相続株式の評価額を巡る判決に基づく更生の請求は可能か?
「税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」により、当初申告の税額が過大となった場合
→更生の請求期限経過後でも、更生の請求可能(国税通則法23条2項1号)
■下記、事案では「国税通則法23条2項1号」が適用できるのか?
(裁判A)
・当初相続税評価額1,083円/株で申告
→申告後、被相続人が生前に642円/株で関係会社に譲渡することを約束していたことが判明
→相続人はその約束に基づき譲渡した
→相続人は、差額441円(1,083-642)の損害賠償を求める訴訟
→訴えは棄却された
(裁判B)
・相続人は642円で更生の請求を行ったが、税務署が認めなかった。
→処分取り消しの訴訟を提起
■結論
更生の請求は認められない。(納税者は控訴中)
■理由
今回の裁判は不法行為に基づく損害賠償請求権等であり、本件株式の帰属自体ではないため。
=税額等の計算の基礎となった事実の存否、効力等が直接審理の対象とされていない
4.合併当事者以外の欠損金等の引継ぎ制限
■Q
・A社はB社と合併
・B社は欠損金のあるC社と合併していた(A社との合併2年以内)
・含み損のあるC社を合併したB社を合併するA社は、当該含み損である欠損金を引き継げるか。
■A
・B社がC社から引き継いだ資産は特定資産に該当
・特定資産は損金算入不可(B社とC社の合併がA社とB社の合併の時から3年以内の為)
5.業績好調に伴う決算賞与の支給
・期末に決算賞与を支給する
・一定の要件を満たす場合に損金算入が可能
(税金の減額、会社負担分を減らすために賞与を支給する。)
■決算賞与の損金算入の要件
・期末までに支給額を個別に通知
・未払で処理
・決算日後1ヶ月以内に支給(賞与通知書などの証明書類を保管する必要あり)
■注意点
・支給に伴うキャッシュへのインパクトが大きい
・翌期以降の決算賞与支給につき業績を見極める必要あり
・給与規則等で支給日在籍要件が決められている場合は全額否認されるリスクあり
6.限定付適正意見なら内部統制監査は免除されず
◆改正案の内容
通常国会に提出されている「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」では、一定の新規上場企業(資本金100億円以上または負債総額1,000億円以上の企業は対象外)については、3年間に限って内部統制報告書に対する公認会計士監査を免除するなどの見直しが盛り込まれている。
一方で、該当企業の財務諸表監査において「限定付適正意見」が付された場合には、内部統制報告書の監査の免除は受けられないことが明らかとなった。
◆内部統制監査の免除を受けた場合
①財務局の証券監査官が財務諸表と内部統制報告書のレビューを毎年行う。
②上場の事前相談の際に、財務局の証券監査官から、上場予定企業に対し、「公認会計士による内部統制報告書の監査を受けないことを選択する場合には、企業が自ら全責任を持って内部統制報告書の適切性を確保しなければならない」ことについての理解を確かめる。
◆過去の限定付適正意見で上場した事例
2007年12月にマザーズに上場した、スタートトゥデイにおいて限定付適正意見(棚卸立会未実施)が付されたケースがあったが、ここ数年ではその1社のみである。
7.【所得拡大税制】26年3月期が赤字の場合の上乗せ控除について
■給与等支給増加割合の改正
適用要件が5%以上⇒2%以上(26年4月1日以後終了事業年度から適用)に改正された。
■上乗せ控除制度
26年3月期に旧要件(5%以上増加)は満たさないが新要件(2%以上増加)を満たしている場合
⇒26年3月期では控除できないが、27年3月期に2事業年度分の控除ができる。
(例)26年3月期の増加割合が3%⇒旧要件×、新要件○
⇒27年3月期に26年3月期分もあわせて控除できる。
<今回の本題>
■26年3月期が赤字の場合の留意点
①旧要件(5%以上)を満たしている場合
⇒控除限度額が法人税額の20%(中小は40%)とされているため、赤字の場合は控除額ゼロ。翌年への繰越もなし。
☆所得拡大税制では「繰越控除(控除限度額を超える金額を翌期で控除する制度)は認められていない。
よって旧要件を満たしていて赤字の場合、打ち切りで終わり。
②旧要件×、新要件○の場合(上乗せ特例ありのケース)
⇒27年3月期で2事業年度分控除可(27年3月期の法人税額をもとに限度額を計算)
☆26年3月期の控除限度超過額を繰り越して控除をするわけではなく、
まったく別の規定を適用しているため、26年3月期の所得には影響されない。
8.消費税:賃貸物件の用途変更
• 消費税上、居住用建物の家賃は非課税取引、それ以外の建物の家賃は課税取引とされる。
• 居住用として、非課税取引扱いをするには、契約により居住用である旨の定めが必要。
• 居住用として、非課税取引扱いをするには、契約により居住用である旨の定めが必要。
課税取引とする場合には、特に定めは不要。
→賃借人が居住用に用途変更する場合には、契約の巻直しが必要となる。
→賃借人が居住用に用途変更する場合には、契約の巻直しが必要となる。
9.追加取得による子会社化
・子会社の取得が複数回の取引で行われた場合
・支配を獲得するに至った個々の取引すべてについて、企業結合日の時価で取得原価とし、差額は損益とする。
※企業結合日の時価で含み損益を認識する
10.ソフトウェアの「賞味期限」
(1)最近多発している情報流出の経路
①事故
②内部からの故意
③外部からの攻撃(ウィルス等)
(2)外部から攻撃されるのは大企業に限られない
→従業員数251~500人の中堅企業が最も狙われている
(3)対策:セキュリティ更新プログラムの適用
・Windows XP サポート終了済み
・Windows 7 2020年1月サポート終了予定
・Windows 8 2023年1月サポート終了予定
※購入前にサポート期間(ソフトの賞味期限)を確認すること
11.H26年3月期 有報作成上の留意点
1.退職給付会計基準等の改正
①未認識項目の処理方法の見直し
⇒未認識項目をその他の包括利益累計額で認識
②開示の拡充
③退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直し
⇒退職給付見込額の算定方法につき、現行は原則期間定額基準
⇒改正後は期間定額基準と給付算定式基準のいずれかを選択適用
・適用時期
①②⇒H25年4月1日以後開始年度末より
③ ⇒H26年4月1日以後開始年度期首から
・いずれもH25年4月1日以後開始年度期首から早期適用可能
・遡及適用しない
2.S/Sの様式の改正
・前連結会計年度に数値がなくてもバーを記載
3.連結F/S等の改正
・特別目的会社の取扱い、子会社等の範囲の見直しに係る取扱い等を改正
・H25年4月1日以後開始年度期首から原則適用
4.税効果に関する注記
・復興税前倒し廃止によりDTAやDTLが修正されたときは、その旨及び修正額の記載を注記
12.資産除去債務に係る税効果(ポイント)
・資産除去債務に係る将来減算一時差異と除去費用に係る将来加算一時差異は相殺しない
(理由)
・解消スケジュールがことなるため
・将来減算一時差異について繰延税金資産を計上するが、無条件に計上するわけではなく回収可能と認められる部分についてのみ計上する。
(参考)
資産除去債務
会計上:負債に該当
税務上:負債に該当しない
⇒将来減算一時差異(繰延税金資産)
除去費用
会計上:資産に該当
税務上:資産に該当しない
⇒将来加算一時差異(繰延税金負債)
13.営業秘密の不正利用
■不正競争防止法
⇒営業秘密(顧客リスト・特殊な技術等)を不当に使用されたときに、裁判で営業活動の差し止めを求めることが出来るかどうか?
■裁判で認められた事例
・営業活動の差し止め
・損害賠償請求
・顧客情報のコピー等の差し止め 等
■不正競争防止法に抵触する例
①Xさんが前職A社で使用していた顧客リストを退職時に持ちだす
Xさんが転職先のB社でA社の顧客リストを使用して営業する
②東芝の業務提携先メーカーの元技術者が、ライバルの韓国企業へ技術流出
14.アリババの正体
【大株主の構成】
ソフトバンク:34.4% → ただし4.4%部分の議決権行使は契約で止められている
ヤフー(米国):22.6% → ピーク時は40%を保有 半分は買い戻された
上場後、ソフトバンクの影響力を減らすことを目論む?
【収益力】
売上はイーベイの3倍、楽天10倍以上
なぜ強いのか?
→ 中国の人口が多いこと、中国が「不便なこと」
①【小売】
・中国内陸部には先進的な小売店が少ない
・偽物も多い
②【金融】
・中国の銀行金利は普通預金が0.35%、定期預金3%
インフレ率が3.5%なので、実質的にマイナス金利。
金利が自由化されていない。
・アリババのサービス「余額宝」は、1元から可能な金融商品。
アリババ上で簡単に換金、決済可能。
ピーク時の金利は7%(現在は5%)
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