1.自社開発のソフトウェアの研究開発費の取扱い
■市場販売目的のソフトウェア
・会計
最初に製品化された製品マスターの完成をもって研究開発の終了
それまでの制作費用は研究開発費として費用処理
・税務
研究開発費はソフトウェアの取得価格に算入しないことができる
研究開発費の定義が明らかでない
→実務上は会計と同じ取扱い
■自社利用のソフトウェア
・会計
ソフトウェアの利用で将来の収益獲得又は費用削減が確実
→無形固定資産に計上
将来の収益獲得又は費用削減が確実ではない、又は不明瞭
→費用処理
・税務
ソフトウェアの利用で将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らか
→取得価格に算入しないことができる
→不明瞭の場合は、取得価格に算入する
■まとめ
(1)市場販売目的のソフトウェア
会計と税務の取扱いに差異がない
(2)自社利用のソフトウェア
将来の収益獲得等が確実かどうか不明瞭の場合、
会計と税務の取扱いに差が出る
会計…費用処理
税務…資産計上
2.ゴルフ会員権の譲渡損失計上を認めず
■H19年10月にゴルフ会員権(預託金制)を売却
⇒譲渡所得として譲渡損失を計上していたが、このゴルフ会員権の譲渡損失は認められず
■預託金制ゴルフ会員権
・預託金返還請求権 …譲渡所得にならない資産
・優先的施設利用券(プレー権) …譲渡所得になる資産
⇒今回の譲渡損失が認められなかった事例は、
経営者の交代に伴いゴルフ場の所有権を移転していた最中に売却
⇒一時的にプレー権が消滅したと判断されてしまった
3.遺贈土地めぐる和解、馴れ合い認めず
■事例
A氏(請求人)への土地の遺贈について、請求人と相続人間でこの土地は被相続人の遺産を構成しない旨の裁判上の「和解」が成立し、この判決を基にA氏は遺贈分に対する更正の請求をした
※後発的自由による更正の請求とは
裁判上の「和解」が租税回避を目的としたもので、実際は申告書提出時に計算した事実関係に変動がない場合は、通達に該当する「和解」に該当しない。
⇒更正の請求は認められない
■主張
原処分庁側:
請求人は遺留分の減殺請求が抑制され、また相続人は借入金返済の負担を免れられることができる
⇒租税回避目的とした両者の馴れ合い和解と主張し、更正の請求は認めない
審判所側:
和解とは当事者にとっての利権につき、双方の経済面等の利点があるからこそ互譲が可能となる。
⇒結果として当事者の税負担が軽減されたが、利点等から鑑みると必ずしも馴れ合いによる和解には該当しない。
更正の請求を認めた
4.10%時の新経過措置通達、8%時と同様
・国税庁より、消費税率10%引上げ時における経過措置の取扱い通達が公表
⇒基本的に消費税率8%引上げ時の経過措置と同様
・電気料金等の経過措置(施行日をまたぐ請求は旧税率とする措置)
⇒電気・ガスに加えて「灯油」が追加
5.中小・公益法人税制の改正は見送りへ
・27年改正で検討されていた中小企業に係る「軽減税率の引き上げ」「外形標準課税の対象範囲拡大」等の改正は見送り
・公益法人等に係る「軽減税率に引き上げ」「収益事業の定義見直し」「みなし寄付金制度の廃止・縮減」等の改正は見送り
⇒ただし公益法人等税制に対する税務当局の問題意識は高い
そのため28年税制改正で検討される可能性あり
6.ノンコミットメント型ライツ、上場制度見直しで濫用に歯止め
【論点】
ノンコミットメント型ライツ・オファリングが濫用的に利用されていることを受け、東京証券取引所が新株予約権証券の上場制度を一部改正した。
(1)ライツ・オファリングとは
増資手法の一つで、すべての既存株主に新株予約権無償割当てを行い、行使する株主は新株を取得し、行使しない株主は予約権を売却する制度
∴株式の希薄化をできる限り回避
コミットメント型とノンコミットメント型がある。
(a)コミットメント型・・・株主が権利行使しない場合、証券会社がライツを取得し権利行使する
∴発行会社は満額の資金調達が可能
(b)ノンコミットメント型・・・株主が権利行使しない場合、ライツは消滅する。
∴発行会社は満額の資金調達不可
(2)問題点
ノンコミットメント型を採用する上場企業は経営成績や財政状態が悪く、他の増資方法では引き受け手がいないところが多い。
(3)改正内容
ノンコミットメント型について、既存の上場基準に加え、以下(a)・(b)を要求
(a)株主総会決議による株主の意思確認、又は、証券会社による審査
(b)形式基準の充足
(ⅰ)2期連続で経常赤字でないこと
(ⅱ)直前の事業年度又は四半期会計期間末日において債務超過でないこと
7.課税事業者の判定について
課税事業者と免税事業者を行ったり来たりしているケースがあり、判定について整理しました。
【会社の状況】
1期:課税売上高 2,000千円 期首資本金 1,000千円
2期:課税売上高 3,000千円 期首資本金 50,000千円
3期:課税売上高 5,0,000千円(開始6ヶ月の課税売上高 20,000千円) 期首資本金 500,000千円
【判定】
1期:免税(基準期間なし 期首資本金10,000千円未満)
2期:課税(基準期間なし 期首資本金10,000千円以上)
3期:免税(基準期間の課税売上高 10,000千円以下)
4期:課税(基準期間の課税売上高 10,000千円以下だが、前期開始6ヶ月の課税売上高10,000千円超)
5期:課税(基準期間の課税売上高 10,000千円超)
【まとめ】
スタートアップの企業においては、課税売上高・資本金に変動が大きいため、注意が必要。
また、還付となるケースが多いが、免税事業者の場合は課税事業者選択届出が無いと還付を受けられないため、免税事業者となる事業年度開始前に翌期の事業計画等を見ながら、会社にとって有利な方法を検討するように注意する。
8.地方法人税の創設に伴う地方税予定申告の経過措置
■地方法人税の創設(26年10月1日以後開始事業年度より)
(1)地方法人税(国税) 法人税額の4.4%相当額
(2)法人事業税(地方税)2.7%⇒3.4% 4%⇒5.1% 5.3%⇒6.7%
(3)地方法人特別税(地方税)81%⇒43.2%
(4)住民税法人税割 17.3%⇒12.9%(23区内)
5%⇒3.2%(市町村)
■予定納税の経過措置⇒26年10月1日以後開始の最初の事業年度の予定申告が対象
<例 住民税法人税割>
(通常)前事業年度の税額×6/12
(経過措置)前事業年度の税額×※3.8/12
※6×3.2/5=3.8
⇒前事業年度の1/2とならないので注意が必要
9.法人税:パーティー開催費用にかかる接待飲食費の範囲
接待飲食費に該当するかどうかは下記のとおり。
■︎該当するもの
•飲食費
•テーブルチャージ
•会場費
■︎該当しないもの
•招待客の宿泊費
•送迎費
■︎内容によって該当するもの
•音響照明
•装花
•司会者
•ステージ看板
•その他
※
•主にゲームなどの余興に使用する音響照明、それ自体が余興としての価値がある生演奏などは該当しない。
•数万円でつけるホテルスタッフ等による司会者ではなく、それ自体に余興としての価値があるタレント司会者などは該当しない。
10.役員の範囲
・有価証券報告書などの「役員の状況」欄に男女別人数と女性比率を記載することに
・「役員」の範囲が問題に
・役員
金商法:取締役、会計参与、監査役もしくは執行役又はこれらに準ずるもの
会社法:取締役、会計参与、監査役(会社法329条)
金商法の範囲は会社法の「役員等(423条)」に近い。
・執行役≠執行役員
・執行役員=取締役待遇の従業員
・「役員の状況」に執行役員は含まれない。
11.ストックオプションの税務
1.S・O付与時又は権利行使時の課税関係
【個人】
(1) 譲渡制限無 ⇒ 付与時に所得税課税
(2)譲渡制限有 ⇒ 権利行使時に所得税課税
∵ 付与時に担税力無い為
【法人】
個人が課税された時に損金算入可能
2.S・O譲渡時の課税関係
【原則】
⇒ 株式の譲渡と同様(分離課税)
【発行会社へ譲渡】
⇒ 給与所得(総合課税)
3.譲渡制限が解除された場合の課税関係
⇒ 解除時に課税
∵ 換金性を有し、担税力有る為
※課税方法
・付与時の価額
・譲渡制限解除時の価額 … 事例では解除時の価額で課税処分
12.為替予約の会計処理
為替予約:将来の特定の日(期間)に、一定の外貨を一定のレートで売買する契約。デリバティブ取引に該当し、原則として期末に時価評価、評価差額を損益とする。
・ヘッジ会計の適用
→条件を満たす場合にはヘッジ会計を適用可
(1)取 引 前:ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが取引時に客観的に認められること
(2) 取引時以降:ヘッジの効果が定期的に確認されていること
→ヘッジ会計を適用する場合、振当処理によることが認められている
→会計方針として決定する必要があり(一取引ごとに原則/振当の判定をすることはできない)
・予定取引にも適用可
→発生可能性が極めて高い確度で予測される場合
→取引発生までの期間が1年以上の場合、特に留意(以下が満たされているか判断)
(1)為替相場の合理的な予測に基づく輸入に係る合理的な経営計画があり、かつ、損失が予想されない場合
(2)輸入取引に対応する円建て売上に対応する解約不能の契約があり、かつ、損失とならない場合
→決算日を挟む場合、為替予約を時価評価し、評価差額を繰延ヘッジ損益とする必要あり
13.ライツ・オファリング(新株予約権無償割当)に係る新株予約権証券の上場制度の見直しについて
【ライツ・オファリングの種類】
(1)コミットメント型
⇒株主が新株予約権を行使しない場合、証券会社がその権利を買い受けて行使するもの
・メリット
:発行企業は予定額の資金調達が見込める
・デメリット :リスクを負う証券会社が事前に厳しい審査を実施する
(2) ノンコミットメント型
⇒株主が新株予約権を行使しない場合、権利が失効するもの
・メリット
:証券会社の審査を経る必要がなく機動的な発行が可能
・デメリット :株主が権利行使しないと当初に予定した資金が調達できないおそれがある
【問題】
赤字企業、債務超過企業が、証券会社の審査がないノンコミットメント型を利用する例が多発。
【上場基準等の見直し(10月31日より)】
・ノンコミットメント型の場合でも、証券会社による引受審査に準じる審査を必要とする
(株主総会決議等の承認を得た場合は省略可)
・ノンコミットメント型の場合でも、市場から評価されない経営成績・財政状態の会社を除外する形式基準を求める
14.企業不祥事に際しての監査役の対応
企業不祥事=法令または定款に違反する行為
その他社会的非難を招く不正又は不適切な行為
(1)第一ステージ
a.第一報告受領時
⇒ステークホルダーにとってどれほど重要なものか判断し、対外的開示、第三者委員の設置等について執行側の見解を確認し、必要に応じて助言・勧告する
b.対外的開示
⇒適切な開示は損害拡大防止・早期収束の重要なファクターであるため、執行側の対応をしっかりと監視・検証する
(2)第二ステージ
a.原因究明・再発防止策の策定
⇒取締役会、経営会議等での報告徴収のほか、個別に取締役等から定期的に報告を聴衆する
b.損失拡大防止、早期収束
⇒危機管理の3原則「隠さない」、「決断する」、「説明する」に則り、事実関係を積極的に、適時・適切に公表が重要であり、執行側の対応につき厳しくチェックする
c.対外的開示
⇒「いつ、どこで、だれが、何を、どのように」が明確になっているか
15.使える補助金・助成金vol.7「エネルギー使用合理化事業者支援事業」
・(要件)以下2つを満たすこと
(1)省エネ設備・システムを導入し、1%以上の省エネ等を達成すること
(2)設備・システム等の導入に300万円以上かけていること
・(補助内容)設備・システム導入のための設計費、工事費等
・(金額)1/3 上限50億(1社に50億出す、ということではなく、年間の補助金総額)
・(募集期間)5月~6月(+補正予算として翌2月~3月)
・(採択数)平成25年度: 1,465件採択(応募数不明)
・(採択事例)「スーパーでLED照明を導入」
「工場の稼働率に合わせた給排気ファンの自動調整」
※要件を満たせば自動的にもらえるわけではなく、他の応募者と比較して相対的に省エネ率の高い事業者が選ばれる。
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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