1.[事業用資産の買換え特例」と「小規模宅地等の特例」との接点
■用語のまとめ
・事業用資産の買換え特例(所得税)
事業用の土地建物等を譲渡し、その後一定期間内にその事業用の土地建物等を取得、事業の用に供した場合は一定要件のもと、最大その譲渡益の80%に対する課税将来に繰り延べることができる制度
・小規模宅地等の特例(相続税)
相続人が被相続人の事業に供されていた宅地等を取得した場合、一定の要件を満たせば、その土地の評価を最大80%減額できる制度
■事例
・医者であるA氏は生計を一にする孫B氏(同居・大学病院勤務)から個人で病院の開業をしたい旨の相談を受けた
・そこでA氏は、町の中心部に病院を移転することを考えた
現在A氏の所有する土地建物を使用して病院経営を行っている
・この場合、新たに取得する土地建物の所有関係をどのようにしたら買換え特例、小規模宅地等の特例の使用が可能になるか
■例示
・パターン1 土地建物をA氏が所有、B氏が病院経営
①建物はA氏から無償で借りる
→買換え特例○、小規模宅地等○(自用地評価、80%減額)
②建物はA氏から有償で借りる
→買換え特例○、小規模宅地等○(貸家建付地評価、50%減額)
・パターン2 土地はA氏が所有、建物はB氏が所有しB氏病院経営
①土地はA氏から無償で借りる
→買換え特例○、小規模宅地等○(自用地評価、80%減額)
②土地はA氏に相当の地代を払う
→買換え特例○、小規模宅地等○(一定の土地評価、50%減額)
③土地について借地権設定
→買換え特例○、小規模宅地等○(底地評価、50%減額)
2.株主総会の分散化、最大のネックは税務申告
経産省が、株主総会の時期の分散化を検討中
平成27年3月頃を目途に報告書をまとめる
⇒時期の分散化を図りたいが、実務上、後ろ倒しは難しい
■株主総会
…3月決算の会社が多いため、6月に株主総会が集中してしまう
※決算日(基準日)から3ヶ月以内に開催しないとならないため
■分散方法①
基準日≠決算日にする ※米、独、英風
⇒決算日の株主に対して計算書類の報告をする慣行
⇒基準日の変更は、実現が難しい
■分散方法②
会社法:基準日株主が行使可能期間を3ヶ月以内から4ヶ月以内に変更
⇒税務申告期限(延長込で3ヶ月以内)よりも後の開催となる
⇒株主総会後に数値が動くことになった場合の処置が必要
⇒税法上、実現が難しい
3.有価証券の譲渡と課税売上割合の計算
【論点】課税売上割合の計算における有価証券の譲渡の取り扱いについて
①株式、持分などの譲渡
(1)株式など流通性のある有価証券・・・譲渡対価の5%のみ非課税売上高に含める
∴株式の売買を繰り返すことが想定されるため
(2)合同会社の社員の持分など流通性のない有価証券・・・全額、非課税売上高に含める
∴一般に売買されないため
②売掛債権の譲渡
(1)ファクタリング・・・譲渡対価は考慮しない
∴売上高の二重計上を防ぐため
(2)再ファクタリング・・・譲渡対価の5%のみ非課税売上高に含める
∴課税売上割合が急激に減少するのを防ぐため
③有限会社の社員の持分の譲渡・・・譲渡対価の5%のみ非課税売上高に含める
∴会社法の施行に伴い、社員の持分が株式とみなされるようになったため
④証券投資信託
(1)解約請求(運用会社に対して)・・・元本の返還金は考慮せず、解約時の収益分配
金を非課税売上高に含める。
∴元本の返還金はそもそも課税対象ではないため
(2)買取請求(販売会社に対して)・・・譲渡対価の5%のみ非課税売上高に含める
∴受益証券の譲渡に該当するため
⑤先物取引
(1)売現先取引(国債等の「譲渡」→購入)・・・譲渡対価は考慮しない
∴取引の実態は有価証券を担保にした借入であるため
また、譲渡対価と購入対価の差額も考慮しない。 ∴支払利息であるため
(2)買現先取引(国債等の購入→「譲渡」)・・・譲渡対価は考慮しない
∴取引の実態は有価証券を担保にした貸付であるため
ただし、購入対価と譲渡対価の差額については、
購入対価<譲渡対価・・・全額、非課税売上高に含める
購入対価>譲渡対価・・・全額、非課税売上高から控除する。
∴貸付利息であるため
⑥国債等の償還損益
(1)償還差益(額面金額>発行金額)・・・全額、非課税売上高に含める
(2)償還差損(額面金額<発行金額)・・・全額、非課税売上高から控除する
∴利息の受取に準ずるため
4.買替資産を譲渡した場合の取得の日
・土地・建物の譲渡所得(所得税)は、取得日~譲渡日までの期間によって税率が異なる
(5年以下:短期譲渡所得 30%、5年超:長期譲渡所得 15% ※復興税は除く)
⇒土地・建物の取得日は?
【原則】
・土地・建物を購入した日
【例外】交換などにより取得した資産を譲渡した場合
・交換前の資産(以前所有していた資産)の取得日を引き継ぐ
【特例による扱いの違い】
・固定資産の交換特例 ⇒例外(取得日引継ぎ)
・収用等の場合の代替資産取得特例 ⇒例外(取得日引継ぎ)
・事業用資産の買換特例 ⇒原則(購入日)
→「買換特例」を適用して取得した資産を5年以内に譲渡すると、原則どおり短期譲渡所得(30%課税)となる
→「買換特例」により繰延べられた利益(買換前の資産の譲渡益)も、30%課税対象となる
→買換前の資産が5年超所有(15%課税対象)なら、「買換特例」を適用しない(譲渡益を繰延べない)
ほうが有利なケースあり
5.出国時の株式"含み益"が課税対象に
■背景
・巨額な株式の譲渡益を抱えて出国する
・出国に伴い非居住者となる
・非居住者後に株を売却する
⇒非居住者は日本に恒久的施設がない限り課税対象とならない。
日本人富裕層によるキャピタルゲインの租税回避行為が横行していた。
(出国先での課税対象となるが、シンガポール・香港は株式の譲渡益課税制度がない)
■H27年度税制で実現予定
・日本から出国する(非居住者となる)時点で特例的に課税させる。
・課税対象は、一定規模以上の金融資産を保有する出国者に限定。
・対象となる資産規模は諸外国の基準を参考に検討。
(アメリカ:純資産200万ドル以上、フランス:80万ユーロ超の金融資産)
なお出国時課税が導入された場合には、延納や納税猶予制度も設けられる予定。
6.先端設備リース、契約内容変更した場合の会計処理案が明らかに
実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」の改正案の概要が明らかとなった。
①契約内容が変更された場合のリース取引の再判定については、当初のリース取引開始日に遡って再判定を行う。
②オペレーティング・リース⇒ファイナンス・リースに変更した場合は、契約変更日より通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。
③②による場合、契約変更日にリース資産及びリース負債を計上し、原則として、両者の差額を損益として処理することとしている。
④ただし、実務上の負担を考慮した簡便的な方法として、リース資産の価額をリース債務の価額と同額とし、差額を発生させない方法も認める。
7.判例 法人の役員が行った仮装行為と重加算税について
■概要
・X社の役員であるAが架空の請求書を作成し架空外注費を計上
・Aは社長Bの実弟。役員ではあるが代表権はない。社長Bは関与せず。
・調査により指摘され、重加算税が課された。
(重加算税について)
・納税者が仮装行為により所得を隠ぺいした場合には重加算税の対象となる。
・納税者とは法人の場合、代表者を指すものと解される。
■争点
仮装行為を行ったのは代表権のない役員であり、「法人が行った」仮装行為に該当しない。
よって重加算税の対象にはならないのではないか?
■広島高裁
役員Aは代表権を有さないが、実質的に代表者と同等の権限を有している。
よって役員Aの行為は納税者たるX社自身の行為と同視できる。
⇒「法人が行った仮装行為」と判断するのが適当
8.所得税:H27年度税制改正で出国税の創設を検討(財務省)
■出国税とは
居住者が他国に移住して非居住者となるタイミングで、保有する資産の含み益に課税する税制。
■導入背景
・含み益のある資産を保有した状態でキャピタルゲイン課税の無い国の居住者になり(出国)、その後資産の譲渡をすることによる租税回避を防ぐ。
・例えばシンガポールではキャピタルゲイン課税が無く、日星租税条約では資産
(不動産等除く)の譲渡益には譲渡者の居住地国『のみ』が課税できると定められている。
・OECDから導入を促されている。日本以外のG7諸国、その他主な先進国では導入済み。
■課題
・課税時点では納税資金が無い 等
9.受注契約に係る引当金
・工事契約や受注製作ソフトウェアで、「損失の発生可能性が高い、金額を合理的に見積もれる」場合は引当計上が必要。
建設業:工事損失引当金
SIer :受注損失引当金
・通常は引当金繰入額は売上原価計上。
・重要性によっては区分計上もありえる
■(事例)特別損失計上
「客船事業関連損失引当金」として特別損失計上し、「受注工事損失引当金」とは別に計上。
通常の事業サイクルの中で発生するものではなく、また、金額的重要性が高いため、通常の受注工事損失引当金とは区分した適切な名称の引当金として表示
10.使える補助金・助成金vol.5 「ものづくり補助金(取引環境改善型)」
・前回の、「ものづくり補助金」の別バージョン。
・正式名称「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業
(取引環境改善型需要開拓支援事業)」
・要件(下記の両方満たすこと)
(1)過去3年以内に事業所閉鎖、または生産規模縮小、または売上高10%減少見込
(2)補助金申請から、補助事業終了まで、雇用を維持
・補助対象事業
新事業開拓のための市場調査、試作開発、販路開拓、設備投資
・補助金額:対象となる経費の3分の2(上限 1,000万円)
・募集時期:2014年は、3月14日~8月31日
・採択数
H25年度予算 50件採択(応募数不明)
・採択例
顧客ニーズに応じた衣料品製品開発、販売紙加工ワンストップ生産力を活かした取引先開拓事業
・備考:
→ものづくり補助金と重複申請可。
→認定経営革新等支援機関の協力を得ていると、審査の際、加点。
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