2015年6月6日土曜日

6/5 勉強会:消費税の内外判定に関するQ&A 他

1.検証・IBM事件高裁判決[3]

IBM事件にある違和感
1千億円以上ともなる税金に全く関心なく組織再編や資本等取引を行ったという主張
 ⇒法務・税務・会計の取扱いに注意深く検討するはず
  税務は税務調査があるので慎重に検討することが実務での通例

・中間持株会社を設けた上で自己株式取得を行った
 ⇒法人税法241項の改正が行われた以降は不自然なほど通常配当が行われなくなっている


2.繰延税金資産計上可能な合理的説明とは

■企業会計基準委員会が「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」を公表した。
⇒遅くとも年内には正式決定する方針

■監査委員会報告第66号等の内容を踏襲しつつ、下記①~③を大きく見直し
①分類2に該当する企業におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異に関する取り扱い
⇒スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産でも将来のいずれか時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合には回収可能性があるとされている。

②分類3に該当する企業における将来の減算一時差異等加減算前課税所得の合理的な見積可能期間に関する取り扱い
5年を超える見積可能期間であっても回収可能であることを合理的に説明できる場合は回収可能性があるとされている。

③分類4に係る分類の要件を満たす企業が分類2又は分類3に該当する場合の取り扱い
⇒企業側が合理的に説明できる場合には、分類2あるいは分類3に該当するものとして取り扱うこととしている。


3.土地持分の評価損めぐり更正処分取り消す

■事例
・不動産販売会社が土地持分を棚卸資産に計上
・当該棚卸資産の棚卸資産評価損を計上
・・・この評価損が損金として認められるかどうか争われた事例

■論点
・元々会社は土地持分を固定資産に計上していた
・販売用不動産に出来ると判断した時点で棚卸資産に振替、評価損を計上
・税務署側は「固定資産」であるから評価損不可と指摘

■判断箇所
・当初の所有目的による
・棚卸資産へ振替える前から複数社と売却交渉をしていた
 …売却意向があったと判断⇒販売目的による所有


4.ホンダの移転価格訴訟で再び国が敗訴

【事例】
 ホンダ技研工業がブラジル子会社等との間で行った取引について、国から移転価格税制を適用され課税処分を受けた。
 (取引価格が独立企業間価格に満たないと指摘された)

【地裁(H26/8/28)
 国による課税処分を取り消し
 (独立企業間価格の算定に際して選定した比較対象法人が不適切であると判断※)

※ブラジル子会社等は税制上優遇される地域に所在し、輸入税の免除などの税恩典利益を受けていたが、国は独立企業間価格の算定上、当該地域外に所在する法人を比較対象法人として選定し、かつ、当該利益相当分の調整を行わなかった。

【高裁(H27/5/13)
 地裁の判決を支持


5.消費税の内外判定に関するQ&A

■消費税の内外判定のポイント
貸付地や役務提供地がどこの国に該当するかで判断すること
(消費税の基本通達5-7を参照)

Q1顧客から依頼を受けた弁理士が国外の弁理士に立替払いする料金

A:課税対象とはならない
理由:国外の弁理士が行う役務の提供地で判断するため

Q2:国内における国外からの技術導入に伴い支払う技術使用料、技術指導料

A:技術使用料は課税対象、課税対象外どちらの可能性もあり。
理由:権利の使用料は権利登録された機関の所在地で判定する。
   ⇒登録機関が国内であれば課税対象
    登録機関が国外であれば課税対象外

A:技術指導料は課税対象となる
理由:国内で技術指導という役務提供を受けるため。
ただし役務提供地が不明な場合は、役務提供者の事務所等の所在地で判断する。

Q3:税関等(保税地域)で使用した外国貨物の課税関係は。

A:輸入者(購入した者)は課税対象とはならない
 使用した者(税関等)が納税義務を負うこととなる
理由:輸入取引は保税地域より引き取った場合に課税となるため

Q4:海外での工事に対する現地作業員の指導料は

A:課税対象とはならない
理由:建設や製造に必要な資材(技術や知識も含む)を調達できる場所で判断するため

Q5:外国企業A社からのソフトウェア(著作権等)の借入れ

A:課税対象とはならない
理由:著作権等は貸付者の住所地で判断するため。
   (支店が日本にあっても本店所在地で判断される)

※ただしH27年度改正において「電機利用通信利用の役務提供」は、役務提供を受ける者の所在地で判断することとなる。
著作権の利用等も「電機利用通信利用の役務提供」に含まれることとなるので、課税の対象となることに注意する必要あり


6.消費税の軽減税率、対象・区分経理で具体案を示す

・軽減税率制度検討委員会が522日に開催
・具体案(1)(3)が提示された↓

(1)「酒類を除く飲食料品」を軽減対象とする場合
 ⇒EU型インボイス方式を導入

(2)「生鮮食品」を軽減対象とする場合
 ⇒EU型インボイス方式を導入

(3)「精米」を軽減対象とする場合
 ⇒区分経理に対応した請求書等保存方式を導入

EU型インボイス方式
 :請求書に、適用税率別の対価の額・消費税額の記載が義務に

※区分経理に対応した請求書等保存方式
 :請求書に、適用税率毎の取引金額の記載が義務に(消費税額の記載不要)


7.所得拡大税制 新設法人の設立初年度

∇適用要件
(1)雇用者給与等支給増加額(当期)≧基準年度(H24年度)の雇用者給与等支給額×2
(2)雇用者給与等支給額(当期)≧比較給与等支給額(前期)
(3)平均給与等支給額(当期)>比較平均給与等支給額(前期)
を満たすと、支給増加額(当期-H24)の10%が税額控除できる(但し限度額あり)

∇新設法人の設立初年度
(1)について
⇒基準雇用者給与等支給額は設立初年度の支給額の70%相当額とする…2%基準クリア
(2)について
⇒比較給与等支給額はゼロとする…基準クリア
(3)について
⇒平均給与等支給額は1、比較平均給与等支給額はゼロとする…基準クリア

■まとめ
・設立初年度に従業員給与の支給があれば必ず適用がある


8.消費税:間接支配の孫会社は特定新規設立法人に該当せず

大規模事業者の傘下の設立法人のうち,「特定新規設立法人」に該当することとなった法人は,期首資本金が1,000万円未満であったとしても,設立事業年度から消費税の納税義務が生ずる。

①H26年4月1日以後に設立された法人が対象
②他の者に支配され、当該他の者(特殊関係法人を含む)の基準期間相当期間における課税売上高が5億円を超えること。
の要件を満たした場合に、免税事業者にはなれなくなる。

孫会社を設立した場合には上記規定の適用の有無の判定が複雑であるため、注意が必要。


9.DTAの回収可能性の判断要件見直し

・平成293月期の期首から適用。早期適用はH28.3期末から。
・公開草案についてのコメントが募集されている状況

分類2に該当する企業
・公開草案ではスケジューリング不能なDTAでも、「将来いずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合」に回収可能性があるものとした。
・(例)
 有税で減損した政策保有株式について、将来売却可能性があることを
 合理的に説明できた場合

分類3に該当する企業
・5年が硬直的すぎる、実態を反映していない、と指摘があった
・公開草案では、5年超でもスケジューリングされた一時差異が回収可能であることを合理的に説明できればOKとなった

分類4に該当する企業
・重要な繰越欠損金が存在する会社
・重要な繰越欠損金あっても、5年超に渡り課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる場合
 ⇒分類2に該当
・おおむね3年から5年程度について合理的に説明出来る場合は
 分類3に該当

指針適用による影響額は利益剰余金で調整する。
※会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。遡及適用はNG


10.マイナンバーの利用・提供、及び廃棄・削除に関する論点

1. 個人番号の利用・提供
(1) 個人番号等の利用が認められる範囲
⇒ 行政機関等が事務処理に必要な情報を、法令の規定に従って提出する際に必要な範囲のみ

※ 法定調書や支払調書等を提出するための利用等が認められる。

(2) 個人番号等の提供が認められる範囲
⇒ 行政機関等が必要とする情報を、行政機関等へ提供する場合のみ

※借入の際に金融機関に対し、源泉徴収票を使う場合には、提供が認められない。
※個人番号の提供が認められない場合は、個人番号部分を復元できない様にマスクするなどの工夫が必要。

2. 個人番号の廃棄・削除
(1) 廃棄・削除する時期
⇒ 事務手続きが不要となった場合で、法令で定められた保存期間を経過
⇒ 速やかに廃棄、又は削除しなければならない
(2) 廃棄・削除の方法
⇒ 復元できない方法で廃棄・削除

※焼却処分や、専用のデータ削除ツールの利用等

(3) 廃棄・削除を前提とした保管方法の例示
・システムで、廃棄すべき対象者がリストアップされるシステムの構築
・書類等を保管する段ボール等に保存期間・廃棄時期を記載する


11.リーディングケースにみる株式買取請求に係る「公正な価格」とは

・リーディングケース
 楽天TBS決定
  →上場会社がテレビ放送事業等を完全子会社に承継
   完全子会社から対価を何ら交付しない
   ⇒少数株主に買取請求権を認めないと著しく不公平

・公正な価格とは
 吸収合併等によりシナジー等企業価値の増加が生じるか否かの判断が重要なファクター


12.平成27年定時株主総会の直前対策(一部)

・招集通知について、前年度の安易なコピペによる誤記載をチェックする
・議事を妨害する株主への対応を考える
・役員の就任登記申請について、住民票や免許証等の写しを求める


13.非上場株式の株価算定における非流動性ディスカウントの採用可否と実務への影響

■非上場会社の収益還元法による評価の最高裁判例
(1)結論
・株式買取請求を前提とした場合に、非流動性ディスカウントを行うことが出来ない

(2)前提
・評価対象である非上場の会社を消滅会社として合併契約を締結
・消滅会社の株主から合併に反対する意思表示(通知、株主総会)
・消滅会社の株主から株式買取請求がされている

(3)最高裁の判断
 a.吸収合併等に反対する株主に株式買取請求権が付与された趣旨に従い、公正な価格を形成すべき
 b.非上場の株式評価手法はさまざまあるが、どの評価方法を採用するかについては、裁判所の合理的な裁量に委ねられる
 c.一定の評価方法を合理的としても、その評価手法の内容、正確からして考慮することが相当でないと認められる要素を考慮して評価することは×
 d.収益還元法は類似会社比準法等(マルチプル)と異なり、市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。
 e.反対株主に公正な価格での買取請求権が付与された趣旨は、会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主総会の多数決により可能とする反面、  反対株主に会社からの退出の機会を与えるととともに、企業価値を適切に分配するものであることを念頭に置くと、収益還元法に要素として含まれていない
  市場における取引価格との比較によりさらに減価を行うことは相当ではない
 f.反対株主の株式買取請求がされ、裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に、非流動性ディスカウントを行うことが出来ない

(4)本決定に関する検討
非流動性ディスカウントを否定した理由
 1. (2)最高裁の判断d. 収益還元法は類似会社比準法等(マルチプル)と異なり、市場における取引価格との比較という要素は含まない
 2. (2)最高裁の判断e. 反対株主に公正な価格での買取請求権が付与された趣旨は、反対株主に会社からの退出の機会を与えるととともに、企業価値を適切に分配することが含まれている

(補足)
確かに収益還元法は、市場における取引価格との比較という要素は含まないという捉え方も可能である一方で、収益還元法により算定された価格で売却する際に、流動性が低いがゆえに売却価額が減額されることも可能性としては想定される以上、収益還元法と非流動性ディスカウントが両立しえないとまではいえない。
また、非上場株式の評価は様々な種類が存在し、組み合わされることもあることを踏まえると、算定の基礎にある考え方((2)最高裁の判断d)が異なっていることのみで非流動性ディスカウントを考慮することが相当でないとの評価が直ちに妥当するとは考えにくい。
⇒非流動性ディスカウントを行うことが出来ないという判断は、株式買取請求権の趣旨を踏まえたものであることが強調されるべき
=企業価値の適切な分配機能を発揮するためには、非流動性ディスカウントを考慮すべきでない

■本決定の射程と実務への影響
(1) 非流動性ディスカウントの採用可否
・株式買取請求がされた場合の公正な価格の算定には当てはまるが、M&A実務での株価算定において直ちに当てはまるものとまでは言えない
⇒個別判断が必要になる

(2)射程範囲
下記の様なケースにおいて、本決定が必ずしも当てはまるか否かは明らかではないが、各制度の立法趣旨を踏まえて慎重に判断するべき
・譲渡制限株式に関する株式会社または指定買取人により買取りに係る売買価格の決定
・全部取得条項付種類株式の取得に関する価格の決定 等


14.東芝 有報提出期限の延長申請承認 上場廃止を回避へ

・前年度の有価証券報告書の提出期限を831日に、今年度第1四半期報告書は914日に延長する申請が承認されたと発表

・有報提出期限(原則):3ヶ月以内(3月決算であれば6月末まで)

・「やむを得ない理由により当該期間内に提出できないと認められる場合には」、「あらかじめ内閣総理大臣の承認を受けた期間内」に提出すれば良い。(改正金融商品取引法 24 1 項)。

・「やむを得ない理由」
(1)天変地異、大規模なシステムダウン等の発生
(2)民事再生手続開始の申立て等
(3)過去に提出した有報等に虚偽記載が発見され、過年度の有報等の訂正が必要であること(公表している場合に限る。)
(4)連結財務諸表等に虚偽表示の疑義が発見され、監査人がその内容を確認する必要があること(公表している場合に限る。)

(5)外国会社が、本国の法令等により提出期限までに有報等の提出ができないこと









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