2015年8月1日土曜日

7/31 勉強会:非流動性ディスカウント/最高裁判例について 他

1.平成27年度改正(1)

■国際電子商取引に対する課税の見直し
・国内向け電気通信利用役務の提供の内外判定
 現行法:役務提供者の役務提供に係る事務所等の所在地
 改正後:役務提供を受ける受益者の住所等

・電気通信利用役務の提供の定義
 該当するもの:電子書籍、音楽などの配信、クラウド上のソフトウェア等を利用させるサービスなど

 該当しないもの:電話、インターネット回線の利用など他社間の情報伝達を媒介するもの、ソフトウェアの制作等、著作権の譲渡、貸付など

・事業者向け電気通信利用役務の提供の定義
 役務提供を受ける者が通常の事業者に限られるものをいう
 よって、電子書籍や音楽配信のように役務提供を受ける者が事業者に限定されない取引は該当しない

・リバースチャージ方式となるもの
 「国外事業者」が行う「電気通信利用役務」の提供で、「事業者向け」電気通信利用役務の提供

 →「事業者向け」以外の電気通信利用役務の提供の場合は国外事業者申告納税方式が採用される

・免税事業者
 国内事業者である受益者が免税事業者の場合
 :受益者にリバースチャージ方式による納税義務は生じない

 国外事業者が免税事業者で国内事業者である受益者が課税事業者の場合
 :受益者にリバースチャージ方式による納税義務が生じる
 ※課税売上割合95%以上の場合や簡易課税制度の適用を受ける場合はリバースチャージ方式の適用はない


2.変わる役員報酬と税制・会社法

6/1から実施されているコーポレートガバナンス・コードには、中長期の業績と役員報酬の連動を求める原則が盛り込まれている。
しかしそのような役員報酬は現行法人税法上損金に算入されない可能性大。

■損金不算入と想定される理由
ガバナンスコード=中長期的な業績と役員報酬を連動
法人税法=利益連動給与を損金算入するには、事業年度の数値が確定した後、1か月以内に支払う必要がある
⇒法人税法では、複数年度の業績ベースにて算定することは損金算入の要件を満たさないと考えられる

他にも株式報酬が普及する可能性もあるが、いずれも法人税法上の損金算入要件を満たすことは困難と考えられる。

余談
※企業を短期的な思考に走らせないようEUでは201311月、四半期開示廃止を決めており、英国では201411月に廃止された。


3.著作権は電気通信利用役務を構成せず

■インターネットを介して行われるソフトウェア等の販売は、平成27年度税制改正で「電気通信利用役務の提供」に位置付け
⇒消費税の判定は「役務の提供を受ける者の住所等」

■著作権
 販売者が国内事業者であっても、そのソフトウェアは国外事業者から著作権の「貸付や譲渡を受けている」ケースがある
⇒その場合は「著作権の貸付、譲渡」「ソフトウェアの販売」に分解され、独立した「著作権の譲渡」取引と判断される
⇒国外事業者が著作権を持っている場合「国外取引」となる


4.留守手当、出張者の源泉で当局が確認

【前提】
海外子会社に出向している社員に対して、出向元である日本企業から支給される留守宅手当の取扱い
⇒海外勤務によるものであるため、源泉徴収の対象外

【疑問】
非居住者である海外出向者が一時的に出張で帰国した際に支給される留守宅手当はどうなるのか?

(短期滞在者免税制度)
租税条約締結国であれば、以下の要件をすべて満たせば、国内勤務による報酬についても、例外的に源泉徴収の対象外

(1)日本における滞在期間が年間183日以内(短期)であること
(2)報酬を支払う雇用者が日本の居住者ではない(ex.外国子会社)こと
(3)報酬が日本国内に雇用者が有する支店などのPEにより損金計上されない

【結論】
要件(2)に該当せず、短期滞在者免税制度は適用されないため、源泉徴収の対象となる


5.債務免除益の所得区分で納税者が勝訴

【前提スキーム】
・任意組合を利用した航空機リース事業
 ⇒(節税目的で)組合員が任意組合へ出資
 ⇒任組は、出資金と借入金で航空機を購入し、外部へリース
 ⇒任組には、リース収入と減価償却費・支払利息が発生
 ⇒これらの収入・経費はそのまま組合員の不動産所得になる(パススルー課税)
 ⇒当初は、減価償却費・支払利息が多額となり、不動産所得はマイナスとなるため、給与所得などと損益通算して節税できる

【今回事例】
・組合事業が終了
 ⇒借入金残高、任組の業務執行者に対する手数料ともに免除された(債務免除益)
 ⇒免除益について、各組合員は何所得を計上すべきか?

(国)
・借入についての免除益は「雑所得」
・手数料についての免除益は「不動産所得」

(判決/東京地裁)
・免除益はともに「一時所得」
・どちらも、一時所得要件である、非継続要件、非対価要件を満たす
※国は控訴を検討中


6.消費税:未登録国外業者からの課税仕入れについて

■消費者向け電気通信役務の提供
・登録国外事業者から受けたもの⇒仕入税額控除できる
・登録国外事業者以外から受けたもの⇒仕入税額控除できない

■仕訳
未登録国外事業者からデジタルコンテンツ1,000円を購入した場合

(仕入時)
仕入    926  現金 1,000
仮払消費税 74
⇒一旦仮払消費税を認識する

(期末時)
租税公課 74 仮払消費税 74
⇒期末に租税公課に振り替える

<結論>
仕入税額控除はできないが、控除対象外消費税として損金算入できる。


7.判例:米国デラウェアLPSは「法人」に該当と判断

海外の法律を元に組成された組織体を、日本の税制上どう取り扱うべきかを争った事例。

■争点
納税者はパススルーして申告したところ、課税当局はパススルー不可として損益通算を否認した。
LPSが日本の税制上法人であれば
 ⇒LPSは法人税課税、出資者は損失の取り込み不可

LPSが日本の税制上組合であれば
 ⇒LPSでは課税なし(パススルー)、出資者は損失の取り込み可

■最高裁判決
・米国デラウェアLPSは「法人」に該当し、パススルー不可。

■最高裁の判断基準
組織体がパススルーエンティティか否かの判断は、
 ①日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることが疑義のない程度に明白であるか否か
①で判断できない場合は 
 ②当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かを基準として判断すべき。

本件は②の基準を元に判断し、デラウェア州法のLPSは,『(1)いかなる合法的な事業,目的,活動をも実施でき,(2)全ての権限・特権等を保有し行使できる』とされているため、法人として扱うべきとされた。


8.非流動性ディスカウント/最高裁判例について

 ※DCF法に非流動性ディスカウントを加味して良いかどうかの論点。
・サイズプレミアムに関して参照可能な情報に乏しいことを理由にイボットソンを用いて資本コストを計算したことは、十分に合理的
 ※イボットソンは米国の統計データであり日本のVAに適用がOKかどうか疑問がある

・「退出を選択した株主には企業価値を適切に分配する」
 ⇒全体の株主価値を算出し、持ち株割合で分配
 ⇒非流動性ディスカウントもマイノリティディスカウントも考慮しない

・上記は「反対株主の株式買取請求」に限定。
 ⇒売却を希望しないのに売却を余儀なくされた長期保有の均衡状態を会社の意思決定で破壊された


・自発的な売買ではない株式買取請求権の場面において、公正な価格を算定するために設けた投資家に関する一定の前提の結果、非流動性ディスカウントを考慮しないという結論が導かれたに過ぎず、当事者間の一般的な株式売買の交渉においては本決定の影響は無いと考えて差し支えない










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