2015年9月4日金曜日

9/4 勉強会:マイナンバーにおける実務上の留意点(Ⅲ) 他

1.マイナンバーにおける実務上の留意点(Ⅲ)

■マイナンバーの記載を誤った場合の罰則はあるのか
 ⇒各行政機関の指示に従って処理すればいい。罰則はない。

■取引先がマイナンバーを提供してくれないときの対応
 ⇒法令上の義務ということで説得する。
  提供がないからと言って「取引を中止する」「税務調査が入る」等の脅し文句や嘘を言ってはいけない。
 ⇒偽りその他不正手段により個人カードを取得した場合
  …6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。

■源泉徴収票にはいつから記載するか
 ⇒平成291月に発行する分より記載が必要。
  退職する社員の源泉徴収票については平成28年中でも記載する。

■従業員の配偶者のマイナンバーの取得が必要な場合の取得方法
 ⇒扶養控除申告書に記載してもらうのが一般的な方法。
  事業主が本人確認をする場合は、従業員が配偶者の代理人として事業主にマイナンバーを提供することになるので従業員は配偶者からの委任状を受けるなどの対応が必要になる。

■情報提供ネットワークはいつからスタートするか
 ⇒地方公共団体 …平成297月から稼働予定
  上記以外の団体…平成291月から稼働予定
 ⇒民間事業者や個人は利用できない。



2.非居住者によるネット通販で国内の倉庫等をPE認定

■米国在住の非居住者が営むネット通販において、日本国内にあるアパート・倉庫がPE(恒久的施設)に該当するか否か。
⇒裁判所はPEに該当すると判断した。・・・非居住者に日本の所得税が課税される。

理由は・・・
・日本国内のアパート・倉庫を販売拠点として販売活動を行い、かつ国内のパート従業員が重要な業務(商品の保管・梱包・発送、返品対応など)を行っていたため。
 以上より、アパート・倉庫が商品の保管・引渡しのみのために使用する場所とはできない。

※参考
(米国における業務)
・市場動向の調査、仕入、支払業務、ウェブサイト管理、メールによる顧客とのやり取り、日本語取説の作成業務

(日本における業務)
・商品の受取り・保管業務、商品の梱包・発送業務、返品された商品の受取り・代替商品の発送業務


3.経産省、役員給与税制の見直しを要望

■平成28年度税制改正に向け検討中
(1)役員給与税制の見直し
 ・利益連動給与の損金算入制度はハードルが高い
  以下の内容は現在損金算入出来ないができるように要望提出
  …複数事業年度の利益をベースにした役員報酬
  …株式報酬等

(2)グリーン投資減税
 ・太陽光が除外となる(節税策として多く見られたため)
 ・地熱・バイオマスが追加となる見込み

(3)交際費
 ・中小企業の800万円まで全額損金算入可能…期限延長見込み
 ・大法人の接待飲食費50%の損金算入…廃止が確実


4.今週の専門用語~株式報酬~

■株式で支給される報酬
■海外では
(1)中長期的な業績目標の達成度合いに応じて株式が交付されたり(PerformanceShare)
(2)交付される株式に一定期間の譲渡制限が付されていたりする(Restricted Stock)

■日本では
(1)信託を活用した、株式報酬制度を信託銀行が販売している他、
(2)「金銭報酬債権※を会社に現物出資し、その対価として会社が役員に株式を発行する仕組み」を経済産業省などが検討中である
※役員が職務執行の対価として報酬を得る権利
⇒ただし、いずれも現行の利益連動給与税制上、損金不算入


5.公社債の150%基準は全利払期間を通して必要

■事例
・請求人である個人が公社債(私募債)を譲渡した。
・約5,000万円超の譲渡損が発生。
・「総合課税」の譲渡所得として確定申告した。(損益通算により他の所得に充当)
・原処分庁は「非課税」と主張し、損益通算を認めなかった。

■公社債の譲渡に係る課税関係
・原則⇒非課税
・特例⇒課税対象(総合課税)
     主にゼロクーポン債、150%基準を満たした債券の譲渡が該当する。

150%基準とは、
  譲渡した公社債の利子の利率について、最も高い利率から最も低い利率を割った割合が150%以上である場合は、 「総合課税」の対象とする規定。

■争点
譲渡をした公社債が「非課税」となるか、「総合課税」となるか。
150%未満⇒非課税 
150%以上⇒総合課税

■判断基準
発行時点で定められた利率をもとに判断する
 ⇒譲渡した債券は、発行時点から半年後までの期間の利率のみ定められている。
   以降の期間の利率は、発行時点で定められていない。
 ⇒利払期間中の利率は固定利率と変動利率が重なりあっており、全利払期間を通して150%基準を満たさない可能性が大。

以上の点より、
譲渡した債券は「非課税」扱いとされ、請求人は側の主張は棄却された


6.消費税法上の事業めぐり全部取消し裁決

【事例】
Aが、その子B、子Cとともに貨物船内の荷役作業を行っていた
・依頼主(X社)は、Aに対して3人分の日当を渡していた
Aは事業者に該当するか?

【原処分庁】
Aは、X社から業務を請け負う事業者に該当し、子B、子CAの使用人である
 ⇒消費税の納税義務有り

【審判所】
Aは、下記3点を満たし、X社からの日当は給与
 -X社の仕事につき、事前に作業者が契約で定められていることから、Aの代替がきかない
 -作業中、X社の従業員が責任者として参加し、Aは指揮監督を受けていた
 -作業に関する材料や道具などの大部分をX社が供給していた
 
Aは日雇い労働者に該当し、消費税の納税義務なし


7.所得税額控除(公社債の利子)の改正

∇所得税額控除
(原則法)
元本所有期間に応じた月数按分により計算

(簡便法)
元本を、「株式出資」「受益証券」「公社債の利子」に区分し、各区分ごとに簡便計算(期中増加分は期央取得と仮定して計算)

∇「公社債の利子」について改正あり
■改正前
原則法or簡便法で計算し有利選択

■改正後
H28.1.1以後支払を受けるものについては全額を控除できる


8.税務:少人数私募債と同族会社

■概要
・税制改正により少人数私募債を用いた節税がH28.1.1以降は出来なくなる。
・過去に起債した少人数私募債についても、同様。

■少人数私募債を用いた節税策
・会社が社長に対して少人数私募債を起債する。
・役員報酬で支給する金額の一部を、少人数私募債の利子として社長に支払う。
・少人数私募債の利子は分離課税(15%)されるため、総合課税の限界税率が高い社長の節税に寄与する。

■改正の内容
・同族会社が発行した少人数私募債の利子でH28.1.1以降に支払われるものにかかる所得は、総合課税される。


9.税率差異

・税効果会計の適用が前提
・理論上の法人実効税率と、実際の法人税等の負担率との間に差異(税率差異)が生じる。

■原因
・会計・税務間の制度上の違い
  永久差異(交際費や受取配当金)
  税率の変更
  住民税均等割
 など。

・税率差異の主な項目別の内訳(注記)が必要となる。


10.多重代表訴訟 ポイントまとめ

・多重代表訴訟とは、「親会社の株主が子会社の取締役を訴えることが出来る」制度。
・対象は「100%出資」「株式の帳簿価額が親会社の総資産額の20%」両方を満たす子会社に限る。
⇒つまり、「重要な完全子会社」のみ。
HDの傘下にある事業子会社、のイメージ。
実質的に事業を行っている会社を訴えられる道を残した、ということ。)
・訴える株主は、親会社の議決権1%以上保有が必要。
・直ちに直接提訴は出来ない。
⇒まず、子会社監査役に提訴を請求。
60日以内に訴えを起こさない場合、直接提訴が可能。

(訴訟の乱発を防ぐ。親会社役員を訴える時と同じ。)






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