1.金融庁、事業体課税の改正を要望
■デラウェアLSPを巡る最高最判決
・最高裁の法人への該当性の判断の検討方法
(1)外国事業体が外国法令で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されている、されていない、が疑義がない程度に明白であるかを検討
(2)(1)の検討が出来ない場合は
外国事業体が権利義務の帰属主体であると認められるかどうかを検討
⇒企業や実務家の間では、パートナーシップに対する課税が増えるではないかとの懸念が広がる
⇒金融庁、平成28年度税制改正要望において
『海外の組織体(パートナーシップ等)を通じた投資の円滑化に資するための措置』を要望している。
2.「分類4」から「分類2」「分類3」に該当するケースの留意点
■ASBJが検討している適用指針では、「分類4」に該当する企業でも一定の場合に「分類2」または「分類3」に該当するとの取り扱いを認めている。
■留意点
・翌期及び翌々期の2年間のみ一時差異加減算前課税所得が生じることが見込まれていても3年目以降に見込まれない
⇒「分類4」から「分類3」へ変更不可
・「分類4」の企業を「分類3」として取り扱った場合、適用指針案24条の規定は適用できない
3.ポイント交換の買物券、支払金は課税仕入れできず
・判決事例紹介
■前提条件(例)
・S社はSポイントを発行している
・加盟店であるY商店で買い物をするとSポイントが付与される
・貯まったSポイントは加盟店で使えるお買物券と交換出来る
■事例
・消費者がお買物券を使用してY商店で買い物をした
・Y商店はお買物券分の代金をS社に請求
・S社はお買物券分の代金をY商店に支払う
…この支払いが課税取引か不課税取引か争われた事例
■論点と判決
・S社側はY商店への支払いは、加盟店に対する商品交換業務の委託料と主張
・審判所はS社のY商店への支払いは、顧客が負担しなかった支払債務を精算する行為又は物品切手等の発行に係る対価を支払う行為であり、対価性が無いと判断し不課税取引と判断した。
※注意
・非課税取引となる「物品切手等の譲渡」とは異なる
・消費税基本通達6-4-5
「物品切手等の発行に係る金品の収受は資産の譲渡等に該当しない」
4.修正国際基準と日本基準との差異を開示
■連結財規改正
(1)平成27年6月30日に公表された修正国際会計基準を踏まえたもの
(2)平成28年3月31日以後終了する連結会計年度より適用可
(3)修正国際会計基準を適用できる会社について規定
⇒IFRSを任意適用できる会社と同様
(4)修正国際会計基準を適用した場合
・適用した理由などを注記
・主要な項目の差異(※)に関する事項を記載 ⇒ 会計監査人の監査の対象外
(※)修正国際会計基準を適用した場合と日本基準を適用した場合の差異
■修正国際会計基準
・「のれん非償却」と「OCIのリサイクリング及び当期純利益に関する項目」について、国際会計基準を修正
・平成28年3月31日以後終了する連結会計年度より適用可
5.国外転出者への公示送達を適法と判断
■事例
・税金滞納者が海外に移転した
・地方公共団体は督促状を「公示送達」により送付。その後差押さえ。
・税金滞納者は公示送達による督促は違法と主張
「公示送達」とは、住居所不明等により書類の送達ができない場合に、交付する旨を地方公共団体の掲示板に掲示すること。
掲示日から7日経過後に送達があったものとみなされる。
■地方公共団体が公示送達した理由
・住民票の転出先が海外である
・納税管理人が選任されていない
⇒税金滞納者の住所が明らかでないと判断し公示送達した
■税金滞納者の主張
・転出届に記載した携帯番号への電話
・納税者の親族への住所地照会
・選挙管理委員会が保有する在外選挙人名簿の調査
⇒海外の住所を確認することが可能と主張
■裁判所の見解
国外転出した者に対し、税金滞納者が主張する調査方法は、通常必要とされる調査でないと指摘
⇒公示送達による督促状の送付は適法と判断した
6.インサイダー取引の包括的適用除外規定のポイント
・インサイダー取引規制の一部が改定
・「知る前契約」「知る前計画」に係る包括的な適用除外規定が創設された
※従来は、13類型のみがインサイダー取引の適用除外であり、包括的な規定はなかった
【適用除外の要件】
(1)上場会社に係る重要事実を知る前に締結された株式売買契約or 決定された売買計画
(2)売買の具体的内容(売買日、金額、数
等)が事前に特定されているor事前に定められた計算式等で機械的に決定される
(3)契約 or 計画に従って売買が執行されるすべての要件が揃っている
⇒重要事実を知った後に売買を行ってもインサイダーにならない
※注意※ 契約書、計画書には確定日付を付すること等が必須
【例】
・1/1 X社の取締役Aが、Bとの間でX株の売買を契約(1/15付)
・1/10 Aは、X社が海外事業から撤退する事実を知った(重要事実)
・1/15 Aは、上記撤退事実を伏せたまま、1/1の契約通りBにX株を売った
⇒Aは、重要事実を知る前の契約を履行しただけであり、インサイダーにはならない
7.D&O保険料に関する課税関係
∇D&O保険とは
役員が取引先等の第三者や株主から損害賠償請求訴訟を提起された場合に争訟費用や損害賠償金を補償する保険。但し、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合の損害賠償金については基本契約でカバーされず特約を付す必要がある。
∇特約保険料の取り扱い
■会社法上
・会社法解釈上の争いがあり、慣行的に役員個人が負担することが一般的。
・経産省が公表した「法的論点に関する解釈指針」では取締役会の承認など一定要件をみたせば会社が保険料を負担することは(会社法上)適法とされている(7月公表)。
■税務上
「特約保険料を会社負担とした場合には、役員に対して経済的利益の供与があったものとして給与課税する」こととされているため、源泉徴収の対象となる。
⇒経産省が給与課税しないよう強く要望している
8.付加価値割:自販機設置手数料の取り扱い
事業者が敷地内に自販機を設置する場合には、自販機業者との間で下記のいずれかの契約を結ぶことが多い。
①設置場所に係る賃貸借契約
⇒地代家賃収入が発生
②売上に応じて手数料をもらう契約
⇒手数料収入が発生
付加価値割の純支払賃借料の計算上、①だけではなく②の手数料収入も受取賃借料に該当し、支払賃借料から控除することが出来る。
9.種類株式の会計処理
例1
・市場取引なし
・当初は優先配当2%、6年目以降は7%
・6年目以降、発行会社が発行価額で償還できる
⇒形式的には株式でも実質的に債権であればBS計上は債権として扱う
「債権と同様の性格」と判断されるかどうかは「確実に償還されることが見込まれるかどうか」
例2
・普通株式への転換請求権ありの種類株
⇒転換請求権ありの場合には「確実に償還されることが見込まれる場合」に該当せず、債権とは扱えない。時価の評価はオプション評価モデルを利用する
⇒転換請求期間到来後は普通株式の時価にもとづいて種類株の評価を行ってOK
10.工事契約に係る会計処理
1. 会計処理の分類
(1) 工事進行基準
⇒ 進捗に応じて売上計上
(2) 工事完成基準
⇒ 完成時に全額売上計上
2. 工事進行基準適用の要件
(1) 工事収益の総額が合理的に見積もれる。
(2) 工事原価の総額が合理的に見積もれる。
(3) 工事の進捗が合理的に見積もれる。
3. 工事契約に係る会計処理の留意点
(1) 従来
⇒ 短期(1年未満)の工事については、工事完成基準のみ
(2) 変更後
⇒ 短期のものでも、工事進行基準適用の要件を満たす場合は工事進行基準
4. その他の留意点(工事損失引当金の計上)
⇒ 工事完了時に、損失が見込まれる場合
⇒ 将来の損失について工事損失引当金を計上する必要がある。
11.タックスヘイブン対策税制の改正
■制度趣旨
日本に比べて軽課税である国や地域(タックスヘイブン)を利用した租税回避の防止
■対象(対象となる外国法人を「特定外国子会社等」という)
(1) 地域
・法人の所得に対して課される税が存在しない国等
・同税率が20%未満である外国関係会社
※平成27年度改正の前は20%「以下」となっていた。
(2) 外国関係会社の定義
・直接又は間接保有の割合が50%超の外国法人
■課税
・対象となる場合、外国関係会社の所得のうち出資比等に応じた金額を内国法人の所得に合算して課税される
■適用除外基準
・一定の要件を満たす場合には、適用対象から除外する
(1) 事業基準
(1) 事業基準
特定外国子会社等の主な事業が、次のいずれにも該当しないこと
・株式または債券の保有
・工業所有権その他技術による生産方式及びこれに準ずるものもしくは著作権の提供
・船舶、航空機の貸付(裸用船契約に基づくものに限る)
(2) 実体基準
・特定外国子会社等が本店所在地国に主な事業を行うために必要な事務所等の固定施設を有していること
(3) 管理支配基準
・特定外国子会社等が本店所在地国において、その事業の管理、支配を自ら行っていること
(4) 非関連者基準又は所在地国基準
・非関連者基準
非関連者との取引金額が全体の50%超であること(卸売、銀行、金融商品取引業などが該当)
・所在地国基準
非関連者基準が適用される事業以外の事業の場合、こちらで判定
主として本店所在地国においてその事業を行っていること
■申告
・適用除外基準の適用を受けるためには、適用除外基準を満たす旨を記載した書面を確定申告書に添付する必要あり
12.平成27年3月期「有報」分析
1.税制改正関連
・税率変更の注記の開示状況
⇒連結ベースでは分析対象会社のすべてが注記を行っていた。
大半が税率変更の影響額まで開示していた。
・法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等負担率との差異の注記の開示状況
⇒税率差注記を開示している大半の会社が税率変更に関する項目の記載を行っていた
(科目名としては、税率変更による期末繰延税金資産の減額修正、税率変更による影響など)
2.企業結合会計基準等改正関連
※改正後企業結合会計基準等は原則として平成27年4月1日以後開始事業年度の期首から適用
(一定の場合には平成26年4月1日以後開始事業年度の期首から適用可)
※主な改正内容
①子会社への支配が継続している場合の親会社の持分変動による差額は資本剰余金に計上
②取得関連費用は発生時の費用として処理(連結上)
③少数株主持分から非支配株主持分へ名称変更
・早期適用した会社
⇒2.8%のみ
13.有報分析 平成27年3月期
■有報提出日
・定時株主総会前の提出:18社(0.8%)
・定時株主総会後3日以内に提出:2,316社(95.4%)
→定時株主総会前の提出はかなり限定的
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