1.取締役相談役に分掌変更も実質的な退職の事実なし
■代表取締役から取締役相談役となったこと(分掌変更)により支給された退職慰労金が損金算入不可とされた事例
(審判所の判断根拠)
① 月額報酬が50%以上減少した事実のみをもって給与の「激減」があったとはいい難い
② 分掌変更後も役員として主要な地位にあった(退任前と同様の業務を行っていた) 等
(分掌変更後の状況)
・常勤していた
・稟議書決裁において代取の隣に押印欄が設けられていた
・営業会議、代表者会議等の議事録へ押印していた 等
(損金算入が認められる例示 ※法人税基本通達9-2-32より)
① 常勤役員が非常勤役員になったこと
② 取締役が監査役になったこと
③ 分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと
※いずれの場合も実質的に判断される
※上記を満たす=損金算入可能というわけではない
2.ゴルフ場の固定資産評価めぐり運営会社敗訴
■事例
・宮崎県A市はゴルフ場の固定資産税評価額を土地+家屋で13億円と評価
⇒原告会社は経営悪化や収入減少などの事情を考慮しないで決定した価格は違法であると主張
■原告会社の主張
・民事再生申立てにより原告会社株式は4億円で売却されている
・不動産鑑定士による評価額は2億円
■審判所判断
(1)本件ゴルフ場と他のゴルフ場を比較し価格の均衡が確保されている
⇒よって事情を考慮しなくても不合理ではない
(2)・民事再生中における株式価格は正常な条件のもとではない
・不動産評価は収益還元法に依拠している
⇒これらが適正な時価と認めることは出来ない
3.Google Adwordsが消費税の課税対象に
■国内事業者が国外事業者から提供を受ける「電気通信利用役務」が課税対象に
⇒国内事業者がGoogle Asia Pacific Pte Ltd.から提供を受けるGoogle
Adwords(リスティング広告)も課税対象に
・H27年度税制改正を受け、H27/10/1より適用
・国外事業者から提供を受けた国内事業者が申告・納税(リバースチャージ方式)
・ただし、以下のいずれかに該当する場合、
当面の間、リバースチャージ方式による申告不要(経過措置)
・課税売上割合が95%以上
・簡易課税制度の適用あり
4.会社にもマイナンバー、Q&Aで読み解く法人番号
■法人番号
国民1人ずつに通知される個人番号とは別に、1法人に対して「法人番号」が通知される。
・法人番号は13桁
・H27年10月22日より各法人へ順次発送
・国税庁HPにて「国税庁法人番号公表サイト」を開設
・番号通知後に、国税庁HPにて名称・本店所在地・法人番号の基本3情報が公表
■Q&A
Q1
Q:法人であれば必ず法人番号を取得しなければならないか
また個人番号のように安全管理措置等必要であるか
A:登記されていれば自動的に国税庁HPに公表されるので取得しなくてもよい。
法人番号は誰でも自由に利用可能であるため、安全管理措置等を講じる必要はない
(補足)法人税の申告書はH28年1月1日以降に開始する事業年度より記載
12月決算 ⇒ H28年12月期より
3月決算 ⇒ H29年3月期より
Q2
Q:税理士法人や監査法人にも法人番号は通知されるのか
A:設立登記法人であるため、法人番号は通知される。
Q3
Q:法人番号が付番されない人格のない社団等が法人番号を取得する場合はどうするか
A:国税庁が新たに設置する「法人番号管理室」(文京区湯島)に、
一定の書類を届け出れば取得可能となる。
Q4
Q:支店(支社)にも法人番号は通知されるか
A:1法人に対して1番号のみ指定されているため、支店等には通知されない
Q5
Q:法人番号はいつ国税庁より通知されるか。
A:H27年10月22日より7回に分けて通知される
各地域の発送予定日の2~3日後に各法人へ届く予定。
なお国税庁HPには発送予定日の翌々日に公表される
(主な地域の発送予定日)
・千代田区、中央区、港区 ⇒H27年10月22日
・上記以外の東京23区 ⇒H27年10月26日
・東京23区以外の東京都 ⇒H27年10月28日
・神奈川県、千葉県等 ⇒H27年11月4日
Q6
Q:登記上の住所と現住所が異なる場合は通知されるか
A:登記上の所在地に郵送されるため届かない可能性がある
届かない場合はマイナンバーのコールセンターに届出すれば再送付される
Q7
Q:法人番号を知らないと何か幣害はあるか
A:国税庁HPに公表されるため大きな幣害は生じない
Q8
Q:人格のない社団等も国税庁HPに公表されることになるか
A:通知はされるが代表者等の同意を得たものしか公表できない
「公表同意書」が送付されるが同意しない場合は返信する必要はない
Q9
Q:法人番号通知後に商号変更、住所変更があった場合に国税庁への手続は必要か
A:会社側での手続は特に必要はない
法務省等より情報提供され、公表サイトで情報が更新される
※一般的な異動届出書の提出は必要である
Q10
Q:法人番号の通知書をなくした場合は再発行が可能であるか
A:失くしたとしても再発行されない。国税庁HPで法人番号を確認できるため
5.専門用語
(1)事業者向け電気通信利用役務
・外国企業が行う広告配信サービスなどのうち、「性質、取引条件等から、サービス利用者が、通常、事業者に限られるもの」
⇒事業者向けサービスと明記していても、消費者がサービスの申込をできるものは、該当しない
(2)公正証書遺言
・遺言者が公証人に遺言内容を口頭で話し、公証人がそれを筆記する形式
※証人2人以上の立会が必要
・メリット
⇒家庭裁判所の検認が不要
⇒原本が公証役場に保管され、破棄・改ざんの恐れがない
・数万~十数万のコスト
(3)個人番号カード
・ICカードとなっていて、様々な行政サービスを受けられる
・顔写真付きであり、身分証明書として使用できる
・H28年1月から、本人の申請により交付される
6.大雨による災害と雑損控除
∇対象となる資産
・生活に通常必要な住宅、家具、衣類
・時価30万円以下の書画、骨董、貴金属
・車両(レジャー用を除く)
∇対象となる損害金額
・被災直前の時価を基礎として計算した金額
※但し、減価償却資産については簿価を基礎とすることも可(H26年改正)
・原状回復費用
∇対象者
本人及び同一生計親族(所得38万以下に限る)
∇関連規定
所得金額1,000万以下の場合は災害減免法と有利選択できる
7.住民税:ふるさと納税ワンストップ特例制度が開始
■概要
27年4月1日以後のふるさと納税については確定申告不要となった
■適用要件
(1)ふるさと納税の寄附金控除を受ける目的以外で確定申告書の提出を要しない者であること
(2)ふるさと納税を行った地方団体が5以内であること
※留意点
・H27.1.1~H27.3.31に行われたふるさと納税(寄附)には適用されない。
・医療費控除や住宅ローン控除で確定申告が必要な人は、適用要件を充足できない。
8.D&O保険の保険料の会社負担
■株主代表訴訟担保特約部分(株主代表訴訟において、役員が敗訴した場合を担保する特約)の処理
・従来:役員個人負担
・今後:会社負担
(理由)
役員が会社に対して損害賠償責任を負うことにより
・会社の損害が回復
→D&O保険により会社の損害が回復するから、会社が負担しても問題ない
・違法行為を抑止
→悪質な行為は免責としており、職務執行から生じる不可避的なリスクに生じるリスクであるから、不適切なインセンティブが設定されない
■必要な社内手続
・取締役会承認
・社外取締役の監督を受ける(同意を受ける)
■税務
・会社負担とした場合、取締役に対して給与所得課税がある
9.役員就任条件に関する解釈指針
1. 総論
優秀な人材の確保や適切なインセンティブの創出を目的
⇒ 関連する法律上の解釈を示したもの
2. 各論
(1) 役員報酬
・お手盛り防止だけでなく、役員のインセンティブ機能も考慮
⇒ 取締役会で、インセンティブも考慮した適切な報酬の内容を決定すべき
⇒ 加えて、社外取締役による監督が行われることが望ましい。
・取締役の報酬配分の際に利益相反が完全に解消されているとは限らない。
⇒ 社外取締役による監督が望ましい。
(2) 会社補償
・役員が損害賠償責任を追及された際の、会社補償に関する明文の規定は会社法上ない。
⇒ 一定の要件を満たせば会社補償が認められるという解釈を示す。
【一定の要件】
A. 事前に補償契約を締結
B. 補償契約について取締役会の決議と、社外取締役の関与
C. 悪意または重過失がないこと
D. 補償の対象は、第三者に対する損害賠償金と訴訟費用
(3) D&O保険の保険料会社負担
・会社が当該保険料の負担をすることの可否
⇒ 負担しても良いという解釈
【負担可能とする理由】
役員が会社に対して損害賠償保険を負う趣旨は、
A. 損害補填機能
⇒ 最終的に会社の損失は補填される
B. 違法抑止機能
⇒ 当該保険の対象は、職務執行に関する不可避なリスクのみ
⇒ 悪意な行為などは保険対象外であり、不適切なインセンティブとはならない。
以上より、会社が負担しても問題ないという解釈
10.「新しい株式報酬の導入」に関する解釈指針のポイント
役員等に対して現物の株式を直接交付する形のパフォーマンスシェア(中長期的な業績目標の達成度合いによって交付される株式報酬)、リストリクティッドストック(一定期間の譲渡制限が付された株式報酬)の導入について事務上問題となり得る点
1.株主総会における報酬決議
・金銭報酬として確定報酬又は不確定報酬いずれかの承認決議が必要
⇒役員に金銭報酬債権を付与しそれを出資財産として株式を発行すると捉えるため
・非金銭報酬としての決議も必要
⇒実態としては株式自体を報酬として交付するとも評価できるため
2.譲渡制限の方法
・譲渡制限株式を用いる方法
⇒定款変更が必要であるため、株主総会特別決議が必要
・契約による制限を行う方法
3.社外役員等への付与
・一律に否定されるべきものではない
⇒企業価値の向上に尽力すべきという点では業務執行取締役と何ら変わりがないため
4.任意の報酬諮問委員会の設置
・取締役会の下に独立社外取締役を主要構成員とする任意の委員会を設置する例が増えている
⇒外部者を交えた独立性のある環境での議論が行われることが望ましいため
11.欧州で始まる監査事務所の強制交代制
・適用は2016年6月から
・監査責任者の交代ではなく、監査事務所そのものの交代
・最大10年 EU域内で適用される
①期間終了後、入札を実施し、その結果同じ監査法人になった場合は1回までOK
※同じ監査法人が20年までOKになる
②期間終了後、共同監査として就任する場合には14年までOK
12.国内子会社の留保利益に関する税効果
■テーマ
連結固有の将来加算一時差異について、繰延税金負債を認識するときとは?
■ケース
(1) 前提(X0年度末)
・親会社BS
投資有価証券 100(持株割合50%)
総資産 100
・子会社BS
総資産 1,000
資本金 200
利益剰余金 800(うち、当期純利益800)
=親会社帰属分400(800×50%)
・子会社株式の連結上の簿価 500(100+400)
⇒親単体の子会社株式簿価との差異400(含み益)
⇒将来、親会社の利益として実現する場合には、税効果の認識が必要!
(2a)売却により解消されるケース(X1年度末a)
(ケース)
・取引
期中において子会社株式簿価100(全額)を、500で売却
・親会社PL
400(500-100)の子会社株式売却益が計上
⇒ 課税所得が400増加する
(X0年度末に求められる処理)
・上記の売却益について、将来加算一時差異に該当するため、繰延税金負債の計上が必要
※ただし、予測可能な将来期間において売却の意思が明確な場合に限る
(2b)配当により解消されるケース(X1年度末b)
(ケース)
・取引
子会社は期中800の配当を行った(配当性向100%)
親会社は400の配当を受け取った(上記800×持株割合50%)
この年度の子会社の当期純利益は0だった
・親会社PL
受取配当金が400計上
⇒ 課税所得が400増加する
(X0年度末に求められる処理)
・上記の受取配当金について、将来加算一時差異に該当するため、繰延税金負債の計上が必要
・ただし、受取配当の益金不算入制度の影響があるため、計算に留意が必要(下記)
(留意点)
・そもそも100%子会社の場合は負債利子の額も含め全額益金不算入のため、上記は考慮不要
・100%の子会社でない場合、負債利子部分を除き益金不算入であるため、負債利子部分のみ考慮必要
・以下の場合は「配当に係る課税関係が生じない可能性が高い場合」として基準で例示されている。
・親会社が当該子会社の利益を配当しない方針をとっている場合
・子会社の利益を配当しないという他の株主等との間に合意がある場合
13.携帯料金なぜ引き下げ要請が?
・安倍首相の発言で、携帯3社の株価急落。
・業界からは「もともとそういう流れ」と冷静に受け止める流れも。
・楽天・三木谷社長率いる新経済連盟は以前から、モバイル通信料金の割高を問題視。
・政府にとっては、給付金に変わる、「目に見える家計支援策」としての色合いが強い。
・現実的には料金の引き下げを直接迫るのではなく、MVNOが競争しやすい環境を整備すると見込まれる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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