1.相続税めぐる裁決事例で課税処分の取消し相次ぐ
■まとめ
・税制において、形式基準を順守することは大切だが実質的に有効かどうかを認識することが重要である。
今回の事例では
形式基準:申告書は期限内に提出する
申告書には押印をしなければならない(国通法124条)
実質的に有効かどうかの基準:
期限内に提出した申告書が相続人の意思に基づいて提出されているかどうか
■事例
・相続人が、押印をしていない相続税の申告書を期限内に提出した
・課税庁は押印がないことを理由に、再提出を求めた
・相続人は押印をした申告書を、期限後に再度提出した
(申告内容は期限内のものと相違なし)
・課税庁は期限後申告を理由に無申告加算税を賦課した
・相続人は無申告加算税の賦課を不服として、審査請求をした
・不服審判所は、下記により賦課決定を全部取り消した
(1)期限内に提出された申告書は相続人の総意により作成されたもの
(2)相続人は遺産分割協議時に、申告納付義務について認識していたこと
(3)相続人は期限内に相続税を納付していること
⇒期限内に提出した申告書はうっかりミスによる押印漏れがあるものの期限内に提出した申告書として有効
2.重要性原則など、中小企業会計指針を改正へ
・「中小企業の会計に関する指針(※)」の改正案を公表する予定
※中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものである。
■改正の目的
・①重要性の原則、②固定資産の減損、③税効果会計などの取扱い規定の明確化を図る。
⇒従来の取扱いの変更ではない
・資産除去債務会計基準についても盛り込むかどうかを検討
■主な内容(抜粋)
①・・・重要性の乏しい項目に関しては簡便な会計処理によることができる旨を明確化する。
②・・・減損を行わなければならない場合について、「予測することができない減損が生じたとき」に加えて「減損損失を認識すべきとき」と明確化する。
③・・・「一時差異に重要性がない場合には繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しないことができる」と表現を見直す。
3.事業者が事業として行う取引
■消費税の納税義務
・国内取引の納税義務者は事業者
・事業者以外が行った取引は課税対象とならない
・ただ事業者以外でも【事業として】行う行為は課税対象
■【事業として】とは
・対価を得て行われること
・反復・継続・独立して行われること
…よって会社員が建物を長期に渡り貸している場合は、反復・継続・独立して行われているため課税対象となる
※居住用建物は非課税の為、当該論点から除外
■具体例
(1)会社員が行う建物(非住宅)の貸付は?
⇒反復・継続・独立して行われる…課税対象
(2)会社員が自宅に太陽光発電を設置し、電力を売却した場合は?
⇒全量売電 …課税対象
⇒自家使用の余剰分の売電…課税対象外
(3)個人事業者が事業と家事で使用していた建物を売却した場合は?
⇒事業用部分(按分)…課税対象
⇒家事用部分(按分)…課税対象外
4.減資払戻し限度額規制
■減資を行う際、資本の欠損がある場合、当該欠損を解消した上でないと、株主に出資の払戻しできないというもの
・旧商法375条に規定(債権者保護の観点)
・会社法創設に伴い、廃止
【理由】
株主への出資払戻しは、会社法上、以下の2つの取引から構成されると解釈され、
(1)資本金の剰余金への振替
(2)剰余金の配当(=株主への払戻し)
資本金の減少額を直接株主に払い戻すことはできないこととされたため
5.マイナンバーが未記載の社会保険関係書類への対応は?
原則、確定申告書や法定調書、社会保険関係書類につきマイナンバーを記載して提出する必要がある。
マイナンバーの提出を拒否され、マイナンバー未記載で提出した場合はどうなるか?
■税務署への書類(主に源泉徴収票や支払調書、確定申告書等)
税務署は資料を受理する。
事業主側でマイナンバー提供を拒まれた理由を記録しておく必要あり
■ハローワーク(主に雇用保険被保険者資格取得届等)
ハローワーク側は資料を受理する。
ただし従業員へマイナンバーを記載することが「法令上の義務」であることを説明した上で、その従業員より提出を拒まれた場合に限る。
■年金事務所
・厚生年金保険(厚生年金被保険者資格取得届等)
マイナンバー未記載でも基礎年金番号の記載があれば受理する。
・健康保険(健康保険被保険者資格取得届等)
けんぽ所管⇒マイナンバー未記載でも基礎年金番号の記載があれば受理する。
健保組合⇒未記載の届出は受理されない可能性あり、健康保険証を発行できない恐れあり。
※住基ネットにつながっていないため、マイナンバーを把握することができないから。
6.無申告めぐり税理士の税賠責任を認めず
【東京高裁事例】
・税務クライアントが、顧問税理士に対し、期限内申告を怠ったとして損害賠償を請求
【判決】
・税理士は、「適切な納税申告」に必要な不足資料等を、クライアントに対して指摘・指示していた
・にもかかわらず、クライアントは不足資料等の提供を怠った
・税理士は「適切な納税申告」を行う義務を負っているので、不足資料等がある状況下で申告しないという判断に落ち度はない
⇒税理士には損害賠償責任なし(税理士勝訴)
7.税務相談:貨物運賃に含まれる保険料と消費税
(概要)
・運送業を営むA社は運送する荷物に保険を掛けている。
・荷主への請求は運賃と保険料を別建てで請求している。
・保険料は非課税であるから運賃部分にのみ消費税を加算しているが問題はないか?
(回答)
⇒問題あり
荷主への請求額は保険料相当を含んだ全額が課税対象となる
(理由)
・荷主が負担しているのは保険料ではなく「運送役務の対価」である。
内訳に保険料を含んでいても、総額が役務の提供の対価となる。
・これは製品の価格に人件費が付加されているのと同じ。
なお、保険料部分を「立替金」として請求している場合には運賃部分のみが課税対象となる。
8.所得税:28年1月以後,「特定口座」に公社債等を受入れ可能
公社債の利子や譲渡益に対する課税が、H28.1.1以降に変わる。
■︎現行
利子: 源泉分離課税
譲渡益: 非課税
■改正後
利子: 申告分離課税
譲渡益: 申告分離課税
つまり、上場株式と同じになる。
特定口座への受入も可能。H27以前に取得した公社債も受入可能。
※NISAは不可。
9.PCB廃棄物の会計処理
・PCB廃棄物の処理 平成28年までの処理⇒平成39年3月末まで延長になった
※環境省が調査した結果、H28までの処理が困難と見込まれたため
・PCB処理は法律上の義務⇒資産除去債務の対象に
・PCBの製造はS47年に禁止されている
・有形固定資産からはすでに除去済で、除去したPCBを倉庫に保管している場合、その将来見込まれる処理費用は「PCB処理引当金」や「環境対策引当金」で引当計上する
10.組織再編の税務調査対策
1. 本記事の概要
組織再編の税務調査時に対応するために、事前に準備しておくべき資料等の例示
※本記事では、組織再編の適格性の判定のケースについて例示している。
2. 税務調査に耐えうるための事前準備例
(1) 個別要件規程(法律で定められている要件)
・金銭等不交付要件
⇒ 組織再編の契約書
・完全支配関係(支配関係)継続要件
⇒ 組織再編前の株主名簿
・従業者引継要件
⇒ 組織再編前後の給与台帳、組織図、雇用契約を引き継ぐことが明記された契約書
・事業継続要件
⇒ 事業継続することが明記された議事録等
・事業関連性要件
⇒ 組織再編前の事業パンフレット等
・事業規模要件
⇒ 3年程度の事業別試算表
・株式継続保有要件
⇒ 組織再編による株式割当比率の根拠資料、組織再編前後の株主名簿
・その他
⇒ 各種届出が必要な場合は、該当する届出の提出
(2) 包括否認規定
⇒ 租税回避目的ではなく、経済的な目的での再編であることが明記された稟議書、議事録等
11.連結納税採用会社の調査対策のポイント
Q.連結納税の調査は単体納税の調査と相違があるのか?
A.基本的な部分は単体納税の税務調査と変わらない
(単体申告書を合算して連結納税申告書が完成するため)
・基本的な部分以外の取扱い
■連結納税の調査対策のポイント
(1) 連結親法人及び各連結子法人の間で情報共有する
・グループで共通する取引の税務処理について、定期的に情報共有できる体制を構築しておく。
(2) 連結納税下での税務調査の対応方法について事前に周知しておく
・連結納税では、連結子法人は申告書作成を親法人任せにする傾向がある。
⇒親法人から、単体の場合と同じように責任をもって調査対応をしてもらうこと。
自社の申告の誤りが他の連結法人にも影響することを、事前に周知しておく。
自社の申告の誤りが他の連結法人にも影響することを、事前に周知しておく。
(3) 連結納税特有の税務処理に関して根拠資料を整備しておく
・連結納税開始時、子会社の新規加入時の取扱い
(特定連結子法人の判定、時価評価、繰越欠損金の切り捨てなど)
・全体計算項目の取扱い
(連結欠損金の繰越控除、受取配当金の益金不算入など)
(4) 赤字の連結法人であっても十分に準備しておく
12.消費税に関する調査対策のポイント
・業務委託契約等に係る仕入税額控除
⇒自社専属の個人の場合、請負か雇用かが争点となる
請負→仕入税額控除が認められる
雇用→対象外取引
⇒請負人が注文者の指揮命令を受けることなく自らの判断で仕事をする、
仕事を完成させてはじめて報酬を請求できるのであれば請負
⇒業務委託契約書の完備が重要
・経営指導料等に係る仕入税額控除
⇒対価性がなければ寄付金となり仕入税額控除は認められない
取引の実態があり、適正な対価であるか?
⇒契約書の完備が重要
・海外取引に係る仕入税額控除
⇒インターネットを介して行われる役務提供(電気通信利用役務の提供)の内外判定が平成27年10月1日から改正
従前→役務提供を「する」者の事務所等の所在地で判定
改正→役務提供を「受ける」者の事務所等の所在地で判定
⇒GoogleやAmazon等プラットフォーム手数料が国外取引から国内取引へ変更
・毎月の経理業務フローにおける対策
⇒消費税科目別課非集計表を月次で確認し、異常値がないかチェック
13.国外転出時課税制度
・国外移転をする一定(※1)の居住者が1億円以上の資産(※2)を所有等している場合、
→国外移転時に譲渡または決済があったものと見なして含み益に所得税課税を行う
・贈与・相続時において1億円以上の資産(※2)を所有等している一定(※1)の居住者が
→非居住者である親族等へ対象資産の全部・一部を贈与した場合、贈与対象資産を譲渡したとみなして含み益に所得税課税を行う
(※1)国外転出ないし贈与時の10年以内に、国内に住所または居所を所有していた期間が5年超、ただし職業等(医療、研究等)に係る在留期間は含まない
(※2)有価証券、未決済信用取引・デリバティブ等
・納税猶予制度アリ
→含み益に対する課税のため、納税資金がない場合が想定されるため、一定の要件のもと認められる
14.今話題のフィンテックとは
・フィンテックは、「Finance」+「Technology」の造語。
・ITを駆使した金融サービスのことで、その概念は幅広く使われている。
・たとえば下記のようなサービスがフィンテックに当たる。
⇒最大8枚のクレジットカードを1台の端末で管理。どのカードから決済するかボタンで選べる
⇒銀行口座、クレジットカードの情報を一括管理。将来の資産推移をシミュレーション。
⇒指紋認証だけで買い物ができる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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