1.有利発行に伴う受贈益課税事件の全容
■まとめ
・有利発行かどうかの規程 法人税法基本通達2-3-7
・課税のベースとなる株式の取得価額の判断の規程 法人税法基本通達2-3-9
・有利発行かどうかとその課税のベースとなる取得価額において評価方法を変えることができる?
2.減損の遊休資産でもスケジューリング可
■ASBJが「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」にて検討中
・減損損失を計上した償却資産に係るスケジューリング
(事業の用に供している場合)
(事業の用に供している場合)
減価償却計算を通じてスケジューリング可能
(遊休状態の場合)
減価償却計算を通じて減算することはできないものの法人税法基本通達9-1-16により評価減ができるケースあり。
よって、売却等に係る意思決定がない場合等でも、スケジューリング不能な一時差異として取り扱うことは適切ではない。
3.給与所得控除の見直しが論点に浮上も
・政府税制調査会で上がっている意見
(1)個人所得課税の見直し
・日本の給与所得控除の割合が他国と比べて高い
・過去の税制改正で給与所得控除が拡充されていた背景
(2)海外で導入している税制の導入
・消失型の所得控除…所得が高いほど控除額が逓減・消失
・ゼロ税率…一定の収入金額まで所得税率をゼロ
4.税効果会計の適用税率は税制改正法案の"国会成立日"に
■現状、税効果会計の適用税率は、期末日現在で「公布」(※1)されている税法規定に基づいて算定
⇒3月決算の場合、3月末までに改正税法が公布されていれば、改正後の税率を適用して算定
■ただし、以下のような問題あり
・税制改正法案が国会で成立しても、法律の公布が決算日間際までされないことが多い
・法律が公布されても各地方自治体の改正条例が3月末までに公布されない
・IFRSや米国会計基準と取扱いが異なる
■今後、税効果会計の適用税率は、期末日現在で国会で「成立」(※2)されている税法規定に基づいて算定する方向へ
(平成28年3月期から適用できるよう、「税効果会計に適用される税率に関する適用指針(仮称)」を開発中)
⇒3月決算の場合、改正税法の公布日が4月1日になったとしても、3月末までに税制改正法案が国会で成立していれば、改正後の税率を適用して算定
(※1) 国民が知り得る状態にすること ex.官報に掲載
(※2) 法案が可決されること
5.源泉徴収票等への個人番号の記載
10/2付の所得税法施行規則等の改正により、本人へ交付する源泉徴収票等に個人番号の記載が不要とされた。
改正前
⇒すべての源泉徴収票及び支払調書に記載する。
改正後
⇒税務署提出用の源泉徴収票及び支払調書にのみ記載する
受給者に渡す源泉徴収票、報酬等を支払った者へ送付する支払調書には記載不要。
6.国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A(2)
※下記、すべてH27年10月1日以後の取引前提
Q1.国内事業者が、国外に住所ある人に電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定は?
A1.国外取引(役務の提供を受ける者の住所地で判定)
Q2.国内に旅行に来ている外国人旅行者に電子書籍の提供を行った場合の内外判定は?
A2.国外取引(旅行者の住所が国外だから)
Q3.日本企業の海外支店に電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定は?
A3.国内取引(役務の提供を受ける法人の本店所在地で判定)
※下記、国外事業者が国内企業等へ電気通信利用役務の提供(国内取引)を行った場合
(国外事業者に納税義務が発生する場合)
Q4.国外事業者であっても免税点制度は適用されるか?
A4.適応される。
Q5.国外事業者の免税点判定に使用する売上は?
A5.国内「消費者」向け電気通信利用役務の提供にかかる売上で判定
※国内『事業者』向けは、リバースチャージ方式により、役務の提供を受ける国内事業者に納税義務あり
(源泉税イメージ)
Q6.H27年10月1日を含む課税期間の免税点判定はどうするか?
A6.旧法で計算した結果免税事業者となる場合は、新法を適用して計算し直す。
⇒新法で計算し直した結果、課税事業者となる場合は、H27年10月1日以後の取引のみ課税対象となる。
7.国外転出時課税:分割確定時の更正の請求は不可
■国外転出時課税の対象
(1)1億円以上の有価証券等を保有する者が国外転出する場合
⇒5年以内に帰国する場合等は更正の請求可
(2)非居住者に贈与や相続で有価証券を国外移転させた場合
⇒分割協議が確定し相続しないこととなった場合でも更正の請求不可
■(2)の具体例
・被相続人Aが4億円の有価証券を保有
・相続人は居住者Bと非居住者Cで1/2ずつ
⇒申告期限までに分割協議が整わない場合、法定相続分で相続したとみなされる。
⇒みなし譲渡益課税の対象となる(国外移転ありとみなされる)
・その後分割協議が整い、有価証券は居住者Aがすべて相続することとなった。
⇒更正の請求対象とされていないため、実際は国外移転が行われていないのにみなし譲渡益課税されてしまう。
金融庁が28年改正で是正を要望
8.法人税:内定者の囲い込み費用
内定者に対して支出した費用は,支出した金額や目的等によって交際費となる場合とならない場合がある。
■ケース1
会社の印象を良くして内定者の入社意欲を高めることを目的に食事や旅行に連れて行った場合
→外部の者に対する『接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為
』である為、交際費に該当する。
■ケース2
入社前に仕事内容を具体的に知ってもらうための工場見学等に際し、昼食として弁当や飲み物を出すような場合
→通常必要な費用であって,接待の意味合いが少ないため、会議費等として扱う事が可能。
9.税効果の回収可能性 5分類に該当しない場合
・委員会報告の66号に示される5分類に当てはめるときにいずれの要件も満たさないケースがある
・過去3年で2期は課税所得が将来減算一時差異を十分に上回っているが、1期は十分には上回っていない場合、分類1と2の間になる。
⇒実務上は保守的に下の分類(この場合、分類2)として扱っていた
新ルールでは、
①過去推移
②当期の見込
③将来の見込
等を総合的に勘案し、
「各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類する」と変更された。
10.会計方針の変更と会計上の見積の変更の相違点
1. 会計方針の変更
⇒ 会計基準上認められている他の会計処理への変更
⇒ 過去の数値も、遡って修正することが必要
【例】
棚卸資産の評価を先入先出から、総平均法へ変更など
※ただし、正当な理由がある(利益操作でない)ことが変更できる要件
2. 会計上の見積りの変更
⇒ 新しい情報を入手したことにより、より正確な見積りへと変更すること
⇒ 過去の数値を遡って修正する必要はない。
※新しい情報によりもたらされる変更であることを理由に、遡及修正は求められていない。
【例】
引当金の算出方法について、より正確な算出が出来るようになったため、算出方法を変更など
11.H28年度税制改正による交際費の取り扱い
1. 現在
(1) 大企業(資本金1億超)
⇒ 接待飲食費の50%を損金算入可能
(2) 中小企業
⇒ 交際費の額が800万まで損金算入可能 or 接待飲食費の50%まで損金算入可能
※1,600万超の接待飲食費がある場合には、接待飲食費の50%損金算入の方が有利
2. 改正後
⇒ 接待飲食費の50%まで損金算入できる特例はH27年度末をもって廃止の見込み
⇒ 800万までの損金算入可能とする制度は2年間延長。
※大企業は全額損金不算入となる。
12.クロスボーダーM&Aの財務DDの実務~貸借対照表項目に関するDDのポイント
■資産
(1) 売上債権
※新興国では貸倒リスクが高くなるため、現金回収を行うケースが多くなる
・納税意識の低い経営者によって現金取引による売上が簿外処理される事例あり
・現金回収のケースでの従業員、回収代行会社による着服リスク高め
・M&Aを前提としている場合、架空計上などによって多額の売上債権が発生していることもある
(2) 棚卸資産
・原価計算の適切性(在庫残高の計算)
・滞留在庫の評価(在庫の年齢表が作成されていないケースも多い)
・在庫数量の正確な把握(実地棚卸が行われていない場合アリ)
(3) 有形固定資産
・減価償却(償却方法が設備の使用状況を適切に把握したものか、など)
・減損会計
・鑑定評価の必要性検討
■負債
(1) 仕入債務
・租税回避を目的とした架空仕入等、不正の可能性
・購買担当者による不正→社内の承認プロセス要確認
(担当者が仕入先と結託しリベートを入手することによって対象会社にとって通常価格よりも高い価格で仕入を行う可能性)
(2) 有利子負債
⇒M&A実行後、何を引き継ぐか
・役員、親族からの借り入れの取扱い
・金利や担保の条件等の確認
(3) 引当金
・労務関係(退職給付、賞与)などについては現地の慣行に留意する。
タイ:定年退職は会社都合の回顧として解釈されている。
定年退職の際の解雇金の支払額は勤務期間に応じた額が法定されている。
解雇金見込額について、退職給付引当金の計上が必要である。
フィリピン:
13ヶ月手当というクリスマス賞与の支給が法律で義務付けられている
シンガポール:
法定されてはいないが慣行あり(基本給1月分を旧正月の前までに支給)
(4) 税金
還付の場合、ほぼ確実に税務調査が行われる国もあり
⇒還付額を超える追徴のリスクがあるため、還付請求しないケースも。
⇒過去の会社の動向をみて、将来還付手続する/しないの可能性を見極める必要あり
■その他
・オフバランス項目(社会保険料の計上漏れ等)
・税効果(税効果会計が適切に行われていないところも多い)
13.【クロスボーダーM&Aの財務DD】 P/L項目に関するDDのポイント
・売上高
-収益認識基準の把握
物品販売取引
:リスクと経済価値が移転しているかの観点から収益が実現しているかを検討
:リスクと経済価値が移転しているかの観点から収益が実現しているかを検討
役務提供取引
:役務提供の進捗に応じて収益認識をしているか、役務提供完了時にしているか等を確認
:役務提供の進捗に応じて収益認識をしているか、役務提供完了時にしているか等を確認
現地会計基準に従った取扱いか、実態に即しているかの観点から検討
-主要顧客との契約内容
債権回収期間、返品条項、保証義務、M&A実行後の取引継続可否等について検討
-セグメント別分析
製品別、地域別、顧客別の売上高を把握し粗利率の分析を行うことが望ましい
・売上原価
-原価構造の把握
商品原価:適切な単価・数量把握と現品管理がなされているかを確認
製造原価:材料費は価格トレンドや為替変動が与える営業を感度分析
労務費は契約形態に注目(一般的には固定費だが日雇い労働者は変動費)
経費は設備のDEPや水道光熱費といったインフラ費用の分析が重要
-その他
原価差額の分析、歩留率・返品率・手待ち時間等の非財務管理資料の分析により、対象会社の強みや問題点、原価削減の可能性に関する情報が得られる場合がある
・販管費
費目と金額を把握し、今後の取扱いに留意しながら正常収益力分析を行う
・営業外・特別損益
内容を把握し、経常的項目か否かを理解することが必要
・関連当事者取引
取引の実在性、経済的合理性、価格等の取引条件の合理性などを検討
14.決算早期化の課題(連結売上500億・食品メーカー)
「強い経理部」を構築するのためには、
・説得ではなく、納得
・時には強いリーダーシップ
・取組には1年半程度
(1)決算資料の全面見直し
・単年度の残高・損益しか記載のない決算資料を全廃し、
四半期毎の残高・損益の推移が分かる資料に変更
→財務分析のレベルUP+エラー防止
→分析精度が高まることで課題も詳細に見え、対策が具体的に
(2)連結決算のエクセル化
・連結システムが自動仕訳を切ってくれるメリットがある反面、当該仕訳を
理解するために時間を要するデメリット→ブラックボックス化
※子会社数や親子間の取引内容・量によっては連結システムが有効な事も多々あると想定される
・各社から収集する資料の書式を統一化
→連結PKGから連結精算表への転記ミス防止
→連結仕訳の内容やエラーが一目でわかるため、チェックも容易
(3)その他
・有報作成の為の注記資料も3~5四半期の資料を一つにまとめる
→過去データ参照の手間が省ける
15.今年のノーベル経済学賞はアンガス・ディートン氏
・プリンストン大学教授。
・福祉政策、課税政策が貧困層の行動・生活にどのような影響を及ぼすかを実績を元に分析
⇒途上国を中心に公共政策に影響。
・収入と幸福度の相関関係を分析。
⇒年収が7万5千ドルまでは収入に応じて幸福度が増加、その後は伸びが鈍化する。
⇒アメリカの某決済ベンチャーで、CEOが自らの年収を100万ドルから7万ドルに減俸し、従業員の最低年収を7万ドルに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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