2015年11月14日土曜日

11/13 勉強会:扶養控除等申告書には個人番号記載不要 他

1.検証日産自動車事件
■争点
・子会社が減資を行い、親会社に時価よりも低い金額を交付した場合
 親会社に対して時価と交付を受けた金銭との差額について子会社への寄付金課税が成立するかどうか

■子会社が時価よりも低い金額を交付した理由
・旧商法において、減資には払戻限度額がありその払戻限度額を超える払戻しは違法であるため、払戻限度額までしか払戻しをしなかった
・払戻限度超過額を収益として計上することはできないし、実際に払戻しをされていない金額は寄付金にはならない

■裁判所の判断
・営利法人は損をする取引を選択しないはずであり、 損をする取引を選択したということは、損をした部分は寄付である
・法人税において、収益とは経済的な実態に即して実質的に理解することが相当である
・旧商法において、払戻限度超過額を収受することが許されなくても
 許されない=収益ではない、という理解はできない
⇒寄付金課税は成立する


2.海外取引への税務調査、申告漏れ発見の端緒は?

■事例
①租税条約等に基づく「自動的情報交換※1」が端緒となり申告漏れが発覚
具体的には・・・
「自動的情報交換資料等」により、Aが海外で資産運用が見込まれる一方、その運用益が申告されていないと想定されたため調査に着手。
1
法定調書等から収集した情報を支払国の税務当局から受領国の税務当局に対して一括して送付するもの。

②「国外送金等調書」が端緒となり申告漏れが発覚
具体的には・・・
「国外送金等調書」は金融機関が税務署へ提出する法定調書の1つであり、100万超の国外送金、国外からの入金があった場合、送金者等の氏名、住所、送金額等を記載した調書を税務署へ提出する。

⇒国税庁は今後も海外取引に関する税務調査を積極的に行う方針。



3.扶養控除等申告書には個人番号記載不要

■扶養控除等申告書
・原則
 …マイナンバーを記載。(※記載した書類は厳重に7年保管)

・例外
「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」
旨を余白に記載すれば、省略も可能となる。

※保険料控除申告書、退職所得の受給に関する申告書については、現時点では省略可能とはなっていないため、記載必要。
 今後足並みをそろえていく可能性もあるかもしれない。



4.予備的主張

 訴訟において、本来の主張が認められなかった場合に備え、予備的に行う主張のこ

例えば、債務不存在確認訴訟において、
「そもそも借金していない」という本来の主張が認められなかった場合に備え、「仮に借金していたとしても、返還請求権は時効により消滅している」と主張するのが予備的主張


5.タワーマンション節税に国税庁が方針

・高額なタワーマンション(タワマン)の1室を購入し、相続税評価額を下げるという節税策に国税庁が方針

【スキーム】
・タワマン(特に眺望のよい高層階)は、高い販売価格が付く
・マンション1室の相続税評価額は、通達上、下記合計により計算
 -敷地全体のうち1室当たりの土地部分の評価額(路線価)
 -家屋部分の評価額(固定資産税評価額)
・タワマンは、総部屋数が多く土地部分の評価額が小さくなるため、相続税評価額が低くなる(平均で、約3分の1に評価額を圧縮でき、物件によっては7分の1になることも)

 ⇒相続直前にタワマンを購入、相続発生後すぐに売却するようなケースは、相続税評価額=購入価格等 で計算し、追加課税する可能性があるとの方針


6.資本金額の説明義務違反で税理士が敗訴した事件

■概要
・節税目的で税理士と顧問契約
・税理士より法人成りの提案があった
・資本金1億円超で医療法人を設立
・新設1期・2期分の消費税の還付等が受けられなかった

■医療法人側(原告)の主張
節税を目的とした顧問契約を締結したにもかかわらず、損害を被る結果となったことは債務不履行による損害と主張

■税理士(被告)の主張
法人設立時に消費税が免税となる旨を説明したものの、資本金1億円とし「資産価値を高めたい。運転資金を潤沢にしたい」とする原告側の強い要望があったと主張し、債務不履行に該当しないと主張。

■裁判所の見解
・顧問契約の本当の目的が「節税」であること。
・節税目的で法人を設立したにも関わらず損害が発生した。

顧問税理士として節税目的に沿うよう正しく説明・指導しなかったと判断し、税理士に債務不履行の責任ありとの判決を下した。


7.相続タワマン節税:旧措法694復活か?

■タワマン節税とは
⇒市場価格と相続税評価額との乖離を利用した節税策

相続税評価額の計算では、
・階層による評価額に違いがない
・一棟の建物全体の評価額を専有面積の割合で按分
⇒世帯数が多いとひと部屋あたりの評価額が低くなる

ことから市場価格との乖離が生じやすく節税対策で
購入されるケースも多い

■旧措法694
⇒相続開始前3年以内に被相続人が取得した土地建物はその取得価額をもって相続税評価額とする規定。平成8年廃止。

■裁決例(H23.7.1
・購入後居住した形跡がない
・被相続人死亡後すぐに売却
・乖離率5倍(購入3億、評価額0.6億)

⇒評価額は購入価額を基礎に算定すべきと判断された


8.税務当局への事前相談の方法

税務当局への事前相談、照会の方法は下記の4つがある。

(1)タックスアンサー
 国税庁HPに掲載されているFAQ集。

(2)電話相談
 電話相談センターの税務相談官による一般的な税務相談。
 
(3)面接による相談
 税務署が対応する個別案件相談。要予約。

(4)特定案件の事前照会
 各国税局の審理課等で対応する「再建支援等」「特定調停(債権放棄に係るもの)」「企業組織再編成」に係る具体的な事前照会。否認されると企業活動が立ち行かなくなる重要事項に特化している。
 
 ※(4)の窓口一覧


9.権利確定条件付き有償新株予約権の処理を検討(ASBJ

・権利確定条件付きで従業員等に有償で発行される新株予約権(権利確定条件付SOについて会計処理の検討を始める

・権利確定条件付SOの会計処理について
 「複合金融商品適用指針」
 「ストック・オプション会計基準」
 のいずれの適用対象になるか明確化されていない

・現行実務では「複合金融商品適用指針」での処理が多い。
 「ストック・オプション会計基準」に従って報酬費用を計上するケースは少ない

ASBJ事務局より、「ストック・オプション会計基準」の適用範囲に含めることが適切と提案された


10.上場審査の形式基準

(1)本則第一部
  ・株主数2,200人以上
  ・流通株式数20,000単位以上
  ・流通株式時価総額10億円以上
  ・流通株式数(比率)35%以上
  ・時価総額250億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)
  ・純資産の額10億円以上
  ・利益の額(経常利益)5億円以上(最近2年間の合計)

(2)本則第二部
  ・株主数800人以上
  ・流通株式数4,000単位以上
  ・流通株式時価総額10億円以上
  ・流通株式数(比率)30%以上
  ・時価総額20億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)
  ・純資産の額10億円以上
  ・利益の額(経常利益)5億円以上(最近2年間の合計)

(3)マザーズ
  ・株主数200人以上
  ・流通株式数2,000単位以上
  ・流通株式時価総額5億円以上
  ・流通株式数(比率)25%以上
  ・時価総額10億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かついずれも適正意見であり、直前期は無限
定適正意見)

(4)JASDAQ
  ・株主数200人以上
  ・流通株式時価総額5億円以上
  ・会計監査2年間(虚偽記載なし、かつ直前期は無限定適正意見)
  ・純資産の額(スタンダード2億円以上、グロース正(直前期末)
  ・利益の額(経常利益)(スタンダード1億円以上(最近1年間)、グロース 該当なし)(※1

  (※1)「スタンダード」は、既にある程度の利益が出ているレベルの企業向けの区分

     「グロース」は、将来性を秘めた成長途上にある企業向けの区分






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