2015年11月20日金曜日

11/20 勉強会:印紙税法の第2号文書・第7号文書をめぐる実務ポイント 他


1.マイナンバー制度が税務執行に与える影響

■まとめ
・税務調査での活用
 ⇒税務署での業務がスムーズになる
  源泉徴収票などが名寄せしやすくなる
 ⇒将来は預金口座などの資産も把握できるようになるかも

・富裕層の資産移転の把握
 ⇒国内預金口座の把握が進む

・勤務先による副業の把握
 ⇒マイナンバーが導入されることにより明らかになることはない


2.非常勤役員への日当給与を定期同額給与と認めず

■請求人が非常勤役員に支給した日当は定期同額給与に該当しないため、損金算入できないと判断された事例

■審判所の判断
主に下記より定期同額給与や通勤費には該当しないと判断
・日当が規則的に継続支給されていないこと
・各月の支給額が同額でないこと
・自宅から直接用務地へ出向いており、宿泊を要する出勤ではなかったこと
・交通費は実費で支払っていた

よって非課税となる通勤費、損金算入可能な定期同額給与にも該当しない。


3.法人税の実地調査率

・法人税の税務調査を受ける確率のこと
・法人税に関する実地調査件数÷対象法人数により算出
・実調率(1)は、年々低下している
 平成元年:8.5% ⇒ 平成26年:3.2%
(1) すべての法人を対象とした実調率
・国税局調査課が所管する法人(2)の実調率は、かなり高い
 国税局調査課が所管する法人:10.6% ⇔ 税務署が所管する法人(3)3.1%
(2) 原則、資本金1億円以上の法人が対象。約25,000社あり
(3) (3)以外の法人が対象


4.株主総会招集通知の電子化や重複開示の廃止などが実現へ

金融審議会に設置されたディスクロージャーワーキンググループにて、以下事項が検討されている。

■開示内容の整理
金商法、会社法、取引所規則それぞれの開示書類は目的は異なるものの開示内容の統一が図られていたが、さらに3つの開示制度の相違点が統一される方向で検討されている

金商法 ⇒ 有価証券報告書
会社法 ⇒ 計算書類や事業報告
取引所 ⇒ 決算短信

(1)経営方針の記載
決算短信 ⇒ 記載が要求されている
有報・事業報告 ⇒ 明示的に要求されていない

(2)大株主の状況
有報と事業報告とでは大株主の所有株式数の定義が異なる

これら相違点が統一される可能性あり。

そのほか、
四半期決算短信と四半期報告書の開示日が近いため、四半期決算短信は任意で開示すべきとの意見あり

■株主総会招集通知の電子化
株主総会招集通知の提供を原則電子化する可能性あり
⇒日本では株主総会日が集中し、株主による議案検討期間が確保されていないため。
⇒アメリカの制度を導入することも検討(Notice & Access制度)
 ・招集通知関連書類の提供は原則電子的に行う
 ・希望する株主のみ書面で送付

これら検討事項はH283月頃を目途に報告書をまとめる予定


5.移転価格税制の申告漏れが多数発生

・移転価格税制に関する申告漏れ件数が過去10年で最高の240件(前年対比+41.2%)を記録。
・海外取引法人への税務調査が重点課題の1つになっていることが一因か。
・海外取引においては、特に、下記事例で源泉徴収漏れが発生しやすので要注意。
(1)海外企業への、権利侵害に関する賠償金支払が、実質、工業所有権の使用料に該当する場合
(2)海外企業へ工業所有権の使用料を支払う場合で、金銭のやり取りなく債権債務を相殺する場合

 ⇒どちらも源泉徴収が必要


6.消費税:国外事業者が行う電子書籍の販売

■電気通信利用役務の提供にかかる課税方式
(1)消費者向け⇒国外事業者が納税義務を負う
(2)事業者向け⇒リバースチャージ方式
       (国内事業者が納税義務を負う)

Q:業界専門書の電子書籍販売はどちらになるか
A:「消費者向け」に該当
⇒必ずしも一般消費者が購入しないわけではない

Q:ウェブ広告サービスはどちらになるか
A:「事業者向け」に該当
⇒通常、事業者限定のサービスである(と国税は考えている)
 ※実際は一般消費者でも利用可能

(まとめ)
その電気通信利用役務の提供が「消費者向け」か「事業者向け」かは役務の内容では判断できず、実質的に限定列挙となる

<「事業者向け」とされているもの>
・ウェブ広告
・アプリ等を販売するためのウェブサイトを利用させるサービス
・インターネットを介して行う宿泊予約サイトへの掲載 など


7.臨時報告書

・会社の業績等に重要な影響を与える事象が発生した場合に提出する開示書類
・株式交換・移転、合併・分割、重要な事業の譲渡・譲受けの決定や公認会計士等の異動など。
・損益への影響が純資産の3%以上、5年平均当期純利益の20%以上となる後発事象も対象となる。


8.法人税等負担率の分析

1. 法人税等負担率の注記
⇒ 法定実効税率と法人税等負担率に大きなかい離がある場合は、その主な要因を注記

※法人税等負担率 … 法人税等合計 ÷ 税前当期純利益
※法人税等合計  … 法人税等 + 法人税等調整額

2. 法人税等調整額の意義
⇒ 会計と税務とでは、資産・負債に差異が生じることがある。
⇒ 法人税等は税務上の所得で算出される
⇒ 法人税等の金額を期間按分(法人税等調整を計上)することにより会計上の税金費用に調整。

3. 法人税等負担率の分析の意義
⇒ 税効果会計が適切に適用され、決算数値に反映されているかを検証できること
※分析を通じて、DTADTLの計算にあたって、税務申告の調整項目の反映漏れ等を発見できる可能性がある。

4. 分析の方法
(1) 税前当期純利益に法定実効税率を乗じる
(2) 調整内容の影響額の算出 (下記の合計)
  ・永久差異(会計と税務で永久に差異が解消されないもの)× 法定実効税率
  ・所得に関係のない税金の金額 (住民税均等割など)
  ・評価性引当額の増減 × 法定実効税率
(3) (1)(2)の合計額が、法人税等合計と一致するかを確認する。


9.決算期が異なる場合の対応方法の比較と検討ポイント

■親子間で決算期が異なる場合の対応方法比較
(1) 子会社の正規の決算を基礎とし、連結会社間の重要な取引のみ調整する方法
 子会社の決算日と連結決算日との差異が3か月を超えない場合、採用可
 長所:最も負荷がかからない方法である
 短所:重要な連結間取引しか調整されず、適切な連結財務諸表を作成する観点からは限界あり

(2) 仮決算を行う方法
 正規の決算とは別に仮決算を組む方法(仮決算日は連結決算日から3か月以内の一定の日に設定することが可能)
 長所:法的な規制はないため、決算手続を限定したり決算日を連結決算日の1か月前に設定したりと柔軟な対応が可能
 仮決算の精度にもよるが、(1) の方法よりも適切な連結財務諸表が作成されると考えられる。
 短所:毎期継続して2回決算を行うことになるため、導入後のコストは(1)(3)の方法の中で最大となる。

(3) 決算日の統一
  そもそも決算期自体を変更してしまう方法
 長所:法定決算を基礎とするため最も適切な連結財務諸表が作成されるものと考えられる。
 短所:所在地国の法規制に対応する必要あり。採用できる会社が限られる。
 子会社決算と連結パッケージの作成が同時期に行われるため決算期の負荷は最も高くなる。

■仮決算と決算期変更、どちらをとるかについて検討のポイント
(1) 所在地国の法規制
 所在地国の税制によって決算日が特定の日に法定されている場合がある(ロシア、メキシコ、ブラジルなど)
 このような国に在外子会社がある場合、決算期変更の採用は不可能

(2) 決算体制の充実度
 増加する負荷に子会社の経理体制が耐えうるものであるかどうか

(3) グループ会社の分散状況
 特定の国に子会社が集中するなど、場合によっては親会社が決算期を変更する場合もありうる。


10.印紙税法の第2号文書・第7号文書をめぐる実務ポイント

・第2号文書…請負に関する契約書
・第7号文書…継続的取引の基本となる契約書

Qひとつの文書が第2号文書と第7号文書の両方に該当する場合はどうするか?
Aどちらか一方の号に所属が決定される。

原則:第2号文書とする
契約金額の記載なし:第7号文書とする 
※月額の記載だけがあり、契約期間の記載がないものは金額を計算できない為、契約金額の記載がないものとして第7号文書となる

⇒第2号文書と第7号文書、どちらの印紙税額が少ないかを考えて契約書を作成することで節税ができる。


11.新株予約権を対価とする費用の帰属年度の特例の内容について

内国法人は新株予約権を、個人から受ける役務提供の対価として発生する報酬債権と相殺して発行した場合
→新株予約権付与時の公正価値相当額を役務提供の対価とする費用
→被付与者である個人に給与等課税事由が生じたときに損金算入

(1)新株予約権の公正価値相当額
 会計:ブラックショールズ・二項モデル等の価格算定モデルで算定
 税務:法人税法規程なし、会計を準用

(2)公正評価額の損金算入時期
 会計:権利付与時~権利確定時までは対象勤務期間として、同期間に渡り合理的な方法で按分
 税務:被付与者が権利行使をして、かつ、所得税の課税が生じるときに限り損金算入できる
 →税制適格ストック・オプションが行使され、非課税となる場合には損金算入×


12.YKKはなぜ非上場なのか

YKKはファスナー世界最大手。有数の、非上場の大企業。
・現会長の吉田忠裕氏は、創業者の息子。
・現会長以外の幹部はすべて非同族。
・創業者が外部の株主ではなく、社員に株を持たせることにこだわった。
⇒現在の筆頭株主は「社員持株会」。

・他に著名な非上場企業は、
サントリー、竹中工務店、JTB、ロッテ、大創産業など


13.ビートたけしが孫を養子に 相続税対策か

・ビートたけしが長女の子供を養子に。
・子供を経由して孫に行くよりも、相続税課税が1回少なくて済む。
・「孫を養子にする」節税対策は、バブル期に流行ったが、今回の相続税改正で再びブームになる可能性も。

・法定相続人に含めることが出来る養子の数は、「実子がいる場合」1人まで、「いない場合」2人まで。
・養子のうち直系卑属(孫、ひ孫)は税金が2割加算。


14.上場審査の流れ

(1)取引所上場の審査の流れ
 ・通常審査と予備審査がある。
 ・取引所の上場審査部が3ヶ月程度(標準審査期間)(JASDAQは標準で45営業日)かけて審査を行う。
 ・通常審査
  株主総会→取締役会決議(上場申請の決議)→上場申請(申請書類の提出)
  →上場審査(ヒアリング、実地調査、会計士ヒアリング、監査役ヒアリング、社長ヒアリング、社長説明会)
  →上場承認(公募・売出しに関する取締役会決議、有報を財務局に提出、取引所よりプレスリリースされる)
  →上場
   
  上場申請から上場承認まで3ヶ月、上場承認から上場まで1ヶ月
 ・予備調査
  上場申請直前事業年度の末日からさかのぼって3か月前に予備申請、審査開始、定時株主総会終了後、上場申請となる。
  予備申請を行えば、通常申請に比べ最短で3か月程度、上場までの期間が短縮される。

(2)マザーズ上場の審査の流れ
  ・上場審査の流れは、取引所上場と変わらないが、取引所上場の場合と比べ、提出書類が少ないことから、標準審査期間を2か月としている点に違いがある。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                  銘柄コード   市場  公募価格(円)
1119      ロゼッタ                       6182        マザ     695
1119      あんしん保証               7183        マザ   1,460

1120      ベルシステム24      6183        東証  1,555






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