1.一括取得した建物の課税仕入、鑑定評価による按分計算認めず
・土地建物を一括取得した場合
…土地:消費税は課税されない(非課税)
…建物:消費税が課税される
⇒按分計算が必要になる
・按分する根拠を何にするか?
固定資産税評価額 :合理的
鑑定士による鑑定評価:合理的であるが、実際請負代金とのかい離がある場合は合理的とはいえない
・不服審判所に申し立てられた事例では、鑑定評価の額(12億)が新築請負代金(6億)の約2倍で評価されていたため鑑定評価に合理性がないとの指摘がされた
2.株式報酬の税務
・今年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コード
⇒役員報酬と中長期的な業績との連動性を求めている
・信託を通じて役員に株式を交付するスキーム
(例:三菱UFJ信託銀行=役員BIP、みずほ信託銀行=BBT 等)
⇒役員に株式を交付する時期による課税
(在職時)
法人税法上、損金算入不可
※定期同額・事前確定届出給与・利益連動給与に該当しないため
(退職時)
交付時の時価総額相当額を退職金として損金算入できる可能性大
3.賞与支給額の通知有無、高裁も法人敗訴
■概要
職員に対する未払定期賞与の損金参入時期について争われた事例
未払賞与の損金算入要件である「支給額の通知」はどこまでが通知か?
■法人側の主張
社員に通知されている「給与規定」に則って定期賞与を支給している
それは全職員が知っていることであり、それが通知になると主張
■裁判所判断
「支給額の通知」は「具体的な賞与の支給額」を決定し、「通知」するまでを言う
今回の場合は、業績等により支給割合が変更される余地が残っており、「具体的な支給額」の通知があったとはできないと判断され、法人側の主張は斥けられた
4.税効果適用税率指針の原案が明らかに
■税効果会計に適用する税率の取扱いが変更
現行:決算日に公布されている税法に規定されている税率で計算
指針案:決算日に国会で成立している税法に規定されている税率※で計算
(なお、平成28年3月期からの適用を予定)
※より厳密に言うと、
・法人税、地方法人税、地方法人特別税
⇒決算日に国会で成立している税法に規定されている税率
・住民税(法人税割)、事業税(所得割)
⇒決算日に各地方公共団体の議会等で成立している条例に規定されている税率
5.定期代や留学渡航費等を非課税対象とするには?
・平成27年度税制改正で、教育資金一括贈与の非課税制度が使いやすくなる
※非課税制度の概要
⇒30歳未満の受贈者が、祖父母など直径尊属から、金融機関を通して教育資金を受贈した場合に1500万円までは贈与税非課税となる制度。
【改正内容】
・通学定期券代、留学渡航費が非課税対象に(H27.4.1以後支払い分)
⇒通学定期券の写し、留学先の入学許可証・航空券の写し等が必要
・1万円以下の小口支払は、年間総額24万円以下までの支払について領収書が不要に(H27.1.1以降支払い分)
⇒領収書に代えて支払内容を記載した明細書の作成が必要
6.マイナンバー:扶養控除等申告書・法定調書関連
■FAQ抜粋
<扶養控除等申告書>
・「給与支払者に提出済みの個人番号と相違ない」旨の記載をすれば個人番号の記載不要(Q1-9)
・「法人番号」をプレ記載して従業員に配布…OK
但し、給与支払者が個人の場合、「個人番号」をプレ記載して配布するのはNG(Q1-16)
・個人番号部分にマスキングをして保存することは不可(Q1-23)
⇒原本保存とならないため
<法定調書>
・提出後に個人番号の提供を受けた場合、原則として再提出する必要があるが、個人番号以外の事項が正しく記載されていれば再提出不要(Q1-5)
・個人番号が不明の場合は記載しないで提出するが、適用欄に理由を記載する必要はない。
但し、のちに理由を確認される場合があるので理由等を記録しておく(Q1-6)
7.法人税:マイナンバー対応に要したシステム関連費用
マイナンバー制度の導入に伴って必要になる「安全管理措置」を講じるため、社内で使用するシステムの変更に要した支出は『修繕費』か?『資産取得』か?
■ソフトの買い替え、新規取得
通常の資産の取得として取り扱う。
■既存システムの改修、機能付加
修繕費として一時の損金算入が可能。
【考え方】
「安全管理措置」を講じない以上,法令に沿ったシステム運用ができなくなる。
そのため既存の給与計算システム等に対して支出した改修費用は,“現在使用しているソフトウエアの効用を維持するためのもの”として「修繕費」と処理できる。
8.決算日後の税率変更
・税効果会計基準では、決算日後に税率変更があった場合、その内容およびその影響を注記し、税率変更はDTA等の額に反映しない
⇒ASBJの審議では、決算日後の税率変更を修正後発事象として取り扱う
=改正後の税率で算定することが有用、との意見もあり
⇒当該税率はDTAの見積もりの一部、という考え方
ただし、有価証券の減損に用いる株価は期末時点のもので、期末日後の変更は反映していない。
IFRSでも期末日後の税率変更はDTAに影響しない。
9.事業統合における持株比率調整の留意点
1. 持株比率調整とは
⇒ 当事者間で合意した持分比率と、株式価値算定による比率とで乖離
⇒ 合意した持分比率になるように株式の譲渡等を行い調整すること
2. 留意すべき事項
⇒ 持分調整により、税制適格要件を充足しなくなる可能性があることに留意が必要
3. 税制適格要件を満たさなくなる持分調整の例
⇒ 下記の持分調整を実行すると、調整しなければ税制適格だったものが、税制非適格となってしまう。
(1) 子会社同士の合併
被合併法人の株主が、合併法人の株主に株式を譲渡
⇒ 子会社の持分比率を下げる調整
※被合併法人の株主には株式継続保有要件が課されているため
(2) 複数の会社の事業を一つの新会社に統合 (共同新設分割)
分割法人間で株式を譲渡して、合意された持分比率に調整
※分割法人は、新設された会社の株式の継続保有を課されているため
4. 税制非適格とならない様にする持分調整の方法
⇒ 持分を株式の売却で調整するのではなく、株式価値等を調整することにより、合意された持分比率となるようにする。
<上記例示の場合の対応策例>
(1) 子会社同士の合併の場合
⇒ 被合併法人が事前配当を行い、被合併法人の評価額を調整
(2) 共同新設分割の場合
⇒ 合意された合併比率に満たない会社が、追加で資産を拠出することにより、評価額を調整
10.事業統合の定義概要とスキームごとの留意点
(1) 目的
・経営統合
同業で業界首位を目指すようなときに行われることが多い
経営資源のすべてを統合。すべてが一体化される
実態として一体化を図るのはハードルが高いといえる。
・事業統合
本社機能的な部分まで統合されることはない。あくまで事業単位での統合
互いの経営資源を拠出する形で統合後の事業を形成
段階的な統合を図るために事業統合を利用するケースも見られる
(2) 事業統合のタイプ
・子会社同士の合併
簿外債務を含むすべての資産・負債が対象
合併比率を調整するためには合併前に増資等による調整が必要
株主総会の特別決議が必要
包括承継により承継
債権者保護手続:1ヶ月以上の異議申立期間が必要
対価:株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他の財産
従業員の扱いは包括承継
・共同新設分割
事業に紐づく権利義務であれば統合可能
統合範囲の調整により統合比率は調整可能
株主総会の特別決議が必要
包括承継により承継
債権者保護手続:1ヶ月以上の異議申立期間が必要
対価:株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債
従業員の扱いは包括承継
・吸収分割
事業に紐づく権利義務であれば統合可能
統合範囲の調整により統合比率は調整可能
株主総会の特別決議が必要
包括承継により承継
債権者保護手続:1ヶ月以上の異議申立期間が必要
対価:株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他の財産
従業員の扱いは包括承継
・事業譲渡
すべての事業を統合する必要はない。範囲の自由度が高い
譲渡範囲を調整することにより譲渡価値は調整可能。株主になるためには別途資本参加の手段が必要
株主総会の特別決議が必要
個別同意により承継
債権者保護手続は不要
対価は株式以外の財産
従業員の扱いは個別同意により承継
11.事業統合前に詰めるべき主要論点
⇒株主間契約の中の、「解決困難な事象」が発生した場合の対処について
※株主間契約とは
2社以上の会社で事業を行う際に、会社の基本的な運営方針や後々発生する事業への対処方法をあらかじめ決めておき、明文化しておくもの。
主な記載事項
・目的、定款
・出資比率、議決権
・機関設計、役員選解任
・拒否権
・資金負担
・配当
・競業避止
・デットロック条項
・株式譲渡
・解消
・紛争
【解決困難な事象が発生した場合の対処】
①デッドロック条項
※株主間での見解相違に決着をみない場合の対処方法を定める条項
・役員間での協議、株主の代表者間での協議、独立機関による判断などの段階的な協議によりクールダウンの機会を設け、上位の判断で決着を試みる
②統合解消
・株主間の売買を想定した場合
⇒一定の事由が生じたとき(義務違反があった、統合事業の目的が達成された等)、買取規定や売渡請求権又は売渡規定や買取請求権を株主間契約で規定する
・第三者への売却を想定した場合
⇒自社が株式の過半数を持つ場合や少数株主となる場合等のさまざまな状況を勘案して先買権、売却参加権、共同売却権、強制売却権等を規定することが必要
12.インサイダー取引規制の適用除外規定である「知る前契約・計画」「対抗買い」について
(1)「知る前契約・計画」
→重要事実を知る前に決定された契約・計画
イ~ハまで、すべてを充足する必要あり
イ:重要事実を知る前に締結された書面による契約の履行または重要事実を知る前に決定された書面による計画の実行として売買等を行う
ロ:重要事実を知る前に、次に揚げるいずれかの措置が講じられたこと
ハ:売買等の別、銘柄及び期日ならびに当該期日における売買等の総額または数が、「知る前契約・計画」において特定またはあらかじめ定められた裁量の余地がない方式により決定
(2)「対抗買い」
→TOBに対抗するために、被買付企業の親密先が株式を買い付ける行為
普通に考えると、TOBがあるといった情報を知っている第三者は、情報が公表されるまでは買付できない
そこでTOBがあるといった情報を知っている第三者による対抗買いを可能とするための適用除外規定として、TOBに対抗するため、被買付企業の取締役会等が決定した要請に基づいて株券等の買付等を行う場合が定められてた。
13.TPP、オタク文化を殺さず
・TPP交渉の中で、「著作権者が訴えなくても、行政の判断で著作権侵害を止めることが出来るようにする」という議論があり、出版業界が騒然となっていた。
・これまで著作権者が看過してきた、「コスプレ」や「同人誌」が規制の対象になるのでは…と憶測。
・上記は著作権者にとってもマイナスは少なく、むしろファン活動の裾野を広げてくれていた。
・発表された大綱では、「著作権者の収益に大きくマイナスの影響を及ぼす場合」と条件がつき、ひとまず騒動は落ち着いた。
14.上場市場の種類と特徴
(1)証券取引所本則市場
⇒東京、名古屋、福岡、札幌の各証券取引所に本則市場がある。
また東京、名古屋の2証券取引所の本則市場は、所属部として第一部、第二部に区分されている。
(2)マザーズ
⇒東京証券取引所が、新興企業に資金調達の場を提供する目的で創設された。
市場コンセプトは「市場第一部へのステップアップのための成長企業向けの市場」
(3)JASDAQ
⇒日本初の成長・ベンチャー企業(新興企業)向けの市場。
他の取引所に開設されている新興市場とは異なり、現在では老舗となった企業も上場しており、中には秩父鉄道(1963年上場)のような上場から50年を超える企業も存在する。
平成22年10月に、ヘラクレス市場とJASDAQ市場が市場統合され、現在の東証JASDAQ市場となっている。
■今週の新規上場会社
上場・公開日 社名 銘柄コード 市場 公募価格(円)
11月4日 日本郵政 6178 東証 1,400
11月4日 かんぽ生命保険 7181 東証 2,200
11月4日 ゆうちょ銀行 7182 東証 1,450
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