1.役員退職給与の算定方法は平均功績倍率が最も合理的
■事実
・法人の代表者が死亡し、死亡退職金を支払った
・金額は役員退職慰労金規定に基づき、42,000万円。
・金額の算定
最終月額報酬(240万)×役員在任期間(27年)×5×1.3
5…役員倍数
1.3…功労加算
・税務調査で課税庁から42,000万円の一部は不相当に高額な部分の金額として損金算入が否認された
・課税庁が算出した役員退職金相当額は21,708万円
・金額の算定
最終月額報酬(240万)×役員在任期間(27年)×3.35
3.35…同業類似法人の平均功績倍率
■論点
・42,000万円の一部は不相当に高額な部分の金額として損金不算入かどうか
■審判所の判断
・一部は不相当に高額な部分の金額として損金算入できない
・相当額の計算に平均功績倍率法を用いることは合理的である
・同業類似法人の選定基準が合理的であれば平均功績倍率も合理的に算定されているといえる
2.組織再編税制関係の改正
■共同事業を行うための新設合併等における適格要件のうち株式継続保有要件について
・現行法
⇒被合併法人等の株主50人以上の場合は免除
⇒実務上は、当事者の一方の株主が50人未満の場合には株式継続保有要件を課す安全策が行われていた
・改正法
⇒それぞれの法人ごとに継続保有要件の適用有無を判定すればよいことが明確化
■共同事業を行うための株式交換・移転に係る適格要件のうち役員継続要件について
・現行法
⇒特定役員の全てが退任しないものとする(1人でも退任した場合は要件を満たさない)
・改正法
⇒特定役員の全てが退任しない限り要件を満たすこととする
■株主50人以上の場合の適格株式交換・移転の親法人が取得する子法人株式の株価
・現行法
⇒株式交換・移転直前の簿価純資産(場合によっては仮決算して評価が必要となっていた)
・改正法
⇒株式交換・移転直前の申告における簿価純資産
■株式交換・移転後の二次再編における事業継続要件について
・現行法
【二次再編のないケース】
⇒親法人事業と関連する事業の継続
【二次再編のあるケース】
⇒条文から、すべての事業の継続が求められるとの解釈が存在
(子法人で親法人事業に関係ない事業の廃止ができない)
・改正法
⇒二次再編のあるケースでも親法人事業と関連する事業の継続が見込まれている限り要件を満たす
3.IBM事件確定で、132条の適用拡大も
・法人税法132条の適用を巡るIBM事件で最高裁は、国の上告受理申立てを不受理に!
⇒IBM側の勝訴が確定した
・ただし高裁では「正当な理由・事業目的があったとしても、経済的合理性を欠けば132条の対象」とする国の主張が全面的に認められた。
⇒132条の対象となる範囲が著しく拡大される懸念も
4.登録国外事業者の請求書記載内容に注意
■復習/消費税:電気通信利用役務の提供
(1)事業者向け取引の場合
…国内事業者に対し、リバースチャージ方式で納付
(2)消費者向け取引の場合
…国外事業者に対し、申告納税方式で納付
⇒(2)のうち国外事業者が「登録国外事業者」である場合のみ、一定の事項が請求書に記載されていれば仕入税額控除の対象
■国外事業者の請求書
…国外登録事業者が発行する請求書に不備が散見されている
「登録番号」や「外税による消費税額」の記載はあるが、「課税資産の譲渡等を行った者が消費税を納める義務がある旨」が記載がされていないケースが目立つ
⇒上記の場合、仕入税額控除が認められない可能性が高いため、請求書等の再発行の依頼をする必要がある
5.会計方針の変更のみ比較情報に遡及適用
■「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下、適用指針)の適用に伴い、会計基準等の改正に伴う「会計方針の変更」として取り扱うのは、以下の3つのケース
(1) 分類2に該当する企業において、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性について合理的に説明できるため、回収可能性ありと判断する場合
(2) 分類3に該当する企業において、5年を超える見積期間においてスケジューリングされた将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性について合理的に説明できるため、回収可能性ありと判断する場合
(3) 分類4の要件に該当する企業において、5年を超える見積期間において一時差異等減算前課税所得が安定的に生じることを合理的に説明できるため、分類2に該当する企業として取り扱う場合
■平成28年3月期より早期適用した場合、翌年度の四半期財務諸表において、
比較情報について適用指針を期首に遡って適用する。(適用指針49項(2))
⇒ 期首に遡って適用するのは、「会計方針の変更」に関する規定のみか、それともすべての規定か取り扱いが不明
⇒ 企業会計基準委員会は、「会計方針の変更」に関する規定のみと判断し明記する方針。
6.中国出資持分の譲渡をめぐる外国税額控除の適用で企業敗訴
■概要
・日本法人が中国子法人の出資持分を台湾法人へに譲渡。(×2年7月)
・日本法人は中国の法令により上記出資持分の譲渡につき、中国企業所得税の納付義務が発生。
・×2年12月に中国子会社へ送金。
・中国子法人は×4年1月に申告納付した。
・日本法人は×3年2月期に「外国税額控除」を適用したが否認された
■争点
租税債務の確定時期はいつになるか
■日本法人の主張
外国税額控除の適用要件である「納付することとなる事業年度で適用」と主張
■裁判所の判断
中国の税収徴収管理法の規定に踏まえ、租税債務の確定時期は申告時又は税務機関による納税額の査定時が相当。
中国子法人が申告納付したのは×4年1月であるため、外国税額控除の適用は翌年×4年2月期において認められると判断し、×3年2月期では適用できないと判決を下した。
7.中国企業所得税
・中国居住企業
⇒中国国内、国外の源泉所得について基本税率25%がかかる
・非居住企業
⇒中国国内の源泉所得について優遇税率10%がかかる
⇒源泉徴収の方法により納付
8.所得税:国外転出時課税と納税管理人
■時価1億円以上の有価証券等を有する個人が国外転出する場合の確定申告
(1)原則
転出日までに準確定申告を行う
(2)特例
納税管理人の届出をしている場合は翌年3月15日までに確定申告を行う
■納税猶予制度のポイント
(1)国外転出の時までに納税管理人の届出が必要
(2)納税猶予期間中は各年12月31日までに「継続適用届出書」が必要
【まとめ】
⇒納税管理人がいない場合は転出時に申告&納税が必要となる
9.判例:デラウェア州LPSの最高裁判決の要旨、射程
■概要
米デラウェア州法上のLPSに出資した個人(日本居住者)の所得税申告にあたり、LPSに生じた損失の通算が可能か争われた。
(当該LPSがパススルー事業体に該当するか、法人課税事業体に該当するか)
■判決および判断基準 (H27.7.17最高裁判決)
当該LPSは日本税制上の法人に該当し、パススルーは認められない。
まず下記(1)により判断され、(1)で判断できない時は(2)で判断する。
※本件においては(2)の基準により法人に該当すると判断された。
(1)現地法令において日本の法人に相当する法的地位が明確に付与されているか
(2)法令の規定や趣旨から、その組織体が法律行為の当事者となることができ、その法律効果が帰属すると認められるか否か
■本判例の射程
最高裁が示した判断基準に鑑みれば、本件は外国事業体一般の法人該当性について普遍的に判断したものと考えるのが自然。
一方で、本判決の判断基準は外国事業体が租税回避取引に利用された場合等に限定的に適用されると主張する法学者の解説も散見される。
10.東芝の不正を受けた各団体の見解
JICPA
・職業的懐疑心の保持・発揮には、適切な監査期間・時間の確保が必要。
監査期間・時間を増加させることで、監査の信頼性を確保できる。
・諸外国の状況を比較して、日本の監査期間は非常に短い。
経団連
・東芝の事案は監査人の思い込みによる見過ごしが原因であり、監査時間の問題とは全く関係ない。
・JICPAは監査時間の短さを主張する前に、監査法人がどれだけIT化などによる監査の効率化に取り組んで来たのかを省みるべき。
11.社外役員の兼務
・東証のコーポレートガバナンスコードでは、「2人以上の社外役員選任」「兼務は義務を果たせる合理的な範囲」と規程。
・日経平均株価採用の225社のうち71社が兼務について制限を設定。
第一三共:兼任禁止
日立:自社以外に4社まで
スズキ:取締役会の事前承認が必要
・15年度に東証1部上場で社外役員を務める人は897人。
うち、60人あまりが4社以上を兼務
・社外役員の報酬は年700万~1,000万で上昇傾向 争奪戦が過熱
・英資産運用大手LGIMなど
「17年6月末までに社外役員が3分の1に達しない企業には株主総会議案に反対票を入れる」
12.子会社上場時の親会社からの独立性
(1)上場審査に関する取扱い
子会社上場においては、通常の審査項目に加えて、親会社等(注)からの独立性確保の状況について、以下の4項目に適合しているか否かを確認する。
確認趣旨としては、親会社の利益を優先させ、申請会社(子会社)の株主(親会社以外の株主)の利益が阻害される危険性がないかを確認するため。
(注)親会社等には、以下の会社が含まれる。
⇒申請会社を支配している親会社
⇒申請会社が他の会社の関連会社である場合の当該他の会社
1.申請会社または親会社等が一方の不利益となる取引行為を強制し、または誘引していないこと
2.申請会社と親会社等の間で、通常の取引条件と著しく異なる条件で、営業取引を行っていないこと
3.申請会社が事実上、親会社等の一部門と認められないこと
⇒営業活動を申請会社自ら行っているか、事業活動が親会社等に大きく依存していないか
4.親会社等の企業内容開示の状況
⇒親会社等が未上場会社である場合、「親会社等状況報告書(親会社等のF/Sや事業報告)」等の開示が求められる。
13.今週の新規上場会社
上場・公開日 社名 銘柄コード 市場 公募価格(円)
3月2日 バリューゴルフ 3931 マザ 1,280
3月3日 中本バックス 7811 2部 1,470
3月4日 ヨシムラ・フードHD 2884 マザ 880
(バリューゴルフ)
業種:情報・通信業
事業内容:ゴルフ事業(「1人予約ランド」の運営等のASPサービス、ゴルフ情報誌「月刊バリューゴルフ」の発行等の広告・プロモーションサービス、サポートサービス)、広告メディア制作事業、メディカル事業
主幹事:東海東京証券
監査法人:あずさ
(中本バックス)
業種:その他製品
事業内容:グラビア印刷加工、ドライラミネート加工、コーティング加工及び成型加工による製造販売
主幹事:野村證券
監査法人:新日本
(ヨシムラ・フードHD)
業種:食料品
事業内容:食料品等の製造・販売業を行うグループ会社の経営管理及びそれに付帯する業務
主幹事:大和証券
監査法人:トーマツ
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