2016年2月28日日曜日

2/26 勉強会:法人税:譲渡制限付株式が事前確定届出給与に 他

1.資産運用巡る和解金を一時所得と認めず
■事例
・納税者が外国金融機関に資産運用を委託
MMFなどの一定の利回りが約束されているもので運用を指定
・金融機関の担当者の判断でFXやレバレッジ取引をし損失を出した
・金融機関が納税者に和解金を支払った
⇒この和解金の所得区分は何かで争われた

■納税者
・一時所得
・不法行為で発生した損害に対する元本補てん、損害賠償、慰謝料と利益補てんの趣旨を含んだ紛争解決金
・いずれの所得区分にも当てはまらないため「一時所得」

■課税庁
・雑所得
・運用元本の実補てん分を超える部分は雑所得

■審判所
・雑所得
・和解金は元本補てんと当初の運用方法で獲られたであろう利益を補てんする損害賠償金としてみるのが合理的
・上記を踏まえると、利益補てん部分は営利目的で継続的な資産運用により得られた利益のため一時所得にはなじまない
・雑所得に該当


2.国外転出時課税制度の改正
■制度概要
時価1億円以上の有価証券等を所有している場合に、以下の3パターンのタイミングで、含み益に対して所得税が課税される。
1.国外転出する時
2.非居住者へ有価証券を贈与する時
3.死亡により非居住者が有価証券を相続・遺贈により取得する時

■改正項目⇒制度の問題点の見直しや取扱いの明確化
1.非居住者が、未分割のため法定相続分で準確定申告した後、遺産分割協議の成立で更正の請求ができる事の明確化(増額の場合は修正申告)
2.納税猶予の期限の満了に伴う納期限の見直し
3.国外転出時に確定申告をしていない場合等の取得価額の洗替えの適用除外
4.ストックオプションに係る国外転出時課税制度の適用除外
5.国外転出時課税により譲渡損失が生じた場合の損益通算及び繰越控除の適用
6.国外転出後に同一銘柄の有価証券等を取得している場合の取扱いの明確化
7.NISA口座内の上場株式等が国外転出時課税の対象となる場合の時価評価日の見直し


3.監査契約時には名簿」への事前登録が必須
・会計士協会の上場会社監査事務所登録制度(※)
⇒会計監査人は上場会社と監査契約を締結する際には準登録事務所名簿への登録が必須
■従来
・事前登録が可能(事後申請が可能であった)
■会計士協会の会則等の変更後
・事前登録が必要
準登録事務所名簿への登録が遅れて会計監査人が辞任したケースもあり。

※上場会社の監査を行うには登録が必須


4.父が子名義で自動車購入も贈与の事実なし
父が子名義で自動車を購入した件について、贈与に該当するかどうかが争われた事例
■関係法令
・相続税法基本通達9-9
 財産の名義変更があった場合、(中略)原則として贈与として取り扱う

■基礎事実
・自動車購入の金銭負担は父
・子名義で購入した場合、割引が約12万円適用された
・父と子は別居しており、その間父が車を保管
・子は当該自動車を3回程度のみ運転
・保有中の必要経費は全て父負担
・後日、父判断で車を売却し、売却代金で新車を父名義で購入

■審判所の判断
・父は合理的な理由により子名義で購入しただけである
・当該車両の購入前後で子の生活環境等の変化はみられない
・子が車両の選定や購入手続きに関与した様子もない

⇒通達に基づけば、原則贈与として扱うべきものであるが、本件は贈与事実が認められないため贈与とはならない


5.ストック・ユニット転換による株式報酬の収入すべき日は?
■納税者が米国親会社から付与されたストック・ユニット(株式報酬制度)により取得した株式について、給与の収入を認識すべきタイミングはいつか?
⇒株式転換日、又は、譲渡制限解除日

■納税者の主張 ⇒ 譲渡制限解除日 
・譲渡制限解除日以降、株式を譲渡できるようになる。
・譲渡できるようになって初めて、経済的利益をもたらす株式を取得したと言える。

■裁判所の判断 ⇒ 株式転換日
・譲渡制限はあくまで人に対する制限
 (譲渡制限が解除されたからといって、株式そのものの権利内容は変わらない)
・譲渡制限が付されていたとしても、取得した株式には経済的価値あり


6.「収入すべき日」とは
・税法上の収益の認識基準であり、ある収入がどの年に帰属されるのか判断基準となる考え方。
・現実に収入がなくても、収入の原因となる権利が確定した場合に収益計上。
(主な収入すべき日の例)
・譲渡資産の引き渡しがあった日
・契約により不動産賃料の支払いが定められた日
 契約上⇒H27.12.26に支払をうける。
 実際に受けた日⇒H28.1.5
 収入すべき日はH27.12.26であり、H27年の収入となる


7.「雑誌」も軽減税率対象、内容は問わず
・下記内容を満たすものは、消費税軽減税率対象(8%)
 (1)週二回以上発行
 (2)定期購読物
 (3)紙媒体
・内容は問われない(スポーツ新聞、ファッション雑誌などでもOK)
・駅などの売店購入は対象外(定期購読でないため)
・電子版は対象外
 ※紙媒体と電子版の料金を一本で支払っている場合は、紙媒体の費用部分だけが軽減対象


8.消費税2以上の相続人が事業を分割して相続した場合の納税義務
⇒分割して相続した事業場ごとの課税売上高をベースに判定する
(設例)
被相続人 甲
H25 食料品小売業 売上1億⇒年末に廃業
H26 商業ビルA 売上2,000
    商業ビルB 売上800
H27 相続発生

商業ビルAを長男乙、商業ビルBを次男丙が相続した場合の納税義務はどうなるか?

H27年の納税義務
前々年の甲の課税売上で判定するが、食料品小売業を相続した相続人はいないため納税義務なし

H28年の納税義務
長男乙 商業ビルAの売上が1,000万超のため納税義務あり
長男丙 商業ビルBの売上が1,000万以下のため納税義務なし


9.法人税:譲渡制限付株式が事前確定届出給与に
役員給与の損金不算入制度の改正により、譲渡制限付株式(リストリクテッドストック)が事前確定届出給与として損金算入可能となる。

28.4.1以降に交付決議されたものが対象。
・「事前の届出が不要な」事前確定届出給与として損金算入が認められることとなる。
・損金算入のタイミングは譲渡制限が解除されたとき。(=給与課税時)


10.電子申告子記録債権を利用した取引
・従来の手形債権に代わるもの
 ⇒手形作成コストや盗難・紛失リスクを低減できる
・電子記録債権は電子債権記録機関の記録原簿への発生登録や譲渡記録等を行うことで効力発生
・保証記録を行うことで電子記録保証ができ、手形裏書のようなことができる。
・処理は手形と似たような処理を行う


11.実地棚卸のポイント
1. 実地棚卸が効率的に出来ない要因
(1) 整理整頓が出来ていない。
(2) 棚卸当日に入出庫がある。
(3) 全社的な統一ルールがない。
(4) 担当者が棚卸の重要性を理解していない。
(5) 棚卸資産、固定資産、消耗品等の区分が出来ていない。

2. 実地棚卸を効率的に実施する方法
(1) 常日頃から整理整頓を心掛ける。
※事前に倉庫等のレイアウト図を作成しておくことが望ましい。
(2) 入出庫の期限を設ける。
(3) 全社的なルールを統一する。
(4) 棚卸の重要性について、担当者に事前に説明し、理解させる。
(5) 棚卸対象を事前に明確化しておく。


12.高額資産を取得した場合の消費税の課税強化
■概要
 ・平成2841日以後の高額資産の仕入等を行った場合
  (支払対価の額が税抜1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産)
 ・仕入等を行った時から3年間、以下の適用は受けられない
   ・事業者免税点制度
   ・簡易課税制度
 ・平成271231日までに締結した契約に基づくものは除かれる

 ※自家建設の場合は、建設等に要した費用が税抜1000万円以上となってから3年間同様の取扱い


13.効率的な実地棚卸の業種別ポイント
【製造業】
 ・仕掛品
  ⇒ある程度割り切った進捗率とすることも検討する
(過去の実績に基づき、ここまで終わっていたら何%などのルールで把握するなど)
 ・少額部品
  ⇒ネジなどは11本数えられないので、重量を測り、数量を推計する
 ・缶などに入っている塗料
  ⇒ふたを開けていれば半分残っているとみなしてしまうなどとし時間を削減する

【小売業】
 ・棚が多い
  ⇒2重カウントやカウント漏れのないよう、棚のカウントの順序のルールを決めておく
 ・特売品売り場がある
  ⇒特売品売り場は空箱を使用していたりするので、棚卸のルールを明確にしておく
 ・バックヤードに棚卸資産を保管している
  ⇒カウント漏れのないよう、バックヤードの棚卸資産の置き場のルールを決めておく

【卸売業】
 ・アイテム数が多い
  ⇒普段から置き場をきちんと決めて保管する
 ・トラックなどに棚卸資産がある
  ⇒ルールを決め、カウント漏れがないようにする
 ・外部倉庫が存在する
  ⇒カウント漏れや在庫証明の入手漏れがないようにする


14.CG対応で感じる疑問
CGと内部統制って何が違うのか
(1) 株式会社の存続には3つの要素が欠かせない
・株主との対話
・会社内部の仕組み
・その他ステークホルダーとの協働
(2)CG
3要素を全て対象
・一般に執行者以上の監督・執行体制を対象にする
(3)内部統制
2つ目の会社内部の仕組みを対象
・執行者以下の組織体制を対象に議論されるケースが多い

→内部統制の限界(経営者不正)をCGで補う

■「攻め」と「ガバナンス」がどうして結びつくのか
(1) 一見、相反するかに見える「攻め」と「ガバナンス」を結びつけるために必要な2つの補助線
・社外取締役
・株主との対話
(2) 社外取締役
・社外取締役の参加により、透明・公正な意思決定の確保で、執行者は迅速・果断な意思決定ができる
(3) 株主との対話
・例えば長期的かつ企業価値重視の期間投資家とROE等の改善に関する対話を行えば持続的な成長と中長期的な企業価値向上につながると期待される

→目指すところは「適切なリスクテイクを促すしくみ」
 そのために「他社の視点」の導入が求められる


15.自動車税 初年度免除を検討
・消費税率の引き上げに合わせて、20174月以降、普通車を買った消費者は初年度の自動車税を免除する案が浮上。
・課税総額は、年約500億円。
6月に購入すると、7月~翌3月の月割で自動車税が免除される。
・年度当初に購入するほど有利になるため、3月は購入する人が減る、などの影響が考えられ、今後慎重に検討する。
2017年だけで見れば駆け込み購入の反動減を和らげると思われる)


16.管理部門のアウトソーシング
(1)経営の中枢に関する機能
上場審査上、業務の一部をアウトソーシングすることは原則として問題ない。

ただし、経理機能のアウトソーシングにより本来会社が有しているべき管理会計の機能が失われないようにする必要がある。
例えば、各種経営分析資料の提出や原価削減プランの提案など。

(2)責任者によるコントロール
少なくとも1人は責任者を社内に置き、その責任のもとに、必要に応じて一部業務をアウトソーシングすることが必要である。

(3)インサイダー情報の管理
アウトソーシング先と機密保持契約を締結する、受渡しする情報を厳密に管理する等、インサイダー情報を管理する体制を整えることが必要である。

(4)財務報告に係る内部統制の評価との関係
財務報告に対して重要な影響を及ぼすアウトソーシングは、内部統制の評価の対象とすることとされている。

例えば、財務諸表や開示事項の作成の基礎となる取引の承認、実行、計算、集計、記録等に関するものは、財務報告の信頼性に影響を及ぼすため、これらのうち重要なものについては、受託会社の統制状況の情報を把握するなど内部統制の評価対象とする必要がある。

税金計算あるいは連結財務諸表の作成等を監査人以外の公認会計士や税理士を利用している場合、外部の専門家の能力を合わせて内部統制の評価の対象とできる場合もある。


17.今週の新規上場会社
上場・公開日    社名             銘柄コード 市場  公募価格(円)
224         はてな             3930      マザ  800

(はてな)
業種:情報・通信業
事業内容:UGC サービス事業
(ソーシャルブックマーク「はてなブックマーク」、
ブログ「はてなブログ」などの開発運営及び、
法人向けコンテンツマーケティングサービス、
テクノロジーソリューションサービス)
主幹事:SMBC日興証券

監査法人:あずさ












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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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