2016年4月2日土曜日

4/1 勉強会:3月決算法人のための法人税の間違えやすいポイント 他

1.改装部分の除却損めぐり全部取消裁決
・賃借建物の改装工事費(資産計上した部分)の除却損はどの事業年度で損金算入するのが正しいかが争われた事例

・改装工事にかかる所有権が賃借建物と別個の造作なら所有権は賃借人にあることになる
・オーナーチェンジで賃借建物を使用できなくなった場合、除却損は使用できなくなった日(オーナーチェンジがあったとき)を含む事業年度に損金算入することになる

・オーナーチェンジがあったときは、引き続き使用できるかどうかが判断の基準となる


2.3月決算法人のための法人税の間違えやすいポイント
■特定同族会社の株主判定(留保金課税)
・判定となる株主等には、株主等と特殊の関係のある個人および法人も含まれる
⇒特殊の関係とは
個人については
1.親族
2.事実婚にある者
3.使用人
法人については、
1.株主等の1人が支配している法人
2.株主等の1人と1.の会社が支配している法人

■公益法人等の資本金は基本財産で判定せず
・公益法人等の中小法人特例を受ける資本金の額は、基本財産ではない
⇒「(期末総資産簿価-総負債簿価-当期利益(又は+当期欠損金))×60%」にて判定

■公社債投資信託等に該当するファンドの受取配当等は益金不算入の対象外
例えば以下は益金不算入の対象外
・公社債投資信託(MMF含む)
・特定外貨建等証券投資信託の収益の分配
⇒アルファベットやカタカナのファンド名の銘柄は注意。

■建物の増築等の場合は定額法しか適用できず
・平成1041日以後に取得した建物は定額法のみ
・平成1041日以前に取得した建物への増築等は、新規取得になるため定額法のみ。

■中小企業等投資促進税制の留意事項
・税額控除は資本金の額が3,000万円以下の法人が対象
・大規模法人の子会社は対象外
・医療機器は税制対象外

■大法人の100%子会社等で受けられない中小企業向け特例措置
1.貸引の繰入れ
2.欠損金等の控除限度額の縮減の不適用
3.法人税の軽減税率
4.特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用
5.貸引の法定繰入率の選択
6.交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
7.欠損金の繰戻しによる還付制度
※大法人とは、資本金の額が5億円以上の法人又は相互会社等


3.3月期は金利スワップの特例処理が可能
■借入金の変動金利について金銭消費貸借契約にマイナス金利を想定した明示の定めがない場合に「ゼロ」を下限とすると解釈した場合
・変動金利に関するCFを固定化するため、金利スワップ契約を締結
金利スワップの特例処理の適用を継続できるのか?(基準ではマイナス金利は想定されていない)
⇒借入金の支払利息額(ゼロ)と金利スワップにおける変動金利相当額の差額は僅少と考えられる
 よってH283月期では特例処理の継続は可能

※金利スワップとは?
異なる種類の金利間で受払条件を変換することを目的として利用される取引。
よって、固定金利支払・変動金利受取の金利スワップを利用すれば、変動金利の借入金について、その利息負担を固定金利の借入金に係るものと同等のものに変えることが可能。

※金利スワップの特例処理とは?
要件を満たす場合には金利スワップを時価評価せず、金銭の受払の純額等をヘッジ対象である資産又は負債の利息に加減して処理することができる。


4.社外取ゼロならDO保険料に給与課税
D&O保険(復習)
・役員の不法行為や重過失の結果、取引先や従業員などに損害を与えた場合の訴訟をカバーする保険
・普通保険特約と株主代表訴訟補填特約に分けられる

■通達(復習)
・株主代表訴訟特約の会社負担分は、従来給与課税としていたが、
 (1)取締役会の承認
 (2)社外取締役が過半数である委員会の同意or社外取締役全員の同意
 上記2点の条件を満たした場合に給与課税を免除

■追加情報
(2)の条件を満たすためには、社外取締役がいることが必須となる
⇒社外取締役のいない未上場会社では(2)の条件を満たせないため、給与課税の免除を受けることが出来ない

・株式会社ではない法人(一般社団法人等)においては、給与課税免除の取扱いは適用されない


5.恒久的施設帰属所得
■恒久的施設(Permanent Establishment、以下PE)とは
 非居住者又は外国法人が日本国内において事業を行う一定の場所等(支店、工場等)
⇒ 非居住者及び外国法人がPEを保有する場合、これに関連する国内源泉所得について課税

PEに関連する国内源泉所得の範囲について
・従来(総合主義)
PEが国内で獲得した所得のみ対象

・平成2841日以後開始する事業年度以降(帰属主義)
PEが国内で獲得した所得のみならず、国外で獲得した所得も含めて対象
⇒ 国内外問わず、PEに帰属する所得が対象(恒久的施設帰属所得)


6.軽減税率対策補助金は免税事業者も対象に
消費税の軽減税率制度に対応するために、中小企業等が複数の税率に対応するレジを導入した場合に、「軽減税率対策補助金」が交付されることとなる。

■概要
・中小企業等を対象
⇒小売業であれば資本金5,000万円以下又は従業者数50人以下の会社
1台あたり最大20万円の補助金が申請可能
・課税事業者のみならず免税事業者も適用対象
H28年度税制設立後、すぐに補助金の申請受付可能。

■複数税率対応レジを導入する場合
・対象者:複数税率に対応して区分経理を行う中小事業者
・補助対象:レジ・タブレットの導入費用等
・補助率:対象費用の2/3(原則)
・補助上限:1台あたり最大20万円

■受発注システムの改修等を行う場合
・対象者:電子的に受発注を行うシステムの改修等を行う中小事業者
・補助対象:受発注に必要となる商品マスタの改修や入替費用
・補助率:改修や入替費用の2/3(原則)
・補助上限:小売業者等の発注システム⇒1,000万円
        卸売業者等の受注システム⇒150万円


7.所有権移転外ファイナンス・リース取引において賃借人が賃貸借処理した場合の消費税の取扱いついて
■所有権移転外ファイナンス・リース取引
⇒消費税
 -原則:一括控除(リース取引時に全額仕入税額控除)
 -例外:分割控除(リース料支払時に都度仕入税額控除)
※例外は、法人税法上の賃貸借処理を選択している場合に適用可能

QA
①リース資産ごとに一括控除と分割控除を併用することの可否
・資産計上のリース取引と、賃貸借処理のリース取引が混在している場合、一括控除と分割控除の併用は可能か?
⇒可能(資産ごとに異なる処理できる)

②仕入税額控除の時期を変更することの可否
・賃貸借処理のリース取引について、1期目は分割控除、2期目にリース料残高について一括控除は可能か?
⇒不可能

③賃貸借処理に基づいて仕入税額控除した場合の更生の請求の可否
・賃貸借処理のリース取引について、当初分割控除していて、後日一括控除に更生請求できるか?
⇒不可能

④簡易課税から原則課税に移行した場合等に取扱い
1期目:簡易課税(or免税)2期目:原則課税(課税事業者)の場合、1期目のリース取引(賃貸借処理)について、2期目から分割控除は可能か?
⇒可能(2期目から仕入税額控除の対象できる)


8.消費税:登録国外事業者からの請求書の記載事項
■国外事業者から受ける「消費者向け電気通信利用役務の提供」
原則:仕入税額控除不可
特例:「登録国外事業者」から受けた場合は仕入税額控除可

■請求書の記載事項
税額控除を受ける場合「国外事業者が消費税を納める旨」が請求書に記載されていなければならない(+登録番号の記載が必要)
(例)「日本の消費税は登録国外事業者である当方が申告納税します」といった記載など

ただし、記載がない場合であっても、請求金額に消費税額が記載されていれば「国外事業者が消費税を納める旨」が記載されているものと認められる模様。


9.所得税:28年度改正 通勤手当の非課税限度額引上げ
公共交通機関で通勤する場合の通勤手当の非課税限度額が、現行の10万円から15万円に引き上げられる。
平成2811日以後に受けるべき通勤手当から適用される。

1/1~改正までの期間の源泉徴収は結果的に過大徴収となるため、年末調整で調整する。

※自家用車等で通勤する場合の距離に応じた非課税枠については、拡大されず現行どおり。
こちらはH26年に拡大された。


10.税制改正対応 減価償却方法の変更の取り扱いを検討
・平成28年度税制改正で今年の4/1以降に取得する建物附属設備・構築物の減価償却方法は定額法のみとなる(定率法は廃止)
・税制改正による償却方法の変更が
■修正後
 「正当な理由に基づく会計方針の変更に該当するか否か」
 該当する ⇒過年度遡及処理する(経過措置ある場合は期首利益剰余金で処理)
 該当しない⇒見積もりの変更⇒過年度遡及処理不要


11.平成27年度改正以外のまとめ(法人税関連)
1. 寄付金
・法人税法上の寄付金の範囲 > 一般的な寄付金の範囲
・寄付金は5つの区分に分類
⇒ 区分によって損金算入限度額が異なる

2. 外国税額控除
・外国税額控除の対象となる外国税額かの確認
・租税条約の限度税率の範囲内でしか税額控除できない。

3. 生産性向上設備投資促進税制
A類型の適用 ⇒ 工業会等が発行する証明書の入手が必要
B類型の適用 ⇒ 経済産業省が発行する確認書の入手が必要

※類型の種類
A類型 … 先端設備
B類型 … 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備

4. 交際費
・交際費から除かれる5千円/1人以下の飲食費
⇒ 対象となるか、また、書類の保存に注意
・中小法人の特例
⇒ 年間800万、または接待飲食費の50%まで損金算入を選択適用

5. 役員給与
・損金算入出来るケースは、定期同額、事前確認届出給与、利益連動型給与


12.ポイント引当金の会計処理上の留意点
■ポイント発生の原因となる取引をどのようにとらえるか
 ・ポイント発生の原因となる取引(商品の引き渡し)
 ・ポイント付与により将来商品又はサービスと交換する
  ⇒この2点をどのようにとらえるか
 ・別個の独立した取引と考える……ポイント部分を売上から減額する余地がある
                     現金 100/売上   90
                          /繰延収益 10
 ・販売促進活動と考える……引当金を計上。費用は販管費(※下記で詳細)

■販売促進活動ととらえる場合(将来のポイント消費の対価)
 ・将来、売上値引を行う義務……ポイント引当額は売価をベースに計算
 ・将来、物品・サービスを提供する義務……ポイント引当額は原価をベースに計算


13.連結納税グループ内の組織再編
・連結納税グループ内で、連結子法人同士が適格合併した場合、下記に留意が必要。
①被合併法人の投資簿価は修正「しない」
 →通常、連結子法人の株式を譲渡する場合は、「子法人の損益」と「株式譲渡損益」が二重課税または二重控除にならないよう、投資簿価の修正が行われる。
 →連結子法人同士の合併では、連結納税グループ内の出来事であるため、投資簿価の修正はない。
②連結子法人同士なので、法人税の連結欠損金個別帰属額は引き継げる
 →そもそも、連結納税に入る時点で厳しく切り捨て等されているため。
③グループ化して間もない連結子法人の資産が含み損を抱えている場合、その譲渡損失は損金不算入。
 これは連結子法人同士で合併した後も同様となる。


14.リスク情報
新規上場会社及び上場会社に関わる、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載したもので、新規上場会社では目論見書や有価証券届出書で「事業等のリスク」として開示する。

(1)開示する具体的な記載内容
・会社グループがとっている特異な経営方針に係るもの
・財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動に係るもの
・特定の取引先等で取引の継続性が不安定であるものへの高い依存度に係るもの
・特定の製品、技術等で将来性が不明確であるものへの高い依存度に係るもの
・特有の取引慣行に基づく取引に関する損害に係るもの
・新製品及び新技術に係る長い企業化及び商品化期間に係るもの
・特有の法的規制等に係るもの
・重要な訴訟事件等の発生に係るもの
・役員、従業員、大株主、関係会社等に関する重要事項に係るもの
・会社との役員または議決権の過半数を実質的に所有している株主との間の重要な取引関係に係るもの

(2)上場後の開示対応
継続開示会社においても有価証券報告書上で「事業等のリスク」として、リスク情報を記載することが義務づけられている。


15.今週の新規上場会社
上場・公開日/社名/銘柄コード/市場/公募価格(円)
331日 エボラブルアジア/6191/マザ/1,800
331 PR TIMES/3922/マザ/1,340

(エボラブルアジア)
業種:サービス業
事業内容:主に国内航空券のインターネット販売に特化したオンライン旅行事業、訪日旅行事業、アジアでIT開発を行うITオフショア開発事業
主幹事:SBI証券
監査法人:三優

PR TIMES
業種:情報・通信業
事業内容:プレスリリース配信サイト「PR TIMES」の運営等
主幹事:SBI証券

監査法人:東陽








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