2016年4月30日土曜日

4/28 勉強会:熊本地震に関する義援金の税務上の取扱いが明らかに 他

1.資本金額の説明義務違反で税理士が敗訴
・個人事業主⇒法人成りの手続きで
 税理士が資本金を1,000万円未満で設立するように説明、指導する義務を怠ったとして損害賠償請求をしていた事件
・資本金1億円超で設立したため下記に該当した
 設立1期目、2期目が消費税の課税事業者
 均等割が高額
 交際費が全額損金不算入 など

・地裁の判決
 法人成りは節税の一環
 税理士は資本金によって負担する税金が異なってくる旨の説明義務を怠った
 以上より損害賠償請求を認める判決

・税理士は高裁に控訴していたが、高裁も地裁の判決と同様
 損害賠償を認める判決を下した


2.継続企業の前提の注記が9期連続の企業も
■平成2712月期決算でGC注記
⇒計8

・監査法人 別
 トーマツ…3
 清和…1
 アスカ…1
 その他…4(新日、あずさ、あらたは無し)

・取引市場 別
 東証2部…2
 JASDAQ3
 マザーズ…3

・強調事項 別
 継続的な営業損失(当期純損失)
 継続的な営業損失及び営業CFのマイナス 等
 
・開示企業
 ジオネクスト…9期連続GC注記
 セーラー万年筆…7期連続GC注記 等


3.事業報告等は個別承諾なしで電子提供も
■経産省の研究会が株主総会の招集通知関連書類の電子提供拡大に向けた提言を取りまとめ
(現状)
・招集通知等=株主から事前に個別承諾を得れば、電磁的な提供ができる。
・株主参考書類の一部=定款の定めによりWeb開示を行うことができる。

(新制度)
下記の①~③以外()は、株主の個別承諾がなくとも電子提供できる方向へ
①株主総会の基本的情報、②法令上、株主総会前に提供すべきと規定された情報が掲載されたWebサイトアドレス、③議決権行使書面
※株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類、会計監査報告・監査報告に相当する情報


4.特別寄附金控除(税額控除)
認定NPO法人や、一定の要件を満たす特定公益増進法人に対する個人の寄附が2,000円を超える場合、その超える金額の40%の税額控除を認められるもの。

■一定の要件とは?(特定公益増進法人)
3,000円以上の寄附者が年100人以上or寄附金が法人収入の20%以上

()赤い羽根募金の「中央共同募金会」などが該当

※通常の寄附金控除は税額控除ではなく所得控除。
 通常の寄附金の所得控除と税額控除を比較し、有利な方を選択可能。


5.決算短信見直しは平成293月期から
■金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」が報告書を公表
⇒決算短信、事業報告、有価証券報告書の開示内容の整理・共通化

■決算短信
・短信公表前に監査及び四半期レビューが終了している必要はない旨を明確化
・速報性に着目し、記載内容を削減し、以下に限定
 サマリー情報
 経営成績・財政状態・今後の見通しの概況
 連結財務諸表
 主な注記(GC注記、会計方針の変更、セグメント情報、1株当たり情報)
⇒その他は、企業の任意
・これら見直しの際は、東京証券取引所が上場規則等を改正
・適用は平成293月期から(予定)

■有価証券報告書
・「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」、「ストックオプション制度の内容」
⇒各欄を統合(記載内容が重複しているため)
・「大株主の状況」
⇒発行済株式から自己株式を控除(事業報告との共通化を図るため)
・これら見直しの際は、金融庁が財規等を改正


6.熊本地震に関する義援金の税務上の取扱いが明らかに
■寄付した場合
・熊本県、大分県の災害対策本部や日本赤十字社への義援金
 法人⇒「国等に対する寄付金」に該当し、全額が損金算入可
 個人⇒「寄付金控除」の対象
・被災地域の救援活動等を行っている認定NPO法人に支払った義援金
 法人⇒「特定公益増進法人に対する寄付金」に該当し、損金限度額の範囲内で損金算入可
 個人⇒「寄付金控除」又は「寄付金特別控除(税額控除)」のいずれかの選択適用可

なお上記共に、確定申告時に以下書類等を添付する必要がある。
・熊本県下、大分県下の災害対策本部が発行する受領書
・募金団体の預かり証
・銀行振り込みの際の振込票の控え(義援金の受付専用口座に限る)

■得意先等の取引先への災害見舞金
被災前の取引関係の維持・回復を目的とし、被災した取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間で災害見舞金を支払った
⇒「交際費」に該当せず、損金算入可能

※得意先等の取引先とは、仕入先、下請工場、商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者も含まれる。

■従業員や親族への災害見舞金
・一定の基準(被災した全従業員を対象など)に従って支給する災害見舞金品
 ⇒福利厚生費として全額損金算入可
 ※下請け先の従業員等への災害見舞金品についても損金算入可

■その他
・復旧支援を目的とした売掛金等の債権免除による損失
 ⇒「寄付金」又は「交際費」等以外の費用として損金算入可。

・既契約のリース料、貸付利息の減免も損金算入可。

・取引先に対する低利息又は無利息による融資
 ⇒収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は「寄付金」に該当しない。

・被災者に提供した自社製品
 ⇒不特定多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品の提供費用は、「広告宣伝費」に準ずるものとして損金算入可

上記以外にも納付の延長や税金の軽減・免除の取扱いあり(国税庁HP参照)


7.消費税の軽減税率制度に関するQ&A
Q.軽減税率の対象は?
A.飲食料品(酒類、外食、ケータリング等除く) &2回以上発行される定期購読新聞(売店購入は除く)

Q.一体資産(オマケ付きお菓子等)は対象?
A.資産全体が、税抜き1万円以下、かつ、食品部分が2/3以上占めていれば軽減対象

Q.飲食料品販売時の容器、包装は?
A.通常必要とされる包装材料等は、飲食料品に含めて軽減対象
 贈答用包装など、別途支払が発生するものは、対象外
 食器や装飾品として使用できるものを包装材料としているときは、一体資産として判定

Q.店内飲食、持ち帰り販売の両方を行っている場合は?
A.販売時に顧客に確認し、店内飲食なら対象外、持ち帰りなら軽減

Q.請求書の書き方は?
A.仕入税額控除のためには、「区分記載請求書等」の保存が必要
 今まで請求書に、(1)「軽減対象資産の明記」&(2)「税率毎の金額合計」を追加記載
 仕入先が、上記(1)(2)を記載してくれない場合、購入者が自分で補記してもOK


8.災害時の適時開示
・上場会社の「発生事実」として適時開示が求められている情報に「災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害」がある
4/18までに熊本地震に関する開示件数は145件を数えた
・開示の内容は主に 「人的被害」「建物等の被害」「業績への影響」
・災害等に関する適時開示は、その損害額が連結純資産の3%以上等の数値基準あり


9.税効果会計に適用する税率に関する適用指針
1. 採用する税率
(1) 国税
⇒ 決算日の時点で国会で成立している税率
※従来は、決算日に公布された税率

(2) 地方税
・新税率に関する条例が成立
⇒ 成立した条例の税率
・新税率に関する条例が未成立
⇒ 標準税率適用の場合は、国会で成立した改正地方税法の税率
⇒ 超過税率適用の場合は、標準税率に、従来の標準税率と超過税率の差分を加味した税率

2. 決算日以降に、税率の変更があった場合
⇒ 変更後の税率で、DTADTLを再計算し、注記する。

※財務諸表に反映する必要はなし。


10.雇用促進税制の改正
■平成28年度税制改正による変更点
 ・適用範囲の縮小
 事務所所在地:どこでも可
⇒地域雇用開発促進法に定める一定の地域にある事務所のみ
28道府県102地域が対象(=東京都の企業は実質的に廃止)
 対象とされる雇用者:無期雇用かつフルタイム勤務の雇用者に限られることに

 ・所得拡大促進税制との併用
  同時適用不可⇒同時適用が可能に。

 ・適用期限の延長
 2年延長。201641日~2018331日までに開始する各事業年度に適用


11.ヤフー・IDCF事件最高裁判決にみる実務上の留意点
■ヤフー事件
 ヤフーがデータセンター運営会社IDCSを親会社のソフトバンクから約450億円で取得。
 IDCSの欠損金約540億円を自社の利益と相殺して税務処理しようとしたが、税務当局が認めず追徴課税した。
IDCF事件
 IDCSが新設分割して設立したIDCFが、資産調整勘定を計上してその一部を損金算入したが、税務当局が認めず追徴課税した。
⇒明らかに不自然で税負担の減少を意図して税制を乱用したと結論付けた

■留意点
・アグレッシブな節税を行うよりも、間違いのない税務申告を行えるようにアドバイスをする
・グレーな判断が必要な場合には、より安全なストラクチャーに変更し、租税回避と疑われない対応を行う
・実効税率を大幅に超える税負担率が生じないように、必要十分な節税についてもアドバイスをする


12.連結会社間の外貨建予定取引に係るヘッジの可否
連結会社間取引は連結上、内部取引として消去されることから、個別財務諸表上、存在するヘッジ対象に係るリスクが存在しない
一定の条件を満たせば連結上のヘッジ会計の適用も可能

(1)外貨建ての的確な予定取引
 認められるケース
  為替変動に係るエクスポージャー(※)が連結グループ内においても残り、為替変動リスクを有している場合
 具体的な判断基準
 ・過去に同様の取引が行われた頻度
 ・予定取引を行う能力を有しているか
 ・予定取引を行わないことが不利益をもたらすか
 ・同等の成果・効果をもたらす他の取引がないか
 ・予定取引発生までの期間が妥当か
 ・予定取引数量が妥当か

(※)投資家の持つ金融資産のうち、マーケットの価格変動リスクにさらされている資産の割合

(2)外部取引と内部取引との個別対応が明確
 連結相殺される内部取引が、同じ連結グループ内の一方の外部取引と個別紐付く場合、同じ連結グループ内の他方の会社が内部取引についてヘッジ(A)を行っている時はそのヘッジ(A)手段を連結決算上で外部取引に係るヘッジに改めて指定できる


13.米国会計ASU2016-07の解説
■内容
 段階取得により関連会社とする場合において、(従来の段階法に替えて)一括法を要求
※会計処理方法
 段階法:各段階取得時の取引を別個の取引として、それぞれの取得価格を積み上げる
⇒当初取得時に遡って持分法を適用する
 一括法:各段階取得時において、新たな持分全体の取得価格を算定し直す
⇒持分法を適用する事由の生じた期から持分法を適用する

■公表の背景
 財務諸表作成者の負担軽減策の一環
⇒段階法の場合;
・当初取得時の投資先の資産負債の時価情報を入手しなければならない
・過去の投資先の損益情報を入手しなければならない

■適用時期等
20161216日以降に開始する年度・中間年度より強制適用
早期適用可、なお注記不要

IFRSでの取扱い
具体的に規定なし⇒米基準を参照する⇒実質的に一括法のみ


14.ITを利用した監査の展望(監査の未来予想図)
・監査の変遷
(1)伝統的監査
・精査度合い × (サンプリングによる試査に頼らざるを得ない)
・適時性 △ (決算が締まって、監査して、と時間がかかる)

(2)CAAT(コンピューターを利用)
・精査度合い △ (一定程度精査が可能)
・適時性 △

(3)CA(継続的監査)
・精査度合い ◯
・適時性 ◯

CAとは、被監査会社のシステムからデータがリアルタイムで監査人のサーバに反映され、監査人が予め定めた条件に該当した取引、仕訳等を抽出する、「常時監査」の仕組み。

・コンピューターにより、「常時」「自動で」監査が行われ、監査人は抽出された情報について検討することで、「適時に」「効率的に」監査が可能となる。

・実現に向けての主な課題は、「データの標準化が進むこと」、「CAによる監査が適正な手続きとして国際的に認められるようになること」。

・監査人の仕事は「監査プログラムの適正な設定」「異常値やエラー値が発見された場合の対応」にしぼられる。


15.上場審査とコンプライアンス
(1)経営者の対応
⇒コンプライアンスの意義には、企業倫理を遵守する行動が含まれているため、 従業員の倫理観を高め誠実な行動を促すには、経営者自身の意識が大きく影響する。
⇒業績至上主義の企業文化では、強いプレッシャーが従業員を倫理に反する行動へ走らせてしまう。
⇒経営者はコンプライアンスの意義を正しく理解し、従業員へ浸透させることが重要。

(2)上場審査上の考え方
上場審査においてコンプライアンスそのものを規定している基準はなく、直接的に審査されることはないが、審査側は様々な観点から申請会社のコンプライアンスを評価している。

・法令遵守
⇒会社法、金商法など一連の法律、規制業種における各種法的届出関係など、 法令を遵守することは当然であるが、上場審査ではこのリーガルチェックが強化されている。
・利得行為の排除
⇒会社と役員等である特別利害関係者との取引は、解消することが、上場審査上求められている。
・監査役監査及び内部監査
⇒監査役監査及び内部監査の運用状況と有効性について確認される。
・反社会的勢力の排除
⇒上場審査時に反社会的勢力と関係がないことを示す「確認書」を提出することが義務づけられている。また、反社会的勢力との関係を防止する社内体制についても確認される。
・適時開示体制

⇒情報収集体制や収集した情報を管理する体制が確立され、適時・適切に開示できるかどうかが確認される。









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