2016年4月10日日曜日

4/8 勉強会:減価償却の税制改正で4月中にも対応 他

1.粉飾決算の教唆は不法行為、元親会社らにも損害賠償を命じる
・粉飾決算の事実を知らず、A社の株式を取得した法人が粉飾決算による株価下落分の損害賠償を請求した事例

・法人は、粉飾決算をしていたA社の代表者、A社の元親会社B社とその代表者CA社の粉飾にかかわったとされる取引先法人を訴えていた

・裁判所は、A社の代表者、B社とCの賠償責任を認めた
 ⇒B社はA社に強い影響力を持っており、CA社の代表者に「赤字はダメ、許さない」なとど発言
 ⇒粉飾にかかわったとされる取引先法人については粉飾の意図を認識していないことを理由に賠償責任を否定


2.「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」の改定内容の解説
■以下の理由により改定
20161月に改正法務省令が公布されたため
20163月期に企業結合基準が全面適用になるため

■改定内容その1(Ⅲ計算書類、Ⅳ連結計算書類)
1.企業結合基準全面適用に伴うもの
【連結財務諸表の用語の改定】(改定前⇒後)
・少数株主持分⇒非支配株主持分
・少数株主損益調整前当期純利益⇒当期純利益
・少数株主利益⇒非支配株主に帰属する当期純利益
・当期純利益⇒親会社株主に帰属する当期純利益
・1株当たり当期純利益⇒変更無し

2.その他の改定内容(改定前⇒後)
・会計処理基準⇒会計方針
・退職給付にかかる会計基準変更時差異に関する注記を削除
 (2000年から15年間の償却期間が経過したため)

■改定内容その2(Ⅶ株主総会参考書類)
・社外取締役候補者の要件の改定

【参考:経団連のホームページ】
http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/017.html


3.有価証券報告書の作成・提出に際して留意すべき事項について(平成283月期以降)
■連結財務諸表における科目の表示について
(連結BS
・「少数株主持分」→「非支配株主持分」
(連結PL
・「少数株主損益調整前当期純利益」→「当期純利益」
・「少数株主利益」→「非支配株主に帰属する当期純利益」
・「当期純利益」→「親会社株主に帰属する当期純利益」
(連結包括利益計算書)
・「少数株主損益調整前当期純利益」→「当期純利益」
・「少数株主に係る包括利益」→「非支配株主に係る包括利益」
(連結SS
・「少数株主持分」→「非支配株主持分」
・「当期純利益」→「親会社株主に帰属する当期純利益」
(連結CF
・「少数株主への配当金の支払額」→「非支配株主への配当金の支払額」
■その他の改正
・取得による企業結合が行われた場合の注記
・共通支配下の取引等の注記


4.退職慰労金巡る総会決議取消しを認めず
■概要
・不当に高額な退職慰労金(2,500万円)が株主総会で認められたとして、その他の株主が会社法に基づき取消しを求めていた事例

■株主(保有割合)
A(24.6)兄:死亡した創業者への退職慰労金を半額相続予定
B(34.0)妻:死亡した創業者への退職慰労金を半額相続予定
C(41.4)弟:原告株主
ABが賛成したため2,500万円の退職慰労金の決議が認められた。

■争点
・退職慰労金の金額は過大かどうか?
(1)2,500万円は法人税法上の相当性が認められる範囲内
⇒最終報酬月額×勤続年数×功績倍率=7,540万円

(2)会社の流動性資産6,000万円に対して退職慰労金は42%に相当
⇒退職慰労金の原資のため、以前会社は社債を発行しB()から全額払込を受けている

■結論
・功績倍率法7,540万円の3分の1にも満たず、財務状況や社債の発行状況も考慮すれば、退職慰労金額は過大なものではない
⇒会社の経営に重大な悪影響は及ぼさないため、取消し請求は斥けた


5.減価償却の税制改正で4月中にも対応
■平成28年度税制改正で、建物附属設備及び構築物の償却方法が定額法に一本化
・対象は、平成2841日以後取得したもの
・多くの企業で、会計上の償却方法を定率法⇒定額法へ変更することを検討

■一方、上記変更は「正当な理由による会計方針の変更」として認められない可能性あり
⇒「正当な理由による会計方針の変更」として認められるには、以下の要件を満たすことが必要
・会計方針の変更が企業の事業内容の変更又は企業内外の経営環境の変化に対応して行われている
・会計方針の変更が会計事象をF/Sにより適切に反映するために行われている

■会計(定率法)と税務(定額法)で異なる固定資産管理システムを構築し、二重に管理する必要に迫られる
⇒企業会計基準委員会は、4月中に何らかの対応を図る方向で検討


6.「主たる事業」判定で所得等重視は当然
■事例
A会社の特定外国子会社である統括会社が2以上の事業を営んでいた
・税務当局が「主たる事業」の判定を所得金額に占める割合で判断
・結果、主たる事業=株式保有業と認定
・タックスヘイブン税制の適用対象となる課税処分を受けた

■地裁判決
株式配当による所得金額が大きくても、株式保有以外の実体となる事業活動が現実に行われていることから、事業基準を満たすため適用除外と判断

■高裁判決
統括業務は株式保有事業に含まれる1つの業務であるため株式保有業が独立した別個の業務とはいえないと判断し、税務当局の主張を支持した。

理由として、
会社は営利目的法人であり全事業を含めて利益を上げることを目的としていることから主たる事業の判定にあたって、一部の事業で判定するのでははなく、全事業のために保有している財産の資産総額に占める割合や所得金額を重視する必要があるから


7.公共施設の負担必要なし、広大地通達の適用認めず
(広大地通達)
・広大な土地について、
・経済的に最も合理性のある開発を行うときで、
・公共的施設(道路、公園等)の設置費用が発生するときに、
・土地の相続税評価額を下げることができる特例

(事例)
・広大地に、標準よりも小サイズの分譲住宅(10)を建築
・広大地の中央に位置する1棟は隣接道路なく出入りできないため、通行用道路を設置
・他の9棟は隣接道路あり
・通達を適用できるか?

(裁決)
・近隣地域の住宅販売状況を見ても、標準よりも小サイズにした経済合理性がない
・標準サイズにすれば9棟しか建たないが、すべて道路に隣接する
・通達は適用できない。


8.相続税:包括受遺者と相次相続控除について
■用語補足
包括受遺者…包括遺贈(一定の遺言に基づく遺贈)により相続財産を受け取る者。相続人以外の者でも包括受遺者となれる。民法上、相続人と同様の権利義務を有する。
相次相続控除…被相続人が死亡前10年以内に相続により財産を取得したことがある場合、その財産を取得した相続人に一定額の控除を認める規定。短期間に2度相続税が課される場合の調整規定。

■相続人でない包括受遺者に対する相次相続控除の適用
相続税法第20条(相次相続控除)において、「相続人に対する遺贈」により財産を取得した場合、との規定があり、相続人でない包括受遺者には適用されない。

相続税法第21条の17(相続時精算課税)では「相続人(包括受遺者を含む)」との記載があることから、20条では「相続人」と「包括受遺者」を区分していると考えられる。
したがって、相続人でない者が包括受遺者となる場合には相次相続控除の適用はない。

(留意点)
20条⇒相続人にカッコ書きなし(対象を相続人に限定)
21条⇒相続人にカッコ書きあり(相続人以外も対象)
条文ごとに相続人の範囲が異なるケースがあることに留意する。


9.消費税:登録国外事業者が遡及して発行した請求書の仕入税額控除等
消費者向け電気通信利用役務の提供のうち、「登録国外事業者」から受けた役務の提供については仕入税額控除の対象となる。
新たに登録が完了した事業者から役務提供を受ける場合には、以下の点に留意が必要。

■登録国外事業者である事業者から、登録前に受けた役務提供
 役務提供日が登録日より前である場合には、仕入税額控除は出来ない。

■継続する役務提供の中途で登録された場合
 役務提供期間の終了時に登録が完了している場合には、継続する全体について仕入税額控除ができる。
なお、登録の審査期間は一般的に1ヶ月程度とのこと。


10.圧縮記帳の会計処理
・国庫補助金や工事負担金を受け入れて固定資産を取得した場合
・圧縮記帳により課税の繰延が可能となる。
会計処理
①固定資産の取得価額から直接減額する方法(直接減額方式)
②剰余金の処分方式

①直接減額方式
・会計と税務に差異が生じない=税効果会計に影響なし
PLに影響するので採用する企業は多くない

②剰余金の処分方式
・補助金等の受入額は収益となる。
・会計と税務に差が生じる⇒繰延税金負債を計上することになる


11.招集通知に記載する事項の変更点
1. 会社法施行規則の改正
⇒招集通知の事業報告、株主総会参考書類の記載事項に変更点や検討すべき事項あり

2. 変更、検討内容
(1) 事業報告
・内部統制システムの運用状況の概要の追加
※運用状況の評価を記載するのではなく、運用状況を客観的に記載すればよい。
・会計監査人の報酬等について同意した理由の追加
・親会社等、子会社等に関する記載の追加
⇒親会社等との取引が、自社の利益を害するものではない事を記載
・特定完全子会社に関する記載事項の追加
⇒特定完全子会社の名称、及び住所の記載
※特定完全子会社 … 多重代表訴訟の対象となる要件を満たす会社
※多重代表訴訟  … 親会社の株主が、子会社の取締役等に対して責任追及できる代表訴訟
⇒従来は、子会社の株主しか代表訴訟できなかったが、親会社の株主も可能に。

(2) 株主総会参考書類
・定款変更議案
⇒責任限定契約を締結できる役員の範囲が拡大
⇒対象範囲の拡大に伴い、定款の変更を検討する必要がある。
・会計監査人選任議案
⇒従来は、監査役会の同意
⇒改正後は、監査役会が決定
⇒記載内容が、「監査役会の同意を得ている」から、「監査役会が決定している」という内容に変更する必要がある。


12.国税不服申立制度改正の概要と実務上の留意点
■施行日
 201641

■改正の概要
 ・2段階の不服申立前置の見直し
  税務署等→国税不服審判所→裁判所
⇒国税不服審判所→裁判所(税務署を通す必要がなくなった)
 (実務上の留意点)
  改正前も申立後3か月以内に決定が出ない場合は、国税不服審判所に直接審査請求が可能だった
⇒改正により、この3か月を短縮することが可能となった
 税理士等が代理する場合は代理権限証書を添付しなければならない旨が明記された

 ・不服申立期間の延長
  2ヶ月以内 ⇒ 3ヶ月以内
 (実務上の留意点)
  正当な理由があれば1年まで延長可

 ・口頭意見陳述の充実化
  担当審判官や異議審理庁の裁量によって認められていたにすぎなかった
⇒審査請求人に質問権が付与(担当審判官の許可が必要)+口頭意見陳述の場に原処分庁の職員も招集される
 (実務上の留意点)
 再調査の請求における口頭意見陳述:原処分庁の招集や発問権は認められていない

 ・物件の閲覧等についての拡充
  謄写不可(書き写しは可)⇒謄写可
 (実務上の留意点)
  いつ、どのような証拠書類等を提出したかについては、通知する法令規定はない
  請求人側から積極的に担当審判官に証拠書類等の提出の有無について問い合わせをする必要がある


13.賃貸等不動産の時価等の開示における留意点
「自社利用⇒遊休不動産」とした場合の開示における留意事項は?

賃貸等不動産を保有している場合は、賃貸等不動産に関する損益を注記する必要がある。
金額的重要性が乏しい場合を除いて、遊休不動産に対するものも含まれる。
⇒遊休不動産に対する減損損失、減価償却費、修繕費、保険料、租税公課などについて集計する必要がある。


14.株主総会想定問答のポイント
(1)社外取締役の活動状況
社外取締役が実際にどのような活動をしたのか、具体的な内容に対する関心が高まっている
⇒株主と対話という観点からは、正面から回答する姿勢の提示は重要
⇒ただし機密情報も多い為、具体的にどの程度回答するかは検討

(2)会計監査人の再任理由
再任する理由としては
⇒新任の場合は、業務内容に精通していないため、効率的な監査が難しくコスト増になる
⇒監査法人内部での交代により適正な監査が期待できる

(3)取締役の報酬(業績連動型)
経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するような設計を促している
⇒どのような指標に連動させるのか、何を付与するのか、自社の報酬設計に関する方針や内容を回答


15.BEPSプロジェクトとは
201511月、G20サミットでBEPS最終報告書が各国首脳から承認された。
・報告書に法的拘束力はなく、各国への提言にとどまる。

・電子経済の発展で従来の「PEなければ課税せず」は古い考えになりつつある。
・過大な利払いを利用した利益移転が目立つため、所得やグループ外の支払利息を基準として、支払利息の損金算入制限を提言。
・租税条約の利用者に制限をつけることを提言。
・無形資産を「単に持っているだけ」の企業が得る収益は一定の上限を設けるべきと提言。

・国際課税はこれまで「二重課税の排除」が議論の中心だったが、これからは「二重非課税の排除」へ
・各国間の「税の競争」は「税の協調へ」


16.昨年(2015年)新規上場会社の初値(1)と公募価格(2)
(1) 上場以降、初めて株価がついたときの価格
(2) 投資家が新規に買う値段

昨年に上場した92社のうち、初値が公募価格を割り込んだ銘柄は8
全体の約90%は初値が公募価格を上回る結果となった。

これは主幹事による慎重な初値形成のために、公募価格決定の際にIPOディスカウントが効いていると考えられる。

初値は公募価格を上回る一方、昨年IPOをした92社のうち30%以上の企業は、公募価格が直近の株価を下回った。
また、全体の約70%は初値を形成後、株価が下落する傾向にあった。


17.今週の新規上場会社
上場・公開日/社名/銘柄コード/市場/公募価格(円)
45日 ハイアス・アンド・カンパニー/6192/マザ/950
48日 丸八ホールディングス/3504/2/680

(ハイアス・アンド・カンパニー)
業種:サービス業
事業内容:住関連産業に係るASPシステムの提供及び事業ノウハウ等のソリューション提供
主幹事:SMBC日興証券
監査法人:あずさ

(丸八ホールディングス)
業種:繊維製品
事業内容:羽毛ふとん、羊毛敷きふとん、毛皮インテリア製品等の寝具・リビング用品の製造販売などを行うグループ会社の管理・統括
主幹事:東海東京証券

監査法人:新日本









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