2016年6月18日土曜日

6/17 勉強会:【消費税】増税延期が28年度改正に与える影響 他

1.住宅用地特例で評価ミス、都に賠償命じる

・「住宅用地の特例」の適用がある居宅敷地の地積を過少評価して固定資産税を賦課徴収していた東京都に対し損害賠償命令

・住宅用地特例のある居宅敷地部分と特例のない駐車場敷地について、面積按分を都税事務所がミス

・納税者も必要な手続きを怠っていた、課税明細を入手していながら面積按分の誤りに気付かなかったという過失がある

・納税者の損害賠償請求を認めたが、納税者の過失分を相殺した(過失割合30%)


2.非適格分社型分割-株式以外の金銭等の交付がない場合(分割法人)

■事例
分割法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
分割承継法人B
・吸収分割にともない資本金200、資本剰余金300増加

■分割法人Aの会計処理(簿価で移転した場合)
()負債1,000 /()資産1,500
()B株式500

■分割法人Aの税務処理
⇒非適格分社型分割なので、移転資産負債を時価により譲渡したものとして計算する。
()負債1,000 /()資産1,500
()B株式1,200/()譲渡益700

⇒したがって税務調整は以下となる。
() B株式700 /() 譲渡益700

■別表調整
別表四⇒譲渡益計上漏れ700(加算・留保)

別表五()
B社株式700

別表五()
⇒なし


3.建物附属設備の取得に関係なく税制改正により定額法へ変更可

ASBJ6月中にも「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」を正式決定する。
・平成2841日以後に取得するすべての建物附属設備または構築物の減価償却方法を定額法に変更する場合
・平成2841日以後、建物附属設備または構築物を取得したかどうかに関係なく、税制改正に合わせて減価償却方法を定額法に変更する場合
⇒会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことを明確化する方針
※上記が公表以後、最初に終了する事業年度のみに限って適用される。

■上記適用時の注記は?
①定率法から定額法へ変更している旨
②会計方針の変更による当期への影響額

■四半期決算の適用時期
・上記の公表日以後最初に終了する四半期会計期間から適用


4.中小企業等経営強化法が平成287月施行へ

■中小企業等経営強化法
・中小企業者が「経営力向上計画」を作成
・事務所管大臣から認定を受けた場合
⇒固定資産税の設備投資減税などの特例措置を受けることが出来る

■経営力向上計画
35年の計画
・労働生産性(5年計画の場合は2%以上の伸び)が計画認定の判断基準
・労働生産性=(営業利益+人件費+減価償却費)/労働者数×年間就業時間(1人当たり)
※売上高経常利益率や付加価値額を指標としても可能

■認定された場合
・平成287月~平成313月までに取得した一定の機械装置が固定資産税の設備投資減税を受けることが出来る

※一定の機械装置/下記全てを満たすもの
(1)販売開始から10年以内のもの
(2)旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
(3)1台又は1基の取得価額が160万円以上


5.今週の専門用語~ノンリコースローン~

・担保を超えて返済を求めない融資手法
・責任財産限定特約付金銭消費貸借と呼ばれる
・債務者が担保以上の責任を負わない
⇒銀行等の貸し手側はリスクが増加
⇒その分だけ金利が上乗せされる
⇒融資物件に対する審査も厳しくなる
・不動産分野で利用されることが多い


6.借入金の使途等が異なれば別個の事実関係が発生

■事例
・請求人(会社)は任意組合等の組合員である日本法人
A国のX銀行より外国通貨で借り入れ、不動産賃貸事業を開始。
・返済にあたり、同じA国のY銀行から借り入れた外国通貨で返済。
・返済の際に「為替差益」が発生。
・請求人は経済的価値はないとし、会社への分配額を益金算入しなかった

■請求人の主張
・借入れは不動産と借入が一体となったノンリコースローンの仕組みを用いたスキームであり、借入先の変更による実質的な変化は何もない
・一般的な外国通貨による返済とは異なり、「為替差益」に相当する経済的価値は実現していないため、所得として認識する必要ない

■原処分庁の判断
・スキームの存在に関係なく、外貨を伴った取引であるため「外貨建取引」に該当する
・借入先の変更も、借入れの使途や借入れの諸条件が当初の借入れと事実関係が異なるため、新たな事実が発生したと判断し、返済時の「為替差益」は経済的価値あると判断。

従って「為替差益」に伴う会社への損益分配額は益金算入にすべきと判断した。


7.消費税率引上げ延期の影響と法改正の行方

10%への増税が、2年半延期に
・予定されていた下記の項目も延期に

【延期が予定される項目】
・各種経過措置
・軽減税率の導入
・税抜き表示の廃止(当初H30.9.30廃止予定)
・増税時期をまたぐ期間(当初H28.10.1H29.9.30)に住宅購入契約をした場合、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置限度額が3000万円に拡大する措置
・住宅ローン控除の廃止(当初はH31.6.30廃止予定)
・自動車取得税の廃止(当初H29.4.1廃止予定)
・上記と並行して検討されていた自動車税への環境性能割の導入
・地方法人特別税の廃止、地方法人税の拡大
※地方消費税の増税により、東京都と地方自治体との格差拡大が想定されるために検討されていた


8.景表法に係る課徴金制度

2841日以後に行う不当表示につき課徴金制度が導入された

■景品表示法による不当表示の種類
・優良誤認表示:品質や規格の不当表示
・有利誤認表示:価格や取引条件の不当表示
・その他誤認表示:その他総理大臣が認める不当表示

■課徴金
・上記に該当すると消費者庁や各都道府県知事が「措置命令」、「指導」を行う。
・該当業者には弁明の機会が与えられるが、弁明が認められない場合は課徴金を納付する。
・課徴金は一定の売上金額の3%相当額。
・対象売上が5,000万円以上の場合に納付義務あり。

■税務上の取り扱い
罰金及び科料並びに過料と同様に損金不算入とされる。


9.【消費税】増税延期が28年度改正に与える影響

■増税が延期になったが、消費増税の影響を受けない28年度改正項目は現行法どおりに施行される
 主なものは下記。
・高額特定資産を取得した場合の特例の見直し
 2841日以後に高額特定資産の仕入れ等を行った場合に適用。

・輸出物品販売場制度の見直し
 一部の改正を除き、2851日以後に行う課税資産の譲渡等又は輸出物品販売場の許可申請等について適用。

・事業者向け電気通信利用役務の提供の内外判定基準の見直し
 2911日以後行う特定仕入れから適用。

■一方不透明なのは...
インボイス制度へ移行するための措置となる
・区分記載請求書等保存方式
・経過措置の売上税額及び仕入税額の計算特例などの導入時期も増税と同じく2年半後ろ倒しとするのか否か、現段階では不明。


10.サイバー攻撃から守る10の方法

・新たにコンピュータを設置しても、ハッカーにとっては、平均6分程度でハッキングできるとのこと。

サイバー攻撃から身を守るために…。
①最新のセキュリティにする
②アンチ・ウィルスソフトのみに頼らない
③ビジネス対応のファイアウォールを設定する
④システム及びデータのバックアップ
⑤訳のわからないサイトでアップデートしない
などなど。


11.第1四半期の検討すべき事項

1四半期を迎えるにあたり、下記の事項については、各四半期ごとに検討するのではなく、年度決算との整合性を踏まえて、予め検討する必要がある。

・会計方針の変更
・表示方法の変更
※特に、段階損益に影響を与えるような表示方法の変更は、第1四半期から変更する必要あり。
・連結範囲の変更
※第2四半期以降から重要性が高まり、連結の範囲に含める必要がある場合は、第1四半期から含める必要あり。
・セグメントの変更
・四半期キャッシュフロー計算書の作成
※第2、第4四半期は作成が必須。第1、第3四半期は任意だが、第1四半期で作成したら、第3四半期も作成する必要あり。


12.回収可能性適用指針の実務ポイント

■分類
(1)課税所得が、
・将来も安定して高い水準で推移…分類1
・増減幅が大きく、
全体的に高い水準で推移…分類2
ゼロ付近(マイナスも含む)で推移…分類3
(2)重要な欠損金が、
・過去3年【または】当期に発生…分類4
・過去3年【または】当期に期限切れ…分類4
・過去3年【および】当期に発生…分類5
・翌期も発生が見込まれる…分類5
(3)分類4の分類判定
・将来5年超にわたり課税所得が安定的に発生…分類2とみなす
・将来においておおむね3年から5年程度は課税所得が発生…分類3とみなす
・上記のいずれも該当しない場合…分類4

■留意点(変更点)
(1)分類2
スケジューリング不能差異も、合理的な根拠があれば回収可能性ありと判断する
(2)分類3
おおむね5年後まで回収可能性あり。より短い期間orより長い期間にすることも可能
(3)分類4但書
なくなった(欠損金が臨時的な要因により発生~という記述がなくなった)

■平成28年度第1四半期決算
・基準適用初年度
・四半期の処理:年度決算と同じ処理をしている場合
DTAの回収可能性を新基準により見直す
・四半期特有の会計処理(前期末に計上したDTAの回収可能性だけ検討する方法)
当期首において、計上していなかったDTAが、回収可能になるとき、計上していたDTAが、回収不能になるときは注意が必要


13.四半期特有の会計処理と簡便的な取扱いのポイント
                                                                   
年度よりも開示の迅速性が求められているため簡便的な会計処理が認められている。

■以下具体例
(何か新しい定めがあった訳ではございません)

・一般債権の貸倒見積高の算定
 ⇒前年度の貸倒実績率等を使用できる(著しい変動がない場合)

・有価証券の減損処理
 ⇒年度決算は切放し法のみだが、四半期決算は四半期切放し法or四半期洗替え法を選択適用可(継続適用条件)

・棚卸資産の簿価切下げ
 ⇒年度が洗替え法の場合:四半期も洗替え法のみ
 ⇒年度が切放し法の場合:四半期は洗替え法or切放し法を選択適用可(継続適用条件)

・原価差異の処理方法
 ⇒一定の要件※を満たす場合、繰延処理を容認
 ※原価差異が季節変動に起因、期末までに差異が解消される見込み、継続適用

・税金費用の計算
 ⇒年間見積実効税率を合理的に見積り、四半期の税金費用を計算することを容認


14.非連結子会社とする場合の重要性の基準

■例外
量的および質的重要性に応じて、連結の範囲に含めない事が出来る。

(1)量的判断基準:①~④の3%ないし5%が一つの目安
① 資産基準
(分母)非連結子会社の総資産額の合計額
(分子)連結FS提出会社の総資産額+連結子会社の総資産額
※原則として連結グループ間債権債務及び資産に含まれる未実現損益の消去後の金額

② 売上高基準
(分母)非連結子会社の売上高の合計額
(分子)連結FS提出会社の売上高+連結子会社の売上高
※原則として連結グループ間の取引の消去後の金額

③ 利益基準
(分母)非連結子会社の当期純損益の額のうち持分に見合う額の合計額
(分子)連結FS提出会社の期純損益の額+連結子会社の期純損益の額のうち持分に見合う額
※原則として連結グループ間取引による資産に含まれる未実現損益消去後の金額

④ 利益剰余金基準
(分母)非連結子会社の利益剰余金のうち持分に見合う額の合計額
(分子)連結FS提出会社の利益剰余金の額+連結子会社の利益剰余金の額のうち持分に見合う額
※原則として資産基準及び利益基準の適用に当たって消去された未実現損益修正後の金額)

(2)質的判断基準
①経営戦略上の重要な子会社
②連結FS提出会社の一業務部門の全部または重要な一部を担っている
③セグメント開示に重要な影響あり
④多額の含み損や発生可能性の高い重要な偶発事象


15.税務調査の対策

■最近の調査の動向
H23年通則法改正:より質を求める傾向
H26年度の調査:申告280万件に対し9.5万件(3%
③留意点
⇒反論は早めに:遅いと不服申立てしか手がない
⇒メールの提出:PC・サーバを直接見に来ることも

■業種共通の指摘事項の例
①経費の繰上計上(予算消化目的)
②交際費の科目仮装(@5,000円以下の作りこみ)
③海外出向者給与(親会社(出向元)負担と格差補填の関連)
④売上過大(出荷基準下での出荷前売上計上)

■移転価格調査
①概要
・適正な価格水準にあるかの特殊調査⇒専門チームが担当
・帳簿に計上された価格の適否チェック⇒法人税調査と異なる
・調査件数は増加傾向、中小規模法人もスコープに
・簡易調査あり(金利事案、役務提供)

②特徴
・納税者との見解の相違が起きやすい
⇒納税者:市場の動向を見ながら適正に決めている
⇒当局:価格決定の明確な規準はないため、決定価格に主観的要素あり

③調査流れとポイント
移転価格文書の作成・保管が重要
if文書あり⇒記載事項のチェックのみ、負担軽
if文書なし⇒調査官による質問等と価格算定、負担大
※文書保管はH28改正で義務⇒ないと厳しい調査となると予想


16.要約財務諸表に関する報告業務

・要約財務諸表の保証業務
 →監査済財務諸表と整合しているか
 →要約された内容は適切か(誤解を生まないか)
 →投資家が監査済財務諸表を容易に入手できるか

・財務諸表の監査報告書日の後、要約財務諸表の作成までに生じた後発事象
 →あくまで「要約」なので新事実は記載しない。
 →「反映していない旨」を明記する。


17.インサイダー取引リスクと機密情報管理

(1)重要事実(1)の公表
重要事実が公表されれば、上場会社の役職員に課せられていたインサイダー取引の規制が解除
公表とは以下の場合
・上場会社の代表者またはその委任を受けた者で、2つ以上の一定の報道機関に対して重要事実を公開し、公開後12時間経過したこと
・法令上の重要事実が証券取引所に対してその規則に従って通知され、公衆の縦覧に供されたこと
・「有価証券届出書」、「有価証券報告書」および「四半期報告書」等に重要事実が記載されている場合にそれらが公衆の縦覧の用に供されたこと

(1)重要事実とは主に以下の事実をいう。
1.決定事項
・株式、新株予約権の募集
・資本金の減少
・自己株式の取得
・剰余金の配当
・合併等
・解散

2.発生事実
・災害に起因する損害または業務遂行の過程で生じた損害
・主要株主の異動

3.運営、業務または財産に関する重要な事実であって、投資家の投資判断に著しい影響を及ぼすもの(バスケット条項)

(2)未然防止体制
インサイダー取引規制の意義、内容について役職員に周知徹底されるとともに、社内規程を作成し、インサイダー取引の未然防止を図る。
なお、インサイダーとは、上場会社の役員、従業員等の会社関係者であり、会社関係者でなくなった後1年以内の者も同様。







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