2016年9月17日土曜日

9/16 勉強会:積立NISA、平成31年1月から制度導入へ 他

1.29年改正、RSSOの整合性がテーマに

■平成29年度改正で検討が予想される事項
・リストリクテッド・ストック(RS)とストック・オプション(SO)の課税関係の統一

RSは平成28年度改正で法人税法上「事前確定給与」として損金算入OK
 所得税は譲渡制限解除日にその時点の時価を課税対象に

・平成29年度改正で、SOも一定の要件を満たせば法人税法上「事前確定給与」として損金算入できるようになるのでは?
⇒現行法人税法上は、付与された者に所得税課税が行われた場合には、発行法人側で損金算入できるとされている


2.「PS」「利子」「PE」に関するディスカッションドラフト(DD)のポイント

PS(利益分割法)DD
PS法の適用になる取引について
国外関連取引において当事者が「経済的に重要なリスクのシェア」をしている場合
(1)「高度に統合された事業活動」に従事している場合
⇒バリューチェーンの中で、関連者間に並行統合(≒水平統合)がある場合

(適用される可能性があるケース)
日本は開発・製造、海外子会社は無形資産の改善活動等

(不適用になる可能性のあるケース)
日本は開発・製造⇒海外子会社は販社

(2)「ユニークで価値ある貢献」を行っている場合
⇒不明確のため省略


3.情報すり合わせで調書未提出者に働きかけ

■富裕層対策(調書制度)に関するインタビュー
・調書制度などの導入や海外との租税条約等に基づく情報交換制度を活用していく方針
・調書の未提出者に対しては、様々な情報をすり合せた上で、接触すべき又は調査すべきと考えられる案件があれば働きかけ


4.還付加算金は一種の利子、雑所得に該当

下記が争われた審判
(1)課税処分に係る取消訴訟の勝訴によって還付された還付加算金が損害賠償金と同様、非課税に該当するか否か
(2)取消訴訟に係る弁護士費用は還付加算金に係る雑所得の金額の計算上、必要経費に該当するか否か

審判所の判断
(1)還付加算金は、非課税所得に該当しない(雑所得に該当)
・理由
非課税とされる損害賠償金等は(A)and(B)であるもの
(A)納税者に損害が現実に生じor生じることが確実に見込まれる
(B)その補填のために支払われる
⇒還付加算金は、損害補填のために支払われたものではない
還付加算金は、還付金等に対する一種の利子の性質を有するもの

(2)今回の弁護士費用は必要経費に該当しない
・理由
必要経費となるのは、総収入金額を得るため直接に要した費用
⇒今回は課税処分の取り消しを求めたもので、還付加算金の取得を目的としていない


5.積立NISA、平成311月から制度導入へ

平成29年度税制改正要望で積立NISAの設立が注目されている。

■現行NISA
・毎年新規投資額120万円×5年間(計600万円)、配当・譲渡益が非課税となる制度
5年経過すると、保有資産は原則課税口座へ払い出されるが、翌年の枠を利用してNISAで保有し続けることも可能

■積立NISA(イメージ)
・毎年新規投資額60万円×20年間
・定額で投資(積立)を行うものに限定
・現行NISAとは選択式とする


6.非適格現物出資(DES)(現物出資法人)

■事例
A(現物出資法人)B(被現物出資法人)に対して貸付金()を非適格現物出資
()債権者:A社、債務者:B社、簿価100、時価20

(A社における会計上の処理)
()B社株式 100 / ()貸付金 100

A社における税務上の処理
()B社株式 20(1) / ()貸付金 100
()債権譲渡損80/
(1)非適格現物出資の為、時価で譲渡したものとして計算
取得価額=払込み金銭等の額20+払込みのために要した費用の額020

A社における修正処理
()債権譲渡損 80 / ()B社株式 80

A社における別表調整
・別表四 減算/留保「債権譲渡損計上漏れ」80
・別表五()(Ⅰ利益積立金額の計算明細) 減算「B社株式」80


7.現物出資の適格性巡る事案が訴訟に発展

■事案
・税制適格として現物出資したが、税務当局は非適格現物出資と認定
・事前照会では「適格現物出資」と回答も、回答に反する処分(非適格現物出資)が下された。
・「信義則の法理」の適用により違法ではとの主張も、審判所は重大な相違点があった場合は適用されないと審査請求を棄却していた

上記を踏まえ、原告は訴訟を提起した。

※参考
税務調査から訴訟までの流れは?
「申告」→「税務調査」→「更正処分」→「異議申立」→「審査請求」→「訴訟」

・更正処分→異議申立・審査請求:更正処分の決定後2月以内
・異議申立→審査請求:異議申立の決定後1月以内
・審査請求→訴訟:審査請求の裁決後6月以内


8.今週の専門用語

【有償ストック・オプション】
・発行時に時価相当額を払い込むSO
・会計上、払込金額を新株予約権として計上し、権利行使時に資本に振り替えられる(PL影響なし)。
※無償SOは、報酬(労働サービス提供に対する対価)として費用計上される
・ただし、今後は有償SOも無償SOと同様に費用計上が求められる方向へ


9.消費税:延払基準と特定期間に係る課税売上高

■延払基準採用時の課税売上計上時期
法人税申告で延払基準を採用している場合には、賦払金の支払の都度、課税売上を認識する

■特定期間に係る課税売上高との関係
賦払期日が特定期間内にあるものは特定期間の課税売上となる

■設例
(1)12月決算法人(特定期間は前年1/16/30
(2)前々年に長期割賦販売100万を行った(5/年1回20万分割払)
(3)特定期間における課税売上高990

ケース1:賦払日が6/30の場合
6/30に割賦売上20万が計上される(特定期間売上1,010万)のため当期納税義務あり

ケース2:賦払日が9/30の場合
9/30に割賦売上20万が計上される(特定期間売上990万)のため当期納税義務なし


10.バリュエーション/ディスカウントとプレミアム

・コントロールプレミアムがいくらなのかはケースバイケースですが、KPMGM&A survey によると国内案件の場合、上場・非上場ともに5割近くの案件が10%未満のプレミアムでした。


11.建設業における税務調査のポイント

1.完成工事高関係
・売上計上すべき基準を満たしているのに、未検収等の理由で引き渡し未了として売上を繰延べていないか。
・本体工事が完了しているのに、追加工事等が完了していない等の理由で引き渡し未了として売上を繰り延べていないか。
・翌期完成の赤字工事を利益減少のため繰り上げ計上していないか。

2.労務費関係
・工事現場の人員配置図、タイムカード、残業等明細書、作業日報の内容を確認し、架空人件費を計上していないか。

3.棚卸関係
・仕損じ品やスクラップ等の計上が適切に計上しているか。

4.交際費関係
・架空外注費を計上して、受注謝礼金等が支払われていないか。
・サービス工事の中に交際費とすべき内容が含まれていないか。


12.2段階買収でのスクイーズアウト時の論点。株式取得価格をめぐる最高裁決定の概要と実務への影響

2段階買収
(1) 公開買付
(2) 発行済株式を全部取得条項付種類株式として、全株取得
⇒事例では、(1)時点の価格と(2)時点の価格が異なっていた

■最高裁決定
公開買付が「一般に公正と認められる手続」により行われる場合には、その後のスクイーズアウトに際して株主に交付される価格も公開買付価格と同額とすべき

■趣旨
株主に対する強圧性へ配慮

■「一般に公正と認められる手続」とは
会社法、金融商品取引法等の制定法に従っていることに限定しない。
MBO指針や金融商品取引所の規制に基づきor準じて適切な措置
独立した第三者委員会や専門家(弁護士や株式価値評価の専門家)の意見の聴取なども例示


13.支店移転決定と固定資産の減損会計

■前提
・自社保有の支店の土地建物を処分し、賃借物件へ移転予定
・移転の取締役会決議は四半期決算日後

■留意点
・自社保有の支店の土地建物について減損の兆候に該当する為、減損損失を認識するかどうかの判定を行う必要がある
(使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合に該当する為)

・取締役会決議の意思決定が決算日後でも、期末日時点の状況から移転が明らかであり、意思決定自体が単に期末日後になったにすぎない場合は、減損損失が測定されるのであれば修正後発事象に該当する

・取締役会決議の意思決定が期末日後の環境変化に対応したものである場合は、開示後発事象として注記要否を検討する


14.毎年の税制改正の流れと平成29年度税制改正要望

■流れ
夏~秋:各種業界団体や各府省庁から改正要望が公表される
11月頃:政府税制調査会から税制改正の方向性が提言される
12月頃:与党の税制調査会により税制改正大綱が公表される
1月頃:改正法案が国会に提出され審議
3月頃:可決されると改正法令として公布

■平成29年度税制改正要望(主なもの)
【中小法人税制】
・外形標準課税の適用拡大
・欠損金繰越控除の制限
・減価償却方法を定額法へ統一
【法人税】
・賞与引当金、退職給付引当金の損金算入容認
・貸倒引当金の損金算入見直し
・役員給与の損金算入要件緩和
・受取配当金の全額益金不算入
・留保金課税制度全廃
・寄付金の損金算入拡大
・少額減価償却資産の取得価額基準引き上げ
・欠損金繰越控除の制限撤廃、繰り戻し還付制度の全面復活
・完全子法人等からの受取配当等の源泉徴収の廃止
【消費税】
・基準期間制度の廃止
・消費税の申告期限延長の容認


15.平成283月期 有価証券報告書分析

■マイナス金利関連
割引率の利回りについて、マイナスとなっている場合、そのまま、あるいはゼロを下限としていずれも可
(1) 退職給付(割引率)
・マイナス(6社)、ゼロ(19社)、ゼロ超(168社)
(2) 資産除去債務(割引率)
・マイナス(1社)、ゼロ(10社)、ゼロ超(31社)
(3) ストック・オプション(無リスク利子率)
・マイナス(6社)、ゼロ(2社)、ゼロ超(60社)

■退職給付会計
数理計算上の計算基礎の開示項目が追加され3期目となった
(1)開示項目数
大きな増減はないが、開示項目数が2個(59%)、3個(39%)が大半を占める
(2)基礎率の内訳
・割引率(100%
・長期期待運用収益率(97%
・予想昇給率(40%


16.H28.3有報分析:税効果関連

■関連する改正
・法人税等の引下げ
・繰欠控除の制限見直し 他

■注記
(強制)法人税等変更によるDTA/DTLの修正⇒その旨及び修正額
(重要性)繰欠に係るDTAの回収可能性に影響⇒その旨及び影響額

■事例分析
①⇒分析対象の全社が開示(連結)
+②⇒分析対象の8%が開示(連結)


17.H28.3有報分析:結合基準等

■関連する改正
・支配継続親会社の持分変動による差額の処理
・取得関連費用の取扱い
・暫定的な会計処理の確定時における取扱い
・表示科目の変更 他

■処理
(原則)遡及適用+期首剰余金で調整
(容認)将来に渡って適用

■事例分析
①⇒分析対象の8%が採用、全社影響額まで開示
②⇒分析対象の92%が採用


18.会計監査の信頼性確保に向けた日本公認会計士協会の取り組み

・監査法人のガバナンスコード導入
⇒ 上場企業と同じく、監査法人の経営の透明性を確保。

・監査報告書の情報提供機能強化
⇒ 監査上の重要な事項を記載。
⇒ イギリスのロールスロイス社の監査報告書は、非常に詳細な事例として注目された。
⇒ 会社が公表していない情報を含めてよいか、など今後の検討課題。

・監査人の交代理由を開示
⇒ 会計処理に対する意見の違い、など。
⇒ 実効性があるかどうか、要検討。

・監査法人のローテーション、監査の品質指標の導入

・協会の品質管理レビューの強化
⇒ 専門性の高いレビューアーの確保など

・諸外国に比較して短い監査期間の見直し
⇒ 日本42.5日、米国57.8日、カナダ60.6日、イギリス76.7日…
⇒ 「速報」であるはずの決算短信よりも監査報告書の発行日が早いケースが、上場企業の約4割。
⇒ そもそも「決算短信」「会社法」「金商法」の3つの開示制度の一元化も議論されるべき。
⇒ 総会開催も、他国では約120日後に対して、日本は3ヶ月以内と短い。


19.ショートレビューによるコーポレート・ガバナンスの主なチェックポイント

・株主総会、取締役会は適切に運営されているか?
⇒議事録が適切に作成され、保管されている必要がある。
⇒取締役会を設置していない場合、遅くとも直前期の期首時点では取締役会が設置されている必要がある。

・監査役監査は有効に機能しているか?
⇒直近1年間は有効に機能している必要がある。
⇒一般的に最低2名でうち1名は常勤であることと言われている。

・内部監査は有効に機能しているか?
⇒直近1年間は有効に機能している必要がある。
⇒自己監査とならないよう、専任の担当者を設けるか、複数名の兼務者により、自己の業務以外の監査を実施する必要がある。

・稟議制度が整備され、適切に運用されているか?

⇒稟議制度を整備し、社内での決裁や意思決定が適時・適切に行われたことを明確にする必要がある。









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