2016年9月4日日曜日

9/2 勉強会:29年度改正の論点に”スピンオフ税制” 他

1.29年度改正の論点に”スピンオフ税制”

・平成29年度税制改正で、スピンオフ税制の導入が論点に

1つの会社の中に、業績が良い事業と悪い事業があったときに、業績が良い会社と業績が悪い会社に分けた場合
⇒現在の法律では税制適格の組織再編にならない
⇒上記のような組織再編も税制適格としてほしいというニーズがある
⇒平成29年度改正での導入を検討されることとなった

・スピンオフ税制を導入した場合
⇒現在の組織再編税制と理論的に矛盾する(適格要件を満たさないため)


2.税務CGの充実に向けた取り組みを実施

■税務当局の取り組み
・特別国税調査官所掌法人を対象
⇒税務CGの状況確認+経営者と意見交換実施
上記の確認結果+調査で悪質な是正事項なく調査重要度が低いと判断される場合
⇒調査間隔を延長(全国で36社あり)

・国際的な取引について
課税上問題があると認められる場合には厳密な調査、厳正な対処をしていく。

・共通報告基準(CRS)による自動的情報交換制度
自動的に海外における日本企業・個人の保有資産、資産運用の実態が報告されてくる。
平成291月より開始。


3.有償新株予約権は費用計上、導入済み企業の取扱いは?

ASBJが有償発行の新株予約権について会計上の取扱いを検討している。
(現行)
・下記のいずれかの適用対象になるのか定かではない。
⇒企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」又は企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」
・実務では、発行時の払込金額=「新株予約権」、権利行使時に権利行使に伴う払込金額及び行使された新株予約権の合計額を「資本金」または「資本剰余金」とするケースが多い。
⇒費用計上しないことが有償新株予約権発行のメリットでもあるため。

(今後の方向性)
・ストック・オプション会計基準の適用範囲に含める方向
⇒新株予約権の付与日以降の将来の労働サービスの提供に対する対価として「株式報酬費用」を認識=PLへ影響あり
 ただし既に導入済のものについては、影響を与えないようにする方針


4.TH対策税制の適用除外規定、書面の添付なければ適用できず

納税者が課税処分の取り消しを求めた裁判

■概要
・納税者(N)は、D (デンマーク法人・親)の株式を100%保有していた
D()の収益合計額の約90%が株式保有に係る収益であった
D()は、d(デンマーク法人・子)100%支配していた
D()は、d()の株式をO(オランダ法人)に譲渡した
・譲渡益が出た(デンマークでは、非課税)
N氏は所得税の確定申告書提出の際、
タックス・ヘイブン(TH)対策税制の適用除外規定の適用がある旨を記載した書面(適用除外記載書面)を添付していなかった
・この申告に対し税務署は、課税処分を行った
N氏は、TH対策税制の適用除外要件()を満たすなどと主張し、課税処分の取り消しを求めた
()
・事業基準
・実体基準
・管理支配基準
・非関連者基準又は所在地国基準

■裁判所の判断
(1)TH税制の適用除外規定は、下記の両方満たす場合に限り適用可
・適用がある旨を記載した書面(適用除外記載書面)を確定申告書に添付
・適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存
(2)特定外国子会社等(D社)の主たる事業が株式の保有と認められる場合には適用除外規定は適用されない

以上より、課税処分は取り消されなかった
(敗訴したN氏は控訴している)


5.今週の専門用語

■スピンオフ
企業や組織の一部を分離し、別個の独立した企業や組織とすること。

■スピンアウトとスピンオフの違い
・スピンアウト…資本関係がなく、関係が切れる
・スピンオフ …独立時に出資を受ける等、資本関係が残る

⇒スピンオフは元の企業等の影響が残ってしまうが、その代わり元の企業のブランドを利用できるなどの強みもある。


6.みなし役員の認定めぐり一部取消し裁決

■事案
・某社(同族会社)A
~平成223月期:代表取締役⇒平成23,243月期:使用人⇒平成253月期~:代表取締役
・使用人だった期間において、毎月金額の異なる報酬(以下、当該報酬)を支払っていたが、役員報酬に該当しない為、損金算入していた

■みなし役員
同族会社の使用人であっても、(1)「株式保有要件等、一定の要件を満たし」、かつ、(2)「会社経営に従事しているもの」は、法人税法上、「役員」に該当

■原処分庁
・業務委託契約書にA氏自ら代表者として署名押印していること
・税務調査におけるA氏の供述(自ら会社運営をしている)
(2)「会社経営に従事しているもの」を満たし、「みなし役員」に該当
⇒当該報酬は役員報酬に該当する為、損金不算入

■審判所
・税務調査におけるA氏の供述がいずれの期間におけるものか必ずしも明らかでない
・上記供述を具体的に裏付ける証拠資料が収集されていない
・代表者でないものが契約当事者になっているだけ
・契約内容も重要な業務に係るものではない
(2)「会社経営に従事しているもの」を満たしているとは言い難く、「みなし役員」には該当しない
⇒当該報酬は役員報酬に該当せず、損金算入可


7.住宅取得資金の贈与特例は事前に金銭の取得が必要

■裁判事例
2/1  請求人は2/1付で居住用家屋等の売買契約を締結
5/15 残代金約2,400万円を支払い(=引渡し完了)
 同日 購入資金として2,600万円をローンで借入れ
5/19 請求人父より××万円の贈与受ける。
6/22 借入金を繰上げ返済
・贈与額××円につき住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税として申告したが、原処分庁より更正処分をうけた。

■住宅取得資金の贈与特例とは
・住宅の購入資金として父母等から贈与を受ける
・贈与を受けた金額を基に自己の居住用家屋等を購入し住む。
・贈与を受けた金額のうち一定額を非課税とする。※現時点では700万円まで非課税

■原処分庁の判断
・政策的見地から設けられたため、規定の解釈を厳格にとらえる必要あり。
・実態ベースではなく形式的見地より判断する。
・家屋等を購入後に受けた贈与は特例の対象とはならないと判断した。


8.適格現物出資(デット・イクイティ・スワップ)

・現物出資法人A社が、被現物出資法人B社に対して、貸付金100(時価20)を時価で現物出資
・適格現物出資の場合、A社の課税関係は以下の通り

(会計)
B社株式         20 / 貸付金 100
債権譲渡損    80

(税務)
B社株式         100 / 貸付金 100

(別表四調整)
債権譲渡損過大          80(加算留保)

⇒有価証券の取得価額:会計は時価、税務は簿価


9.裁判例:違法な調査手続きと修正申告の効果

■概要
請求人Aは原処分庁の調査を受けて修正申告書を提出し、原処分庁はそれを受けて過少申告加算税等の賦課決定処分を行った。
これに対し請求人は調査手続きに違法な点があるため修正申告は無効であるとして、賦課決定処分の取り消しを求めた。

■請求人Aの主張
本件調査は十分な説明なく行われたものであり、修正申告書の提出も調査担当者に言われるがまま提出したものである。よってこの修正申告は無効であり、賦課決定処分も取り消されるべきである。

■原処分庁の主張
本件調査については十分な説明をした上で行ったものである。修正申告書の署名押印も請求人Aが自ら行っており、調査手続きは適法である。従って修正申告等が無効になることはない。

■審判所の判断
国税通則法によれば、「更正」または「決定」により賦課決定が行われた場合、「調査」が行われていることが前提で、仮に調査に違法がある場合には調査及び賦課決定は取り消されることとなる。
一方、「修正申告」は納税者の意思によるものであるため、賦課決定について「調査」の有無は要件にならない。従って、調査手続きが違法であることを理由に修正申告及び賦課決定が取り消されることはない。

結果⇒請求人Aの主張は退けられた。


10.【源泉】在宅勤務手当と源泉所得税

在宅勤務でかかる光熱費や通信費等を補助するために会社が「在宅勤務手当」を支給する場合、源泉徴収は必要か?
基本的に給与課税の対象となり、源泉徴収が必要。

会社の業務のために使用したことが明らかなものは課税しないことになっているが、光熱費や通信費等のうち業務対応分のみを抜き出すことは困難と考えられる。


11.有償新株予約権 SO基準の適用範囲に

・有償新株予約権について、現行基準では複合金融商品適用指針を利用することが多い。
 発行時に 現預金 ×× / 新株予約権 ×× と仕訳し、そのまま。
・ストックオプション基準を適用し、報酬費用を認識する方向になる
 ※時間の経過とともにオプション価値が増加。その分を費用認識する
・遡及適用を求めるかどうかが議論されている。


12.補欠役員(取締役、監査役)に支払った金員の税務上の取り扱い

(1)補欠役員に支払った金員は、損金の額に算入される。

・相当の理由があり、寄付金及び交際費にはならない。
 ⇒ 実際に就任するまでは役員ではなく、権限・責任もない。
 ⇒ しかし、「いざという時」就任してもらう「予約」がされている以上、「一定の拘束」をしている。
・常識的な額であれば問題なし。

(2)役員にとっては雑所得。

・補欠役員は、税法上、役員でもみなし役員でもない。
 ⇒ 給与所得ではない。
・業務の対価とも言えず、雑所得となる。
・源泉徴収は不要。

(3)消費税法上、「課税仕入れ」として取り扱う。

・補欠役員になってもらうための同意・承諾、その間の待機に対する支払。
⇒ 対価性のある支払。


13.ショートレビューによる人事労務管理の主なチェックポイント

・従業員の定着率が低く、企業の継続性に問題となる可能性はないか?また、組織理由に問題となる事項はないか?
⇒定着率が低いかどうかは類似業種の定着率を参考にすることがある。

・プロパー人材の育成・充実を図るための人事的対応(人事評価システム、研修制度等)は行われているか?
⇒人事考課規程において、評価制度を定め、運用する必要がある。

・従業員の年齢別人員構成に問題ないか?
⇒理想はピラミッド型であるが、20代若手中心でもすぐに問題となるわけではない。

・出向、転籍、中途採用者などの比率が異常ではないか?
⇒例えば他社からの転籍が多い場合などは、優秀な人材確保、定着のため、プロパーの人材の育成が必要になる。

・残業手当の支給ルールが明確か?
⇒みなし残業時間制を採用していたとしても、タイムカード等の管理を実施し、残業時間管理を行う必要がある。
⇒上場審査上、未払残業代がないことの証明が求められる場合がある。

・加入義務のある従業員・パートタイマーの労働保険、社会保険の手続きは適切に行われているか?

⇒特にパートタイマーについては十分な検討がなされないことがあるため、社労士に相談するなど対応する必要がある。









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