1.実録 グループ法人税制外し
・法人が行った第三者割当増資が適正だったかどうかを審判所が審議
⇒第三者割当増資が行われたことにより、法人間の完全支配関係が消滅
⇒完全支配関係がなくなった後に含み損がある資産の売買が行われていた
※グループ法人税制の適用がある場合、含み損が実現しない
⇒課税庁は同族会社の行為計算否認を適用し、含み損の損金算入を否認した
・法人側の主張 従業員の士気高揚などの目的があった
⇒審判所:従業員が1000人いるが、割り当てがあったのが営業部長だけ、法人の主張は受け入れがたい
・審判所:第三者割当増資は経済的見地から不自然な行為と言える
⇒課税庁の処分を支持
2.過去の誤謬(棚卸資産計上もれ)
(設例)
・前期において棚卸資産500の計上漏れ(当期の売上原価)があり修正申告済
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500増額処理
⇒当期の申告調整はどうするか。
(答)
別表四は「売上原価認容」として500減算(留保)する。
3.守秘義務等を負えば情報開示の対象外
金融庁が導入する方向で検討しているフェア・ディスクロージャー・ルール(注)の原案が明らかに
(注) 証券の発行者である上場企業等が、重要かつ未公表の内部情報を第三者に開示した場合には、他の投資家にも情報提供をするというルール
■対象となる情報の範囲:決算情報や業務提携などの重要な情報
■情報の公表方法:EDINETやTDnet、自社のHP
■対象となる情報提供者の範囲:
発行者の役員、従業員、使用人、代理人のうち、情報受領者への情報を伝達する業務上の役割が想定される者
■情報受領者:証券会社、投資運用業者、投資顧問業者、信用格付業者など
■情報開示の対象外となる場合:
・情報受領者が守秘義務や投資判断に利用しない義務を負っている場合
・例えば、証券会社に資金調達の相談をする場合など
4.外部サーバの電子メールの強制差押えを可能に
■平成29年度税制改正での、国税犯則調査手続きが見直される予定
(1)差押え対象
国税犯則調査時において、現状PC本体の差押えは可能だが、サーバー上の電子メールは差押えの対象外となっている
⇒裁判官からの許可状を取得すればサーバー上のデータも差押え可能だが、取得までの間に証拠が隠滅されてしまうことがあるため、今回の改正でサーバー上等のデータも差押えの対象とする
(2)強制調査の実施時間
現在、夜間は強制捜査の手続きを実施することが出来ず、夜間に証拠を隠滅されてしまう事態も想定される
⇒夜間においても強制捜査の開始を認める方向とする
5.信託型株式報酬が利益連動給与に該当も
■信託型株式報酬
○:退職時に交付・・・交付時の時価を退職金として損金算入OK
×:在職時に交付・・・損金算入NG
(参考)リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)
在職時に交付・・・・・損金算入OK ∴事前確定届出給与
■平成29年度税制改正で、在職時に交付した場合も損金算入OK?
(1)事前確定届出給与: ×
・支給時に株式数が確定していない
⇒取締役等の在任年数や役位、業績・株価の達成度、等をポイント化し、ポイントに応じて数年後に株式を付与
(2)利益連動給与:○?
・算定指標に「株価」に関する指標を追加
・損金算入要件「有報に記載される、その事業年度の利益に関する指標の数値が確定した後1ヶ月以内に支払われること(見込みでもOK)」の測定年度を単年度から複数年度に変更
⇒信託型株式報酬の対象期間は複数年度
6.総会決議のない退職慰労金の返還を命じる
■事例
・同族会社の代表取締役に退職慰労金4億円を支給
・定款に退職金の定めなし
・株主総会を開催せず(決議なし)
・会社は全額返還を請求した
・退職慰労金の返還を求めることは信義則に反し、権利濫用として許されるか否か
■会社法の取扱い(会社法361条)
取締役の報酬等についての事項が定款に定められていない場合は、株主総会の決議によって定める旨が規定されている。
■裁判所の判断
定款に明記がなく総会決議も経ていないため、退職慰労金の支給は法律上の原因を欠くので原則として不当利得になる。ただし、以下理由により、権利濫用として許されないとまでいえないと判断。
・創業者以来、株主総会が開催されなかった
・会社運営は代表取締役に一任されていた
・会社への貢献による利害関係人としての支給であった。
⇒全額返還ではなく、一部の返還を命じる判決をくだした。
7.生命保険金の申告漏れも仮想隠ぺいは認められず
【審判所事例】
・被相続人Aが死亡し、相続人Bが預貯金・土地・保険(5明細)を相続
・相続人Bは、保険のうち一部明細(3明細)について相続税の申告をしなかった
⇒重加算税の対象となるかどうか
※重加算税:隠ぺい、仮装し、その上で過少申告した場合に課税
【判断】
・下記理由により、隠ぺい、仮装の事実は認められず、重加算税とはならない
【理由】
・税理士が作成した固定資産リストに対して、相続人B自らが不足資産を指摘、リストに追加していた
・保険5明細のうち、2明細については保険会社からの指摘で相続手続きをしていた
・申告しなかった3明細については被相続人Aが死亡したことで保険料が不払いとなり、失効の旨の通知を受けて受取り手続きを行った
※当該保険が相続税の対象となる認識がなかった
⇒重加算税の対象となるのは、故意に相続財産(保険)を申告しない場合(仮装、隠ぺい)
⇒本件はそれに当たらない
8.不納付加算税における「正当な理由」
■不納付加算税とは
源泉徴収による国税が期限までに完納されなかった場合に徴収される加算税。ただし、納付しなかったことについて「正当な理由」がある場合には徴収されない。
■正当な理由とは
・破産管財人に対する報酬、旧従業員に対する給与が源泉徴収の対象となることにつき認識が欠けていた場合
・扶養控除等申告書の記載に誤りあったことにより源泉徴収漏れが生じた場合
・金融機関に税金の納付を委託した場合において、委託金融機関の事務処理誤りにより納付が期限後となった場合
・災害、交通手段の途絶などにより期限内に納付できなかった場合
⇒これらに該当する場合、事務指針により不納付加算税は徴収されない
9.東京局 9号買換えの特定施設の範囲と面積要件の判定について文書回答
■事案
・X社、10年超保有の土地をA社に売却⇒A社は建物建設
X社は当該建物の一部を区分所有し、2フロアを事務所、1フロアをA社へ賃貸(事務所として使用)
X社は、建物区分所有により面積割合に応じた土地の敷地利用権を取得する
■論点と結論
・賃貸部分が特定資産に該当するか⇒賃借先が特定施設の要件を満たす場合にはOK
・買換資産の土地等の面積は300㎡以上である要件があるが、3フロア合計の敷地利用権で判定してよいか (1フロアずつの判定でなくて良いか)
⇒一の取引で複数の専有部分をまとめて取得しているのでOK
※特定施設とは⇒事務所、工場、作業場…(一部省略)、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く。)
10.M&Aの難しいところ
・ハーバード大学のM.ポーター教授の書籍によると、M&Aの9割が失敗しているとのこと
・M&Aは難しいのである
・のれんを減損することも多い
・買収後、買収額を上回る超過収益等が得られれば成功であるが、短期的に「のれん」などを減損せざるを得ないような場合は経済的に失敗とみるべき
11.完全子会社 子法人株式の寄付修正
・100%子会社の全株式を、第三者に譲渡する際、親会社から子会社への貸付について、債権放棄を求められた。税務上の処理はどうなるか?
・100%親子間における債権放棄であるため、基本的に(親)寄付金損金不算入、(子)受贈益益金不算入。
・ただし、親が持っている子法人株式の帳簿価額を増やす。
・第三者への子会社株式売却価額は、債権放棄を前提に決定されることから、仮に債権放棄の分、子法人株式の帳簿価額を増額していないと、譲渡益が立ってしまうことになる。
12.IPO銘柄投資
IPO銘柄投資には、およそ以下の3つパターンがある。
1.公募価格でIPO銘柄に投資
⇒良いと思われる銘柄はなかなか回ってこないので現実的には機会がない。
2.公開初値で投資
⇒初値は有望銘柄ほど高くて通常は手が出せない。その後に値下がりがきつくなることもあるが、銘柄によってはその後に急騰することもある。
3.初値後の一定期間後の安値での投資
⇒安値をつけるタイミングを見出す困難さがある。
(1)上記2に関連して、公開初値から比較的短期で2倍以上の値上がりを見せた銘柄
(いずれもマザーズ)
・LITALICO(6187、2.3倍、2か月)
・アカツキ(3932、4.2倍、2か月)
・エボラブルアジア(6191、2.6倍、4か月)
・農業総研(3541、4.0倍、1か月)
・VEGA(3542、2.1倍、1か月)
・リファインバース(6531、2.3倍、3か月)
・串カツ田中(3547、2.1倍、1か月)
・チェンジ(3962、2.4倍、1か月)
(2)上記3に関連して、上場後2か月から3か月程度後に安値があって、その後株価がその2倍以上の水準になった銘柄
・ヨシムラHD(2884、2.2倍)
・ヒロセ通商(7185、4倍)
・ストライク(6196、2.6倍)
(3)2016年の IPO 銘柄で一回も大幅高にならず公開価格や初値を割り込んだままの状態の銘柄
・フィット(1436・公開価格比▲57.7%)
・富士ソフトSB(6188・同▲22.8%)
・UMC エレク(6615・同▲7.9%)
・グローバルグループ(6189・同▲0.5%)
・フェニックスバイオ(6190・同▲35.3%)
・イワキポンプ(6237・同▲2.3%)
・アイドマ(9466・同▲20.6%)
・ウイルプラス(3538・同▲15.7%)
・やまみ(2820・同▲8.9%)
・コメダ(3543・同▲11.9%)
・ソラスト(6197・同▲9.0%)
・デファクトスタンダード(3545・同▲13.7%)
・ベイカレント(6532・同▲24.0%)
・KH ネオケム(4189・同▲13.3%)
・アイモバイル(6535・同▲27.0%)
・岐阜造園(1438・同▲8.0%)
・バロックジャパンリミテッド(3548・同▲30.6%)
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